「俺はプレストン・ガービー。コモンウェルス・ミニッツメンだ」
ガービー。男の口から出たその名前は、コズワースと出会う前にノエルが口にした名前と同じものであった。それは本来ならば主人公たるノーラが助けるはずの人間なのだが、ノーラ本人の気まぐれなのかそうはならず、今こうしてノエルに自己紹介をしている。
「アタシはノエル、ただの通りすがりよ。で、こっちはコズワース。訳あってね、ちょっと人を探してるの」
「お初にお目にかかります、プレストン様」
恭しく会釈するコズワースに若干面食らいながらも、二人へと会釈を返すガービー。
「あ、ああ、よろしく頼む。……しかし人探しか、本当ならぜひとも君の手助けをしてやりたいんだが」
ご覧の通りここは少々混乱状態でね、と、肩をすくめるガービー。その言葉にノエルは頷き、ガービーへと同調の言葉を返す。
「そりゃそうよね。実質戦えるの、今はキミだけみたいじゃない。それであの数のレイダー相手なんだし、仕方ないわよ」
「そうだな、一ヶ月前は仲間が二十人いた。昨日は八人で、今じゃ五人だ」
ガービーの他には、先程からずっとターミナルと格闘している男と、若い男女二人。それに老婆が一人で、合計5人。まったく頼りにならなくて申し訳ない、と謝罪を口にするガービーに、ノエルは首を横に振った。
「気にしないで。アタシの故郷の諺なんだけど、 袖振り合うも多少のエールって言う言葉があってね。手伝うわよ、あいつらの撃退」
どことなく子細のおかしい言葉であったが、それはガービーにとっては願ってもない言葉だったのだろう。驚きに目を見張りながらも、ガービーが口を開く。
「それは……有難い申し出だが、いいのか?ノエル、あんたにメリットなんて全くないことだぞ」
「デメリットはあるわよ、ガービー。ここでほったらかしなんかにしたら、寝覚めが悪いじゃない」
あっさりと言ってのけるノエルを目にしたガービーは一度深く息を吸い込み、それをゆっくりと吐いた。
「―――有難う。本当に気にかけてくれる人との出会いに、感謝しよう」
「お言葉ですがプレストン様、安心なさるのはまだ早いのではないでしょうか。状況は落ち着いておりますが、外のレイダーもそう長くは待ってはいないのではないかと」
コズワースはガービーに、何かいいアイディアはないのか、と言外に問いかけている。それを察したガービーは小さく頷いて、こう切り出した。
「一ついい考えがある。スタージェス、教えてやってくれ」
ガービーの言葉に反応したのは、傍らでターミナルと格闘していた男だった。その手を止めて、ノエルたちの側に向き直る。
「屋上に墜落したベルチバードがある。昔ながらの戦前のやつだ。それの乗客がかなり楽しい代物を置いて行ったようでね」
この勿体つけたような口調は、彼、スタージェスの普段の口振りなのだろう。そのまま淀みなく話を続ける。
「チェリーT-45パワーアーマー、軍の支給品だ。それにそのベルチバードにはミニガンが載っていてな、それらさえあればレイダーたちに地獄までの特急券をやれる」
それはゲームでノエルが辿ってきた道なので、当然、それがその場に存在するのはノエルも知っていることである。言葉を返さずにいると、その代わりに問いを投げたのはコズワースであった。
「それだけ完璧な案があるのに実行していないと言うのは、理解に苦しむことですね。何か障害でも?」
「そんなに丸いのに、なかなか鋭いな、コズワース……だったか?そう、そいつには一つ問題があってね」
スタージェスの若干の皮肉げな口調にも、コズワースはセンサーの色を変えることはなかった。だがその代わりに、スタージェスの言葉に反応を返したのはノエルである。
「勿体つけずに教えなさいよ。コズワースにお茶目なジョーク言っていいのは、アタシだけなんだから」
「承諾した覚えはありませんよ、ノエル様?」
目の前の一人と一体のやり取りがツボにでも入ったのか、スタージェスは小さく笑みを浮かべる。分かった分かった、とノエルの言葉に同意を返して、スタージェスは続けた。
