また来週熊本に行くので、次の更新は遅くなりそうです。
たぶん次はうん、いよいよあの人が出るかもしれません。
武器屋の店主に教えてもらった酒場は、そのサードレールと言う名の示すとおり、古びた地下鉄の駅を改修したものであった。そうして地下という言葉に表されるように、そこは淀んだ空気が支配する場所であった。
口汚い店主、ホワイトチャペル・チャーリーにいくつかのキャップを払い、代わりにヴェズーヴァが手にしたのはウイスキーのボトルとグラスを一つずつであったが、ボトルの蓋を開けると、彼はそのまま煽るようにボトルを傾けた。
「ほゥ、あんまり期待はしてなかったが、ちゃんと酒の味してンじゃねェか」
そんな飲み方をする客が珍しかったのか、それともその揶揄するような言葉が耳に入ったのか、あるいはその両方か。店内の視線が控えめにヴェズーヴァに向けられるが、当然ながら男はそれを意に介する様子もない。
ハンコックの言葉通りに『一杯やった』ヴェズーヴァに、チャーリーは独り言のように呟いた。
「そう言やぁ、倉庫整理に莫大な金を出す匿名のクライアントがいるんだがね。三箇所、中のモノ全部。誰にも目撃されずに」
あくまで独り言の体裁で、ヴェズーヴァに視線は合わせずにチャーリーは続ける。
「報酬は200キャップ。倉庫を『掃除』すれば金がもらえる、簡単だろう?」
その『独り言』は、当然ながらヴェズーヴァの耳に届いていた。もとよりカウンターをはさんだ程度の距離であったため、すでに独り言の意味を成していなかったのであるが、その意図はヴェズーヴァにも理解の及ぶものであった。
すなわち、後ろ暗い仕事であること。おおっぴらにクライアントの名を明かせない、汚れ仕事。先の地上でのハンコックの口ぶりからすると、これがその依頼ということであろうか。
随分回りくどいことをするとヴェズーヴァは苦笑いを浮かべたが、視線はチャーリーではなく、ステージの上で歌う美女に向いている。その体裁に乗っかっているような形で、ヴェズーヴァ自身も『独り言』で返す。
「面倒な力仕事を三箇所も頼む割に、200ぽっちたァナ。それじゃあバイトもなかなか見つからねェだろ。オレがボスなら一箇所につき100、計300は出すがヨ」
「あんたほどじゃあないが、少しは経済的な援助ができると思うぜ。250だ」
独り言の応酬は、存外シンプルな形で結末を迎えることとなった。すなわち、
「まァ、いいんじゃねぇノ。そこのアイラを一杯奢ってくれりゃァ、すぐに片付くだろうヨ」
交渉はチャーリーの完敗と言う形である。
その場の客のことを慮ったのか、倉庫整理、とチャーリーが暈したその仕事は、何のことはない、ハンコックの政敵の溜まり場を一掃する、早い話が殺しの仕事であった。
そうしてその倉庫のうちの一つにヴェズーヴァが忍び込むと、その場に屯しているのはレイダーよりも幾分か良い身なりの、まさにギャングと呼ぶに相応しい者たちで。突然の闖入者にも動揺することなく、素早く各々がそれぞれの得物を構える。
だが、その銃口がヴェズーヴァを捉えるより、彼が動き出す方が速かった。
彼に向けられた銃口のうち、最も近い物まで約3メートル。一瞬だけ屈むように身を低くした彼は、次の瞬間まさにその銃口の直前に現れていた。
「―――え?」
まるで電光のようなその動きに、ギャングは目を瞬かせて呆けたような表情を浮かべる。そうしてその一瞬の間は、『もう一人のギャングの』命取りとなった。
「ッヘ、遅ェヨ」
目の前のギャングにしか聞こえないほど小さな声。同時にヴェズーヴァはギャングの銃を持った腕を取り、離れた位置に居たもう一人のギャングにその腕を向けて、ほんの少し圧迫するように力を入れる。
瞬間、ギャングの意思を離れて指が丸まり、結果的に引かれた引き金が離れたギャングに向けて鉛の弾を放つ。弾丸は吸い込まれるようにギャングの額に向かい、身に着けていた帽子とともに小さな穴を空けた。
「っ、この―――!!」
階段を降りてきた三人目のギャングが手にしていたのは、サブマシンガン。腕を取ったまま無防備に背中を晒すヴェズーヴァに銃口を向けて、その体を蜂の巣にせんとトリガーを引くと、複数の乾いた破裂音と共に、鉛の雨が彼の体を引き裂く……はずだった。
だが、鉛の雨が向かう先にいたのはヴェズーヴァではなく。その腕を掴まれた最初のギャングであった。腕を掴んだままサブマシンガンの男に振り返ることで、最初のギャングを盾にしていたのだ。
「がっ―――あ」
熱いシャワーを体中に浴びたそのギャングは、小さな呻き声を残して力を失う。それを見たもう一人のギャングは、既に起きてしまった結果ではあるが狼狽して、トリガーから指を離してしまった。
