Fallout:Funfiction   作:いまさと

15 / 26
年度末はようやく乗り切りました。
そしてもう一人、新たな異邦人が連邦に降り立ちます。

人に空飛ばせるのが大好きなおっさんです。よろしくね。


14日目:もう一人の異邦人

グッドネイバー。

大きなコミュニティはいくつかあるが、その中でもこのグッドネイバーの門をくぐり、そこに根付く者たちには、ある共通点があった。

それはすなわち、他の大きなコミュニティを追われた『はみ出し者』であること。そんな場所であるからこそ、その中には悪事に手を染めた者もいる。

「そこで止まれ。このグッドネイバーに入るのは初めてだな?」

一人の男が閉ざされた扉を開き、グッドネイバーに足を踏み入れたのを見るや、中にいたスキンヘッドの男が訪問者に静止をかける。

眩い白色のスーツに身を包み、無造作に跳ねた黒の短髪。周囲の人間より頭半分ほど高く、眼光は鋭く、人相はあまりよくはない。そしてそのスーツの下に、鍛えられた体躯が見え隠れしている。

あまり真っ当な人間に見えないその訪問者は、ともあれスキンヘッドの男の言葉に従い、足を止めた。

「素直じゃねえか、いい心がけだ。ここじゃあ保険がなけりゃあ歩き回ることなんかできねえからな」

訪問者が足を止めたことを、自分に都合よく解釈したのだろう。昏い笑みを浮かべ、スキンヘッドの男が告げるその言葉を、訪問者は表情一つ変えることなく聞き返した。

「保険、ねェ。そいつァ、約款でも見せてもらえンのかナ」

「そんなモンねえよ、こいつは個人保障みたいなモンだからな。保険料はポケットの中のもの全部、そうしなきゃあ『事故』が起きるぜ。血みどろの『事故』だ」

脅すような口振りに、その訪問者はヒュウ、と口笛を吹く素振りを見せた。それまで表情らしい表情を浮かべていなかった男は、ここにきてスキンヘッドのその言葉に、若干嘲るような笑いを浮かべて、言葉を返す。

「なンだ兄ちゃん、アンタ空を飛びたかったのか、それなら話が早ェ」

「なんだって?……まあいい、その場を動くんじゃねえぞ。風通しが良くなりたくなけりゃな」

訪問者の口振りに怪訝な表情を浮かべながらも、スキンヘッドは訪問者に向けて、粗雑なライフルを向ける。が、当の訪問者は嘲るような笑い顔を楽しそうなそれに変えて、一歩スキンヘッドへと近づいた。

「遠慮すンじゃねェヨ、コイツはサービスだ。気持ち良くオネンネできるぜ」

「気でも狂ってんのか?もう『事故』は起きちまうぜ……こんな風にな!」

もう一歩近づく訪問者の額へ向けて、スキンヘッドが手にしたライフルの銃口が火を吹く。鉛の弾はそのまま訪問者の額に迫り、そこに風穴を開ける……はずだった。

通気口の代わりに生まれたのは、キュン、と言うほんの小さな音。見れば訪問者の顔の前には、彼自身の右手がかざしてあり。そうしてその掌には、そこに存在すべきもの……すなわち弾痕の一つもなかった。

「……は?」

あまりに信じがたい光景に、スキンヘッドは呆然と目を見開いて。その間にも訪問者は一歩、スキンヘッドへと近づく。

「可笑しいねェ。『事故』は起きてねェよナ?せっかく保険に加入させてもらおうかと思ったンだがヨ?」

また一歩。既に眼前に迫った訪問者へ、あわててライフルを向け直そうとするスキンヘッドだが、それはあまりに遅すぎた。

訪問者が既にそのライフルに左手を伸ばし、銃口を自身から地面へと向き直させていたからだ。

「なァ、もう一度訊くがヨ。アンタ、空を飛びたかったんだろ?」

「だから何のことだ、クソ、離せよこの!」

このとき、スキンヘッドがライフルから手を離していれば、あるいはこの先の出来事は起きなかったかもしれない。だが彼はそれに気付くには想像力が足りず、そして危険を認識するのはあまりにも遅すぎた。

殺るか殺られるか(キル・オア・ビー・キルド)、か」

ちら、と訪問者が呟いたのは、その奥にある店舗と思しき看板に書かれた一文で。悠長なその言葉に反応を返す者は、その場には誰もいなかった。

「……まァ、ここには相応しい言葉かも……しれねェ、ナ!!」

そして、ライフルを奪い返そうと躍起になっているスキンヘッドの顎に迫るのは、たった今銃弾を防いだ訪問者の右掌。瞬間的に左手でライフルを引き寄せて、バランスを崩したスキンヘッドの顎に綺麗に右の掌が収まると、次の瞬間に、新たに信じがたい光景が一つ追加された。