「スーツに燃料がないんだ。恐らく100年は空っぽのままだ」
全く難儀なもんだ、とため息をつくスタージェスに向けて、やおらノエルは胸を張った。主張したかった部分はほぼ平坦であったが、代わりに頭の後ろでポニーテールの赤毛が揺れる。
「ふふん、それならもう解決ね、スタージェス。必要なのはこれでしょ、これ」
ノエルがPip-Boyに触れて、そこから取り出したのは。鍵のかかった扉の奥で手に入れたフュージョン・コア。これこそが、スタージェスの言う燃料であった。驚きの表情を浮かべたのはスタージェスだけでなく、ガービーも。そうしてコズワースもセンサーアイを見開いていた。
「いつの間にそんな物をお持ちになっていたのですか、ノエル様」
「さっきの野暮用よ。なんとなく必要になるんじゃないかなと思って」
コロコロと手の中でフュージョン・コアを転がすノエル。それを見たスタージェスとガービーは、驚きの表情からしてやったりと言わんばかりの笑みに変わっていく。
「グレイトだお嬢ちゃん!これで奴等にアツアツのシャワーを浴びせてやれる!」
「あは、いいわねそれ、面白そう。でも、それをやるのはアタシじゃないわね」
そう言ってノエルは手の中で転がしていたフュージョン・コアを、ガービーへと軽く放り投げた。そのノエルの思わぬ行動に動揺したのか、危うくコアを取り落としそうになるガービー。
「……何だって?どういうつもりなんだ、ノエル?」
「理由は二つあるわ、ガービー」
訝しげな目でノエルを見つめるガービーに、彼女は一つずつ指を立てて、諭すように話し始めた。
「まず一つ。アタシはパワーアーマーの使い方がよくわからないこと。そして、それをアタシに説明する時間はない」
至極単純な理由である。ゲームの中ではパワーアーマーの乗り込み方などは細かく描かれていても、細かい機能の使い方などは、当然ながらゲームなので解説などされない。もちろん同じ理由で、ターミナルのハッキングもノエルには理解できない。
Pip-Boyの使用法が理解できたのは、操作している姿がゲーム中で細かく描かれていたからだ。
「そしてもう一つは、アタシはミニッツメンじゃないこと」
ノエルの言葉の意味を理解できなかったガービーが、小さく首を傾げる。その様子を見て、ノエルは続けた。
「アタシは市民を守るヒーローじゃない。もちろん手助けはするけど、アタシが彼らを救うんじゃないの」
ノエルの言葉の真意に気付き始めたのか、その場の全員が沈黙する。
「本当にヒーローにならなきゃいけないのはアタシじゃなくて、ミニッツメンのプレストン・ガービーよ」
「…………ククッ」
短い沈黙の後に生まれたのは、ガービーの口から漏れる、噛み殺したような笑みだった。そうしてそれは少しずつ大きくなって、ついには抑えることもなくなっていた。
「ククッ、フフ、ハハハ―――そうか、そうだな、ノエル。……あんたが思い出させてくれなかったら、俺はその誇りを忘れたままだったかもしれない」
手の中のフュージョン・コアを、ガービーは強く握り締めた。ガービーは真っ直ぐにノエルを見据えて、そして大きく頷いて。
「やるぞ。奴等にひと泡吹かせてやろう」
そう宣言して屋上へと向かうガービーに、先程までの弱気な姿はもう見られなかった。
[クエストがアップデートされました:When Freedom Calls]
・[完了]外のレイダーを撃退する手段を探す
・[完了]プレストン・ガービーにパワーアーマーを渡す(オプション)
・博物館の外のレイダーを撃退する
[Perkがロックされました:Hacker]
・Noviceを含め、ターミナルのハッキングが出来ません
・何らかの手段でパスワードを得たターミナルにはアクセスが可能です
[Perkがロックされました:Power Armor Training]
・パワーアーマーを使用することが出来ません
・パワーアーマーの使用に長けた人物に教えを請うことにより、使用可能になります