駐在警官の勤務日誌   作:みたらし饅頭

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第三誌「接触」

川内ら「夜身島偵察隊」が帰還して数時間後。

事情を聴いた提督は即座に「第一艦隊」に出撃命令を下した。

出撃ドックにいる面子は横須賀鎮守府の中でもエリートとされる存在だ。

構成員は吹雪、赤城、加賀、伊勢、日向、綾波だ。

全員が「改」以上に改装されており、吹雪と綾波は「改二」になっている。

 

「夜身島に警察官がいるとは・・・。」

「本当に人なのかも怪しいですがね。」

 

話し合う着物にそれぞれ赤と青の身に須加ほどの長さの袴を身に着けている二人は、航空母艦の赤城と加賀だ。

赤城は提督から知らされた情報を怪しんでいた。

無論、自分の仲間が嘘を報告するはずがない。

しかし、相方である加賀も怪しんでいた。

その隣では彼女らの護衛艦とこの第一艦隊の旗艦を兼任する特型駆逐艦の吹雪は呼吸を整えていた。

 

「ふぅ・・・大丈夫。」

 

吹雪はまるでまじないをかけるかのように繰り返す。

これが彼女なりの落ち着き方だった。

心を落ち着けた彼女は全員がそろっていることを確認する。

それと同時にブザー音が鳴り、吹雪たちの乗った昇降機と出撃ゲートがブザー音と共に動き出した。

昇降機がある程度まで降りると停止し、照明が落ちる。

 

「特型駆逐艦吹雪!出撃します!」

 

吹雪の言葉の後、床からプレートが飛び出し出撃の文字が浮かぶ。

吹雪たちはそれに飛び乗る。

すると、アームが伸びてきて彼女らの艤装を装着していく。

そして取り付けが終わった者から海面へと射出される。

出撃ドックの天井に備えられている名札が一昔前の反転フラップ式案内表示器のようにパタパタと変わり艦娘達の名前が表示され、鎖が巻き上げられて各艦娘の艤装が海中から飛び出し、装着される。

最後はゲートを抜けて、艦娘たちは海へと出て行った。

その頃、夜身島では盛田が部屋の角に置いてあるロッカーに手をかけていた。

 

「・・・使わなければいいんだがな。」

 

盛田は懐から鍵を取り出すとロッカーを開錠じ、中の南京錠も外す。

ロッカーの中には三丁の散弾銃が置かれていた。

ミロク 5000T、モスバーグ M500、レミントン M870と大御所揃いの中、盛田は一丁の散弾銃を手に取った。

 

「・・・さて、この服装で散弾銃を持つとはね。」

 

盛田が手に取ったのはモスバーグ M500。

放熱用ハンドガードを装備してマウントベースにドットサイトが載せられた姿はかなり武骨であろう。

盛田は何度かフォアグリップを前後させ、問題がないことを確認すると弾を二発込めた。

あえて薬室に装填しないのは、暴発予防と脅しのためである。

もしこちらに攻撃してくる存在があれば、盛田は散弾銃を使うつもりだ。

散弾銃の装填音は散弾銃が恐ろしく感じる要因の一つでもあるため、腰にある拳銃を構えて「撃つぞ!」と叫ぶよりよっぽど効果的なのだ。

弾を込め終えた盛田は散弾銃片手に駐在所から出ようとした。

その時、盛田は声をかけられた。

 

「孝則君、猟銃なんて持ってどうしたの?」

 

美沙子だった。

盛田は微笑みながら美沙子に言う。

 

「大丈夫です。少々周りを巡回するのと無線交信を試みてみるだけです。すぐに戻りますよ。」

「そう・・・・無茶はしないでね。」

「分かってます、それでは行ってきます。」

 

盛田はそう言って駐在所を出た。

午前6時ということもあって周囲はかなり明るい。

もう懐中電灯なしでも大丈夫そうだ。

 

「さて、交信を試みよう。」

 

盛田はパトカーの鍵を開けて散弾銃をパトカーに立てかける。

そして運転席に座って無線機で交信を試みた。

 

「此方警視庁、夜身島駐在所駐在警官の盛田孝則巡査長。この通信を聞いている人へお願いがあります。現在、自分と島民2名が夜身島島内に取り残されています。至急救援を求めます。繰り返します・・・。」

 

