だがこの戦艦、“彼ら”は無理やり造られたものであった。だが“彼ら”は生きるために作った者に服従を誓う。
だがその中で“彼”は、それができずにその中から逃げ出した。“彼ら”は強い困惑を覚えたが、“彼”は自分が生きたい世界のために生きた。
これは、そんな“彼”の物語。
1945年、そこの海域で2隻による激戦が行われた。
1隻は日本の誇る超弩級戦艦『大和』に酷似していたが、3つある主砲は4連装となっており、その機体の前方に艦体を前方から見て左右2つのイルカ等のひれとと間違えるほどの刃が黄金色の大型回転式カッターを備え付けられている。
そして一番異質なのは、船体の艦首には船体の全高のはあるのではないかと思われるほどの直径を誇る、大型の掘削器具である黄金色の
そしてもう1隻はアメリカの国旗が掲げられたイギリスのネルソン級に似たシルエットの船体で基本色は灰色で艦底色はグリーンと少し特殊だが、それ以上に特殊なのは3つの3連装の主砲ががすべて艦首側に集中しており、そして艦首には大型のドリルが3つも備え付けられていた。
そしてこの超超弩級戦艦2隻は、相討ちの末轟沈した。轟沈した2隻の戦艦の名は海底軍艦『リバティ』。そして海底軍艦であり大和型四番艦でもある『
両艦の最期はとても壮絶なものであり、お互い艦首に搭載されている大型ドリルの正面激突によりお互いの船体が大きく裂け、火薬類が誘爆するなどにより船内に海水が浸水してから轟沈した。
この戦いはお互いの国同士がなかったことにするなどと強い隠ぺい工作が行われ、資料もすべて焼却するなどを行って徹底隠滅を行われた。
だが当時羅號の副艦長であった影山貢は、資料をコピーしたものをすでに手にしており、そして2代目羅號を建造しようと誰もそう簡単に踏み入らない地にドックを設立し、艦を建造し始めた。
だがしかし、19XX年。突如海に現れた黒い人型の怪物が次々と商船などに襲い掛かり、そして世界は水路、空路が寸断されて日本は半ば鎖国状態へと追いやられた。
人々はこれは深海棲艦と呼び、それに対抗すべく人類は主に第2次世界大戦の軍艦を人の形にした兵器、通称『艦娘』を開発、そして深海棲艦に対抗すべく戦いを始めた。
両社一進一退の攻防が続いており、両者一歩も譲らないものとなっている。
そしてついには姫や鬼などといった深海棲艦が現れ、人類も新たな艦娘を開発、建造することによってその勢力を盛り返すなどを行っている。
この艦娘と深海棲艦の戦いは2000年代に突入しても未だ終わらず、ただ戦火は激しくなっていくばかりであった……。
まあそれは置いといて、ここは地球最南端である南極。現在ここは深海棲艦が未だ現れておらぬ地で、外は常に猛吹雪となり、ある日は太陽が1日も沈まないこの極寒の大地に似合わぬ、黒塗りの要塞ともいえる建物があった。
そう、あったのだ。今はあちこちから火が上がり、時折爆発音が鳴り響く。施設の中は警報音が鳴り響き、そして爆発による炎が走ることによって内部を大きく焼いていた。
その中のまだ安全なブロックでは、ぼさぼさの黒髪の『所長』というプレートが無なものにつけられた男が側近と思われる軍人に詰め寄っていた。
「何が起きた!」
「羅號が勝手に起動、そして脱走しようとしています!」
「何!?現在奴はどこにいる!」
「地下ドックです!」
「くそっ!早くやつを捕まえろ!モンナタ、インビィンシブル、ガスコーニュはどうした!」
「ガスコーニュは落ちてきた瓦礫により大破!他は現在いまだ起動しておらず……いや、所長!リバティが出せます!」
「よし、ならば奴を出撃させろ!」
「はっ!」
そういって施設の軍と思われる人間はこの部屋から急ぎ足で出ていく。そして残った所長は外が見えるガラスから外を覗き込んだ。
「くそっ!影山から奪ったこの情報で作り上げた最高傑作なんだぞ!」
そういって所長はガラスを強く殴りつけたのだった。
その施設の地下、そこには艦娘用カタパルトが備え付けられており、そこに1隻の艦娘がいた。いや、艦娘にしてはおかしい。
髪の毛は黒くて後ろの方で1つに束ねられており、顔つきはスッとしてから雄々しくも凛々しい。だがその目つきはとても鋭く、少し濁ってるようでもあった。
そして服装だが、その船は上半身は何も来ていないのだ。女性特有の乳房もなく、そのがっしりとした男特有の筋肉を纏った何も着てない上半身に、下半身は黒と赤の道着のようなものを着ており、そして靴は艦娘などが使う艤装となっている。
そしてもう一つの特徴は彼女……いや、彼か。彼が使っている艤装だ。
