セカンド スタート   作:ぽぽぽ

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第23話

 

 廊下を歩きながら、窓ガラス越しに外を眺める。青く、雲一つない空だった。曇りや雨が嫌いと言うわけではないが、やはり晴れが一番だと思うのは、おかしいことではないだろう。空を見て視界を青々とするだけで、少し気持ちが穏やかになる気がする。

 

「……七海くん! 」  

 

 特に何かを考えることもなく目的地の学園長室に向かっていると、前からきた高畑先生がにこやかに片手を上げて私の名前を呼んだ。私は会釈してから挨拶をする。

 

「おはようございます」

 

「おはよう。どうしてここに? 」

 

「学園長に少し用がありまして、授業の前に話をしようかと。高畑先生は? 」

 

「新しい先生の出迎えをちょっとね」  

 

 いつかの噂は本当だったようで、私達のクラスには高畑先生に代わって新しい先生が来るらしい。随分と中途半端な時期であったが、学園側には色々と事情があるようだ。  

 感情表現が豊かな私達のクラスでは、数日前までは高畑先生が担任でなくなってしまう寂しさが確かに漂っていて、悲しいね、と高畑先生の顔を見るたびに呟く生徒が何人もいた。彼は気の良い人であったし、私たちを頭ごなしに叱り付けるということもなく、一人一人の生徒の特長をよく理解していた良い教師だった。

 

 ただ、新任教師が着任するとなった今や、生徒たちの興味は完全にそちらに向き、新しい先生に対する期待感で教室が完全に浮き足立ってしまっていた。日にちが近づくにつれて、先日までとは打って変わり、顔を合わせた生徒たちは、楽しみだね、と言い合うようになっていた。

 高畑先生には申し訳なさがあるが、彼女らの想いも仕方のないことではあった。

 新しい環境の変化を目の前にすれば、それに対する想像で胸がいっぱいになるものだ。かく言う私も新しい教師がどんな人なのかは気にはなっていた。

 

 しかし、明日菜に限ってはずっと悲壮感を醸し出していた。先生が代わるといっても、高畑先生が学校をやめない限り校内で会うことは出来るのだが、明日菜にとっては想い人が担任の先生というポジションというのが嬉しかったのだろう。

 

 

「…………新しい先生は、とても元気で前向きなんだけど、少し先行きが不安でもあってね」  

 高畑先生が、苦笑混じりに言う。ちょっと明るめに、冗談にも聞こえるように言っていたが、私には高畑先生が本当に心配していることも汲み取れてしまった。  

 この中途半端な時期に担任を交代するということに、高畑先生はどんな思いを抱えたのだろうか。私の勝手な考えかもしれないが、彼は私たちのことを本当に好いてくれていたと思う。新しい先生がどのような人かは分からないが、彼ならばいい加減な人とは代わろうとしないだろうが、どんな人であろうと彼は私達の心配をする気がした。

 高畑先生を担任としてから約2年という時期しか経っていないが、皆に甘くて時々厳しい、彼の優しい性格は分かっているつもりだ。

 

「……一人の生徒にこんなこと言うべきではないかもしれないけどさ。…………もし彼が困っていたら少しだけフォローしてやってくれるかい? 」

 

 若干の申し訳なさを込めながら、高畑先生がそう言ったので、私は頷く。

 

「……任せてください。高畑先生も、時々様子を見に来て下さい。明日菜が喜びますよ」  

 

「……そうだね。見に行くよ」

 

 高畑先生はやんわりと笑って、私の元から離れていった。  

 

 

 

 

 ○  

 

 

 

 

 もう見慣れてしまった学園長室の扉の前に来ると、明日菜の騒がしい声が聞こえた。何故彼女がこの部屋にいるかは分からなかったが、ひとまず私は扉をコンコンと二度叩くと、こもった声で返事がくる。

 

「……お、噂をすれば、ちょうどじゃの。七海君、入ってよいぞ」  

 

 毎度ここに来てノックするだけで私が来たことは言い当てられていたので、名指しされたことに今更驚くことはなかった。しかも、どうしてわかるのですか、と尋ねた時返ってきた答えが、なんとなく分かるのじゃ、という何ともいい加減なものだったのだから、再び理由を聞きなおそうという気もなかった。