そうしてそれは、その男の不運でもあった。
「ほらヨ、プレゼントだッ!」
盾として使ったギャングを、サブマシンガンのギャングへ向けて蹴り飛ばす。弾丸には劣るが、結構な勢いで迫るギャングだったものを、まだ生きているギャングは避けきれずに受け止めるような形になった。当然、ヴェズーヴァの側を向いていた銃口も、あらぬ方向を向くこととなる。
「寂しくなるねェ」
皮肉たっぷりの別れの言葉と共に身を落としたヴェズーヴァは、再びギャングの眼前に迫っていた。それは手品でも魔術でもなんでもない脚力が生み出すただの跳躍であるが、目にしたものにはとてもそうは見えず、『瞬きしたら男が目の前に居た』というようにしか思えない事象であった。
予想された速さ以上のものに反応が間に合わず、ギャングは再びヴェズーヴァにサブマシンガンを向けようとするも、それは男の顔面に向けられた掌で遮られることとなった。
「悲しいねェ、寂しくなるねェ。これでお別れなんて、ヨ」
「くそっ……離せ、この野郎!!」
ヴェズーヴァはかぶせた手で男の頭部を掴み、階段に向き直る。男はその手を振り払おうともがいていたが、彼の握力は尋常ではなく、それは意味を為さぬ抵抗であった。あるいはサブマシンガンで振り払うこともできたのかもしれないが、そこに考えが至らなかったのは、男が大いに動揺していた所為であろうか。
そしてそれは、死神の鎌が振り下ろされるには十分すぎるほどの時間であった。
「Good night」
ヴェズーヴァは短く呟くと、ギャングの足を軽く払うように引っ掛けた。バランスを崩しよろめいたところを、掴んだ頭を押し付けるようなような形で力を込めれば、自然、男はその場に倒れることになる。『階段に後頭部を叩き付けられる形』で。
ゴ、と無慈悲な音が響き、ギャングの意識はそこで途絶えた。それに一瞬遅れて、グシャ、というなにかが潰れるような音。
終わってみれば、最初に扉を開けてから一分も経たぬうちの出来事で。武装した男三人を素手で屠り、かつ傷一つ負っていないというワンサイドゲームであった。
「……うェ、暫くメシは軽いモンにすっか」
片付けるどころか、色々な物を盛大にぶちまけたヴェズーヴァは、自分で生み出した眼前の光景に、やれやれ、と頭を掻いた。無論、血に汚れていない左の手で。
残る二箇所でもあっさりゴールを奪い、ハットトリックを決めたヴェズーヴァはサードレールに戻り、再びチャーリーの前で酒を飲んでいた。報酬の250キャップとアイラウイスキーをきっちりと頂いた上で。
「そう言えばクライアントから、倉庫が片付いたら一つ教えてやってくれって頼まれたことがあったんだが」
思い出したかのように切り出すチャーリーの言葉に、ヴェズーヴァは変わらず視線はステージの上の美女に向いたまま、耳だけを傾ける。
「誰かの探してる正義のヒーローだが、そいつが現れそうな場所をクライアントが見つけたみたいだぜ」
言いながらチャーリーがカウンターに置いてあったラジオをつけると、まるでドラマのような銃声、悲鳴などのやり取りの後に、ノイズの混じった聞き取りにくい男の声がその場に響いた。
『シュラウド、生きたお友達に会いたければ、ミルトン・ジェネラル病院へ来い』
そうしてそのメッセージを最後に、再び銃声から悲鳴の流れに戻る。きっちり2周目を流した後、チャーリーはラジオを止めた。
「正義のヒーローを探してるんなら、そいつにとっちゃあ、これ以上のチャンスはないんじゃねぇか?」
「そうかもしれねェナ」
ヴェズーヴァはチャーリーの言葉に興味なさげな素振りの返事を返しつつも、グラスの中の酒を一気に喉奥へ流し込み、席を立った。
「また来らァ。次はジャパニーズを飲みにヨ」
「あるわけねぇだろ。ま、グルメのあんたに飽きられねぇよう、精々何か仕入れておくさ」
[クエストがアップデートされました(ヴェズーヴァ):Another Stranger]
・ミルトン・ジェネラル病院でシルバー・シュラウドを探す
[Perkを取得しました(ヴェズーヴァ):Party Boy ランク4]
・アルコール中毒になりません
・アルコールの効果が倍になります
・アルコールの影響下でLuckが3増加します
・アルコールのIntelligence減少効果を無効にします
・2本まで重ねてアルコールの効果を受けることができます
・アルコールの影響下での会話中、特殊な選択肢が出ることがあります
[Perkを取得しました(ヴェズーヴァ):Blitz(Non-V.A.T.S.) ランク2]
・APを使用することで、Agility分のメートルの距離を瞬時に移動することができます
・直後に出した近接攻撃のダメージが50%増加します