ここに至るまでに11話も使ってるんだが、これ一体完結するまでに
どれだけの時間がかかるんだろう……
考えたら負けか!
トラヴィスの語る ニュースの内容は、やはりノエルの知らないものであった。
ダイヤモンドシティ・ラジオが告げる ニュースは本来、主人公であるサバイバー、ノーラが既に経験したことを広めるような形で流れており、その大半が過去形で流れている。にも拘らずこのニュースは現在進行形であることも、ノエルの違和感に拍車をかけることとなった。
「しかもこれって……やっぱり『アレ』よねぇ」
そのニュースこそノエルは聞いたことはなかったが、その内容と酷似した話には覚えがあった。三人の科学者がゴーストを退治する話。彼女が電子と機械の国に旅をしたときに見た、映画の話。映画の中では途中で一人仲間が増えたが、おそらくそれはトラヴィスの言った『協力者』のことなのだろう。
予想だにしなかった事態にノエルが頭を抱えると、傍らでスリープモードに入っていたはずのコズワースのレンズが、ノエルの側を向く。
「いかがなさいましたか、ノエル様?」
「……コズワース、ちょっと訊いていいかしら?」
はい何なりと、と、コズワースは若干声を潜めて言葉を返した。いまだ熟睡しているガービーたちへの配慮だろう。
「昔……うん、1980年代くらいの映画とかって、ノーラさん好きだったりする?」
コズワースはしばし考えた後に、ノエルに答えた。
「はい、シルバー・シュラウドのラジオドラマもそうですが、どうも奥様は学生時代に映画研究会に入っておられたようで。クローゼットの奥に、昔の映画のホロテープを沢山お持ちでした」
だんだんとノーラの人となりが見えてきたノエルは、彼女が意外とコミカルな人物でありそうなことに小さく笑みをこぼした。
「うん、アタシも好きよバック・トゥ・ザ・フューチャーとか。そういえばコズワース、サンクチュアリでアタシのネタに合わせてくれたわよね」
「ノエル様の言葉にその意図があるとは思っておりませんでしたが、奥様に感化されたのでしょうかね、つい口をついて出てしまったようです」
その歓談に花が咲くかと思われたところで、コズワースはノエルにしかし、と切り返した。
「しかしノエル様、突然映画の話など如何なされたのですか?奥様探しになにかお役に立つのでしょうか?」
「それなんだけどねコズワース、アタシ、ちょっと怪しいなと思ってることがあるのよ」
疑問符を浮かべたコズワースに向けて、ノエルは先のラジオの内容を伝える。それを聞いたコズワースは一言、「間違いありません」と返した。
「映画そっくりの事件など、不思議な話ではありますが、事実は物語よりも奇だということなのでしょうか。ともあれ奥様であれば、むしろ喜んで向かうでしょう」
コズワースの断言はむしろ爽快なものであった。息子が行方不明のこの状況においてなお、コズワースの指摘通りの人物であるとすれば、この世界のノーラは相当にマイペースな人物である。
あるいは、既に息子、ショーンとの再開を果たしているのか。トラヴィスのニュースでは彼女がその場所に赴いた手がかりとなる話は流れていないが、今回のこのニュースが生まれたことで、ノエルはラジオの情報の速報性、正確性にささやかな疑問を持っていた。
「なかなかアレな人ね、ノーラさん。まあでも、次の目的地は決まったわね」
二人は小さく頷いて、ノエルは再び横になり、そしてコズワースはもう一度自身を省電力モードに切り替えた。
もう一眠りしたあと、サンクチュアリへガービー達を送り届ける。そうしてその後は、連邦の偉大なる緑の宝石…………ダイヤモンド・シティへ。
「ママ・マーフィーの言うことは正しかった。素敵な場所だ」
夜が明けて、一同がサンクチュアリを目にしたとき、ガービーが最初に口にした言葉はそれだった。
ノエルやコズワース、またこの場にはいないノーラなど、戦前の記憶がある者たちの感覚からすれば、素敵な場所という表現は理解しがたいものではあった。
が、彼ら入植者たちにとって、そこは間違いなく名前通りの場所、サンクチュアリであった。
状態こそ良くないが、屋根があり、寝床として十分に機能する建物。作物を育てるに適した広大な土地と、側を流れる川。そして何より、外敵の気配が感じられないこと。
それらを理解したガービーは、皆に振り返り、告げる。
「ここに落ち着いて、我が家ってやつにしようじゃないか。いいだろう、皆?」
そして、それに異を唱える者もおらず、かくしてサンクチュアリは文字通り、彼らの新しい桃源郷となることになったのだ。
「ノエル」
サンクチュアリをしばらく歩き回ったあと、ガービーは不意にノエルへと声をかけた。
「初めて会ったとき、アンタは自分の身を省みずに助けてくれたな。だからほら、こいつは……礼だ」
そう言ってガービーがノエルに差し出したものは、通貨、ボトルキャップの詰まった箱だった。
