二人のプレイヤーが座した位置からカードを眺めた。一人はパワーとタフネスを見た、一人は能力を見た。


モミール・ベーシック編です。モミール・ベーシックが分からないであろう人のためにも少し説明を入れています。

実際にネット上にある、モミール・ベーシック用スクリプトを使用したリプレイのようなモノです。スクリプトが対応しているフォーマットはどうやらSOMブロック半ばあたりまでのようです。

一部のディオ VS ジョナサンです。なるべくキャラは再現したつもりですが、ややキャラ崩壊してるかもしれません。ご容赦願います。

あと、誤字脱字等ありましたらコメントか何かでお知らせいただけると助かります。

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――ここは、ありえたかもしれない平行世界。


ジョジョの奇妙なMTG ~モミール・ベーシック編~

 場所はイギリス。いかにも貴族の住んでいるといった風の、豪奢で大きな屋敷での話。

「あ、こんなところにいた。やっとみつけたよディオ!」

 一人はこの家、ジョースター家の一人息子であるジョナサン・ジョースターという少年。

「何だいジョジョ。僕は今読書してて忙しいんだ」

 一人はジョースター家に養子に貰われてきた少年、ディオ。旧姓はブランドーだが、今はジョースター姓を名乗っている。

「見てよこれ、面白いフォーマットがあってね。せっかくだからやろうよ!」

 ニコニコと笑いながらジョナサンが差し出してきたそれは、小さな箱のような物だった。

「フォーマット? ジョジョ、ひょっとして君はMTGの話をしてるのかい」

「そうだよ。えーと、『モミール・ベーシック』っていうらしいんだ」

「ふぅん」

 ディオは興味無さ気にちらっと視線をやると、すぐに本に視線を戻してしまった。

「ねぇやろうよディオ」

「嫌だね。僕は今勉強と読書で忙しいんだ」

 そういうディオの手には確かに分厚い本が握られていた。だが恐らくディオのことだ。どうせすぐ読み終わってしまうのだろう。

「じゃあ終わってからでもいいよ?」

「……いつ終わるかなんて分からないんだジョジョ。だから無理だ」

「……そう」

 目に見えてしょんぼりしたジョナサンはとぼとぼと扉へと歩いて行った。しかし扉に手をかけた時、何か思いついたのかぼそりとつぶやいた。

「……よっぽど負けたくないのかなぁ」

「……何?」

 ギロリとジョナサンを睨みつけたディオ、しかしジョナサンは言葉とは裏腹に目をキラキラ輝かせていた。

「確かにそうだ! すごいやディオ! 確かに戦わなければ負けることもないし、ナンバーワンのままだね!」

 ちなみに、ジョナサンは別に悪意があってこう言ったわけではない。本人はいたって真面目で純粋に、ディオはいわゆるスランプというやつで、今は調子が悪いだけなのかもしれない、だから調子が回復してちゃんとしたらやろうと思っているのかもしれない、自分の調子を見極められるなんてすごいなぁ、と本気で思っていた。それと、勉強で忙しいというディオの主張はもちろん逃げるための言い訳だと思っており、それが「単にジョジョとは遊びたくない」や「本当に勉強をしていてそれどころではない」とは思っていない様子だった。

 まぁ実際、ディオが宿題や勉強などで苦戦していたことはなかったし、課題の類も一時間もあればほとんど終わらせられるような人間であり、それを身近で見ているジョナサンにとって「ディオが本当に勉強で苦戦している」とは想像もつかなかったようだ。

「ジョージョォ!!! お前、僕のことをコケにしているのかい!?」

「えっ、そんなつもりはないけど……」

 怒り心頭とばかりのディオと、おろおろするばかりのジョナサン。反応がズレているのはジョナサンが自分の発言をよく考えていないからであり、ディオがやや邪推しすぎているところから来ていた。

「いいだろう! その『モミール・ベーシック』とやらでお前を完膚なきまでに叩きのめしてやろう!」

「えっ、遊んでくれるのかい? 勉強はいいの?」

「勉強なんていくらでも取り戻せる!! 行くぞジョジョ! お前の部屋でいいんだよな!」

「わわっ、待ってよディオ!」

 勢い良く本を閉じ、本棚に戻したディオはずかずかと歩いて行き、慌ててジョナサンはその後に続いていった。

 

 

 その後、一度ディオは自分の部屋からカードやサプライを取ってきてからジョナサンの部屋に入った。ジョナサンも同じようにカードを出し、新しいフォーマットで遊ぶためのルールブックらしき小冊子を読んでいた。

「それで、その『モミール・ベーシック』とやらはどうやるんだいジョジョ」

「んーっとね……まず60枚のデッキを基本土地だけで組むんだって。比率は沼60枚でもいいし、5種類の土地を全部12枚ずつでもいいってさ」

「ふむ……」

「で、これ見てくれる?」

 

 

Momir Vig, Simic Visionary Avatar

ヴァンガード

手札 +0/ライフ +4

 

(X),カードを1枚捨てる:点数で見たマナ・コストがXである、無作為に選ばれたクリーチャー・カード1枚のコピーであるトークンを1体戦場に出す。この能力は、あなたがソーサリーを唱えられるときにのみ起動でき、各ターンに1回しか起動できない。

 

 

「……なるほど。分かった」

「えっ!? ルールブックも見てないのにもう分かったのディオ?! すごいね!」

 ジョナサンの全く悪意のない尊敬の視線に、ディオは盛大に溜息をついた。

「こいつを見れば分かるだろ。要は一枚カードを捨ててXマナを指定して起動、出てきたクリーチャートークンだけで戦うんだろう?」

「そうだよディオ。あ、呪文はもちろんないからね」

 ジョナサンはそう言いながらさっそく自分のカードボックスから土地を出し始めていた。ディオもそれに倣おうとし、ふと手を止めた。

「ところでジョジョ。『無作為に選ばれた』ってあるが、誰が無作為に選ぶんだい? 僕たちはさすがにカード全部を把握してるわけじゃないし、だいたい選ばれたカードの能力だって分からないんじゃあ……」

「それなら大丈夫だよディオ。そのためのこの箱なんだから」

 ジョナサンの手には、ちょうどMTGのカードがほどよく収まりそうなサイズの箱が乗っていた。箱の蓋の上には、小さな丸い黄色のボタン2つと大きな白いボタン、そして帯状の隙間が開いていて、隙間には「X=0」と表示されていた。

