駐在警官の勤務日誌   作:みたらし饅頭

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第二誌「衝動的行動」

時計が4時15分を指す頃、盛田は駐在所で椅子に座って外を眺めていた。

時折、腕時計に目を落としながら日の出を待っている。

 

「そろそろかな?」

 

盛田はそう呟くと、椅子から立ち上がって駐在所を出た。

駐在所を出た彼は、パトカーに乗り込むとパトランプのスイッチを切った。

 

「誰かが気付いてくれるといいが・・・・ってあ!」

 

この時盛田はあることに気づいた。

確かにパトランプは夜間に目立つ。

だがしかし、それが海上自衛隊や海上保安庁ではなく深海棲艦が見ていたとすると進行してくる可能性が出てくる。

 

「・・・・やらかしてしまった。」

 

盛田は自分の軽率な行動を深く後悔し、パトカーの車内で頭を抱えた。

一方、川内と神通が率いる「夜身島偵察隊」は、午前零時に盛田らがサイレンを聞いた港に到着していた。

 

「やっぱり・・・人気は無いですね。」

「だねぇ・・・地図では光があったのは駐在所のところだよ。」

 

神通と川内が状況確認をしている間、駆逐艦の四人は周囲を警戒していた。

港の中にいるという逃げ場が無い状況で、もし深海棲艦の奇襲を受けようものなら手も足も出ずに壊滅させられるだろう。

 

「取り敢えず沿岸に沿って駐在所まで行ってみようか。何かあったらその場その場で考えよう。」

「おおざっぱすぎます・・・・。」

 

妹の突っ込みなどどこ吹く風な川内は、颯爽と海に飛び降りた。

神通は、呆れつつも姉の後を追いかけてついていった。

そして一行は沿岸部を通りつつ、駐在所前の海にまでたどり着いた。

丁度、上にある道路から下に降りる階段が設置されている為、簡単に壁の上に登れそうだった。

それを確認した川内は、深雪、睦月、夕立、磯波、神通の順番で並んでくるように指示を出してから、一段一段階段を登っていく。

川内が姿勢を低くしてこっそりと覗き込むと、そこにはパトカーに鍵を掛ける盛田がいた。

 

「警官?」

「人ですね。」

 

川内が服装から盛田の役職を判断している横で、睦月がつぶやいた。

睦月たちも段差を利用して姿が見えないようにこっそりと覗き見る。

盛田が鍵をかけて駐在所に戻ろうとした時、深雪の鼻がムズムズし始めた。

本人はまずいと思い、押さえようとするが遅かった。

 

「ぶぇっくし!!!」

「!?」

 

くしゃみに気づいた盛田は即座に聞こえた方角に懐中電灯を向ける。

川内たちはすぐに身を隠したため光が彼女らを照らすことは無かったが、盛田は怪しんだ。

 

「・・・・大人しく出てきなさい。」

 

盛田は最悪の場合に備えて、心許無いが拳銃をホルスターから取り出して握り締め、くしゃみが聞こえた方に銃口を向ける。

盛田は、ゆっくりと踏みしめる様に川内たちに近づく。

川内たちは焦っていた。

最悪自分たちに向けて発砲されてしまう。

その時、深雪が偶然にも階段に落ちていた鉄パイプを見つけて手に取った。

手に取った瞬間、深雪は行動を起こしていた。

 

「うわぁぁぁぁ!」

「がっ!?」

 

深雪と盛田の短い悲鳴が聞こえた後、懐中電灯と拳銃、盛田の身体がコンクリート製の道路に落ちる音が響き渡った。

咄嗟に行動を起こしてしまった深雪は自分のやったことを後悔した。

 

「あぁ・・・どうしよう磯波・・・こういう時って110当番?いや救急車?」

「落ち着いて深雪お姉ちゃん!110当番しても殴ったのおまわりさんだしここに病院は無いよ!」

 

パニックを起こしている深雪を磯波が落ち着かせようとしている横で、睦月と夕立は盛田の容体を診ていた。

 

「川内さん、お巡りさんは生きてますよ。」

「脈もあるし呼吸もしてるっぽい。」

 

盛田の容体を聞いた川内は次の行動を二人に指示した。

 

