人は、過ちを繰り返す。
それは数知れず行われる戦争であり。
それは金に目がくらみ不正を行う政治家であり。
それは試験前に勉強を怠った学生であり。
人は、過ちを繰り返す。
そしてこの女、ノエルの過ちは。
「ああ~……頭痛いぃぃ~……」
飲み過ぎである。アルコールをこよなく愛する、若干のダメ人間テイストの入った彼女に襲い掛かっているのは、二日酔いと言う名の自業自得の地獄。
それは一度や二度ではなく、まさに幾度も繰り返された過ちの、取るに足らないいつもと変わらぬ一回。
そのはずだった一回は、しかし若干の違和感によって姿を変えていた。
「んんぅ…………なんでこんなに固いのよ寝床ぉ……」
寝返りを打つ彼女は、いまだ完全には目覚めていない。それ故に辺りの違和感にも、ほとんど気付く様子はなく。
微睡みの中にいる彼女の意識は、時が経つにつれて寒さを伴い、覚醒へと引きずり出されていく。
「しかも固いだけじゃなくて…………さ、さむ、……へくちっ!」
くしゃみ。
その音にこそ完全に意識を引っ張り出され、目を開いた彼女が見たものは。
「…………は?」
床に直に敷かれたマットレス。その色は赤黒く変色していて、それが明らかに長い年月の間放置されたかのような様相を呈している。
わけが分からず身を起こして、それに伴い視線も正面を向く。
その視界に入ったのは、壁と言うにはその役割を果たせそうもないほど穴が開き、穴どころかほぼ骨組みが丸出しになった……控えめに言って、瓦礫であった。
倒壊していないだけ、まだ建物としての機能を残しているだけマシなのだろう。壁の向こうに見える景色の中には、建物どころか既に何の役にも立たない瓦礫の山も見えるのだから。
だが彼女にとって重要なのは、そこが瓦礫なのか建物なのか、そういうことではない。
「―――いや、ちょっと待ってよ、ここって……」
頭の内側をハンマーで殴られるような痛み―――当然ながら二日酔いから来る頭痛なのだが―――をこらえながら立ち上がり、ふらふらした足取りで建物の外へと出た彼女の視界に広がるのは、かつては賑やかだった町の模様をほんのわずかにだけ残す、廃墟。
しかも、彼女はその廃墟に見覚えがある。見覚えがあるどころか、それはつい最近遊んだばかりのゲームの中の場所。
「サンクチュアリ・ヒルズじゃない!!」
二日酔いすらどこかに飛んでいくレベルの衝撃に、思わず彼女が叫び声をあげる。
もちろんその声は、無人の荒野に虚しく拡がり消えるだけであった。