「こっちの上の方の黄色いボタンを押すと、Xの値が増えて、下の方だと数字が減るんだよ」

 そう言いながらポチポチとボタンを押すジョナサンの手の上で、X=0と表示されていた隙間には、X=1・X=2と数字が増えたり減ったりしていった。

「で、指定した値のところでこの白いボタンを押すと……」

 ジョナサンはX=5と表示させたところで、白いボタンを押した。すると、箱の中からポンッ、という軽い音が聞こえた。ジョナサンが蓋を開けると、そこには「心霊スリヴァー」というカードが現れていた。

 

 

※ Psionic Sliver / 心霊スリヴァー (4)(青)

クリーチャー — スリヴァー(Sliver)

 

すべてのスリヴァー(Sliver)・クリーチャーは「(T):クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。このクリーチャーはそれに2点のダメージを与え、自身に3点のダメージを与える。」を持つ。

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「……一体どうなってるんだいこの箱」

 ディオは箱を受け取り、蓋を外して裏を見てみたが特に何もなかった。箱の中にもそれらしき装置はなく、どう見てもただの紙の箱にしかディオには見えなかった。

 出てきたカードは不正防止のためか、大きく赤い丸が表側に薄く付いており、裏側にいたってはいつも見ている茶色っぽい下地に5つのマナのカラーの丸いシンボルが書かれている絵柄ではなく、真っ黒に塗りつぶされているようだった。

「ちなみにこれ、カードを箱に戻してもう一回この白いボタンを押すと、自動でカードが消えるんだよ! 便利だね!」

 あんまりにもキラキラした目でジョナサンがそう言い放つ物だから、ディオは若干気が抜けた。

「……その一言で片付けてもいいのかいジョジョ。君仮にも考古学者志望だろ」

「謎があった方が人生楽しいよ?」

「いやまぁそうかもしれないけど。……まぁいい」

 ディオはそれ以上追究するのを諦め、デッキ構築に戻った。

「(さて……土地の配分はどうするか……均等にしても構わないが……)」

 ディオは少し悩み、参考にと自分のカードボックスからクリーチャーカードを出して一枚一枚見ていった。ボックス内のカードはきちんと整頓されており、エキスパンションやレア度、カードのタイプなどで分けられていた。

「(……マナクリーチャーが出るならいいが……有名ドコロの『ラノワールのエルフ』や『極楽鳥』が出る確率自体がどれくらいだ? そもそもクリーチャーカードだけで全部で何枚、いや何万あるんだ? あまり頼らない方がいいかもしれないな……ああ、渡りの能力もやっかいだな。森渡り、沼渡り、島渡りはなんか聞いたことがあるけど、山渡りってそんなにいるのか? あと平地渡りって見たことがない気がするが、あるのか?)」

 ディオは次々とカードを見ていった。

「(……どうやら1マナ域はロクなのがいなさそうだな。あまり1マナから起動するのは賢くないかもしれない。2マナスタートにするか……。ん?)」

 ふと、ある一枚のカードを見つけてディオの手が止まった。

「ジョジョ、ルールブック貸せ」

「うん、どうぞ」

 ジョナサンからルールブックを受け取り、ぱらぱらとページをめくっていった。そしてディオは目当てのページを見つけた。

「(モミール・ヴェグの能力は『起動型能力』として扱う……フフフ、なるほど。必勝法は分かったぞ。運がよければ、の話にはなるが、2マナスタートで間違いはないな)」

 ルールブックを放り、ディオは手持ちのカードとにらめっこしながら土地を取っていった。

「出来た。あれ、ディオはまだかい?」

「随分早くないかいジョジョ」

「だって全部の土地を均等に12枚ずつ入れただけだし。ディオは何か違うのかい?」

「……いや、土地を出すのが大変でね。土地だけは整頓してなかったからてんでんばらばらになっちゃっててね……」

「ああ、うん。分かるよ。出来たら声かけてね」

 ディオはわざと嘘をついた。自分の勝率を少しでも上げるために。

「……待たせたな。出来たぞ」

「よーし、やろうやろう!」

 わかりやすくワクワクしているらしいジョナサンを内心鼻で笑っていたディオだったが、無自覚ながらディオも未知のゲームを少し楽しみにしていた。

「先攻後攻はダイスでいいよね?」

「ああ」

「じゃ振るよ。……18」

「……6」

 明らかに劣った数字が出た途端、やや不機嫌になったディオをなだめるようにジョナサンは眉根を下げて微笑んだ。

「えっと……じゃあ、僕から行くね。七枚引いて……」

 ジョナサンに続くように、ディオも七枚引いた。

「……マリガン基準とかあるのかなぁこれ……。まぁとりあえずこれでやるよ」

「僕もこのままでいい。お先にどうぞ、ジョジョ」

「うん。じゃあまずセットランドして、さっそく『モミール・ヴェグ』を起動するよ!」

 

ジョナサンセット:森

 

「いきなりかい?」

 ディオはふふっと笑って言った。ジョナサンはにっこりと笑って、

「ちょっと待ちきれなくてね。あ、えーと、森を捨てるよ」

 と言った。

 

ジョナサンディスカード:森

 

「えーと……ボタンを押して、えい!」

 ジョナサンは黄色いボタンを一度だけ押し、次いで白いボタンを押した。ぽんっ、と軽い音がして、カードが生み出されたことが分かった。

 蓋を開けると、そこにはちゃんとカードが入っていた。

「えーと……『フェアリーの戦隊』?」

 

 

Faerie Squadron / フェアリーの戦隊 (青)

クリーチャー — フェアリー(Faerie)

 

キッカー(3)(青)(あなたがこの呪文を唱えるに際し、あなたは追加の(3)(青)を支払ってもよい。)

フェアリーの戦隊がキッカーされていた場合、それはその上に+1/+1カウンターが2個置かれた状態で戦場に出るとともに、飛行を持つ。

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「……あれ、僕森でマナを払ったと思ったんだけど、何で青いカードが出たんだろう?」

 不思議そうな顔をしているジョナサンに、ディオははぁとため息をついて解説してやった。

「ジョジョ、こいつらはあくまでも、『Xと等しいマナ・コストを持つトークン』だ。何も君がこの呪文を唱えたわけじゃない。あくまでも複製しただけさ」

「なるほどね。確かにそれならマナ・コスト通りでさえあればなんでも出てくるし、そういうシステムじゃなかったら事故がすごくたくさん起きちゃうもんな」

 てへへ、とジョナサンは頭を掻きながら笑った。ディオは内心このどこか抜けている義弟が疎ましくも、時折ほんの少しだけ心配になるのだった。

「えーと、じゃあこれで僕は終わりだね」

「せっかくのキッカーがもったいないな」

「ね」

 