訪問者の先の言葉通り、スキンヘッドの体が『衝撃で』空を飛び、たった今読んだ看板の隣の壁に叩きつけられる。

そうして地面に落下したとき、既にスキンヘッドから戦意は消失していた。もっとも戦意だけではなく、意識も同様に沈んでいたのだが。

「お星様を見るにゃァ、ちィと低すぎたかナ?」

悪ィね、などと冗談のように呟き、左手の中に残ったライフルをくるり、と回す。地に落ちて気を失ったスキンヘッドに近づくよう、訪問者が一歩足を踏み出すと、傍らの路地より落ち着いた声が割って入った。

「まあまあ、タイムアウトだ」

その声と共に現れたのは、トリコーンと呼ばれる三角の帽子と、色あせた赤いコートに身を包んだ……おおよそ原型が分からないほど爛れた皮膚を持つ、まるで死者のような見た目の男だった。

「あんたの腕はまるでパワー・フィストで出来てるみたいだな。驚いたよ。……だがまあ、それくらいにしておいて貰えるとこちらとしても助かるんだがな」

「あァ。いい喧嘩を大バーゲンセールだって言うからつい買っちまったがヨ。どうやら不良品だったみてェだナ」

訪問者は足を止めて三角帽に向き直ると、その男の容姿には顔色ひとつ変えずに、まるで明日の天気の話でもするかのように軽く言葉を返した。

「返品は利くさ。だが、あんたのお眼鏡に適う商品は今は品切れでね。どうしてもそいつが欲しいのなら、どこか別の店を当たってみることをお勧めするよ」

「残念だねェ、掘り出し物くらいありそうな雰囲気だったんだがナ」

訪問者は両手を開き、軽く肩をすくめておどけた態度を取る。少なくともその瞬間には、先程まで漂っていた緊張感は霧散していた。

「まァだが、わざわざ止めに入るくらいだ。アンタがここのボスと見ていいのかナ。もしそうなら、名刺くらいは頂いておきてェとこだがヨ」

「これは失礼。だが失礼ついでに名刺を切らしててね。代わりに自己紹介させてもらおうか。……俺はハンコック、このグッドネイバーの市長をやってる」

三角帽は芝居がかった礼を投げ、己の名と立場を訪問者へと告げた。その役職が意外だったのか、訪問者の表情がわずかに驚きのそれに変わる。

「ほォ、まさか市長とはナ。そこの眠り姫サマのボスかと思ってたが。まさかソイツが市役所の職員サマだなんて言わねェよナ?」

「もちろん違うさ。だが市民を守るのは市長の義務でもある。……とは言え、あんたはこれ以上彼に害を及ぼす気はなさそうだ」

「ま、終わった喧嘩を蒸し返すのもつまンねェだろ」

今日はそれで終わりだ、と言わんばかりにひらひらと手を振る訪問者。ハンコックはその言葉に内心で小さく息をつきながら、三角帽を軽く持ち上げて礼を返し、そして口を開いた。

「ところでストレンジャー。こちらは自己紹介をさせてもらったが、あんたのことも教えてもらったりは出来ないかい」

「あン?……そう言やァこっちからは名乗ってもなかったかナ。ついでに出血大サービスだ、オレの目的なんかも教えたらァナ」

ハンコックに 勿体つけた口振りで承諾の意を投げて、訪問者はそこで一度言葉を切る。そうして次に訪問者が口を開いたとき、そこから出た言葉は意外なものだった。

「オレはヴェズーヴァ、強い人だ。ノエルっつー、美人だが緊張感のねェ奴を探してンだが、アンタ知らねェか?」

 

 

 

[クエストがアップデートされました(ヴェズーヴァ):Another Stranger]

・ノエルの行方を調べる

 

[Perkを取得しました(ヴェズーヴァ):Adamantium Skeleton(RightArm) ランク3]

・右腕がダメージを受けなくなります

 

[Perkを取得しました(ヴェズーヴァ):Chakra ランク1]

・Unarmed状態でのパワーアタックで、敵を吹き飛ばすことが出来ます

・吹き飛ばす距離は(攻撃者のStrength-防御者のEndurance)×2メートルです

・吹き飛ばされた敵が障害物にぶつかった場合、パワーアタックの50%のダメージを追加で与えます

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。