「了解。じゃあ取り敢えず、警察手帳の番号を無線で確認してもらって。」

「了解。」

「了解したっぽい。」

 

川内の指示に従って睦月と夕立は無線で盛田の警察手帳に掛かれた番号を確認してもらうよう鎮守府に連絡を入れてる。

すると数分後に返事が帰って来た。

 

「川内さん。大淀さんが警視庁に確認して貰ったけど、この番号とこのお巡りさんは別人っぽい。後、始末書は覚悟しろって言ってたっぽい。」

「うげぇ・・・始末書大っ嫌い。ともかくこれでこの警官が怪しくなったね。といっても人間っぽいし、ここは公務執行妨害で逮捕される前に退散しよう。」

「殴るだけ殴って放置っぽい?」

「仕方ないでしょ?とりあえず総員退散!」

 

川内が言うと全員、盛田をその場に放置して階段を下りて海へと逃げるように走った。

そして、放置されて5分ほどしてから盛田は意識を取り戻した。

 

「あぁぁぁ・・・・効いたなぁ・・・。」

 

頭を押さえつつ盛田は立ち上がる。

起き上がった時にカタカタと音がする方を見ると拳銃が吊り紐にひっ張られて引き摺られていた。

盛田は拳銃を拾ってホルスターにしまうと懐中電灯と殴られた時に落とした制帽を拾って被り直し、周囲を見回した。

 

「マル被はいないか・・・・監視カメラの映像を確認するしかないな。」

 

盛田はこんなこともあろうかと、署に許可を得た上で自費で監視カメラを配備していた。

彼は早速、駐在所に戻って映像を確認し始めた。

 

「えっと・・・今は4時36分だから4時10分から回すか。」

 

盛田はパソコンに映し出された映像を食いつくように見た。

すると丁度、自分が階段に向かって歩き出す場面になった。

ゆっくりと映像を動かすと、自分を殴った犯人を見つけた。

 

「これは・・・・深雪?」

 

艦これユーザーである盛田は自分を殴った犯人を一発で見抜いた。

今、静止している映像で鉄パイプを振りかぶっているのは艦娘の深雪だった。

そのことに驚きが隠せない盛田だったが映像を再び動かした。

 

「おいおい・・・川内に神通、夕立に睦月、磯波とは水雷戦隊じゃねえか・・・しかも川内と神通、夕立、睦月は改二だし。」

 

面子に驚きを隠せない盛田は6人が階段を下りて海に逃げ出すのを見た後、映像を終了した。

そして頭を抱えながら今後について考えた。

 

「はぁ・・・少なくとも警察手帳の番号は確認されてる。恐らく本庁には僕の名前が無い。なら相当まずいぞ・・・警官の格好した登録のない奴が拳銃なんかの装備を持っているとなれば本庁から銃対課が来てもおかしくない・・・・・。」

 

盛田は今後起こるであろう出来事に頭を悩ませた。

その頃、川内ら「夜身島偵察隊」は海上を突き進んでいた。

 

「さーて面倒ごとになったなぁ。」

「川内姉さん、どうするんです?」

 

神通が川内に尋ねると、川内は軽く答えた。

 

「とりあえず提督には報告しないとね。最悪あそこであの警官を拘束してもよかったんだけど。」

「川内さんって、何気に不穏なこと言いますよね・・・・。」

「ともかく報告してどうするんですか?」

 

睦月が苦笑いしている傍で神通が川内に聞いた。

 

「ま、後の事は提督任せだよ。相手は国家組織、国家権力の端くれだけどさ。本当に警察官だったら私ら全員解体処分かもね。」

「あぁ~~・・・・なんでなんなことしたんだろ・・・。」

「姉さん!」

 

川内の口が滑ったことにより深雪は再び頭を抱える。

そのことに神通は怒り、川内を強く呼んだ。

 

「おっと失敬失敬。」

 

にやけつつ進む川内らの視界には横須賀の街の光が入り始めていた。

そして、日も彼女らを照らすように上り始めていた。




「夜身島案内地図」がアーカイブに追加された。

「盛田孝則の警察手帳」がアーカイブに追加された。

「鎮守府との通信記録」がアーカイブに追加された。

「S&W M37エアウェイト」がアーカイブに追加された。




深雪の行動については後々明かされます。
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