 学園長、というか魔法使いがわりと何でもありの存在であることを、私は最近やっと認識できてきて、段々と慣れてきてしまっている。  

 

 失礼します、と一声かけてからゆっくりドアを開ける。そのまま部屋を見ると、そこには明日菜とこのかの他に、1人の少年がいた。  

 

 外人のような顔つきをして、赤色の髪で可愛らしい眼鏡をかけた少年は、私が今まで見たことない子であった。

 

「……お取り込み中なら出直しますが? 」

 

「構わんよ。というかお主にも関係ある話しておったのじゃ」

 

「……その少年は? 」  

 

 私はちらりと少年に目をやってから尋ねる。

 

「うちらのクラスの新しい担任やってー」

 

「…………はい? 」  

 

 ほわわんとした雰囲気であっけらかんと言ったこのかの言葉を、私はうまく理解出来なかった。

 

「ねぇ信じられないでしょ! 七海も何かいってやってよ! 」  

 

 明日菜が私の両肩をがっしりとつかんでぶんぶんと揺らしてくる。あまりの必死さがちょっと怖い。  

 私がもう一度少年の方に目をやると、その視線を受け止めて、少年は少し緊張した顔で答える。

 

「イギリスから来ました、本日より教師をさせてもらうネギ・スプリングフィールドです!宜しくお願いします! 」

 

 

 ネギという少年は、私深々と頭を下げながらそう言った。私はゆっくりと学園長を見て、尋ねる。

 

「…………本当ですか」

 

「本当じゃ」

 

「…………本気なんですね」

 

「勿論じゃ」  

 

 私は表情の読めない学園長を前にして、軽くため息をつく。……高畑先生が先行きを不安にしていた理由はこういうことだったのか……

 

「ネギ先生。私は2―Aの明智 七海です。宜しくお願いします」  

 

 私がネギ先生の前に手を差し出すと、ネギ先生は、ぱぁっと表情を明るくしてから私の手を握った。

 

「ちょ、ちょっと七海! いいの!? こんなんが先生で! 」

 

「といっても、どうするんだ? ネギ先生に用はないといって故郷にもう一度帰ってもらうのか? 」

 

「そ、それは……」

 

「かわいそうやよ明日菜ー」  

 

 イギリスは遠いんやよ、と木乃香が続ければ、明日菜は、うっと息を詰まらす。子供が嫌いと言っても、彼女の根は優しいためこういう言い方をすればたじろぐのは分かっていた。

 

「それに、高畑先生もネギ先生なら大丈夫と後任にしたのだろう。高畑先生の想いも汲んで、少し様子を見るくらいしてあげないか? 」

 

「……う、うーー」  

 

 少し卑怯だが、加えて高畑先生の名前まで出すと、明日菜は可愛い声で唸り出してしまった。 頭を抱える明日菜を置いといて、私はネギ先生の方を振り替える。  

 

 当然、明日菜の気持ちも勿論分かる。生徒にとって先生とは頼りになる存在であるべきなのに、それが自分より年下ともなれば、文句の一つは言いたくなるだろう。いくら勉学が出来て教え方が上手だと言っても、年下に教えを乞うというのは誰でも抵抗があるものだ。

 ……私のクラスにはその事で文句を言うよりも、子供先生に好奇心を抱く者の方が多そうだが。  

 とにかく、明日菜の言いたいことも分かるが、私が今彼に確認したいことは、一つだけであった。  

 

 私は、すっと膝を落とし、ネギ先生と目線を合わせた。突然の私の動きに頭の上に疑問符を浮かべるような顔をした彼に、私は言う。

 

「……ネギ先生。君は確かに今日から先生です。しかし分かっていると思いますが、あなたはまだ幼いです。不安も心配も沢山あるでしょう」  

 

 ネギ先生は、いきなり語りかけた私に少し驚きながらも、決して私から視線を逸らさなかった。

 

「……そういう時は素直に私達を頼っていい。私も出来る限りの協力はします。ただし……」

 

見た目からして、10歳ほどだろうか。まだ親にも甘えたい年頃でもある少年が、1人で故郷からやってきて、他国で教師をする。学園長がどんなつもりかは分からないが、どれだけ優秀な子供でも限界があるだろう。精神の年齢が他の生徒より上な私が彼をフォローすることは、当然だと思うし、何の抵抗もない。  