ジョナサン土地:森

ジョナサン手札:5枚

ジョナサン場:フェアリーの戦隊1/1

 

「じゃあ僕のターン。ドロー。山をセットして終了」

「あれ、もう終わりでいいのかい?」

「ああ、君のターンだジョジョ」

 

ディオ土地:山

ディオ手札:7枚

 

 ジョナサンは首をかしげつつも、カードをドローした。

「島をセットして、『フェアリーの戦隊』でアタックするよ」

「ああ、1点くらいはもらおう」

 

ディオライフ:20→19

 

 ジョナサンは自分の手札をじっと見てから、場に出ている島と森を90度回転させて手札を一枚つまみあげた。

「島と森で2マナ払って、手札の森を捨てて『モミール・ヴェグ』を起動するよ!」

 

ジョナサンディスカード:森

 

 先ほどと同じようにボタンを操作し、X=2と表示させてから白いボタンをぽんと押した。またカードが生成されていた。

「今度は……『水膨れ虫』?」

 

 

Blister Beetle / 水膨れ虫 (1)(黒)

クリーチャー — 昆虫(Insect)

 

水膨れ虫が戦場に出たとき、クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで-1/-1の修整を受ける。

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「……あれ、これってさ」

 ジョナサンは自分でカードを出してからテキストを読み、固まった。

「まぁ、どっちでもいいと思うけど」

「効果が『してもよい』じゃないから自滅しちゃうじゃないか……」

「……それで、どっちを生かすんだい?」

 ジョナサンはしばらくうんうんうなり、結局『フェアリーの戦隊』を墓地送りにした。

「あーあ」

「こういう事故は怖いなジョジョ」

「うん……」

 ちょっぴりがっかりしているジョナサンを他所に、ディオは自分のターンを進め始めた。

 

ジョナサン土地:島・森

ジョナサン手札:4枚

ジョナサン場:水膨れ虫1/1

 

「それじゃドロー。平地をセットし島を捨てて、『モミール・ヴェグ』起動!」

 

ディオセット:平地

ディオディスカード:島

 

「やっとディオも起動するんだね。何が出るかな?」

「さぁね……」

 ディオもジョナサンがやっていたようにボタンを押し、カードを生成させると箱からカードを取り出した。

「んん……見たことないカードだな。『Zuran Enchanter』?」

 

 

Zuran Enchanter (1)(青)

クリーチャー — 人間(Human) ウィザード(Wizard)

 

(2)(黒),(T):プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを1枚捨てる。この能力は、あなたのターンの間にのみ起動できる。

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「……ふむ。なかなかいいカードが出たぞジョジョォ?」

「……うわぁ。手札破壊はキツいなぁ……」

 このモミール・ベーシックというフォーマット、どうしたって必ず「モミール・ヴェグ」の能力を使わないといけないのだが、起動には必ずディスカードが必要となる。ディオのターンでしか手札を削れないとはいえ、土地を置くか、それとも起動コストに当てるかという選択を迫れるのは十分な強みとなる。惜しむらくはタップが必要な能力なのとタイミング制限があるので、実際に能力を使うのが遅れてしまうということだろうか。

「僕はターンエンドだ」

 

ディオ土地:山・平地

ディオ手札:6枚

ディオ場:Zuran Enchanter1/1

 

「ドロー。沼をセットして『水膨れ虫』でアタックするよ」

「オーケー。18点だな」

 

ディオライフ:19→18

 

「えーと、今のうちにクリーチャー出しとこう……沼をセットして、森を捨てて起動!」

 

ジョナサンセット:沼

ジョナサンディスカード:森

 

「……ジョジョ、君さっきから森ばっかり捨ててないかい?」

「なんか手札に来るんだよ……」

 ポチポチとボタンを操作して、ジョナサンはカードを取り出した。

「んーと……『オークの血塗り』だって」

 

 

Orcish Bloodpainter / オークの血塗り (2)(赤)

クリーチャー — オーク(Orc) シャーマン(Shaman)

 

(T),クリーチャーを1体生け贄に捧げる:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。オークの血塗りはそれに1点のダメージを与える。

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「結構見たことのないカードでも平気で出てくるね。ある意味勉強になるからいいかも」

「以前のルールならこいつも強かったろうにな」

 若干憐れむような目つきのディオの態度で、ジョナサンもようやくまじまじとテキストを見て似たような表情をした。

「うん? ……ああ、何なのかと思ったらこれタップして更に生贄にしないとダメージ入らないのか。微妙だなぁ……」

「『モグの狂信者』と同じような運命をたどったんだなこいつは……」

 

 

※ Mogg Fanatic / モグの狂信者 (赤)

クリーチャー — ゴブリン(Goblin)

 

モグの狂信者を生け贄に捧げる:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。モグの狂信者はそれに1点のダメージを与える。

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「えーと……エンド」

 

ジョナサン土地:沼・島・森

ジョナサン手札:3枚

ジョナサン場:水膨れ虫1/1

オークの血塗り2/1

 

「ドロー。ひとまず沼をセットして、3マナで『Zuran Enchanter』の能力を起動するぞ」

 

ディオセット:沼

 

「うう、ディスカードだね……じゃあ島を捨てるよ……」

 

ジョナサンディスカード:島

 

「エンドだ。フッフッフ、どんな気分だジョジョォ? 身動きがゆっくりと取れなくなっていくのは!?」

「うーん。困ったね……」

 

ディオ土地:沼・山・平地

ディオ手札:6枚

ディオ場:Zuran Enchanter1/1

 

「ドロー。えーと、ともかく平地セット。で、『水膨れ虫』と『オークの血塗り』でアタックするよ」

「いいだろう、通そう」

 

ディオライフ:18→15

 

「うー……どうしよう……え、エンドで……」

「じわじわと苦しむがいいジョジョォ~ッ! アッハッハッハ!!」

 

ジョナサン土地:沼・島・森・平地

ジョナサン手札:2枚

ジョナサン場:水膨れ虫1/1

オークの血塗り2/1

 

「僕のターンだな。ドロー! 森をセットして再び『Zuran Enchanter』を起動だ! さぁジョジョ、手札を捨ててもらおうか!」

「うう……じゃあ島を捨てるよ……」

 

ディオセット:森

 

ジョナサンディスカード:島

 

「これでエンドだ! さぁジョジョどうする? お前の手札はこれで1枚! 次にセットして『モミール・ヴェグ』を起動しようものなら、お前の手札はゼロだ!」

 

ディオ土地:沼・山・平地・森

ディオ手札:6枚

ディオ場:Zuran Enchanter1/1

 

