仕事が忙しすぎてネタが出てこないッ!!
ガービーたちと別れたノエルとコズワースは、最初に決めたとおりにコンコードを南下するルートを辿っていた。
さほど大きな事件もなく、あったとしてもコズワースが野犬に追い掛け回されたりした程度のもので、特別に何か命の危険があったわけではなかったが、問題は意外なところから出てくることとなる。
「…………ねえ、コズワース」
「如何なさいましたか、ノエル様?」
ぽつりと小さな声で名を呼ぶノエルに、コズワースは向き直り、そのセンサーアイを傾ける。おそらくそれが彼にとって、首を傾げることと同じ意味なのであろう。
「もしかして、今になって寂しいなどと言うのではないでしょうね?」
「違うわよコズワース、それは大丈夫。キミがいるもの」
茶化すようなコズワースの問いかけに、むしろカウンターのような言葉で返すノエル。まさかそんな真正面からの好意のパンチを浴びると思っていなかったコズワースは、センサーアイをくるりとノエルから背けた。
「……そ、その様なことを仰ったところでノエル様。私はきれいな水しかお渡しできませんよ」
そのあまりにもロボット離れした態度に、思わずノエルが吹き出す。
「…………たまに思うんだけどさコズワース。キミ、すっごい人間くさいとこあるわよね」
「なんと勿体無い御言葉、痛み入ります」
プログラムされたものとは思えない語彙の豊富さもそうだが、なにより単純に丁寧なだけではなく、時折顔面にバスケットボールを叩きつけるかの如く辛辣な毒を吐くところなど、どうにもノエルには彼がロボットに思えなくなってきていた。
「しかしそれはそれとして、本当に如何なされたのですか。失礼ながら、先程からあまり気分が優れぬ様子」
「それよ。アタシは今、生物として決して無視することのできない脅威に晒されているの」
かつてないほど深刻な表情のノエル。その真剣な眼差しに、コズワースは己のセンサーの感度を上昇させ、辺りを窺った。
「……脅威、ですか?ですがノエル様、センサーに外敵の存在は確認できませんし、放射能も検出されておりませんが」
「違うのよコズワース。脅威は外じゃなくて、アタシの中にあるの」
その脅威ってのはね、とノエルは前置いて、小さく息を吸い込んだ。
「おなかすいたの」
「…………」
あまりといえばあまりの言葉に、一瞬、コズワースは自身の処理能力が急激に低下したのを自覚する。もちろんそれはほんの一瞬のことで、センサーアイのシャッターを開閉する間にも回復するのではあるが。
「…………ノエル様?」
「仕方ないじゃない!あのレイダーたち、ガムドロップしか持ってなかったのよ!」
そんなノエルの言い訳の言葉は、悲しく晴れ上がった空に吸い込まれていく。
「それにガービーたちの前でご飯ちょうだいだなんて、そんなカッコ悪いこと言えるわけないじゃない」
「いっそそれだけ見栄を張ることができるノエル様に、若干の尊敬を覚えますが」
擬音にすれば『ぷんすか』の文字がもっとも似合うであろうノエルの謎の怒りと、尊敬すると言った割には限りなく棒読みだったコズワースの言葉。なんとも間の抜けた光景ではあるが、それは存外に深刻な事態ではあった。
そもそも平和な時代であれば商店が機能しており、通貨さえあればそれを食料と交換することは容易である。が、ここは平和という言葉とは最も縁がない世界である。
そんな世界で商店を営む者はよほどの酔狂な者か、でなければ外界から隔絶された安全な場所で限られた者にのみ販売をするかのどちらかである。
「それだけ元気があれば大丈夫でしょう、と言いたいところではありますが、いずれにせよ食料はある程度確保しておかねばなりませんね」
「そうよねぇ。ね、コズワース。ちょっとルートから外れるんだけど、寄り道していい?」
一刻を争うほどに急ぐ旅程ではなく(無論、早くたどり着くに越したことはないのだが)、コズワースはノエルの提案に、首肯というよりはボディを傾斜させるようなそれではあったが、ともかく肯定の意を伝える。
「構いませんが、一体何をなさるおつもりで?」
コズワースの承諾を得たノエルはその足取りを若干南東に向け、続いたコズワースの問いに答えた。
「そりゃあもちろん、ショッピングよ」
ドラムリン・ダイナーと呼ばれたその食堂は、核戦争のもたらした破壊を奇跡的に生き延び、少なくとも建物として十分機能していた。そうしてその食堂の外に二人、そして食堂の中にも二人。本来、つまりゲームの中においては、最初にノーラが訪れた段階では一触即発の空気であったところであるが、食堂の中の店主とおぼしき女はため息こそついているが、緊迫した空気は漂っていない。
それどころか、食堂の外の二人はスツールに腰掛け、中の店主に向けて注文をしているような、そんな状況。
「えっ」
その光景を見たノエルが思わず驚きの声を上げ、それに気付いたスツールの上の一人、男がノエルへと振り向いた。
