これ、C8はあってもよかったんじゃないかな…………
「ぼうやはね、真っ白だったの。何一つ見えなかったのよ。過去も、未来も」
「真っ白……どういうことだ?」
ママ・マーフィーの言葉の意味が理解できず、首を傾げるガービーに、彼女は言葉を続ける。
「私の『サイト』はね、過去や未来を少しだけ見ることができるの。それに…………現在でさえもね」
少し高揚したような、冗談とも本気ともつかぬその言葉の後に、彼女は静かにトーンを落として、でも、と続けた。
「でもね。ぼうやには何もなかったの。過去も、未来も。今まで『サイト』は、色んな人の未来や、過去を映してきた。ぼうやみたいに、真っ白なのは……初めて」
「どうせ薬でハイになってただけなんでしょ!この人の言葉の証明になんか、なりゃしないじゃない!」
これまでの旅程で相当に疲弊していたのだろう。傍らの女、マーシーが激昂し叫びだす。だが、その指摘は正しくもあった。そうしてその言葉に頷いたのは、当のノエル本人であった。
「そうね、証明のしようがないもの。でも代わりと言ってはなんだけど、アタシにも『サイト』と似たような力があってね」
「へえ、それであたしたちの過去でも言い当てるとでも言うの?」
苛立ちを隠さないマーシーに、お望みならね、とノエル。もちろんノエルはママ・マーフィーのような力は持っておらず、先の言葉は嘘である。
だが、さっき自らのことを話したノエルは、たった一つだけガービーにも、コズワースにすら話さなかったことがあった。そうしてそれこそが、ノエルの嘘を本当へと変える布石である。
それはすなわち、彼女がこの世界のことを知っているということ。もちろんこの世界はゲームの中だ、などということを言ってしまえば反発を招くのは必至なので、あえて隠したと言うことでもあった。だが、何にせよその隠し事は、非常に効果的に働くこととなった。
「ジュン、マーシー。息子さん……カイルのこと、お悔やみを言うわ」
「なっ……」
今度こそ本当に絶句して、マーシーと傍らの男、ジュンは目を丸くしてノエルを見つめた。ジュンの名前はともかく、その二人の子が亡くなっていることなど、そしてその子の名など、その場にいなければ、あるいは知っている者から話を聞かなければ、決して理解出来ることではない。
そしてノエルの視線は、次にガービーを捉えた。
「ガービー。ロニー・ショーは生きてるわ。キミがキャッスルを取り戻したとき、もう一度キミの前に戻ってくるわ」
「何だって……ロニー・ショーだと?歳を取ったとはいえベテランだ、彼女が戻ってくるのは有難い話だが」
今はほとんど崩壊状態のミニッツメン。その元メンバーを知る者など、それこそほぼ関係者以外にはあり得ない話である。が、当然のことながら、ノエルはミニッツメンではない。
そして今度は、ママ・マーフィーへと向き直る。
「あのね、さっきデスクローと戦ったときにさ、狂人マーフィーの真似しようかと思ったのよ。パイプ銃で頭を一発、ってやつ。けどやっぱりアタシにはムリだったわ、あれ」
本人以外は真実かどうかも分からない、ママ・マーフィーの過去の武勇伝の話。もちろんそんな話をノエルにはしていないことは、この場の全ての人間が分かっていることで。ママ・マーフィー自身も若干の驚きを隠せず、おやまあ、と零した。
「ぼうやの『サイト』は、とてもよく見えるのね。私もクインシーの時に、それだけ見えていればねぇ……」
ママ・マーフィーの悔悟するかのような言葉に、もう一つの言葉が挟まれる。それは今の今まで疑いの目でノエルの事を見ていた、マーシーだった。
「―――待ってよ、待ちなさいよ、その……ノエル。……本当にあなたは、その」
言い淀む彼女に、ノエルは小さく首を横に振って。
「信じてくれなくてもいいわよ。もちろん、信じてくれたら嬉しいけど。でも、ママ・マーフィーの言ってた、アタシとコズワースがサンクチュアリから来たって言うのは本当よ」
ノエルの打った布石は、この場の全員にノエルのことを信じさせるに、十分すぎる働きをした。最初こそ苛烈だったマーシーの態度も、今この状況になって、随分と軟化してきている。
