こんにちは。ハルカナツキです。
園田海未の誕生日スペシャルです。

といっても、皆で集まってわいわいお祝いするお話ではありません。
この種の話は僕以外のみなさんが作ってくれるのではないでしょうか。

これは、海未が自分の内側の壁を乗り越える物語です。
アキなる女性が登場します・・・

それではお楽しみください。

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園田海未、生誕スペシャルです。

ある夏の日、作詞という自らの役割に対して思い悩む海未が、ある女性に出会い、壁を乗り越える。
そんなお話です。

感想、批判、叱咤、なんでもお待ちしております。

それでは、どうぞ。


海について語るとき、私の語ること ~Happy Birthday Version~

 

 

半開きの瞳で、机に置かれた時計の針を見つめている。

部屋はとても静かで、秒針が刻む音が聞こえるほどだ。

 

三月十四日、午後二十三時三十七分と数秒。

 

園田海未は普段なら寝ている時刻だが、今日はもう少し起きている必要があった。

日付が変わるまで、眠るわけにはいかない。

一度睡眠に入ってしまうと容易には起きられない自分の弱点を、彼女は自覚している。

だから、布団に入ったりはせず、こうして椅子にすわり、勉強机に向かっているのだ。

 

手元には眠気を紛らわすための文庫本があるが、もはや文字を追うこともままならない。

海未は立ち上がって文庫本を本棚に戻し、机の引き出しを開けてみた。

何でもいい、何か時間をつぶせそうなものがないだろうか。

 

すると、小さなハンカチの上に乗せられた、淡いピンク色の貝殻を見つけた。

指の関節一つ分ほどの巻貝だった。

海未はそれを右手でつまみ、灯りにかざしてみる。

これは何だっけ、と一瞬記憶を探り、思い出す。

 

そうだ。

 

これはあの海で見つけたものだった。

 

アキが教えてくれたこと。

 

あの時気づいたこと、決めたことの証として、自分との約束として持ち帰った、誓いそのものだ。

 

 

 

 

          ********

 

 

 

 

ひどく暑い夏でした。

それは気温もそうですが、それ以外にも理由があったと思います。

連日の真夏日に皆も舌を巻いていました。

学校の屋上などという、日当り抜群の場所で動き回るのは負担が大きく、危険でさえありました。

それでも、暑いきついと文句を漏らしながらも、誰一人として練習をやめる気はなかったのです。

 

ばらばらだった私たちがひとつになって、同じ目標に向けて努力を重ねる時間は、それに到達することと同じくらい価値のあるものだったのです。

あの時は、そんなことをいちいち考えていられたのは、多分希くらいではないでしょうか。

 

 

 

国立音の木坂学院は、毎年夏休みに中学生に向けてオープンスクールを実施しています。

これは、学校を解放し、実際に生徒や施設にふれてもらうことで雰囲気を知ってもらうためのイベントです。

オープンキャンパスの高校版、と考えて差し支えないでしょう。

私たちµ’sは、中学生のみなさんに音の木坂をアピールするために、ライブで楽曲を披露することになっていました。

これはµ’sが九人になってから初めてのライブでした。

 

結果は大成功。

 

オープンスクールに対する中学三年生の反応如何では、音の木坂は廃校が決定してしまうことになっていたのです。

しかしこの危機を跳ね返し、廃校の決定を先延ばしにすることが出来たのです。

 

 

 

さて、これで一安心。

 

とはいきません。

オープンスクールで好印象を与えることが出来たからといって、音の木坂の廃校の方針が見直されたわけではないのです。

さらなるアピールを重ねることが何としても必要でした。

 

そんな中、全国のスクールアイドルの頂点を決める大会である、ラブライブが開催されるとの情報が舞い込んできました。

これは大きなチャンスです。

全国規模の大会でライブを行うことに若干の緊張と恐怖がありましたが、もちろんµ’sはこの大会の出場権を獲得するため、全国ランキング二十位以内を目指すことになります。

 

 

 

目標が明確になることは良い事です。

それにより、努力の方針を改めて考え直すことができ、成果が出やすくなると思います。

 