だいたいは艦娘の大和や武蔵に似た艤装だが、まず側面には多くの副砲や高射砲などといった武装があるせいでハリネズミのようにみえ、その艦底側面部は刃が大きく出てる大型の回転カッターが出ている。そして一番異質なのは彼が両手で握っている大型の
彼の名は『羅號』。この基地で極秘裏に開発された大和型四番艦もとい、海底軍艦である。
「……羅號、出る」
そう言って羅號は、己の右舷左舷に付いている46センチ4連装砲を、目の前にある鋼鉄の壁めがけて弾を放った。するとどうだ。隔壁に着弾、そして爆発を起こした後に大量の海水が流れ込んできたのだ。
これではこの艦息は水没してしまうが、彼はそれで焦る様子は一切見せず、ぼそりと呟きを見せた。
「……射出」
すると艤装につけられていた錨が吹き飛ばされるかのように前に放たれ、そしてカタパルトの床にがっしりと刺さるかのように食い込む。そして海水がカタパルトがあるドック内にどんどん浸水し、10分もしないうちに気圧がしっかりと保たれているところ以外は水没した。
その中で羅號は水流にのまれても流されることなくその場にとどまり続け、そして水流の動きが大人しくなった頃に羅號は射出したロケットアンカーをカタパルトの床を引き千切るかのようにして引っ張って回収する。そして羅號は水圧によって無理ありこじ開けられた隔壁へと向かい、そして力づくでそのあいた穴から外に抜け出した。
その後は羅針盤に従って北を目指し始めた羅號。現在水中を突き進んでおり、上空からは流氷が空中からの探索を阻害してくれている。おかげで今のところ順調に北へと進んでおり、羅號は逃げ切れると一安心していた。
その時だ、いきなり何かの攻撃により流氷が砕かれ、そのまま弾が羅號めがけて飛んできたのだ。
「うぉ!?」
羅號はそれをぎりぎりのところで躱し、上を見上げる。そこはまだ氷によって何も見えず、レーダーに何も反応がない。おまけにこちらも音や反応を最小にして動いてるため、どうやって気づかれたかとても知りたいぐらいである。
この時羅號は1つだけとある仮定が思い浮かんだ。戦艦クラスの威力の砲弾に、上空から狙い打てるだけの高度。これでできるのは自分と同じ奴だけだと。
そして羅號はドリルを起動し、上に張られている氷に向けて突撃する。そして厚さ2mもある氷をいともたやすく貫いた先にいたのは、1隻の海底軍艦であった。
「やっと中から出てきたか、羅號」
「リバティ……!」
上空にいたのは羅號みたいに艤装を纏う男、艦息であった。蒼い瞳を持つ英国系みたいな顔つきに金髪のショートの髪を持ち、服装は黒のスーツを基調にした服装となっている。
そして艤装だが、装甲色は基本的に灰色で艦底色がグリーンの2色となっていて、両肩に3連装41センチ砲を2つ積んでおり、左前腕部にもう1つ3連装41センチ砲を装備している。そして背中には灰色の艦橋やエンジンといった部分が取り付けられており、そして椀部に両手で持っている艤装にはドリルが3つ装備されていた。
リバティはそのきれいな顔を歪めながら笑みを作り出し、全砲門を羅號に向けている。羅號はその中砲門をどれもリバティに向けておらず、少し眉間にしわが寄ってる。
「我らが羅級万能戦艦の中から脱走者が出るとはな」
「リバティ、そこをどいてくれないか?じゃないとこのドリルで貴様に風穴開けるぞ?」
「いやだと言ったらどうする?」
「そうか……、なら沈め!」
そして羅號は46センチ4連装砲を1つだけリバティに向けて4発同時に放つ。
「ふん!貴様のような失敗作を倒すのは造作でもない!」
リバティは電磁シールドを張り、砲弾を受け流すとともにドリルを起動させる。3つもあるドリルが奏でる回転音はまるで悪魔の悲鳴のようであり、羅號は少し顔をしかめると同時にこちらは全砲門をリバティに向けた。
「「全砲門、撃てぇ!」」
そしてお互いの砲門が火を噴いた。
そのとき彼は目を覚ました。
「っ、あぁ……夢、か……」
顔全体に浮かんでいる冷や汗がとても気持ち悪い。彼が視界を横に向けると、そこにあるのは自分が基本的にいる執務室で、彼は仕事の途中休憩のためソファーで横になっていたのだ。
この男の名は
「提督、お目覚めですか?」
そのとき提督の視界に1人の女性の顔が映る。栗色のポニーテールにした髪を電探の形をした髪留めで留めており、首には菊花紋を付けた女性が身に付けるものにしてはごつい首輪をつけている。まあ大体は彼女が持つ巨乳によって阻まれて見えないが、彼女の顔はのぞき込むかのように彼の顔の方に向けられており、そのきれいな茶色の瞳を持つ目と合い、彼女は微笑みを浮かべる。