「ようお嬢さん、ビジネスの話でもしにきたのか?」
「あ、うん。残念ながらキミじゃなくて、そっちのおねーさんの方だけど」
その言葉を聞いた店主と思しき女は、へえ、と気を良くしたのか、その気難しそうな顔をわずかに綻ばせた。
「お嬢ちゃんは年寄りの扱い方を心得てるわねぇ。それで?一体お嬢ちゃんは何を探しているの?」
「ごは、……ううんえっと、必要なのは食料なんだけど」
見た目の年齢で言えばおよそ20歳前後。言い回しがいささか子供っぽいのはノエル本人の性格なのだろう。口にしかけた『ごはん』という単語を飲み込んで首を振り、揺れる赤毛のポニーテール。そして目的の物を告げた彼女に言葉を返したのは、スツールの上の男の方であった。
「ハハハ、『ごはん』ときたか。そんな単語久々に聞いたぞ。なぁ、トルーディ?」
茶化すように言いながら食堂の中の女、トルーディに話を振る男。だがその言葉に返事を返したのは当のトルーディと呼ばれた女ではなく。
「うっさいわねウルフギャング。おなかのすいた乙女は気が立ってんのよ」
「おやおや。乙女にまで名を覚えてもらえるなんて、俺も有名になったもんだ。……何で知ってるんだ?」
冗談めいた言葉の後、不意に男、ウルフギャングの視線が鋭くなる。失言に気付いたノエルは内心で困った顔をしながらも表情には出さず、代わりにウルフギャングに見せ付けるように、己の左腕を前に出した。
「これよ。遠目に見たらキミ、レイダーっぽく見えたから。ちょっと調べさせてもらったわ」
「ほぉ、V.A.T.S搭載のPip-Boyか。勝手に覗き見されるのはいい気はしないが、用心なのはいいことだ」
ついでに俺の客になってくれればもっといいがね、と冗談めかしたウルフギャングの言葉。そんな自業自得の一難が去った後に言葉を発したのは、様子を静観していたコズワースであった。
「ノエル様、ともあれまずは食料の調達が最優先かと」
「あ、そうね。そういうわけでえっと、トルーディさん。商品見せてもらっていい?」
「ええ、どうぞ。あんまり上等なものは置いてないけどね。必要ならキャップだけじゃなくて、お嬢ちゃんの不要な物とトレードでもいいわよ」
そうしてトルーディの並べた商品の中から食料品をいくつか選び、その代価に、使わないバットやナイフなどの近接武器と、余ったパイプ銃を提示し、交渉は比較的スムーズに終わるのだが。
並べた商品の中にわずかな違和感を覚えたノエルは、トルーディに向けてその違和感を疑問としてぶつけた。
「ねえトルーディさん。もしかしたらなんだけどさ、少し前までこれに似た感じの立派な剣売ってなかった?」
Pip-Boyに収納していたシシケバブを取り出し、トルーディに見せると、当の彼女はああ、とあっさりノエルの質問に肯定を返した。
「ああ、それならもう売れちまったねえ。青いVaultスーツを着た、お嬢ちゃんより少し上の子が買っていったよ」
Vault。戦前に作られた大型シェルター。稼動しているものは数少なく、かつ、Vaultの外でその専用スーツを着ている人間は、さらに少ない。
そしてノエルらが足取りを追っているノーラも、Vaultに入るところからゲームでの物語は始まる。
「マダム・トルーディ。不躾ながらお尋ね致しますが、その方はどちらへ向かったか、ご存知ではありませんか?」
「目的地までは聞いていないけど、南に向かっていったようだね。あの様子だと何かを探してるようだし、やっぱりダイヤモンド・シティに向かったのかねぇ」
コズワースの問いに返されたトルーディの答えは、まさにノエルらが求めているものであり、ノエルとコズワースはそれぞれ内心で大きなガッツポーズを挙げていた。
その内心の喜びに割って入ったのは、今まで沈黙していたウルフギャングである。
「ああ、お嬢さんたちはなんだ、ダイヤモンド・シティに用事があるのか?」
だったら一つ頼まれて欲しいんだが、と、ウルフギャング。それはノエルの『知識』にはなかった話で、ノエルは首を傾げて聞き返した。
「え、アタシたちに?……引き受けるかどうかはまあ話を聞いてみてからだけど、言ってみなさいよ」
ノエルの言葉にウルフギャングは頷き、小さな包みをノエルに手渡した。
「そいつをな。ダイヤモンド・シティにいる医者、Dr.クロッカーに渡してもらいたいんだ」
[クエストがアップデートされました:The Disappearing Act-Retake]
・Dr.クロッカーに小包を渡す
[Perkを取得しました:Realist]
・すべてのS.P.E.C.I.A.L.が1上昇します
・特殊な物を除いて、飲食では体力が回復しません。また、重症を負っている場合、睡眠での体力の回復が制限されます
・一定時間ごとに食料、飲料、睡眠を取らないと、S.P.E.C.I.A.L.に制限がかかります
[読者クエストがアップデートされました:Year-End]
・今週一週間を乗り切る