ですが、結果が努力に伴わなかった場合、そのことを決定的に突きつけられることになるというのも、ゴールが明瞭になることの一側面でもあります。

それを想像することはとても怖いことです。

私はµ’sの歌詞を任されているのですから、なおさらのことです。

また、メンバーが九人になったのは嬉しいことですが、それは私たちの歌う楽曲に込めるべき思いがより増した、ということを意味します。

そもそも、廃校阻止を最終目標に掲げる以上、曲にはそれを願う私たち以外の生徒の思いも反映させなくてはなりません。

 

このことは、真姫やことりも痛感していたはずです。

 

ただ口にしなかっただけで。

 

 

 

夏休みの練習中、私は心の中でいつもこのことを考えていたように思います。

熱さと肉体の疲労で手一杯のはずの私の精神に、歌詞はどうあるべきかという問題が、隙をみては首をもたげてくるのです。

 

絶対に消化できないものを飲み込んでしまったような感覚を覚えました。

 

 

その解消のため、どこか”ここではない場所”へ行こうと思ったのです。

この慣れ親しんだ空間から少し距離を置いてみて、もう一度考えてみようと。

問題が私の内側に潜んでいることはもちろん承知していたのですが、それでも“ここ”と物理的な距離を置きたかったのです。

 

 

 

練習量や内容に絵里先輩の意見も取り入れるようになってから、µ’sには少し休みの日が増えました。

肉体にあまり疲労を蓄積させるべきじゃないわ、と絵里先輩は言いました。

私もそれには賛成でした。絵里先輩や凛や私はともかく、それ以外の六人はあまり運動の経験がないのですから、無理をするべきではないのです。

 

 

 

あの日もそういった理由で練習が休みになった日でした。

今年の夏にしては気温が低く、すこし雲が重たそうな灰色を呈していた、確か火曜日でした。

この日は昼から少し遠くの海へ向かったのです。

山でもよかったのですが、それだと私が本来の目的を忘れて登山を楽しんでしまう可能性があったので、断念しました。

なるべく人の少ない方がいいと考え、静岡県の東端あたりにしようと考えてしました。

 

穂乃果に当日の予定を聞かれたのですが、悩みがあるので海に波の音を聞きに行きます、なんて言えるはずがありません。

弓道の練習だと伝えておきました。どうせ練習は毎日するのですから、まるっきり嘘でもないのです。

 

 

 

その日はいつもより早めに起床して朝食を摂り、武道の鍛錬をし、シャワーを浴び、昼頃に家を出ました。

 

静岡県まで海を見に行きます、と伝えたとき、母は首を少し傾げました。

どんぐりの隠し場所を忘れてしまったリスのような仕草でした。

 

持ち物は財布とサンダルとタオルと作詞ノート。

それと、海に入るつもりはありませんでしたが、服がぬれてしまった時のためのワンピースをバッグに詰め、最寄りの駅へ向かいます。

 

 

 

平日の地下鉄は混みあっていました。乗り換える駅までは数分ですから立っているのは苦ではありません。

しかし、これほど多くの人が同じ車両に乗らなくてはいけないほど東京に人口が集中しているのかと思わずにはいられませんでした。

見知らぬ人間が何人も自分のすぐそばに立っているというのは、満員電車に慣れていない私にとっては快いものではありません。

 

乗客は皆視線を落としていて、無個性に見えました。

 

 

 

JRに乗り換えると混雑は多少和らぎましたが、やはり空いている席はありませんでした。

しかし電車が静岡方面に進んでいくうちに、乗客も減り、座ることが出来ました。

 

向かいの車窓の枠内で、景色が、とは言っても灰色のビル群ですが、緩やかに溶けていきます。

 

車輪がレールに沈む一定のリズムが眠気を誘います。

 

 

 

目が開いたとき、窓の外には緑色が見えました。

陽光を思う存分あび、全力で繁茂する木々の群れ。

少しでも多く光を得ようと必死で枝を広げているようでした。

 

東京から一時間電車で走るだけで、こんなにも文明の進行度が変化してしまうなんて、と小さく感動しました。

 

 

 

もう三十分ほど電車に揺られ、前日にインターネットで調べていた通りの駅で降車しました。

 

その駅には驚くほどに人が少なかったのです。

もちろん数人はいるのですが、東京の駅で見たのとは比較になりませんでした。

この事実だけでも、私は遠くに来たのだと実感するのには十分でした。

 

 

 