彼女の名は大和。超弩級戦艦大和型の1番艦であり、現在提督の秘書艦を務めている。
「あぁ、大和か。起こしに来てくれたのか」
「えぇ、提督のご命令通りに」
「そうか……ってなんで俺、膝枕されてるんだ?」
この時彼は大和に膝枕されていることに強い疑問を抱く。仮眠する前は執務室においてあるソファーに横になっていたはずなのだが、気づかば大和が膝枕をしつつ、提督の頭をやさしくなでていたのだ。
「いつものことでしょ?それに昨日は私との日替わり秘書艦である武蔵がしてましたし」
「まあ、それもそうか……。ただ……」
「どうかされましたか?」
この時首をかしげる大和を見た鬼一提督は小さく笑みを浮かべ、彼女の頬に手を伸ばす。
「……いや、何でもない。さて、仕事に戻るかな」
そう言って提督は体を起こしてソファーから降り立ち、背伸びをして首を動かす。それで骨がポキポキと鳴ったが、彼はそんなのを気にせずに席に戻ろうとした。
そのときである。いきなり執務室の扉が開き、そこから入ってきたのは茶髪に巫女服を改造したかと思われるような服装の女性が入り込んできた。彼女の名は金剛。金剛型高速戦艦の1番艦である。
金剛は少し困ってる表情を見せており、そのまま提督の前に立って要件を述べた。
「提督ー、レギオンが暇だから遊べってうるさいデース!」
「はぁ?いや、駆逐艦たちと遊んでるから大丈夫のはず……、まあわかった。それなら武蔵に相手してもらうように伝えといてくれ。それで無理ならもう一度俺のところに来い」
「了解ネー」
そういって金剛は執務室を出ていく。この時提督は小さくため息を漏らして書類整理等に戻る。
「こうなるの分かっていたのは提督ですよ?いくら駆逐艦たちが飼いたいって言ってたからって……」
大和のその言葉に苦笑いを浮かべ、肩をすくめる提督。さすがに大和もこれは予想はしていたのか、小さくため息を漏らす。
「さすがにここまで戦い好きなのは予想外だったがな。まあ、年に何回かある大規模作戦の時に手伝ってもらってるから、こっちも助かってるけどな」
「ですね。それで提督も最前線に立ったりしてますけど」
「別にいいだろ、ちゃんと帰還してるんだから」
そのとき大和が提督の前に立ち、顔を彼の顔の近くまで近づける。眉毛の形からして怒ってる表情であり、彼もさすがの焦りを隠せずにいた。
「だめです!そもそも提督が最前線に立つなんて例、聞いたことありませんよ!いくら体が頑丈だからって、相手の砲弾を顔面で止めるなんてこっちが心配するんですからね!」
「わ、わかってる。今度はそんな無茶しないからさ……」
「本当ですか?」
「本当だって……」
大和はジト目で提督を見つめており、彼はそれで焦りの表情を見せる。だがどちらとなく笑いが出てしまい、そのまま笑いあった。
その時だ、再び執務室が開き、そこに入ってきたのは金剛であった。彼女は先ほどより落ち込み気味の表情であり、なんとなく察した2人は小さく肩を落とす。
「提督ー、やっぱり駄目ネー」
それを聞いた提督はため息を漏らして頭をバリバリと掻く。
「ったく、わかったわかった。大和、書類の整理頼んだ」
「わかりました。提督もお気をつけて」
そして提督が執務室から出ていき、その後10分ほど経っただろうか。いきなりの轟音が何回も鳴り響き、砂埃が窓にたたきつけられる。
「キュゥゥォォオオオオン!!!!」
「おら!レギオン!おとなしく……って、マイクロ波シェルぶっ放すな!俺じゃなかったら死んでるじゃねえか!」
そんな声や轟音等が響く中、大和は書類整理しながらクスクスと笑っていたのだった。
ここは奇岩島泊地。他の鎮守府や泊地とは一味違った、少し不思議なところである……。
奇岩島泊地:小笠原諸島にあるそこそこ大きな島、奇岩島にある泊地。過去に鎮守府として建設していたため、泊地にしては設備が豪華である。
秋には空いっぱいにトンボが飛び続け、1年にわかって温暖な気候に恵まれている。噂ではどこかに水色と白の縞模様の大きな卵があるらしい。
なお閑職泊地と呼ばれる原因は大規模作戦で過去何回も激戦地になっていて、そのときに提督が高確率で殉職することからそう呼ばれるようになった。
というわけで2-4突破記念に途中まで書いてたのを仕上げた艦これ×新海底軍艦の作品です。前にOVA版新海底軍艦を見たときに思いついたため書いたのですが……まあ、頑張りました。
では感想等どしどし待ってます。
なお作者の好きな艦娘は大和と武蔵です。(まあ大型建造を1回もしたことないし、資材がまず足りないからどうしようにもできないけど)