盛田は繰り返し救援を求めた。

しかし彼の思うような応答は無くノイズしか流れて来なかった。

何度か繰り返したが、やがて諦めて無線を切った。

 

「はぁ、結局来たのはあの水雷戦隊だけ・・・この島から出られるのか?」

 

盛田はため息をつきながら呟いた。

第一艦隊は既に夜身島に上陸していた。

港から上陸した第一艦隊は周囲を警戒しつつ、盛田のことを探していた。

 

「人気は無いですね・・・・伊勢さん、どうですか?」

「どうやらこの辺りにはいなさそう。だけど地図によればここから少し行ったところに駐在所があるって。」

 

伊勢からの情報を聞いた吹雪は提督から聞いた情報と合致している為、そこに向かうことにした。

 

「ではそこを目指しましょう。」

 

方針が決まった第一艦隊の面々は早速行動を開始することにした。

そこまで距離がないと思った吹雪は歩いていくことにし、僚艦の5人も吹雪の後を歩いていく。

数分間歩き続けると、赤い電灯が灯っている建物を発見した。

近くの建物から覗くように6人はその建物を眺めた。

 

「夜身島駐在所・・・あそこが川内たちが警察官を発見したところだな。」

「そうですね日向さん、まず私が行って話してきます。」

「えっ!?大丈夫なの吹雪ちゃん?」

「賭けですが・・・試してみるしかないです。」

 

綾波に言い切った吹雪は艤装をその場に置いて駐在所へと歩み出した。

そして駐在所の入り口まで来ると深呼吸をしてから引き戸に手をかけてから引き戸を開ける。

だがそのあとの動作は固まった。

駐在所内から散弾銃の装填音が鳴り響いたからだ。

吹雪は即座に両手を上に上げた。

そこにいたのは散弾銃を持った盛田だった。

吹雪は服装から警官だと判断し、話しだした。

 

「わ、私は怪しいものじゃないです!日本海軍横須賀鎮守府所属の特型駆逐艦吹雪です!」

「・・・・・すみませんでした。昨日、巡回中に貴方に似たような方に暴行を受けまして。此方としても警戒するに越したことは無いので。」

「はぁ・・・びっくりしました・・・。」

 

盛田は散弾銃を下ろして事情を話す。

吹雪は緊張が解けて一息ついた。

盛田は周囲を見回してから吹雪に言った。

 

「ほかに仲間は?まさかあなた一人で来たわけでもないでしょう?」

「えっと、少し待っていただけますか?」

 

吹雪はそう言って建物の陰に走って行った。

少しすると僚艦の5人を引き連れてきた。

 

「どうもみなさん。夜身島駐在警官の盛田孝則巡査長です。」

「航空母艦赤城です。」

「加賀です。」

「航空戦艦伊勢よ。」

「同じく航空戦艦日向だ。」

「駆逐艦綾波と申します。」

 

盛田は敬礼をして全員の顔を見た後、6人を駐在所へと招き入れた。

散弾銃を机の上に置いてから、奥に置いてあったパイプ椅子を取り出して皆を座らせる。

それから旗艦の吹雪との対談を始めた。

 

「ではまずあなた方は日本海軍所属ということで間違いありませんね?」

「はい、間違いありません。」

 

吹雪の言葉を聞いて盛田は頭を抱えた。

 

「やっぱりか・・・・始末書どころか実刑だな。」

「あの・・・・どうしたんですか?」

「気にしないで・・・それで本島にやってきた目的は何ですか?」

 

盛田が目的を聞くと吹雪は思い出したように言い出した。

 

「あっはい。目的はあなた方の保護です。発見次第、連れてくるようにと提督から指示を受けていまして。」

「分かりました。では連絡をしたうえで島民の移動をお願いします。」

「巡査長さんはどうするんですか?」

 

吹雪の問いに盛田は苦い顔をしていた。

正直、彼がどこへ行くべきなのか本人も分からない状況だった。

 

「どうすべきか・・・ここは僕のいた世界じゃありませんが駐在警官である限り本島から出るのはどうかと・・・。」

「でも島はこんな状況ですし・・・少し連絡してもいいですか?」

「えぇ、かまいませんよ。」

 