「ドロー。……山をセットして、『水膨れ虫』と『オークの血塗り』でアタックする!」

「フン……いいだろう。『オークの血塗り』は『Zuran Enchanter』でブロックするぞ」

「じゃあ、オークの血塗りをタップして生贄に捧げて、本体に1点飛ばすよ」

「随分ともったいない真似をするじゃあないかジョジョォ? 焦っているのが手に取るように分かるぞぉ!!」

 

ディオライフ15→13

ジョナサン場:オークの血塗り→墓地へ

 

「ライフアドバンテージを多少取ったとはいえ、起動がますます厳しくなっていくぞぉーッ!? さぁあがいてみせろジョジョォ!!」

 ライフアドバンテージの代わりに手札を失っていくこの状況下、先ほどまでむくれていた義兄が楽しそうにしているのを見てついジョナサンは笑ってしまった。

「……ふふっ」

「……何がおかしい!?」

 案の定というべきか、ジョナサンのほほ笑みを見たディオはすかさずむっとした反応を返した。

「ごめんごめん。でも、なんだかディオが楽しそうだったから。誘ってよかったなぁって思ったんだ」

「……別にこのディオははしゃいでいるわけじゃあないッ! ジョジョ! お前に勝てばこのディオの方が上だと証明出来るからそれが嬉しいだけだッ! まぁ僕のことだから当然だがなッ!!」

 そう言いながらも、ディオはどこか少し照れているようにジョナサンの目に映った。

「さて、ディオ。僕は残った手札の山を捨てて、X=5で能力を起動するよ」

「せいぜいいいクリーチャーが出るように祈るがいいジョジョ!!」

 カチカチ、とXの値を5に設定し、ジョナサンは少しためらってから白いボタンを押した。中から出てきたカードは……。

「……わ、やった! 結構当たりかもしれない! 『マイコロス』だって!」

「な、なにィ!?」

 

 

Mycoloth / マイコロス (3)(緑)(緑)

クリーチャー — ファンガス(Fungus)

 

貪食2(これが戦場に出るに際し、あなたは望む数のクリーチャーを生け贄に捧げてもよい。このクリーチャーはその数の2倍に等しい+1/+1カウンターが置かれた状態で戦場に出る。)

あなたのアップキープの開始時に、マイコロスの上に置かれている+1/+1カウンター1個につき、緑の1/1の苗木(Saproling)クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。

4/4

 

 

「うーん、攻撃したのはちょっと早まったかもなぁ……まぁいいか。じゃあ『水膨れ虫』を貪食の生贄コストに当てて、カウンターを2つ乗せるよ。これで『マイコロス』は6/6だね。で、僕の毎ターンアップキープ開始時に、2体ずつ苗木トークンが出るよ。僕はこれでエンド!」

 

ジョナサン土地:沼・島・森・平地・山

ジョナサン手札:0枚

ジョナサン場:マイコロス6/6(カウンター×2)

 

「ぐ……ドロー!」

 ディオは焦ったようにカードを引いた。

「(くそっ、マイコロスなんて雑魚、普段なら除去でも撃てば済むのに……! 仕方ない、ここは同じマナ域で起動してみるか……)……島をセット。平地を捨てて、『モミール・ヴェグ』を起動するぞ」

 

ディオセット;島

ディオディス:平地

 

 半ば祈るような気持ちで、ディオはボタンを押してカードを取り出した。

「……チッ、使えない奴か。せいぜいブロッカーとして使わせてもらうよ」

「んん? 『大喋りの薬剤師』? ……専用デッキならいいのにね」

 

 

Wellgabber Apothecary / 大喋りの薬剤師 (4)(白)

クリーチャー — マーフォーク(Merfolk) クレリック(Cleric)

 

(1)(白):タップ状態の、マーフォーク(Merfolk)・クリーチャー1体かキスキン(Kithkin)・クリーチャー1体を対象とする。このターン、それに与えられるすべてのダメージを軽減する。

2/3

 

 

「エンドだ!」

 

ディオ土地:沼・山・平地・森・島

ディオ手札:5枚

ディオ場:Zuran Enchanter1/1

大喋りの薬剤師2/3

 

「じゃあ僕だね。アップキープ開始時に『マイコロス』の能力が誘発して、苗木トークンが2体出るよ。それでドロー」

 

ジョナサン場:苗木トークン1/1 ×2

 

「島をセットして、『マイコロス』で攻撃!」

「なら僕は『Zuran Enchanter』でブロックするよ」

 

ディオ場:Zuran Enchanter→墓地へ

 

「で、僕はエンドするよ」

 

ジョナサン土地:沼・島×2・森・平地・山

ジョナサン手札:0枚

ジョナサン場:マイコロス6/6(カウンター×2)

苗木トークン1/1 ×2

 

「ドロー。……沼をセットして、平地を捨て『ヴェグ』を起動する。Xは6だ!」

 ディオはやや苛立ったように、荒々しさの見て取れる手つきでボタンを操作し、カードを出した。

「チッ、『クラージ実験体』。こいつも今の状況ではハズレだな」

 

 

Experiment Kraj / クラージ実験体 (2)(緑)(緑)(青)(青)

伝説のクリーチャー — ウーズ(Ooze) ミュータント(Mutant)

 

クラージ実験体は、その上に+1/+1カウンターが置かれている他の各クリーチャーの全ての起動型能力を持つ。

(T):クリーチャー1体を対象とし、その上に+1/+1カウンターを1個置く。

4/6

 

 

「まぁでも面白い偶然だな。シミックのトップである『モミール・ヴェグ』から、そのギルドの切り札が出てくるとはな……」

「へー、『モミール・ヴェグ』ってシミックのトップだったんだ。僕知らなかったよ。あ、エンドでいいかい?」

「ああ、僕はエンドだ」

 

ディオ土地:沼×2・山・平地・森・島

ディオ手札:4枚

ディオ場:大喋りの薬剤師2/3

クラージ実験体4/6

 

「また苗木トークンを二体出すね。で、ドロー」

 

ジョナサン場:苗木トークン1/1 +2 →合計4体

 

「えーと、とりあえず起動してみようかな。X=6で、沼を捨てるね」

 すっかり慣れた手つきで箱を操作し、中からカードを取り出した途端、ジョナサンは固まった。何事かと思い、ディオも少し身を乗り出してジョナサンの手の上に乗っているカードを見た。

 

 

Void Maw / 虚空の大口 (4)(黒)(黒)

クリーチャー — ホラー(Horror)

 

トランプル

他のクリーチャーが死亡する場合、代わりにそれを追放する。

虚空の大口よって追放されたカード1枚をオーナーの墓地に置く:虚空の大口はターン終了時まで+2/+2の修整を受ける。

4/5

 

