古道具屋を営む森近霖之助は、いつものように店の中で時間を潰していた。そんなとき現れた八雲紫の言葉によって久しぶりに幻想郷を旅することを決める。半妖としての旅をする彼と各地の実力者たちの出会いを描くハートフルストーリー(バトルあり)
※この小説は、森近霖之助が実は強者で古くから生きている半妖という独自設定を盛り込んでいます。
※一発ネタではありますが、連載の予定です。

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お久しぶりの方はお久しぶりです。
初めましての方は初めまして。
山寺獄寺です。

今回はふと思いついた東方Projectネタです。
少しでも楽しんでいただければと思います。


はじまりはいつも唐突にやってくる

さて……

 

しんと静寂が包む店――店というより半分が家の中となっているが――の中を見る。

本日も異常なし。

客もなし、と。

 

「ふむ」

 

いつも通りとはいえ、一抹の寂しさのようなものが、すぅっと胸を伝う。

 

香霖堂。

それが、僕の営む雑貨屋の名前だ。いや、雑貨屋というよりも物置というのが正しいかもしれない。なんの関連もない道具たちが棚に並んでいるだけの店だ。

用途はわかっていても、使えない道具たち。

ほとんどが外の世界から流れてきたものばかりなのだからそれも仕方ない。

最近は、電気というものがないと使えないものが大多数だ。

はっきり言ってしまえば、僕の住む幻想郷では単なるゴミ。

 

「そろそろ無縁塚で道具を集めてこようかな……」

 

使えないものばかりなのにこうして集めて商品として陳列してしまうのは、単純に僕の(さが)だ。

僕の半妖としての血(・・・・・・・)がそうさせる。

 

そんなことを考えていると、ふと視線を感じた。

 

「む、八雲さんか?」

 

「ごきげんよう、霖之助さま」

 

すっと線の入った空間が開き、そこからふんわりとした衣装に身を包んだ女性が顔を出した。

口元には柔らかな笑みが浮かんでいるものの、どこか人に真意を見抜かせない、不透明さというべきか、そんな胡散くささを感じさせる。

 

「胡散臭いとは、ひどい言いようですわね」

 

「勝手に人の心を読むのもひどいと思うがね?」

 

目をかすかに細めた八雲にそう返すと、彼女は口元を扇子で隠しつつ笑う。

 

「ふふっ、わたくしと霖之助さんの仲ではないですか」

 

「……たしかに、腐れ縁かもしれないな」

 

長い付き合いではあるが、彼女と出会ってしまったのは、そもそもの過ちだったのかもしれない。

 

「そんなことを言うなんてひどい人ですわね」

 

芝居がかった動きで目じりをぬぐう八雲。

わざとらしいのに、彼女にはそれがよく似合う。

 

「それで? 今日はどうしたというんだい? 商品を買いに来られましたか?」

 

そろそろ面倒になってきて、さっさと本題を促す。

こういう時はこちらから切り出さないといつまでたっても話が続かないのは、今までの経験でわかりきっていた。

 

「久しぶりの逢瀬なのですから、もう少し会話を楽しみませんか?」

 

「きみがこうして来るときは大体面倒ごとだからね。嫌なことは早急に済ませてしまうに限るさ」

 

「はあ……仕方ないですわね。

 それでは霖之助さま――」

 

僕の言葉に八雲はため息をつくと、すっと目つきを変えた。

 

「ようやく幻想郷の騒動がいったん収まりましたので、あなたにも自由に行動してもらおうかと思いまして」

 

「それは……いいのかい?」

 

それはつまり道具屋の主(・・・・・)としての森近霖之助としてではなく――

半妖(・・)の森近霖之助として生きるということだ。

 

 

「はい。もう問題ないと判断しました。いままでご迷惑をお掛けしました。これからは霖之助さまの思った通りに行動していただければと思います」

 

「好きに、か……」

 

