私がこのクエスト結構好きなせいで、どこに落ち着かせようか結末が二転三転して
そのせいで時間がかかってしまいました。
かつまだクエスト終わってないって言うね。
あと一話だけつづくんじゃ()
「行きましょうか。少なくともまだ一人は救えるかもしれないから」
コズワースは首肯するようにボディを上下に揺らし、しかしすぐには同意の言葉を返さなかった。やや間を置いた後に、疑問の言葉をつけてノエルに投げる。
「承知いたしました……が、ノエル様。失礼を承知でお訊きしますが、Dr.クロッカーを『救う』とは、一体どのような形ででしょうか?」
まさかノエルに限って、死は救いなどという短絡的な手腕は取ることはないだろうと、コズワースは予測している。しかし、どう救うつもりなのか、全く見えてこないのも事実だ。
「少なくとも、罪は罪よね。それは裁かれないといけない。でもその罪を裁くのは、アタシ達じゃなくて、街のセキュリティの人たちになるわね」
アールの家から踵を返し、ダイヤモンド・シティ唯一の診療所まで、道は決して長くない。その長くない道を歩きながら、傍らのコズワースに話を続ける。
「あるいはその結果によっては、アタシのやることは全く無駄に終わるかもしれないけど。……けど、彼は少なくとも、人の役に立ちたいって気持ちを忘れているわけじゃない」
雑踏を歩くノエルの足音と、控えめに灯るコズワースのブースターの音のみが支配するその路地で、さらにノエルは続けた。
「戦前の司法に似たものが、この街に生きてたらいいんだけどね。彼がきちんと罪を認識して、償ってくれるように説得してみるつもりよ」
「…………なるほど。あなた様らしい考えですね、ノエル様」
そう言ってコズワースがノエルに向けたセンサーアイは、そのシャッターをかなり絞られたものだった。まるで笑みでも浮かべているかのように。
「ありがと。無事成功したら祝杯あげましょ」
冗談めいた言葉にコズワースが反応する前に、二人は診療所の前にたどり着いた。中では白衣を着た不機嫌そうな表情の男が一人、念入りに医療器具の手入れを行っている。
その者こそが件の人物、Dr.クロッカー『ではなく』。
「ねえ、Dr.スーン。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、今大丈夫?」
ノエルの声に男―――Dr.スーンは手を止め、一度視線を向けると、小さくため息をついた。
「何かね、私は忙しいんだ。見たところ君は健康そうだが、医者が相手でないと駄目な話か?」
「医者がっていうか、医者と面識のある人じゃないとダメなのよ。Dr.クロッカーを探してるんだけど、どこにいるか知らないかしら?」
その問いを聞いたDr.スーンは、もう一度改めてノエルの顔を見た。しばしの沈黙のあと、わずかな戸惑いを覚えたような表情で、言葉を返す。
「ここ数日くらいは姿を見ていないな。……しかし、君にはDr.クロッカーの『施術』は必要なさそうに見えるが?」
それは彼なりの、ノエルの容姿に対する評価だったのだろう。言外の意を汲み取ったのか、ノエルは気恥ずかしげに頬を掻いた。
「あ、うん、ありがと。―――いや、アタシが手術を受けるわけじゃないんだけどね。アール・スターリングの失踪事件について調べてるんだけど」
「ああ……噂は聞いている。しかし、彼の失踪とDr.クロッカーに何の関係があると?」
訝しげな表情で問い返すDr.スーンに、ノエルはPip-Boyから例のレシートを取り出し、Dr.スーンに差し出した。それを一通り眺めた彼は、ふむ、と一息ついたあとに、切り出す。
「ああ、この汚い筆跡はDr.クロッカーのものに間違いないな。―――アール・スターリングはどうやら彼の施術を受ける予定だったようだ」
Dr.スーンはそこで一度言葉を切り、しかし、と続ける。
「リスクの低い美容手術だが、Dr.クロッカーは施術を行ってはいないな。アールは支払いをする前に姿を消したそうだからな」
その言葉に反応したのは、ノエルではなく、傍らにいたコズワースであった。
「お金の問題は重要ですからね。……ところで、貴方様は先程、ここ数日Dr.クロッカーの姿を見ていない、と仰いましたが、最後にその姿を見かけたのはいつ頃でしたか?」
ノエルの問いのフォローになる形で投げられたそれに、Dr.スーンはやや面食らいながら答えた。
「―――凄いな、まるで探偵みたいな口ぶりだ。……正確には覚えていないが、1週間は経っていなかったと思う。彼の仕事場から何かを持ち出していたようだったよ。針を洗うか備品を動かす必要があったか、その辺りは定かではないが」
恐れ入ります、と、コズワース。
Dr.スーンの出したその答えは、ノエルの見てきた『結果』とほぼ同じもので。それは即ち、この後にノエルの経験したことが待ち受けている、ということであった。
ノエルは小さく、重く息を吐いて、Dr.スーンに告げた。