 

「随分怖いカードだなぁ……夢に出そうで嫌だなぁ」

 どうにもイラストが恐ろしげなのを見て、ジョナサンは少し震え上がったらしい。そういえばこいつは普段天使やらエルフやら、貧弱なカードばかり使っているせいか黒の禍々しいカードには縁がないなとディオは思い出していた。

「……ジョジョ。お前の場、『マイコロス』もそうだが随分と禍々しく見えるんだけど僕の気のせいかい」

 そう聞いてみると、やはりジョナサンもそう思っていたらしく、渋い顔をしていた。

「うーん……もっと綺麗なカードがよかったなぁ。まぁ仕方ないか。とりあえずエンドしておくことにするよ」

「(ん? 攻撃には来ないのか? マイコロスでまだトークンを増やすつもりか?)」

 ディオは少し首をひねった。

 

ジョナサン土地:沼・島×2・森・平地・山

ジョナサン手札:0枚

ジョナサン場:マイコロス6/6(カウンター×2)

虚空の大口4/5

苗木トークン1/1 ×4

 

「僕のターン、ドロー! ひとまず山をセットし、島を捨てる。『ヴェグ』を起動してみるぞ。X=7だ」

「そろそろサイズの大きいクリーチャーでの殴り合いになってきたね……」

 どうしてもこのゲームはビートダウン同士の戦いみたいになってしまうのだろう。呪文が一切許されない以上、リミテッドみたいなものだ。

 

 

Avenger of Zendikar / ゼンディカーの報復者 (5)(緑)(緑)

クリーチャー — エレメンタル(Elemental)

 

ゼンディカーの報復者が戦場に出たとき、あなたがコントロールする土地1つにつき緑の0/1の植物(Plant)クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。

上陸 ― 土地が1つあなたのコントロール下で戦場に出るたび、あなたはあなたがコントロールする各植物クリーチャーの上に+1/+1カウンターを1個置いてもよい。

5/5

 

 

「……え? ってことは……」

「トークンが7体出るぞ! ジョジョォ!! 『マイコロス』のトークンに頼っている場合じゃなくなったなぁ? 僕はターンエンドだ!」

 実の所、ディオは頭数が増えるのは嬉しかったが、どうしてこうまでジョナサンの使いそうなカードばかり自分が引いて、ジョナサンが自分好みのカードばっかり引いていくのかと少し不満だった。

 

 

ディオ土地:沼×2・山×2・平地・森・島

ディオ手札:3枚

ディオ場:大喋りの薬剤師2/3

クラージ実験体4/6

ゼンディカーの報復者5/5

植物トークン0/1×7

 

「僕だね……トークンを2体また増やして、ドロー! ……うーん。困ったなぁ」

 さすがに苗木トークンが増殖し続けると、トークンカードを探すのも一苦労になる。ジョナサンは一通り自分のカードボックスを漁っていた。いまいち片づけの下手なジョナサンは、苗木トークンカードを探すのに手こずっているようだった。

「ジョジョ、もう適当に1/1なら何でもいいから出せ」

「うん……じゃあちょっと見当たらないから人間トークンで代用するよ」

 そう言ってエキスパンションもてんでんばらばらな人間トークンを出してきた時、さすがのディオもイラッとした。

「……ジョジョ、お前は本ッ当に片付けが下手だな!!」

「そう怒らないでよディオ……君がきれい好きで几帳面なのは分かってるけどさ……」

 

苗木トークン×4→×6

 

「とりあえず島を捨ててX=6で起動するよ……」

「フン。土地が伸ばせなくて苦しそうだなぁジョジョォ? まったく、僕の『Zuran』はいい仕事をしてくれたよ」

「うう……『マラカイトのゴーレム』? 微妙だなぁ……」

 そう言いながらもジョナサンがどこか嬉しそうなのは、今まで見たことのないカードが次々と出てきて好奇心が満たされているからだろうか。

 

 

Malachite Golem / マラカイトのゴーレム (6)

アーティファクト クリーチャー — ゴーレム(Golem)

 

(1)(緑):マラカイトのゴーレムはターン終了時までトランプルを得る。

5/3

 

 

「うーん……とりあえずエンドするよ……決め手に欠けるなぁ」

「フフフフフ、そうして迷っているがいいジョジョ! 俺は貴様がのんびりしている間に体勢をゆっくりと整えさせてもらうぞ!! エンド前に『クラージ実験体』のタップ能力で『ゼンディカーの報復者』を強化だ!!」

 

ゼンディカーの報復者5/5→6/6

 

ジョナサン土地:沼・島×2・森・平地・山

ジョナサン手札:0枚

ジョナサン場:マイコロス6/6(カウンター×2)

虚空の大口4/5

マラカイトのゴーレム5/3

苗木トークン1/1 ×6

 

「ドロー! そして沼をセット! これにより『ゼンディカーの報復者』の上陸効果が誘発! 7体のトークンが1/2になるぞォ!」

 ディオは思い切り床に叩きつけるようにして沼を場に置いた。

 

ディオ場:植物トークン0/1→1/2 ×7

 

「そして、手札から平地を捨ててX=7で『ヴェグ』を起動!」

「おや、ずいぶんかっこいいドラゴンが出たねディオ。何々、『鋼のヘルカイト』……?」

 

 

Steel Hellkite / 鋼のヘルカイト (6)

アーティファクト クリーチャー — ドラゴン(Dragon)

 

飛行

(2):鋼のヘルカイトはターン終了時まで+1/+0の修整を受ける。

(X):このターン、鋼のヘルカイトによって戦闘ダメージを与えられたプレイヤーがコントロールする、点数で見たマナ・コストがXの土地でない各パーマネントを破壊する。この能力は、各ターンに1回のみ起動できる。

5/5

 

 

 

 考古学者志望のジョナサンにとって、アーティファクト系のカードはロマンチックに見えるらしい。特にそれがかっこいい男の子好きのしそうなドラゴンなら尚更だろう。しかし、イラストを眺めていたジョナサンの表情が突然曇った。

「……ねぇディオ」

「何だいジョジョ?」

 ディオは勝ち誇ったようにニヤニヤとしていた。ジョナサンはその笑みを見ながら、嫌な予感が膨らんでいくのを悟った。

「……今お互いの場に出てるクリーチャーって、全部トークンだよね」

「そうだな」

 ディオは頷いた。

「で、この『鋼のヘルカイト』のXの方の能力って、対戦相手だけだよね」

「まぁそうだな。ダメージを与えられたプレイヤーと書いてあるしな」

 ディオは再び頷いた。

「……Xって0でもいいんだよね? つまり、コストを払わないで起動」

「ジョジョォ? お前は聞きたいんだろう? だが恐ろしい事実に気づいてしまったが故に言えない! 聞きたくない!! 僕がお前の聞きたくないだろう答えを教えてやるよ!! 『トークンのマナ・コストは指定がない限り全部0』だ!」