人のまばらさに多少の違和感を覚えながら改札を通り、バス停を目指します。

自動販売機でお水を買い、十分ほど待つと目当てのバスが来ました。

時刻表を見ると、なんと一時間に一本しかバスが出ていません。

東京では考えられないことです。

 

 

 

バスには私以外の乗客は五人ほどしかいませんでした。

それもみな高齢の方々で、どうやら顔見知り同士らしく、車内でおしゃべりを始めました。

 

外に目をやると、全国チェーンの店があって少し安堵したような記憶があります。

変な話です。

駅から南へ遠ざかっていくとチェーン店どころか建物自体が少なくなっていき、やがて道路の両脇に水田がみられました。

海風をうけているのか、青々とした稲が皆揃って揺れて、波状の模様を作り出していました。

もっと雲の少ない日でしたら、緑ももっと美しく見えたのでしょう。

 

やがてバスは海岸沿いの道路に出ました。コンクリートの防波堤のその先に、砂浜と穏やかな海が見えます。

弱く打ち寄せる波の音が、エンジンの音に混じって聞こえてきました。

 

 

 

約三十分乗ったあたりでバスを降りました。

 

波の音と強い潮の香りが、海の存在を主張していました。

私は忘れないうちに時刻表をノートに写しました。

バスを一本逃して一時間も待つのは御免です。バス停は灯台のふもとにありました。

 

すぐ近くには無料駐車場があり、そこに自動販売機が五つ並んでいます。

その前のスペースには水道があって、サーフボードを持った殿方が二人、手足の砂を落としていました。

 

よく日焼けしており、髪は金色でライオンのようでした。

 

 

駐車場にはトラックが数台と乗用車が十数台ほど停まっていましたが、その割にあたりに人は見えません。

一台だけ、鮮やかなブルーのスポーツカーが停まっていて、その周囲には誰も車を停めていませんでした。

 

 

 

駐車場でサンダルに履き替え、車の来ないタイミングを見計らって道路を横切り、防波堤に開けられたスペースへと入って階段をおります。

 

一段と潮の香りは強まり、磯臭いと言った方が適切なくらいでした。

 

砂浜を踏みつけるのは久しぶりでした。

砂の下層は水分を含んでいるようで、見かけよりも足場がしっかりしています。

 

 

 

 

ゆっくりと歩いてゆき、海と防波堤の中間のあたりで立ち止まりました。

両手を広げて目をつむり、深呼吸を繰り返しました。

指の間を潮風がすり抜け、手がぺたぺたとしていく気がしました。

肺に限界まで潮風を送り込み、東京の汚れた空気を全部出してしまうように深く息を吐きました。

 

 

 

 

目を開けてみれば、そこには白と灰の砂浜。青と白の海。青と灰の空。

 

その三色と、繰り返す波音、気まぐれな潮風、そして私。

 

これだけで世界が構成されているような錯覚を覚えました。

これほど何もない空間にきたのは、もしかして初めてかもしれませんでした。

 

東京には喧騒があり、ビル群があり、満員電車があり、家族があり、友人がいます。

どちらにもかけがえのない存在が含まれています。決して相容れないけれど、どちらも人間に必要なものであると思いました。

 

 

 

波内側に近づいていくと、視界の左に人が座っているのが見えました。

私は少し虚をつかれました。

先ほどは目に入らなかったからです。

髪は黒く、長さは花陽と同じくらいで、後ろ姿では男性か女性かがわかりません。

 

私はその人の方へ近づいていきました。

 

何故でしょうか、その時の私は警戒心の欠片も持ち合わせていなかったのです。

すると、突風が吹き付け、砂を巻き上げました。とっさに目をかばいましたが防ぎきれず、

 

少し声が出てしまったようです。その人は私に気付き、振り向きました。

 

 

 

「こんにちは」

 

サングラスを右手で外しながら、ハスキーな声でその人は言いました。

 

「こんにちは」

 

と私も返しました。

 

 

 

素顔を目にしても、目の前の人の性別がわかりませんでした。

まるで彫刻の様に色白で整った顔立ちは、あまりにも中性的でした。

力強く見つめてくるその視線も、不愉快ではありませんでした。

 

白いワイシャツに七分丈のジーンズという出で立ちで、サンダルを自分の左へ放り、はだしの両足で胡坐をかいていました。

そしてその前には、一冊のリングノートが、白紙のページを開いておいてあります。

 