 

 ただし、教師をするのならば、覚悟だけはしっかり持っていてほしかった。  

 

 

「教師として、他人の人生と関わる覚悟はありますか? 」    

 

 

 私も、大学の教授であったことから研究室に何人かの生徒を受け持っていた。大学生にもなれば彼らも自分の道は自分で見ていた。だが、私が指導する立場で有る限り、彼らの行く道に私が関わるのは必然であった。就職活動が上手くいかない生徒に進学を薦めたこともある。ある生徒には、就職先を紹介したこともある。余りに優秀な生徒に、海外留学を提案したこともある。最終的に決めるのは彼らだが、それでも私は慎重に彼らのことを悩んでから意見をした。

 教師という立場の者の一言が、彼らの重要な道を作る。

 その先が幸せかどうかなんて分からないし、保証もない。実際に、辛い思いをしている生徒も今までにはいたかもしれない。  

 けれども私は、気持ちだけは常に持っていた。他人の人生に踏み込んで、干渉するという覚悟だけは持っていた。  

 ネギ先生に、完璧にしろと言う気などまったくない。だが、子供だからといって半端な想いで教壇には立ってほしくなかった。未熟でも、生徒のことを考える気持ちだけは持っていてほしい。    

 

 私がその言葉を言うと、ネギ先生は目を開き驚いた顔をした。そして、少しの間考え込んでから答えを出す。  

 

「……故郷で、似たことを姉に言われました。その時も、今もまだ、その言葉の真意を掴めているかは分かりません。でも、教師として、真剣に生徒に向き合う覚悟はしています! 」    

 

 眼鏡の奥の力強い瞳が、私に向けて光を帯びているように見えた。

 

「……そうですか」  

 

 堂々と私を見つめる彼に対して、私は微笑みながら頭にぽんと手を置いた。    

 

 少し照れた様子のネギ先生を若干にやつきながら見ていた学園長が、私達に向かって言う。

 

「……ふむ、それでじゃの。実はネギ先生の泊まる場所がなくて困っておったのじゃ。初めは明日菜とこのかの部屋に泊めてもらおうと思ったのじゃが」

 

「うちはえーんやけどなぁ」

 

「……うっ」  

 

 学園長とこのかの言葉を聞いて、明日菜が再びたじろぐ。今のネギ先生の言葉を聞いて、気持ちが揺らぎつつも、まだ認められない想いがあるのだろう。

 

「泊まる場所がないのなら、私の部屋でも構いませんよ」  

 

 嫌がる明日菜の部屋にこの子を泊めるのは流石に酷だと思って、私はそう言う。研究室などもあるが、しばらく必要なこと以外はせずに帰ってくれば大丈夫だろう。

 

「でも七海、ネギ君のご飯とかどうするん? 」

 

「……どうするとは? 」  

 

 純粋に疑問を浮かべるこのかに逆に私が問い掛ける。

 

「……七海、昨日の夜ご飯はなんやった? 」

 

「コンビニ弁当」

 

「……今日の朝ごはんは? 」

 

「卵かけご飯」

 

「…………」  

 

 しらーっとした空気が部屋中を流れた。

 い、言い訳をさせてもらうが、先日は時間がなかっただけだ。いつもコンビニというわけではない。外食や簡単な料理をして、不足した栄養分はサプリメントでもとっているし……。仮にネギ先生が私の部屋に来るのならば、もう少し頑張って料理をすると思う。

 ……多分。

 

「あーもう! 分かったわよ! 私達の部屋でいいわよ! 」

 

 明日菜が吠えるようにして私達に言う。

 

「無理しなくていいんだぞ? 私だって少しくらい料理出来る。……と思う」

 

「いーって! 七海は忙しそうだし、最近たまに具合も悪そうだし、こいつのためにそんなとこで体力使わなくっていーの! その代わり! 」  

 

 ビシッと音が鳴るような勢いでネギ先生に指を指して、明日菜が言う。

 

「ちょっとでも変なことしたら追い出すからね! 分かった!? 」  

 

 ネギ先生が明日菜の押しに少し怯える。そして、ふんっと鼻を鳴らしてからそのまま明日菜は学園長室から出ていってしまった。

 