 それを聞いた途端、ジョナサンはさっと血相を変えた。

「ちょっとまってくれよ!! ってことは次のターンにディオの『鋼のヘルカイト』の攻撃を止められないと僕実質負けじゃないか!?」

「ハッハッハ!! いいじゃあないかジョジョォ!! 片付けが苦手なお前の場を綺麗に大掃除してやろうと言うんだ。僕は優しいだろォう? さぁカードを引けジョジョ!! そして次の『モミール・ヴェグ』に期待するんだな!!」

 

ディオ土地:沼×3・山×2・平地・森・島

ディオ手札:2枚

ディオ場:大喋りの薬剤師2/3

クラージ実験体4/6

ゼンディカーの報復者6/6

鋼のヘルカイト5/5

植物トークン1/2×7

 

「……苗木を増やしてからドロー! じゃあ先にX=6で『ヴェグ』起動!」

 

ジョナサン場:苗木トークン1/1 ×6 →×8

 

「せいぜい祈っていろジョジョォ!! まぁせめて飛行持ちを当てられるといいなぁ!」

 半ば祈るような気持ちで、ジョナサンはカードを取り出した。

 

 

Mirror-Sigil Sergeant / 鏡印章の兵長 (5)(白)

クリーチャー — サイ(Rhino) 兵士(Soldier)

 

トランプル

あなたのアップキープの開始時に、あなたが青のパーマネントをコントロールしている場合、あなたは鏡印章の兵長のコピーであるトークンを1体、戦場に出してもよい。

4/4

 

 

「ハーッハッハッハ!! 貧弱なクリーチャーだなジョジョォ!! これでお前のクリーチャーは全滅だ!」

 初めて見るカードではあったが、いかんせん能力が微妙だ。ジョナサンは少しうなだれた。

「うう……」

 

ジョナサン場:マイコロス6/6(カウンター×2)

虚空の大口4/5

マラカイトのゴーレム5/3

鏡印章の兵長4/4

苗木トークン1/1 ×8

 

ディオ場:大喋りの薬剤師2/3

クラージ実験体4/6

ゼンディカーの報復者6/6

鋼のヘルカイト5/5

植物トークン1/2×7

 

「仕方ない……エンドするよ」

 半ばやけくそに見えたかもしれない。だが、『モミール・ヴェグ』から一体次にどんなカードが出てくるのか全く想像がつかない。それでも、X=6で起動し続けなくてはならなくなったジョナサンにとっては、わずかにでも勝利への希望を残すため、少しでもディオの場を削っておきたいというのが本音であった。

 本当なら、この場で総攻撃を仕掛けたほうがよかったのだろう。だが、ジョナサンはあえて総攻撃しなかった。なぜなら、大概こういった、勝利を確信出来るような状況になった時、ディオは大概油断して何の備えもなく突っ込んでくるからだ。むしろ攻撃して下手にライフも使われて凌がれてしまい、ブロッカーが足りなくなってしまったら目も当てられない。

「フン、無駄なあがきすら出来なくなったようだな! ならエンド前に『クラージ実験体』で『鋼のヘルカイト』を強化しておくぞ!」

 

鋼のヘルカイト5/5→6/6

 

ジョナサン土地:沼・島×2・森・平地・山

ジョナサン手札:0枚

ジョナサン場:マイコロス6/6(カウンター×2)・虚空の大口4/5・マラカイトのゴーレム5/3・鏡印章の兵長4/4・苗木トークン1/1 ×5

 

「なら僕のターンだ! ドロー! 山をセットして上陸誘発、植物トークンを2/3にしてからフルアタック!!」

 宣言を聞いてジョナサンはやっぱり、と思ったのだった。

 

ディオセット:山

 

ディオ場:大喋りの薬剤師2/3

     クラージ実験体4/6

     ゼンディカーの報復者6/6

     鋼のヘルカイト6/6

     植物トークン2/3×4

 

ジョナサン場:鏡印章の兵長4/4

     マイコロス6/6(カウンター×2)

       虚空の大口4/5

       マラカイトのゴーレム5/3

       苗木トークン1/1 ×8

 

「うっ……ヘルカイトはどうしようもないから通すよ……。ええと、『マラカイトのゴーレム』と苗木トークン一体で『クラージ実験体』、『マイコロス』で『ゼンディカーの報復者』、『鏡印章の兵長』で『大喋りの薬剤師』、植物トークン一体を三体でブロックして、残りは苗木と『虚空の大口』でそれぞれ一体ずつブロックかな……」

 

ディオ側墓地行き:クラージ実験体・ゼンディカーの報復者・大喋りの薬剤師・植物トークン×2

 

ジョナサン側墓地行き:マラカイトのゴーレム・マイコロス、苗木トークン×8

 

 

ディオ場:鋼のヘルカイト6/6

     植物トークン2/3×2

 

ジョナサン場:虚空の大口4/5

       鏡印章の兵長4/4

 

「うわぁ……あんなにたくさん並んでたカードがすっかすかに……」

「ブロック割り振りの結果がそうなら、ダメージステップにはヘルカイトで6点だジョジョォ!」

 

ジョナサンライフ:20→14

 

「当然『鋼のヘルカイト』の能力起動! X=0だ!!」

 

ジョナサン場:(なし)

 

 見事に「大掃除」された場を見て、ジョナサンはため息をつかざるを得なかった。

「ライフはそんなにまだ痛くないけど、これはひどいなぁ……」

「さぁジョジョ! お前のターンだ!!」

 

ディオ土地:沼×3・山×3・平地・森・島

ディオ手札:2枚

ディオ場:鋼のヘルカイト6/6

     植物トークン2/3×2

 

 ふとあることに気づいたジョナサンは、言わずにはいられなかった。

「……あれ、ディオ。君このターン召喚してないけどいいのかい?」

「フン! お前のライフが今始めて減ったとはいえ、これだけの差などそうそうひっくり返らんだろう! 今更援護などいらん!!」

 恐らくジョナサンに指摘されて気づいたのかもしれない。なんだかんだで目ざといジョナサンは、一瞬ディオがハッとした表情を浮かべるのを見た。まさか今さら「やっぱり召喚」とは恥ずかしくて言えなかったらしい。妙にプライドの高いディオはそういうところがあるとジョナサンはよく分かっていた。