 

私たちはずいぶん長い事見つめあっていたようでしたが、沈黙は波の声が埋めてくれました。

 

 

「君はこんなところへ何をしに来たの」

 

 

その人は視線を一切動かさずに、唇だけをひそやかに動かして言いました。

私は当然、返答に詰まりました。

 

 

「あなたは、何をしているのですか」

 

そして質問を鸚鵡返ししました。

 

 

その人は視線をゆっくりと海原へと戻し、

 

「何もない場所に来たかった。時々こうして一人で来るんだよ。そういうことってあるでしょう」

 

と言った。

 

 

ええ、と私は応えました。

この人も私と同じで、“ここではないどこか”へ行きたかったのでしょうか、と思いました。

 

 

 

もう一度私の方へ振り向いて、座ったら、と言いました。

その時私はやっと自分が立っていたことに気が付きました。

私はその人の右隣に腰を下ろしました。

 

 

 

その人はアキという名で、女性でした。

私が性別を聞きにくく思っていたら、私、女だよと彼女は言ってくれました。

内側が見透かされているようでしたが、嫌な気はしませんでした。

私は園田海未です、と名乗ったら、アキは少し目を細めて笑いました。冗談だと思われたのでしょうか。

 

 

「そのノートには何が書かれているのですか」

 

と私は質問しました。

 

 

「詞だよ。歌詞。リリック」

 

アキは応えました。私は驚かずにいられませんでした。とんだ偶然です。

 

 

「詞を書くっていうのは難しい。自分の心の奥底に潜って慎重に言葉を選んで、紡いでいく必要がある。でもそうやって完成させた詞も、他人には一瞬で目を通されてしまう」

 

 

そういってアキは薄く笑いました。こんなにきれいに笑う人を私は初めて見ました。

 

 

「心の奥に潜る、ですか」

 

 

「そうだ。あるいは魂と言ってもいいかもしれない。つまり、自分の内側にゆっくり時間をかけて沈んでいくことが必要だ。自分で自分を探すんだ。自分で“自分の中にいる誰かや何か”を見つけるんだよ」

 

 

私は次に何を言えばいいかわからなくなってしまいました。

 

詞を書くということは、自分の中の誰かを見つけること。

 

“自分の中の皆”を見つめること?

 

 

「それは、どうすればできるようになるのですか」

 

 

「それについての“物語”に目を向けるんだよ」

 

 

物語。

 

物語?

 

 

 

「表現したいもの、つまり歌詞に秘めたメッセージについての物語を考えるのさ。例えば喜びを表現したいとき、それはどこからきて、何のために必要で、どのように使われるのか。そういうことを、私たち皆が理解できる言葉に置き換えるんだよ」

 

 

アキは人差し指で砂に模様を描きながら、続けました。

 

 

「君は、言葉によって何を描きたい?何を詞によって伝えたい?」

 

 

私が伝えたい事。

 

園田海未が伝えたい事。

 

µ’sのメンバー、園田海未が伝えたい事。

 

そうだ。

 

今まで私は、何を考えて詞を書いてきたのでしょう。

 

そこにどんな気持ちを込めたかったのだろう。

 

 

「私は、私は皆の思いをひとつにしなくてはいけません。皆の気持ちを、全部、詞にしたい」

 

 

 

声が震えていました。

 

 

 

「皆、というのは誰のことだい?それで本当に充分なのかな」

 

 

いつの間にか潮が満ちてきて、私たちの足の手前まで波が到達していました。

アキは右手をスコップの様にして、目の前の砂浜に穴を掘っていました。

 

 

「皆というのは、その詞を歌う全員のことだろう。いいかい。君の言ってることは多分正しいよ。でもね」

 

 

アキは手の動きを止めて、こちらを見つめました。

私の目は彼女の視線から逃れることが出来ませんでした。

まるで深海にいるみたいに全身にあらゆる方向から力がかかっているようでした。

 

 

「全員ってのは、海未、君も含めてなんでしょう。君は外側を見つめるだけじゃだめなんだよ。私がさっき言ったでしょう。“君の内側にいる皆”を見つめるんだよ。そこには君が確かに存在している」

 

 

アキはじっとこちら見つめたまま、微動だにしませんでした。

そして私も少しも動くことが出来ませんでした。

 

 

練習中の皆。

 