別段今の生活も嫌いではないけどね……

こうして同族と一緒に生活する日々も悪くはないものだ。

ただ、こうして店にいてたまに人里と無縁塚に行くだけの生活を続けていたから、今の幻想郷のことがわからなくなってきているのも事実。

 

けれど……それでも急な話だ。

 

「八雲さんらしいといえばらしいけど、突然だね」

 

そう言うと、彼女はすっと視線をそらした。

 

「幻想郷が安定した、というのも一つの理由なのですが、もう一つ理由がありまして……」

 

「ふむ?」

 

どこか苦笑まじりというか、優し気な視線で僕を見てくる。

その表情と理由は関係あるのだろうか?

 

「昔なじみの彼女たちが、あなたに会いたがっているのですわ。特に最近はマヨヒガまで押しかけてくるようになっていまして」

 

「なるほど。それは迷惑をかけたね」

 

きっと亡霊と花妖怪の仕業だな。もしかした鬼もかな。

彼女たちのことだ。八雲さんの事情なんてお構いなしで迫ったんだろう。

そう考えると、自然と謝罪の言葉が口から出てくる。

 

「いえいえ。それだけあなたと懇意にする方々が多いということですわ。

 というわけで、ちょうど異変も最近落ち着いてきましたし、霖之助さまに表舞台に立ってもらおうと判断いたしました」

 

「それなら、僕も行動することにしよう。

 ありがとう、八雲さん」

 

「あなたの高名が再び高まることを楽しみにしていますわ」

 

それでは、と言い残して、音もなく空間に開いた穴――スキマ――は閉じた。

彼女がいなくなって、再び音のなくなった部屋の中で、目を閉じる。

自由に過ごしていいと八雲は言っていた。

それなら、幻想郷の実力者たちに挨拶するついでに、昔なじみに顔を見せるとしようか。

今までいろいろ制限もあったけど、ようやく許しも出たことだ。幻想郷の今をしっかりと見ることにしよう。

 

「そうと決まれば――」

 

店の一角にある和紙を取り出し、依代(よりしろ)になるように切る。

そこに墨で文字を刻んでいく。

 

「最初は天魔のところかな」

 

和紙に霊力を通すと、グネグネと形を変えて小鳥の姿をとった。

簡易版の式紙だ。

 

「妖怪の山の天魔に。近いうちに会いにゆく、と」

 

僕の言葉にうなずいた式紙は、ぱたぱたと羽ばたくと開けていた窓から飛び出していく。

その姿を見送って、僕は店を閉めることにした。

 

 

…………………………

 

 

……………………………………………………

 

 

そして店の奥に戻り、旅の準備を始める。

 

「財布と……あとは何かいるかな?」

 

天狗もお酒好きだ。なにか人里でお酒でも買っていくべきだろうか?

いや。そういえば外から流れてきたものの中に日本酒があったな。

僕の飲みかけではあるが、かなりおいしかったものだ。

 

「あとは――一応、戦うかもしれないか」

 

そんなことを考えながら、私室に飾られた日本刀と指輪をとる。

日本刀を左手に持ちつつ指輪をはめ、軽く魔力を流すと喜んでいるような感じがした。

 

「それじゃあ行こうか――」

 

久しぶりの自由に、どこか体が軽くなったような感覚を得ながら、僕は自由の一歩を踏み出した。

 

 

 




ここまで読んでいただいてありがとうございます。

さて、わたくし山寺獄寺ですが、以前はハイスクールD×Dの二次を執筆していました。
最初はもりもり執筆していましたが、完全にプロットもない状態だったため、完全に続きがかけず、頓挫してしまいました。
以前、読んでいただいていただいていた方がいらっしゃったら、申し訳ありません。

その後執筆から離れていましたが、再びこうして筆を執ることにしました。
リハビリです。

そんなわけでして、いろいろ試行錯誤しながらの執筆になると思いますが、もし気に入ってくださる方がいらっしゃればよろしくお願いします。

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