「あー。明日菜待ってやー」

 

 明日菜に付いていくようにして、このかも部屋から出ていく。嵐のように去っていった明日菜を見て、ネギ先生がそっと呟く。

 

「僕、あの人少し怖いです…………」  

 

「ふふっ。でもな、彼女は沢山良いところがあるんだ。もう少し一緒にいれば、彼女の良いとこに気付けるさ」  

 

 本当かなぁ、と不安そうにネギ先生が呟く。今はあんな態度だが、明日菜の根はお人好しだ。  

 私が魔力の影響で調子を崩していた時、周りの人に心配をかけないように隠していたのだが、明日菜はなんとなく察していてくれてたようだ。  

 なんだかんだ言っても、そんな優しい明日菜なら、しっかりとネギ先生の世話を焼いてくれるだろうと私は予想していた。  

 

「これでひとまず大丈夫かの、ではネギ君。後のことは他の先生の指導に従ってくれい」

 

「分かりました。えっと……七海、さんは? 」

 

「私は学園長と話があるので、先生は先に行っていて下さい」  

 

 ではまた後で教室で、と挨拶をして、ネギ先生も学園長室を後にした。  

 

 

 

「……さて、七海君。それで話とは? 」  

 

 ネギ先生がしっかりと扉を閉めてこの部屋から立ち去り、私と学園長の二人きりであることを確認してから、私は言う。

 

「学園長に話があったのですが、その前に一つ。とりあえず、彼が何者か聞いても宜しいですか? 」

 

「彼は魔法使いじゃよ」

 

 学園長は微塵も隠そうともせず、堂々と言い切る。

 

「やはりですか……。何故教師を? 」

 

「修行のためじゃ。立派な魔法使いになるためには与えられた修行をこなさねばならん」

 

 修行によってどんな効果を得ようとしているかは分からないが、教師という仕事は、確かに多くの事を経験出来るだろう。生徒には分かりやすく教えなければならないし、関係性も大切にしなければならない。同業者関の交流も不可欠で、他人と関わることが多い教師は、人間的にも成長出来る筈だ。  

 しかし、まだ幼い彼にそんな経験をさせなければいけないのか、という疑問はあった。普通の子供ならば、まだ学校に通い友達と遊んでいる時期だ。教師などを経験するよりも、ずっと大切な思い出になるはずだ。

 

「……ネギ先生は、納得しているのでしょうか」  

 

 それらを全て置いてここに来ていると、自覚しているのだろうか。

 

「……彼の目とあの言葉を聞けば、分かるじゃろう? 」  

 

 学園長は髭をなぞりながら私に言う。  

 

 ……私が、彼が教師をすることに反対しないのは、彼の目を見て、言葉を聞いてしまったからだ。  

 彼の目には、強い意志が宿っているように見えた。やり遂げるという覚悟が、その姿から見えてしまった。それに、あれだけ流暢に話す日本語にも私は驚いた。イギリスから来たと言う彼は、日本語を学ぶ機会など乏しかった筈だ。言語の中でも高難易度の日本語をあんなに話せるということは、相当勉強したのだろう。優秀な先生の元で、本気で勉強しなければ簡単に得られるものではない。そのことがまた、彼の日本で教師をするという覚悟を示しているように思えた。

 

「……ネギ先生の件は、分かりました。しかし、彼の修行と言えどフォローはさせてもらいますが宜しいですね? 」

 

「ふぉっふぉっふぉ。生徒と上手く関係を結ぶのも教師の仕事じゃし、むしろ頼みたいくらいじゃよ」  

 

 目を細めて、学園長は笑う。  

 ネギ先生の話は、一旦これで良いだろう。これからどんな問題が起きるかは分からないが、その都度考えていこう。

 

「それでは、本題なのですが」

 

「……ふむ。なんじゃ」  

 

 私が真剣な表情をして、学園長を見ると、それに対応するように彼の顔も真面目になる。

 

 

 断られたらどうしよう、という思いを胸にしながら、一度ゆっくりと息を吐き出して、 私は彼に告げる。  

 

 

「世界樹のことで、頼みたいことがあります」    

 

 

 

 

 ○      

 

 

 

 

