東方無集録   作:生きる死神

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はい、少し遅れた気がします。
終章4話目。
軽い弾幕ごっこを含んでおります。
それではスタート。


美しくも散る花

 

 

 

 

 

 真也とさとりたちの弾幕ごっこが始まって既に5分ほど経過した。勝敗の条件も決められないまま始まったこの勝負だが、お互いどちらかが挫けるまで続くと分かっていた。

 サイズも速度もバラバラな黒い弾幕を飛ばす真也、それぞれが決まったサイズである程度は決められた速度の弾幕を放つさとりたち。

 人数差的にもさとりたちが押していた。いや、押していて当然なのだが、さとりは不安が拭えなかった。

 

さとり「(おかしいわ。彼ならこんな緩い弾幕なんて放つわけがない。異変を解決した5人を1人で相手したくらいなら、もっと激しく放ってきても良いはず。なにか狙っているのかしら?それとも、手加減でもしているのかしら)」

 

 簡単と言えば嘘になるような弾幕だが、予想していたよりかは激しいわけでもなく、手加減しているようにしか思えないものだった。

 人数差を有利に使い3方向から攻撃しているので、1人に来る弾幕の量が少なくなるのは当たり前なのだが、それにしては少なすぎる。一度も被弾させられてはいないが、相手も被弾していない。

 まるで消耗狙いの消極的な戦い方だ。こいしがたまに話していた様子よりも幾分違うことに、さとりは不審感を拭えず、警戒心を高めて弾幕を放っていた。

 

 一方真也は飛んでくる弾幕に対して相殺するように放ちながら、被弾を狙っていないような量を保って考え事をしていた。

 

真也「(どう考えても勝てる道理が無いんだけど、どうする気なのかな。このままじゃ向こうが消耗して終わるだけなんだけど)」

 

 手加減しているわけでも、何かを狙っているわけでもない。ただ、この結果の見えている勝負をどうするつもりなのかが分からず、あまり激しく弾幕を張っていなかった。

 考え事を止め、3方向から来る弾幕を軽く眺め手元に視線を落とす。左手にあるのは、今回使うスペルカード1枚。

 

真也「(無駄に消耗させるよりも、いっそのこと一気に終わらせてあげた方がいいかもね)」

 

 少しだけ暖かい色を灯した瞳は、悲しそうに3人を見た。それを別の意味で捉えたさとりは、2人に声をかける。

 

さとり「お燐!お空!お願い!」

 

お空「はい!」

 

お燐「はいさ!」

 

 名前を呼ばれた2人は、お互い視線を交わして頷く。そして、スペルを取り出した。

 

お空「行くよお燐!」

 

お燐「任せな!《霊符「踊る怨霊」》!」

 

 宣誓と同時に真也の周りに5つの赤い幽霊らしきものが現れる。それらは出現と同時に一定きょりを保って回り始め、移動を妨害するように弾幕を飛ばす。

 飛んでくる弾幕は、どれも狙っているものではないとしばらく避けてから気づいた真也。途中から一点に止まり、時折飛んでくるさとりの弾幕を相殺しつつ、警戒を続ける。

 そして、ようやく頭上からの肌を焼くような熱気に気付く。

 

真也「これは……」

 

 その視線の先にあったのは、超巨大な赤い弾幕。それを放つ直算のお空がいた。熱気は弾幕から放たれており、距離は近くもないのに汗が流れ出るほどだ。

 

お空「行くよ!《核符「アトミックフレア」》!」

 

 宣言し、その熱の塊は放たれる。緩やかだが確実に地面へ向かう凄まじい熱量の弾幕。後続はないが、それ1つがいくつも出さなくて良いほどの火力を持っていた。

 それに対して真也は未だに周囲を弾幕で囲われており、移動が出来ない。お燐とさとりはすでに離れていて、巻き込まれることもないだろう。迫ってくる巨大なそれを前にして彼は顔色1つ変えず、手のひらから1個、たった1個のやけに深い黒色の弾幕を打ち出した。

 その様子を安全なところから見ていたさとりは、お空の弾幕に比べて何十分の一でしかない弾幕で、どうやって対処しようとするのか分からなかった。

 