「(……それって俗にいう死亡フラグじゃないかなぁ……)……ドロー」

 

ジョナサン土地:沼・島×2・森・平地・山

ジョナサン手札:0枚

ジョナサン場:(なし)

 

「うーん……この状況をどうにか出来る6マナ……ねぇ。何かあるのかな……沼を捨てて『ヴェグ』起動、X=6」

 ジョナサンにはどんなカードが出るか皆目検討もつかなかったが、ぼそっと独り言を呟きながらも起死回生のカードが出ることを祈った。

 

Frost Titan / 霜のタイタン (4)(青)(青)

クリーチャー — 巨人(Giant)

 

霜のタイタンがいずれかの対戦相手がコントロールする呪文や能力の対象になるたび、それのコントローラーが(2)を支払わない限り、それを打ち消す。

霜のタイタンが戦場に出るか攻撃するたび、パーマネント1つを対象とし、それをタップする。それはそれのコントローラーの次のアンタップ・ステップの間にアンタップしない。

6/6

 

 

「うん? なんだか結構かっこいいカードが出てきたなぁ……何々、『戦場に出るか攻撃するたび、パーマネントを1つを対象とし、それをタップする……』」

「……何ッ!? 『アンタップ・ステップの間にアンタップしない』だと!?」

「じゃあディオの『鋼のヘルカイト』を指定するよ。……ふぅ、首の皮一枚って感じだなぁ……」

 首の皮一枚つながった、とホッとするジョナサンとは対照的に、ぐぎぎ、と歯ぎしりをして本気でディオは悔しがっていた。

 

ディオ場:鋼のヘルカイト(タップ状態)

 

「もう僕に出来ることはないからエンドするよ」

 ジョナサンに出来ることは、ただひたすら流れがこちらに来るようにと祈ることだけだった。

 

ジョナサン土地:沼・島×2・森・平地・山

ジョナサン手札:0枚

ジョナサン場:霜のタイタン

 

「ドロー! ……むう……手札から島を捨て、ヴェグをX=9で起動するぞ」

 そうしてディオが取り出したカードを見て、一瞬ジョナサンは戦いを忘れてディオの手に握られたカードに目を奪われた。

「わぁ、綺麗な天使だねディオ。『イオナ』って言うんだね……」

「……そういえばお前はこういう天使とか好きだったな。よかったなジョジョォ? お前のとどめはこいつで刺してやるよ」

 

 

Iona, Shield of Emeria / エメリアの盾、イオナ (6)(白)(白)(白)

伝説のクリーチャー — 天使(Angel)

 

飛行

エメリアの盾、イオナが戦場に出るに際し、色を1色選ぶ。

あなたの対戦相手は、選ばれた色の呪文を唱えられない。

7/7

 

 

「うう……天使だからあるだろうとは思ったけどまた飛行かぁ。辛いなぁ」

 ディオは少しじっくりとテキストを読んだあと、眉間にシワを寄せた。

「色を選ぶ、といってもな。このフォーマットではあまり意味がないな。まぁ一応『赤』あたりでも指定しておこうか。そして戦闘に入るぞ! 植物トークン2体でアタックだ!」

 現在ジョナサンの場には一体しかクリーチャーがいない。早急にブロッカーなりなんなり出さないと、物量でじわじわと押し切られそうだ。

「じゃあ、タイタンで片方をブロックしておくよ……」

「植物トークンは墓地行き、トークン1体で2点だな!」

 

ジョナサンライフ:14→12

 

「早くも僕のライフを下回ったなぁジョジョォ? 『タイタン』のおかげでなんとかなっているようだが、いつまで続くかな? エンドだ!」

 

ディオ土地:沼×3・山×3・平地・森・島

ディオ手札:2枚

ディオ場:鋼のヘルカイト6/6

     エメリアの盾、イオナ7/7

     植物トークン2/3

 

「ドロー……そしてそのまま山を捨ててX=6でヴェグ起動! いいのが出るといいなぁ……」

 カチカチ、と箱を操作して取り出したのは青いカードだった。

 

 

Keiga, the Tide Star / 潮の星、京河 (5)(青)

伝説のクリーチャー — ドラゴン(Dragon) スピリット(Spirit)

 

飛行

潮の星、京河が死亡したとき、クリーチャー1体を対象とする。あなたはそれのコントロールを得る。

5/5

 

 

「わ、ちょっと可愛いドラゴンが出た」

 ジョナサンも男の子だと言うことだろうか。ドラゴンを見るやいなや喜んでいる。しかし一方のディオはカードを見た途端げんなりとしていた。

「……ジョジョォ……なぜ君は妙にいやらしいカードばっかり引いてくるんだい……。青だの黒だのって、搦め手ばっかりだよ本当に紳士かい。何で僕は緑に白なんていう正面突破が多いのに、そっちは妙にトリッキーというか…………」

「ディオ、微妙に盛り返されそうだからってぐちぐちいうのは男らしくないよ……僕はエンドで」

 

ジョナサン土地:沼・島×2・森・平地・山

ジョナサン手札:0枚

ジョナサン場:霜のタイタン6/6

潮の星、京河5/5

 

「(これでは攻めにいけないじゃあないか……『タイタン』の能力以前に、『京河』が死んだら間違いなく『イオナ』あたりが奪われる)……ドロー。……手札から島を捨てて、X=9で『ヴェグ』を起動する」

 

 

Body of Jukai / 樹海の胴 (7)(緑)(緑)

クリーチャー — スピリット(Spirit)

 

トランプル

転生8(このクリーチャーが死亡したとき、あなたはあなたの墓地にある点数で見たマナ・コストが8以下のスピリット(Spirit)・カード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻してもよい。)

8/5

 

 

「まぁ、削りに行く要因としては合格だな。ひとまずエンドするぞ」

 ディオは場にいるクリーチャーたちを奪われるのが嫌で、エンドせざるを得なかった。慎重に行かなくては、下手をすると自分の場が「大掃除」されかねない。

 

ディオ土地:沼×3・山×3・平地・森・島

ディオ手札:2枚

ディオ場:鋼のヘルカイト6/6

エメリアの盾、イオナ7/7

樹海の胴8/5

植物トークン2/3

 

「ドロー。膠着状態になっちゃったね……沼を捨てて『ヴェグ』をX=6で起動」

 ジョナサンはカードを取り出して、クリーチャータイプにドラゴンと書いてあるのを見ると目を輝かせてテキストを読んだ。

 

 

Dromar, the Banisher / 追放するものドロマー (3)(白)(青)(黒)