「……地下室に行く必要があるわ、先生」
そしてその言葉がDr.スーンに与える影響も、『結果』に同じで。ノエルに返された言葉は、苛立ちを覚えたようなもので。
「何だと?ここをどこだと思っているんだ、公共トイレか?いいや、答えなくていい。一体全体どうして私がそんな許可を与えなければならない?」
ノエルは、そんなDr.スーンから視線をそらさず、真っ直ぐに見据えて。
「あなたの仕事場だからね、Dr.スーン。部外者に荒らされたくないのも分かるわ。……けど、アタシたちも行方不明者を探しているの、ドクター。器具には触れないし、多くを入れたくないのであれば、アタシだけでもいいから、お願い」
「ノエル様、―――それは」
言いかけるコズワースを手で制し、ノエルはDr.スーンに向けて頭を下げた。それに面食らったのは、当のDr.スーン自身であり。しばしの沈黙の後に、ゆっくりとその頭に向けて、言葉を落とす。
「……医療とは違うアプローチではあるが、君も、誰かの役に立とうとしているのか」
大きなため息をひとつついて、Dr.スーンは己の白衣の内側に手を入れた。小さな音と共に再び現れた手には、細い紐に結ばれた鍵がひとつ。
「それで気が済むのなら、見てくるといい。ただし、君の言ったとおり、入るのは君一人だけだ。―――それに、ひとつでも道具が動かされていれば、請求書を送りつけるぞ」
「―――ありがとう、Dr.スーン。約束は守るわ」
Dr.スーンの言葉に笑顔で頷き、ノエルは地下手術室の鍵を開いた。そうして地下へと降りる直前、その視線をコズワースへ向け、彼の危惧を払拭するかのようにウインクをひとつ投げて。
「じゃ、後でねコズワース」
言葉と共にノエルの姿は、地下の扉の奥へと消えた。
「ああ……アール。本当に、本当に君は厄介な患者だったな」
地下へと降り立ったノエルを出迎えたのは、むせ返るような血の臭いと、低く、静かな男の声だった。
「だがもう終わりだよ。小さな間違いが、ようやく……正される」
それは紛れもなく、ノエルの知っているDr.クロッカーの声そのもので。そしてその状況は、『惨劇』が既に起こってしまったことを告げていた。
ノエルの位置からでは手術台の陰になってはっきりとは見えないが、おそらくアールもそこに『いる』のだろう。それを悟った彼女は、足音を隠さず、それどころか暗がりの人影に向けて、声をかけた。
「……Dr.クロッカー」
それは静かな一言だったが、他に物音のないその場所では、空耳と疑いようもなく。暗がりの人影が、ノエルの側を向く。
「ああ、悪い子だ!ここに降りて来なければよかったのに!」
変わった眼鏡をかけた白衣の男が、粗雑な拳銃を構えてノエルに向けた。そしてその人物こそが、ノエルの捜し求めていた人物、Dr.クロッカーであり。
「だが大丈夫だ、治してやる。なんだって治せるんだ」
ノエルに向いている銃口は震えていて、それを使うのに慣れていない様子であった。もちろん、彼は医者なのだから、人の命を奪う為の道具など、使い慣れないのも当然なのであるが。
「落ち着きなさい、Dr.クロッカー。アタシはキミと殺し合いをする為に、ここに来たんじゃないの」
錯乱した様子のDr.クロッカーに向けて、ノエルは諭すように話しかけた。
「聞かせて、ドクター。アール・スターリングとキミの間に、何があったの?」
本人から聞くまでもなく、ノエルはその事実を知っている。だが、それでもノエルがあえて話させようとしたのは、彼、Dr.クロッカーを落ち着かせる目的で。
「何があったかって?何もしてない!幸せになりたくなかったのはアールの方だ!」
ノエルの問いに対し、Dr.クロッカーは声を荒げ始めた。
「私の良い患者は素敵な、新しい顔を手に入れる!悪い患者は床じゅうに血を撒き散らして、私の外科医生命を台無しにする!」
「……アールの手術が上手くいかなかった、ということ?」
「違う!簡単な手術だったんだ、私が失敗するなんてありえない!」
ノエルの問いに、Dr.クロッカーは頭を振って即答した。
「手術の前にジェットを少しだけやったはずだ。いつもそうしている。気付いた頃にはみんな喜んでいるんだ」
少しずつ声のトーンを落としながら、Dr.クロッカーは自分の記憶を思い出すように、言葉を紡いでいく。
「だが……アールはそうじゃなかった。喜びも、悲しみもしない!血まみれでそこにいたんだ!」
「―――Dr.クロッカー」
割って入ったノエルの呼びかけは、錯乱したDr.クロッカー本人すらも、言葉を止めるほどに、 ただ静かで。
「……キミの友達から、キミへの荷物と、伝言を預かってるわ」
それは、目の前の男を救うための、
[クエストがアップデートされました(ノエル):The Disappearing Act-Retake]
・[完了]Dr.クロッカーと話をする
・アール・スターリングの事件を解決する
・(オプション)Dr.クロッカーを改心させる