死ぬことを望んでいた。
しかし、体の弱い少年は出会う。
一人の女性と。
そして、少年は生きることを選んだ。
ハピナ様主催『第2回ハーメルンSS小説コンテスト』参加作品となっています。
テーマは『悪意なき嘘』
なんの味気もない部屋のなか、僕は何をすることもなく部屋の中から空を見上げていた。
空には灰色の雲が掛かり今にも雨が降りそう。
そんな何の変鉄もない空模様を見るのが、僕の唯一の日課でもある。
だが、そんな日課もあと一月近くで終わってしまう。それはちょっと寂しかった。
僕は生まれつき体が弱かった。
そして、詳しくは教えてくれなかったが心臓に病気を持っているらしい。
その病気事態は竹林のお医者さんの手術と言うものでどうにかなるものらしいけど、体、内臓の機能が弱かったりでそもそも手術が出来ない体らしい。むしろ、良く9歳まで生きれたものだ。と、竹林のお医者さんに頭を撫でられた事もある。
そして、今から半年程前に両親、お父さんとお母さんから三度目の報告が来た。
最初は4歳の頃。記憶は朧気だが両親のあの恥ずかしがらず泣き叫ぶ姿は物心つき始めた僕には強烈すぎた。
二度目は7歳の頃。まあ、4歳の頃と対して変わらない。強いて言うのなら、僕が苦笑いを浮かべる程度には自身の状況を理解していた。と言う事ぐらいか。
そして3度目。半年ほど前。両親が僕の病室を訪れた時の事だ。その顔に浮かぶ表情は生まれて来て既に二度見た表情。ただ、違った事としては泣き叫ぶのではなく。ただ、『大丈夫。大丈夫だからね』と、涙も流さずすがるようにその言葉を呟いていた事だろう。
僕の命は残り一ヶ月近く。
天気を見て、ウサギさん達と話したり、お医者さんと話す。そして、たまには本を読み、両親と話し、また天気をみる。そんな無気力な日々があと一ヶ月近くで終わる。
蝉なんかは成虫になると一週間ほどで死ぬらしいが、蝉もこのなんとも言えない無気力感を味わっていたのだろうか?
今では、僕の体に宿る命が何れだけ重く、そして、軽いのかが分かった。
そもそも、僕は生きていて良いのだろうか?
ふと思い浮かんだ疑問。この疑問自体は割りと良く考える。ただ、何時もなら一分とせずに『ま、いっか』みたいに考えることをやめるのに対し、この時は何故だか頭から離れなかった。
どうせ一ヶ月の命。仮にまた大丈夫だったとしても、両親への負担はどうなるのだろうか?入院費なんかも何れくらいお金が掛かっているのかは知らないけど。けど、お金が少なくてすんでも、ずっと払い続ければ相当なお金の量になるんじゃないのか?
まあ、結論としては『どうせ僕にはなにもできない』と言う形で終わりを迎えた。
そしてまた、一日が過ぎていく。
出来ることなら早く死にたいな。
そんな事を考えながら。
◇◆◇◆◇◆
あれから一週間後。何時ものように目を覚ます。しかし、何時もとは違う所があった。
目の前に知らない女性が立っていたのだ。僕の黒い髪とは対照的な綺麗な白い髪。僕を射ぬくように見つめるその鋭い瞳は蝋燭の炎のような澄んだ赤い色をしていた。
僕がその人に驚き見詰めていると、その人は口を開いた。
『そんなところでずっと寝てるのか?何かの病気なのか?』
まるで、ずっと僕を見てきていた様な口振り。実際話を少し聞いてみたらこの病院に来るたびに僕のことは見ていたらしい。ただ、こうやって部屋まで入ってきたのは初めてみたいだ。
僕は彼女に、僕の患っている病気。病弱さ等を話した。初めて会った人と話すのはとても不思議な体験だった。時間を忘れて、僕の数少ない話題をその日の内に全て出し切って終うほどに。
お姉さんはまた来て、今度は私の話をしてやる。と言って部屋から去っていった。
こうして、何時もと少し変わった時間が過ぎていった。
……どうせ死ぬくらいなら、お姉さんの話を全部聞いてから死にたいな。
◇◆◇◆◇◆
あれから三日後。お姉さんがまた僕の部屋を訪れた。
お姉さんは人里での話をしてくれた。親友がやっていると言う寺子屋。とても行ってみたいと思った。
湖の孤島に佇む大きな紅い館。そこには小さくも強大な吸血鬼と言う存在が住んでいる。ただ、愉快で仲間思いでいい奴だって。
ずっと冬が終わらなかったのは、ふわふわしたお嬢様が春を集めていたから。そんな事が出来るんだ。
幾度となく宴会が行われた事もあったらしい。それは、寂しがり屋な鬼さんが皆を集めたから。
月が偽物になってたりは、この病院が原因。なんでも、結界を強める為にやってたんだって。そう言えば騒がしい日が何度か続いていたなあ。
花が一杯咲いたけど、自然に終わった。竹って花が咲くらしいけど……咲いてなかったよね。
妖怪の山って場所に新しい神社が出来て、妖怪の山に住んでいる天狗さんと色々あった。平和が一番だよ。
天気が可笑しかったのは、天界に住むお嬢様が悪戯したから。でも、本当の目的があったらしいけど、どんな目的があったんだろう?
地下からお湯が吹き出して、一緒に悪霊が出てきちゃったらしい。今では解決されて温泉も安全に入れるらしいよ。
新しいお寺が出来た。そのお寺は妖怪も人間もそれこそ神様だって平等だって言ってるんだって。
他にも紅白の巫女さんの話や、向日葵が咲き誇る太陽の畑の話。妖怪の山に住むちょっと変わった天狗さんの話……。
僕には想像も付かない沢山の話を聞かせてくれた。
もし、この体がこんなんじゃなかったら、僕はその景色をこの目で見れたのだろうか?