 学園長との話を終えてから、私は急いで教室に向かう。少々長話が過ぎたようで、既に2―Aからの騒ぎ声が廊下に響いて聞こえる。  

 何事かと私が2―Aの教室の扉を開けると、そこには、空のバケツをかぶり、お尻にオモチャの矢を刺され教壇で転んでいるネギ先生がいた。  

 クラスの生徒達は子供が来るとはまったく想像していなかったようで、心配して彼に駆け寄っている。  

 イタズラで罠を仕掛けている可能性を気づけなかった自分の失敗を嘆いたあと、涙目でこちらを見る先生の姿を見て、今後を心配し、私はひっそりとため息を吐いた。    

 

 

 

 

 ○    

 

 

 

 夕暮れ時、寮が少しずつ賑やかになってきているのは、段々人が帰ってくる時間のためだろう。  

 自分の部屋にいてもクラスメイトの声が聴こえてきて、叫び声などが響いた時には私は一人で苦笑してしまう。    

 今日の放課後は研究室に顔を出す予定だったのだが、ネギ先生の来訪によりとても疲れた1日となったため、私は早々に寮に戻ることにしたのだ。    

 

 今日の朝、罠にかかってひっくり返っていたネギ先生が教室で自己紹介したとき、クラスは予想通りはしゃぎ出し即収拾がつかなくなりかけた。明日菜は何故かネギ先生に突っ掛かり、それにあやかが文句を言って、いつもと同じように喧嘩まで始まる。私はなんとか彼らを落ち着かせ、やっと皆が席についた時、彼は初めての授業を始めた。  

 

 ネギ先生の授業を妨害する明日菜をなんとか静まらせながらも、私達は彼の授業を聞く。黒板に字を書くところから苦労していたのには冷や汗をかいたが、内容はしっかりとしたもので私は感心した。お手本のように私達にも聞き取りやすく、それでいてネイティブに近い発音で英語を話すネギ先生の授業は、想像よりもずっと分かりやすかった。人に教えるとは、決して簡単ではない。理論的に展開することから彼の頭の良さも分かり、さらに親しみやすい彼は、先生に向いているのではと思ったほどだ。    

 

 それから、彼の歓迎会、明日菜が何故か分からないがネギ先生にキスを迫るという珍事件などが起こり、一々大騒ぎする生徒を静めていた私は、いつもの倍は体力を使った。  

 

 ……明日菜は、やたらネギ先生に絡むが、二人の間で何かあったのだろうか。最後にはキスをしかけるほど仲良く? なっていたのが、更に疑問だ。    

 

 

 今日の学園長との話から、ネギ先生の事と色々と考えながらベッドに寝転んでいると、部屋の扉から、コンコンとノックする音が聞こえた。  

 

 学園長ではないが、誰が来たか私には何となく分かってしまった。

 このタイミングで私を訪れる人は、きっと今日1日仏頂面していたあの人だろう。  

 

 

「……長谷川さん、入っていいぞ」

 

「……おう」  

 

 

 きぃと扉を開けて顔を出したのは、想像通り硬い顔をした長谷川さんだった。

 

 

 








小ネタ
『料理』





「あんな、七海さ」

「ああ」

「どうして料理苦手なん?」

「どうして、と言われても」

「うち聞いたことあるんやけど、化学の実験とか得意な人は、料理も上手なんやって。七海はそういうの凄い得意なんに料理は全然だめやん?なんでかなーって」

「うーん。そうだな……」

「基本的にレシピ通り作るだけやから慣れれば誰でもできるえ?」

「そこが問題なんだ」

「え?どこ?」

「例えば、カレーを作るとしよう」

「うん」

「レシピ通りに具材を用意して、下準備して、あとはルーを入れるだけ、ってとこまでくるだろ?」

「うん」

「そしたらな、唐突に鍋にマヨネーズを入れたくなったりする」

「な、なんでそんなことを」

「レシピにはもちろん書いてない。だからこそ、試したくなってしまうんだ。ここでこれを入れたらどうなるんだ、とか、こうした方が良くなるのでは、とか、この組み合わせは誰もしたことないだろ、とか考えてしまうんだ。未知を追う、ではないが、決められたルートを行くよりも新しい発見をしたいという欲望が勝ってしまう。結果、毎回まずいという何度も経験した味を発見して終わってしまう」

「……七海もあほなところはあるんやなぁ」



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