さとり「あれ1つでお空の弾幕を止める気なのかしら……」

 

 どう見ても無謀としか思えないそれは、それに反していとも容易く打ち破って見せた。いや、打ち破ったのではない。まるで元から無かったかのように熱を放っていた弾幕を消し去った。

 

真也「……これで終わり?なら、僕もスペル使うよ?」

 

 いつの間にかお燐のスペルも終わっていた、というよりかは、さっきの弾幕と一緒に消えてしまった。

 何が起きたか分からず、焦るお燐とお空。さとりは、自身のスペルを準備し慌てる2人に声をかける。

 

さとり「焦ってばかりでは止められないわ!次がくるわよ!」

 

真也「苦しめるのは僕も本意じゃないんだ。だから、早く終わらせてあげる」

 

 さとりたちの準備が出来るまでなぜか待っている真也。焦っていた2人が落ち着いたのを見てスペルを宣言する。

 

真也「美しいものも何時かは散ってしまう。いつまでも続くことがないように。《花枯「褪せていく色」》」

 

 言い終わると同時に、8つの花が出現する。1つ1つの色は異なり、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、そして黒色。それぞれの花からその色の弾幕が周りに放たれる。放たれる弾幕は小型だが、その量は今までよりも数倍、いや数十倍もあった。

 圧倒的物量で攻めてくるそのスペルを、さとりたちは相殺するのも交えつつ避ける。

 お空は外側を大きく動きながら。

 お燐はその素早さを武器に隙間すらも潜り抜ける。

 さとりは相殺して作った空間を上手く使っていた。

 3者3様の避け方で、弾幕を耐える。しかし、物量でくるそれは避け方も関係無く襲いかかる。

 最初の脱落者はお空だった。外側を大きく動いて結果、早々に体力が限界に達した。その上相殺もしており、妖力も枯渇してしまった。

 その結果動きは鈍くなり、相殺するための弾幕を作る妖力もなく、被弾を重ね脱落した。

 1人落ちたところで弾幕の勢いが弱まるはずもなく、続けてお燐が落ちる。ランダムで放たれていたため、逃げた先が運悪く被弾不可避の場所だった。そのまま被弾が増え続けて落ちていった。

 残るはさとり1人。

 浮かぶ花は段々と色が抜けていき、今では白一色になっていた。放たれる弾幕も白くなり、まるで雪のようにあたりを埋め尽くす。

 

真也「こんなんじゃ僕を止めるなんて無理だよ?」

 

 埋め尽くされた白の中で明らかに浮いている黒。真也は煽っているわけではなく、ただそのまんまのことを言っていた。

 さとりも、それは承知で弾幕を耐えていた。そして、ようやく待っていたタイミングが訪れる。

 白い弾幕を放っていた花は、花びら1つ1つに変わり散り散りになった。ひらひらと辺りを浮かんでは沈み、最後まで妨害としても仕事を為す。

 その光景を、弾幕の雨を切り抜けたさとりは、ちらりと見てスペルを宣誓する。

 

さとり「あなたを止めるわ!《想起「うろおぼえの踊り霊と超熱球」》!」

 

真也「……まさか」

 

 名前は変わっているが、放たれた、というより起きたそれは、先ほどのお燐とお空と同じものだった。少しばかり温度の下がったような気もするが、ほぼほぼ遜色はないものだった。

 移動を妨害する黒い弾幕、そこから放たれる米粒大の自身を狙っていない小型弾幕。そして、そこに打ち込まれる大型な熱を放つ弾幕。

 それら全てが真也を襲う。対して彼は、その対処すらも先ほどと変わらなかった。

 手のひらから中くらいのやけに黒い弾幕を、迫る赤い弾幕に放つだけ。もはやデジャヴすら感じてしまうものだ。

 

さとり「もしかして、あの弾幕って……」

 

 今更ながら気付いたその弾幕の効果、というよりかは能力。しかし、それは遅すぎた。

 さとりの予想は覆ることはなく、やはり弾幕は消え去った。彼の弾幕もまとめて。

 