「それにね、サンクチュアリは名前の通り、近くに大きな危険もないから。物もあんまりなくて最初は大変だけど、頑張ればきっといい場所になるわ」
ノエルの言葉に同調したのは、今まで沈黙を貫いていたスタージェスであった。
「まあ、いつまたレイダーに襲われるか分からないこのコンコードよりはいい場所だろうさ。それに物がないってのなら、そりゃあ俺の出番だろうってな」
俺は人より物を直したり作ったりするのが得意なんだ、と自慢げに胸を張るスタージェス。その様子に小さく笑みを零し、頼もしいわね、と軽口で返すノエル。
「でも、ね。―――悪いんだけど、そこに案内するのは明日の朝にしてくれたら、嬉しいかな」
ノエルの言葉の意図に気付かず、怪訝な表情を浮かべる一同。ただ一人その意を理解したコズワースのみが、ノエルの横に寄り添うように立つ。
「さすがにね、このアクションガールのノエルちゃんと言えど、……デスクローと殴りあいの後じゃ、ちょっとオーバーワーク……」
疲労。単純なれど、極めて深刻な話である。ゲームの中のノーラは何日起きたままでも、飲食をせずとも何一つ変わることがない、もはやロボットのようなタフネスであったが、これはゲームではなく、かつ、ノエルは当然ながらロボットでもない。
ゆっくりとその場に座り込むノエルを支えるように、コズワースのアームユニットが背に回る。センサーアイがノエルの様子をチェックしながら、コズワースはノエルの言葉を補足するように、言葉を重ねた。
「強い疲労を示しています。ノエル様だけでなく、あなた様方も。―――ここからサンクチュアリまではさほど遠くはないですが、この状態で夜闇の中向かうのは、いささか危険が過ぎるかと」
コズワースの意見は至極もっともなもので、誰一人として異を唱える者はいなかった。もっとも彼らとて、博物館に逃げ込んでからさほど時も経っておらず、コズワースの指摘どおりに皆が疲弊していたのであるが。
「そうだな。デスクローが徘徊していたことを知れば、そうそう他のレイダーたちもこの辺りをうろつこうとは思わんだろうさ」
一番に賛同を返したのは、ガービーであった。他のメンバーからも反対意見があがることはなく、かくして自由博物館は彼らにとって、ひと時の安らぎの場となるのであった。
静まり返った深夜。彼らがやっとのことで切望していた休息をとる中、明かりの代わりにと電源をつけていたラジオから、流麗なトラヴィスの声が響く。
「次のニュースです。連邦にはいくつかの場所で、多くの人々が集まる場所があります。ここ、ダイヤモンドシティもその一つですが、他にもグッドネイバーや、あとはVault81、バンカーヒルなどが有名ですね」
疲れから熟睡していると思われたノエルであったが、彼女の高いPerceptionのおかげか、その小さな声に反応して緩やかに目を開く。
だが、その内容が『ゲーム内』でよく聞いたものであれば、そのような反応は返さなかっただろう。半分寝ている頭で、流れるラジオにぼんやりと耳を傾ける。
「にわかには信じがたい話ですが、そんな連邦内の集落の各地で悪霊、つまりゴーストが悪さをしている、との噂が流れてきました。被害の詳細は分かりませんが、これを退治するために三人の科学者が立ち上がったようです」
「……はぁ?」
聞き違いかと思い、思わず身を起こすノエル。だが聞き違いなどではなく、そのニュースは続いていく。
「マーレイ博士、エイクロイド博士、ライミス博士の三人は、ゴースト退治の協力者を募っているそうです。もしゴーストに悩まされていたり、協力する気のある方は、ダイヤモンド・シティにある彼らの事務所を訪ねてみてください」
間違いなく、それはノエルの体験にはないニュースであった。それどころかトラヴィスの呼んだ三名の名前は、いずれもゲーム中には存在しない名前であり。
「彼らのことをなんと呼べばいいのかって?もちろんご存知でしょう……そう、Vaultbusters!」
[クエストがアップデートされました:When Freedom Calls]
・ガービーたちをサンクチュアリへと案内する
[クエストがアップデートされました:Vaultbusters???]
・3人の科学者と話す
[Pyrokinesisの使用回数がリセットされました:残り3回]