伝説のクリーチャー — ドラゴン(Dragon)

 

飛行

追放するものドロマーがプレイヤーに戦闘ダメージを与えるたび、あなたは(2)(青)を支払ってもよい。そうした場合、色を1色選ぶ。その後、選ばれた色のすべてのクリーチャーをオーナーの手札に戻す。

6/6

 

 

「おぉ、なんだか強そうだなぁ。飛行も揃ってきたのはありがたいよ。エンド」

 ジョナサンにとっては強そうだなぁ、くらいだったが、ディオにとってはますます慎重にならざるをえなくなる要因が増えたので、悩みの種と化した。

 

ジョナサン土地:沼・島×3・森・平地・山

ジョナサン手札:0枚

ジョナサン場:霜のタイタン6/6

潮の星、京河5/5

追放するものドロマー6/6

 

「(基本的なスペックはともかく、全部能力がやっかいすぎるな……攻められても地獄、ブロックされて死なれても地獄……)ドローして、セット島。X=10で『ヴェグ』を起動する。コストは沼だ」

「ずいぶん土地を置くね」

 土地を置いた真意。それはディオがあるカードを知っていたからだった。

 ディオは勝つためなら努力を一切惜しまない。努力は「生まれ」や「才能」を凌駕出来ると知っているからだ。例えカードゲームであって、一種のお遊びと言えるようなことにも、ジョナサンに勝つためなら全力で勉強した。友人たちと情報交換し、ショップでカードを眺めてテキストを覚えた。

 特に、その中でも能力がずば抜けているカードなどはやはりインパクトも強いのか、よく覚えていた。その一枚が、今の時点で届きそうな10マナのカードであることに賭けて、あえて土地を伸ばしにいった。

 そして、ディオは賭けに勝った。

 

 

Progenitus / 大祖始 (白)(白)(青)(青)(黒)(黒)(赤)(赤)(緑)(緑)

伝説のクリーチャー — ハイドラ(Hydra) アバター(Avatar)

 

プロテクション(すべて)

大祖始があらゆる領域からいずれかの墓地に置かれる場合、代わりに大祖始を公開しそれをオーナーのライブラリーに加えた上で切り直す。

10/10

 

 

「わぁ、かっこいいね! ……プロテクション(すべて)って……また大雑把だなぁ」

 ジョナサンは見慣れないカードのオンパレードだからか、恐れるというよりも好奇心旺盛といったふうに、楽しんでカードを眺めていた。

「ふっふっふ、これで安心というわけだ。なんせ京河の対象にもならないんだし、そもそもブロックすらも不可。飛行クリーチャーもトランプルも止められない時点でジョジョ、お前のライフは実質0! 次のターンで僕の勝ちだ!!」

 

ディオ土地:沼×3・山×3・平地・森・島×2

ディオ手札:1枚

ディオ場:鋼のヘルカイト6/6

     エメリアの盾、イオナ7/7

     樹海の胴8/5

大祖始10/10

植物トークン2/3

 

「また窮地に追い込まれたよ……ドロー。X=6でヴェグ起動」

 ディオと違って、ジョナサンはそこまで熱心に勝利に貪欲になっていない。ジョナサンはただただ、「MTGを楽しみたい」というのが優先であり、「どうしても勝ちたい」とまでは思っていなかった。ジョナサンはディオの勝ちに貪欲な姿勢を知っていたし、またその考えも否定はしなかった。人は人、自分は自分という風に。

 だから、最後にどんなカードが出てもいいし、自分がこのゲームに勝っても負けてもよかった。だがそれは勝ちに怠惰だということではなく、次のゲームをより楽しむためにただ「知りたい」と思っているだけだった。

 

 

Aboshan, Cephalid Emperor / セファリッドの皇帝アボシャン (4)(青)(青)

伝説のクリーチャー — セファリッド(Cephalid)

 

あなたがコントロールするアンタップ状態のセファリッド(Cephalid)を1つタップする:パーマネント1つを対象とし、それをタップする。

(青)(青)(青):飛行を持たないすべてのクリーチャーをタップする。

3/3

 

 

「うわー、あと1ターン早くて、島があればなぁ。まぁ仕方ないか。どうブロックしてもぴったり12点削られるから僕の負けだねディオ」

 負けたというのにも関わらず、ジョナサンはニコニコしていた。ディオは次のターンどうあがいてもジョナサンが負けると計算しつくし、またジョナサンの投了宣言を聞いてとてつもなく傲岸不遜な笑みを浮かべた。

「フッフッフ……やはり僕が上だったなジョジョォ!! お前よりもこの僕の方がずっと強いということだ!! 僕が上、お前が下だ!!」

 かなり失礼なことをさっきからディオはジョナサンに言っているのだが、ジョナサンはニコニコ笑顔を崩さなかった。なぜなら、最初このゲームを始めたときはあんなに嫌そうにしていたのに、いざ終わってみたらディオの方がこのゲームにハマっているように見えたからだ。つまり素直には言わないが、結局ゲームに無邪気に夢中になったこの義兄が微笑ましかったのだ。

「(ディオ、よっぽどモミール・ベーシックが気に入ったんだなぁ……)ねぇ、ディオ。もう一回やらない?」

 試しにジョナサンが再戦を申し込むと、ディオはニヤリと笑って言った。

「フン、何度でも挑んでくるがいい! 何度やったところでこの僕にお前が勝てるわけはないだろうけどな!」

 素直にもう一回やりたいって言えばいいのに。とジョナサンはそっと思った。

 そして2人の少年たちは、和気あいあいとしながら再びゲームを始めた。結局、晩御飯の時間になっても食卓につかず遊び続けていた2人に、ジョースター卿のカミナリが落ちることとなったのだった。




長らくお待たせいたしました。ジョジョの奇妙なMTG、モミール・ベーシック編です。

本当はもっとわかりやすいシールド戦や、ドラフト、統率者戦やアーチ・エネミーからでもよかったんですが、個人的にちょっとモミール・ベーシックしてみたかったので優先させてしまいました。

どうもジョナサンは天然で純粋ないい人、ディオ様は邪推しまくりで必死過ぎて可愛いみたいなイメージなんですよね。なんででしょうか。

そしてスクリプト使ってカード出してたらジョナサンのカードが禍々しいのばっかり、ディオ様は緑に白と妙に正直な色ばっかりで笑えました。いつか他の人たちにもやらせてみたいですね。モミール・ベーシック。

ちなみに実際に使用したスクリプトは「MTG モミール・ベーシック スクリプト」で検索すると出てくると思います。オススメです。


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