盛田が許可すると吹雪は連絡を入れるために駐在所の外に出た。

盛田は駐在所にいる五人をもてなすために常備しておいた菓子類とお茶を出した。

五人がお茶と菓子を楽しんでいると吹雪が連絡を終えて戻ってくると叫び声をあげた。

 

「今して移管連絡しまし・・・って何食べてるんですか!」

「いやー盛田巡査長が美味しい茶菓子を出してくれてさ~。」

 

伊勢が吹雪に事情を説明すると盛田は吹雪の分を差し出した。

 

「どうぞ、吹雪さんの分ですよ。」

「あっ、ありがとうございます。・・・・美味しいです!・・・ってそうじゃないですよ!!」

 

綺麗なノリ突っ込みが炸裂したところで吹雪の怒りは頂点。

プンスカという擬音が聞こえそうなふくれっ面でへそを曲げてしまった。

やらかしてしまった盛田は唯々謝るしかなかった。

 

「いや・・・すみませんでした。ついやってみたくて・・・。」

「・・・・別にいですけど。司令官に頼んでみたら救援用に輸送艦のおおすみを派遣してくれるそうです。荷物をまとめておいてほしいと」

「あっ、僕が行くのは決定事項なんだね。」

 

いつの間にか盛田が島を出ることが決定していたが、それは軽く流された。

島を出ることが確定したことを聞いて盛田は香苗と美沙子に伝えるために奥の居住区に移動して二人に伝えた。

二人は手荷物がなく、着の身着のままで移動することが決定し、盛田は少ない自分の荷物をかばんに詰め始めた。

もともと食器なども多く持ってきていない上に、家具も用意されていたもの。

自分が持ち込んだものとロッカーを外に出して、パトカーのトランクに積み込むことにした。

 

「よっこいしょ。これで荷物は全部かな?」

 

盛田は香苗と美沙子の二人をパトカーに乗せた後、すべての荷物を積んだことを確認すると、トランクをしっかりと閉めた。

そしてロッカーをどうするか考えていると、偶然にも放置されていたリヤカーが目に入った。

 

「・・・そういえば置きっぱなしだったっけ。」

 

盛田は、早速そのリヤカーを持ってきてパトカーにワイヤーで固定した。

そしてその上にロッカーを載せてロープで動かないようにした。

作業が終了するころになると艦娘たちがやってきた。

 

「盛田さん、あと数十分でおおすみが到着するそうです。」

「分かった。じゃあ皆さんは・・・・リヤカーに乗ってください。誰か一人だけ助手席に座れますが・・・・。」

 

吹雪から報告を聞いた盛田がそういうと、艦娘たちは乗り心地がいい助手席を狙い始めた。

公正な勝負としてじゃんけんで勝負をした結果、綾波が勝利した。

 

「や~りま~した~!」

 

こうして綾波が助手席に座ることになり、ほかの艦娘はリヤカーに乗ることとなった。

出発の準備が整うと全員が乗り込み、盛田は駐在所の電気とガス栓を止めたことを確認したうえで鍵をかけてからパトカーに乗り込んだ。

 

「それじゃあ出発します。」

 

盛田はそう言ってパトカーのエンジンをかけた。

エンジンが動き出したことを確認するとクラッチを外してギアを入れてパトカーを走らせた。

十数分後、パトカーは無事に港にたどり着いた。

盛田はパトカーを降りて運転席の横に置いておいたモスバーグM500を手に取る。

いつでも構えられるように持って状態でおおすみを待つことにした盛田は海を眺め続けた。

少し経った頃、一隻の艦が水平線から近付いてきた。

そのすぐ後に無線機から声が流れてきた。

 

『此方は日本国海上自衛隊、護衛艦隊第1輸送隊所属「おおすみ」艦長の松野智康一等海佐である。救助を求めるものは応答を願う。』

 

盛田は無線機を手に取って返答した。

 

「此方警視庁、夜身島駐在所駐在警官の盛田孝則巡査長です。現在島民二名と艦娘六名とともに夜身島港に待機しています。」

『了解。これより接舷する為、退避していただきたい。』

「了解しました。救助、感謝します。」

 

こうして盛田らは海上自衛隊に救助されることとなった。




「ミロク 5000T」がアーカイブに追加された。

「モスバーグ M500」がアーカイブに追加された。

「レミントン M870」がアーカイブに追加された。

「提督との通信記録」がアーカイブに追加された。
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