真也「さて、スペルは終わっちゃったけど、どうするのかな。単純に弾幕だけの応酬でもするの?それとも拳で語り合う的な?僕、物理は苦手なんだけど」

 

 周りに弾幕は無く、ふわりと浮かぶ2人以外なにもなかった。

 少しだけ冗談っぽく言ったが、やるならやってやるという気も感じられる。

 

さとり「そんな気はないわ。私だって弾幕ですらあまり得意ではないのに」

 

 やれやれと手を振り地上に降りる。それに釣られて真也も降りた。

 そのまま彼女はその場で彼を見やる。何も言わず、無言で見つめる。その視線を気にすることもない彼は、勝負も終わったと思い、縦穴に歩みを進める。

 そして、2人が横並びになったとき、さとりが動いた。

 

真也「……えっと、どういうつもり?」

 

さとり「私だってこんなことしたくないです。でも、これくらいしか足止めする方法がなかったんです。諦めてください」

 

 やや顔が赤いようなさとりは、真也を押し倒す形で言った。横並びになった瞬間彼を押し倒し、手も絡めて身動きを封じたのだ。

 傍から見れば、顔の赤い美少女が、まあそれなりに顔の整った少年を押し倒しているなんとも美味しい光景なのだが、残念ながら少年にそれは意味が無かった。

 

真也「手も絡めて、まあ、能力の発動を封じるって意味ではまあ間違っちゃいないね」

 

さとり「ええ。あなたは手を握らないと使えないでしょう?なら、絡めてしまえば封じられるわ。あとは、力でなんとかするわ。いくら覚りと言えど、それなりにはあるから」

 

 絡めた手に力を入れ、逃がさないという気持ちが彼にもよく分かった。そして、それを彼はとても残念そうに、すっからかんの心は申し訳ないように、彼女を見ていた。

 

真也「本当に、頑張ったと思うよ」

 

さとり「……どういう意味かしら」

 

 訝しむように目を細めるさとり。封じようとその手に入れられていた力が急に抜ける。突然のことで驚くも、腕で何とか代わりをしようと試みるが、両手から力が抜け、簡単に引き矧がされてしまった。

 

さとり「そんな……!どうして!」

 

真也「確かに僕はいつも能力を使うときに手を握ってるけどさ」

 

 一拍置き、立ち上がった彼は、力が入らず見上げることしかできないさとりを見下ろす。そして、手をひらひらと振り、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

さとり「まさか……、そんな!」

 

真也「たぶん思ってる通りだよ。別に、手を握らなくても能力は使えるよ」

 

 衣服に付いた砂や汚れを払い、ちらりと後ろを見る。

 

真也「お疲れ様。次会うときは、異変後だね」

 

さとり「待ちなさ──」

 

 吐き出された言葉は最後まで紡がれることはなく、その場に残ったのは重苦しい空気と意識の無くなった少女、そして真也のみ。

 

真也「悪いとは思ってるけど、僕を止めるなら君じゃない」

 

 悲しげな瞳は、地霊殿の方角を見て、瞼を閉じる。再度開いたときには、もう、悲しみの色はどこにもなかった。

 気絶した3人を放置して彼は縦穴に進み、地上を目指す。道中ヤマメとキスメに会ったが、2人とも彼の瞳を見て何も言わず暗闇に姿を消した。

 ようやく真也が地上に着いた頃。幻想郷各地にいるパワーバランスを担う者たちは気付いた。つい3日前に感じた霊力を。

 

紫「はぁ、本当になってしまったわ……」

 

 自身だけが佇む目玉模様の空間で、彼女は呟いた。開いた隙間は、遠目から黒い少年を映しており、もう止めることが出来ないことなど分かりきっていた。

 

紫「後は彼女たちに頑張ってもらいましょう。私が割って入ったら、被害は増えること間違いないでしょうから」

 

 別の隙間を開き、それぞれに映る少女を見た。紅白の巫女、白黒の魔法使い、吸血鬼の妹、有頂天の天人もどき、正体不明の妖怪。

 そして、無表情な面霊気とそれに見守られる無意識の少女を。

 

 




どうでしたかね。
チート安定な主人公ですね。
次回も頑張る、間に合うかは分からんが。
それでは次回までばいばい。
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