けど、この状況を嘆いたって何も変わらないんだ。
お姉さんはまた今度来てやるからな。そう言って、部屋を去っていった。
僕はその背中に手を振った。
ああ、次は何時来るんだろう?早くその日が来ないかな。
僕は胸のなかで弾けるワクワクを感じた。
死ぬ前に楽しい話が聞けて僕は幸せ者だ。
◇◆◇◆◇◆
お姉さんが来た。
この前の日から丁度一週間後だ。もう来ないのかな……と、不安にもなったけど、お姉さんは来てくれた。
今日はどんなお話をしてくれるのだろうか?胸に大きな期待を抱きながら、僕はお姉さんに話し掛けた。
けど、返ってきた言葉は僕の期待とはかけ離れたモノだった。
『お前を助けられる方法がある。けど、お前は人間じゃなくなる。それでも良いなら……三日後に答えを聞かせてくれ』
そう言ってお姉さんは出ていった。
訳が分からなかった。お医者さんは何も出来ないって言っていた。僕も死ぬことに抵抗はなかったし、死ぬ事を望んでいた。
僕は生きても良いのだろうか?そんか筈がない。色んな人に迷惑を掛けた僕なんかが生きていい筈がないのだ。
そうさ。僕はこのまま死ねばいいんだ……僕は早く……死ねば…………いい、んだ……
僕は…………生きて……いいのだろうか……
『子供たちがやんちゃでな。いやー世話をするのは大変なんだが、これが結構楽しいんだよ』『紅い館には吸血鬼が住んでいてな?言ってることは凄いんだろうが、ちょっとからかうと直ぐに拗ねちまってな』
僕は………………
『冬が終わらなかった時は大変だった。なんでも、どっかのお嬢様が大きな桜を咲かせるために春を集めってたんだってよ』『冬が終わって春が来た。けど、花見だ花見だって何度も何度も宴会のドンチャン騒ぎ。寂しがりやの鬼が人を集めてたんだ』
………………いき、たい
『月が偽物になってたときもあったな~。しかも原因がこの病院。結界の修復だかなんだかをしてたらしいぜ』『季節外れの花が沢山咲いてな―――竹の花?ああ、確かに咲いてはなかったな』『雨が降ったりと思ったら快晴になったりした時があっただろ?それは天界からやってきたお嬢様の悪戯だったらしい。けど、本当の目的があったらしいけどな』
………………生きたい
『間欠泉が吹き出してきたこともあったな。まあ、今じゃ特に害もなくただの温泉になってるが』『最近では新しい神社が出来たな。命蓮寺……だったか?人も妖怪も神様も皆を平等を謳ってる』
生きて、その景色を見たい
『異変解決はだいたい博麗の巫女って奴がやってるな』『景色がいい場所……この竹林も結構綺麗だとは思うが……ああ、太陽の畑。彼処はスゴいぞ。辺り一面向日葵だったからな』
生きたい!!
決心を付けるなんて、三日もいらなかった。
◇◆◇◆◇◆
三日後。
お姉さんが来た。お姉さんは聞いてきた。
『決まったか?』
僕は力強く頷いた。お姉さんは『そうか』と、小さく呟いて、小瓶を取り出した。
『これは、蓬莱の薬。これを飲めばお前は永遠の命を得る。人間を辞めるんだ。それでも、良いんだな』
もう一度、強く頷いた。そして、お姉さんは僕に小瓶を渡してきた。小瓶は驚くほど軽く、こんな小さいモノで僕の命は助かるんだ。
僕はその薬を飲んだ。体に変化はない。ただ、少しだけ気分がよかった。なんて言えばいいのか、体が軽い。
『薬が効くまで少し時間が掛かる。だから、少し眠ってな』
『お姉さん、僕が元気になったら寺子屋に連れていって』
『……ああ。どこでも連れていってやる』
『本当!?なら、紅魔館に、大きな桜の木の所に、間欠泉に、太陽の畑に』
『ああ。何処でも連れてってやる。約束だ』
『うん。約束……おやすみなさい。お姉さん』
『……おやすみ』
お姉さんは目の端に涙を溜め、僕の頭を撫でながら笑顔でそう言った。
僕は安心して、目を閉じた――――――――――――――――
◇◆◇◆◇◆
心臓の音は聞こえない。
呼吸もしていない。
肌は白く、冷たい。
『終わったかしら』
『……ああ』
『ごめんなさいね。辛い役目を押し付けちゃって』
『…………苦しませない為、だったんだよな』
『ええ。こうしないと、死ぬときに苦しいでしょうからね。今までもずっと薬付でなんとかなってたけど、流石に、ね。せめて、体が強かったらどうにかで来たんだけど』
『…………』
『ご両親からのお願いでもあるわ。これ以上は家計が危ういってね』
『…………何時ぶりかな。こうやって、自分の手で誰かを殺したのって。私も弱くなっちまったもんだ』
少年の頭を撫でるために腕を持ち上げるが、腕はプルプルと震えていた。
『ご両親に報告してくるわね』
その後私はご両親から謝罪された。こんな役目を押し付けて申し訳ない、と。
そして、息子を救ってくれてありがとう、と。
止めろ。止めてくれ……私はただ、彼を騙して、嘘を付いて、殺しただけなのだから。
私はただの、人殺しなのだから……。
なんか楽しそうなことやってる。
よし、参加しよう!!
と、書いてみました。
一応『悪意なき嘘』を自分なりに考えて書いたつもりです。
実際自分が同じことをしたら……どうなるんだろう?正直まったく想像がつきませんでした。
駄文でしたが、楽しんでいただけたら幸いです。