部室で雑談をする皆。

 

いっしょにお昼を食べる皆。

 

いっしょに歌って踊る皆

 

いっしょに笑う皆。

 

 

私は確かに、皆を見ていました。

 

大切な仲間。

 

大好きな仲間。

 

その風景に、私は確かに存在してしました。

 

 

 

皆の中の私。

 

 

 

穂乃果の中の園田海未

 

ことりの中の園田海未

 

真姫の中の園田海未

 

凛の中の園田海未

 

花陽の中の園田海未

 

にこ先輩の中の園田海未

 

希先輩の中の園田海未

 

絵里先輩の中の園田海未

 

 

 

それだって存在しているはずなのです。

私は皆を表現しようとするあまり、メンバーとしての自分から、一視点としての自分になってしまっていたのです。

 

それではいけなかった。

うぬぼれじゃない。

私だって、皆の一部なんだ。

 

 

µ’sなんだ。

 

 

アキが立ち上がって、私の方を見下ろしていました。

鋭いのに、冷たい感じのしない、不思議な視線でした。

アキの右手にはぬれた砂がひっついていましたが、彼女はそんなことにまったく忖度していませんでした。

 

アキは微笑みながら言いました。

 

 

 

「それじゃあね。園田海未。いいかい、“µ’sの物語”が、君の書く詞になってくれる。そしてそれがメロディーにのって、人々の心に染み入っていく。歌はね、最も効果的にメッセージを伝えてくれる。強い力を持ってるんだよ。だからきっと届く」

 

 

 

それは完璧な微笑でした。

 

砂浜を歩き、アキは海から遠ざかっていきました。

私がやっと彼女の方を振り向くと、もうそこには誰もいませんでした。

 

 

 

日が沈みはじめ、世界は赤く染められはじめました。

アキがいた場所には、リングノートが置き忘れていました。

波にさらされていたはずのそれは、なぜか少しも濡れていませんでした。

ページをめくってみると、どこにも何も書いてありませんでした。

 

そしてアキが掘っていた穴を見ると、そのそこに薄桃色の小さな貝殻がありました。

その時、私は自分が涙を流していることに気が付きました。

 

 

 

それから、どうやって帰ったのか、あまりよく覚えていませんが、恐らくは来たように帰ったのでしょう。

家に着いたとき、夕食の時間はもう過ぎていて、母に少し怒られました。

 

 

 

アキに出会ったあの時から、多少のスランプに見舞われることはあっても、作詞の作業がつらいと感じることはずいぶん減りました。

”自分の中に潜る”というのは慣れてしまえば特別なことではありませんでした。

 

 

 

“詞とは物語だ”と彼女は言いました。

自分の中の、皆を見つめること。

それが、皆の中の私を見つめることになると、アキは知っていたのです。

 

しかし、疑問がひとつ残ります。私はあの日、アキに対して“µ’s”という言葉を一度も口にしていないはずなのです。それなのに、どうしてアキは私たちのことを知っていたのでしょうか。

 

 

 

私はアキがどんな詞を書くのかが知りたいと思います。

 

 

 

例えば、もし彼女なら、“切なさ”と“恋心”を表現するとき、「Snow halation」を書かないでしょう。

 

あるいは、茫漠たる心の広がりや、絶えず生み出されるうねり、突然持ち上がる激情を、“海”の物語として表現するのかもしれない。

 

 

いつかアキに会うことが出来たなら、あのノートを渡して、そこに書いてもらうことにしましょう。

 

このノートと貝殻をもっていれば、いつかまた彼女に会える気がするんです。

 

 

          ********

 

 

 

 

 

カチリ、と時計の長針と短針が12で重なった。

 

それと同時に、海未の携帯が鳴りだす。バイブレーションはきっちり八回だ。

 

通知の内容はわかっている。メッセージが八件。

返事を送り、海未は布団に倒れこんだ。

 

 

 

皆、ありがとうございます。でも、誕生日も楽じゃありませんね。

 

 

 

 

 

 





ありがとうございました。

途中まで読んでくださった方に感謝を
最後まで読んでくださった方には、ありったけの感謝を


不定期でこれからも更新する予定ですが、よろしくお願いいたします。

感想、批判、叱咤、なんでもお待ちしております。

それでは、またお会いしましょう。ハルカナツキでした。

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