「そういうつもりで助けた訳じゃなかったんだけどね、……でも、今のアタシにはとても助かるわ」
ほぼ無一文に近いノエルにとっては、渡りに船であり。ありがとう、と礼を返しながら、その箱を受け取る。
「ああ、お嬢ちゃん。大したもんじゃないが、俺からも一つ渡したい物がある」
そう言ってスタージェスが差し出したのは、一本の瓶だった。ロケットを模したかのような特徴的な造形の瓶の中身は、青く光輝く不可思議な液体で満たされた…………
「クアンタムじゃない!!」
目にしたノエルのテンションが急に上がったことに驚きながら、スタージェスは手にした瓶を彼女に渡した。大戦の始まる数時間前に発売されたという曰くつきのレアな飲料、ヌカ・コーラ・クアンタム。
思わぬ収穫にノエルは嬉しそうな顔で瓶を揺すり、青い液体が揺れるのを楽しげに見つめている。
「ありがとうスタージェス!これ、すっごく欲しかったのよアタシ」
「そ……そんなに喜んでくれるとは思わなかった。大事に持ってた甲斐があったよ、お嬢ちゃん」
高いテンションのまま礼を言うノエルに、若干気圧されたように返事を返すスタージェス。
そもそも食料、飲料の持ち合わせが少ないノエルにとって貴重な飲料であることに間違いはないのだが、それにしてもその喜びようは、スタージェスが首を傾げるのも無理はないことであった。
「ところでノエル。喜んでいるところ申し訳ないが、できれば他にも頼みたいことがあってね」
嬉々とした表情の彼女にガービーが頼むのは、他の居住地の救助の話である。ゲーム中でもサンクチュアリに辿り着いたガービーが、ノーラに向けて同じ依頼を持ちかけるのであるが、それをこの世界ではノーラでなく、自分を助けてくれたノエルに持ちかけていた。
「うん、たぶんそう来るんじゃないかなって思ってたわ」
ノエルはガービーの言葉に頷きはしたが、しかしその口から返される答えは、否定のそれであった。
「キミが忙しいのも分かるし、できればアタシも助けたい。けどね、どうしても行かなきゃいけないところがあって」
ノエルの体験したゲームと違い、この世界はきちんと時間が流れていて、それ故にやるべきことを絞らねば、本来の目的であるノーラに追いつけるかどうかすら分からない。そう考えた彼女の謝絶の意に、ガービーはわずかに肩を落とした。
「……そうか、そうだな、ノエル。あんたにも都合があるだろう、忘れてくれ」
「ゴメンねガービー。アタシの用事が落ち着いたら、きっと手伝いに戻ってくるわ。だからそれまで、住民を守るナイトの役目は、キミに任せる」
申し訳なさげに一度頭を下げた後、その代わりにね、とノエルは前置きして。
「そのパワーアーマーはガービー、キミが使って。ほら、やっぱり民衆を守るナイトには、立派な鎧がないとね」
彼女の冗談めかした言葉に、ふ、とほんのわずかに笑い声をこぼして。だがその後にガービーの放った一言は、なかなかにパンチの効いた言葉であった。
「ノエル、あんたはとてもいい奴だ。その破滅的なジョークのセンスを除けばな」
「辛辣っ!」
コンコードに向かう前、コズワースと繰り広げたやり取りとほぼ同じように、渾身のジョークをあっさりと切って捨てられ、同様にがくりと肩を落とすノエル。
「ハハハ、そっちはデスクローみたくはいかないんだな。だがまあ、元気付けてくれたんだろう?―――ありがとう、ノエル」
真正面から感謝の言葉を向けられたのが照れくさかったのか、ノエルはガービーから目線を逸らし、小さく頬を掻いた。
「ま、まあ……どういたしまして。でも期待してるわよ、民衆を守る正義の味方、プレストン・ガービーの活躍にね」
「ああ、ラジオのニュースを賑わすくらいには活躍させてもらうさ。……そうだ、ノエル」
改めて呼びかけられたノエルが小首を傾げると、ガービーはおもむろにパワーアーマーを除装し、ノエルの前に姿を現す。生身の状態であっても、ノエルより頭一つ分は背の高いガービーがノエルを見つめると、自然、ノエルの視線もガービーの顔を向く。
「コレで最後のお別れって訳じゃないが、せっかくのあんたの旅立ちだ。こういうのはどうだ?」
軽く右手を挙げ、その掌をノエルの側に向けるガービー。その意図を理解したノエルも、同じ様に手を挙げ―――
『グッド・ラック!』
言葉と共に重なり合った掌が、晴れ上がった空に乾いた音を響かせる。
それは決してゲームでは味わうことのできない、血の通った、暖かな触れ合いだった。
[クエストを完了しました:When Freedom Calls]
[クエストがアップデートされました:TRACING "SOLE SURVIVOR"]
・コズワースと共にダイヤモンド・シティへ向かう
[クエストがアップデートされました:I WANT SOMETHING QUANTUM]
・[完了]ヌカ・コーラ・クアンタムを入手する
・ジン、ウォッカ、ウイスキー、ラム酒のいずれかを入手する
・メンタスを入手する