露天風呂で入浴中の彼女らとマスター達は、力を合わせて何とか異族を撃退する。

そしてやっと平和が訪れたのだが、マスターの不用意な一言でまた何かが起こってしまうのであった。



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露天風呂での戦闘からです。

カドケウスとケーリュケイオンの戦いぶりと、一糸纏わぬ姿で動き回るシタとロンギヌスの活躍をどうぞ。



露天風呂で危機一髪 後編

{異族 襲来!の巻}

 

マスターは即座に指示を出した。

「カドケっ!すぐに二人を救出しに行ってくれ!」

 

「ほいほいっと!」

カドケウスは茂みから一気に飛び出して杖を振るう。

その杖から出た光球が見事に一匹の異族に当たった。その光球は異族の急所に当たったらしく一発で倒す事が出来ていた。

 

全ての異族の注意が目の前のカドケウスに向けられた。

 

そして異族がカドケウスに殺到し始めて、シタとロンギヌスがその包囲から無事に脱したのを見届けると、マスターは次の指示を出した。

「ケーリュっ!今だっ!」

「了解っ」

ケーリュケイオンが馬に乗って森の奥から姿を表した。

 

突然のケーリュケイオンの登場で異族の群れに混乱が生じていた。どっちに向かうか決めかねていてお互いに動きを邪魔しあっているようだ。

その隙にカドケウスとケーリュケイオンが挟み撃ちをして異族を圧倒していった。

 

マスターが自分の読み通りの展開になって一息ついていると、ロンギヌスがこちらのほうに駆け寄りながら叫んでいるのに気がついた。

「……危ないっっっ!よけてぇっ!」

 

マスターはとっさにその言葉に反応して背後の不穏な気配を感じとる事が出来た。そして前方に向かって一気に飛ぶと、何かが背後の空気を鋭く切り裂く音が聞こえた。

とりあえずは何かを無事に避ける事が出来たようだ。

しかし頭から湯に飛び込む形になってしまったので、もう今の状況がまるで分からない。

 

マスターが無我夢中で湯から立ち上がると、いきなり顔に何か柔らかくて温かいものが当たってきて、そのままの格好で身体を振り回された。

目を開けるとすぐ上に真剣なロンギヌスの顔がある。

どうやら自分はいま彼女の胸の谷間に抱き締められて、彼女にかばわれているのだと気がついた。

 

また空気を切り裂く音が音が一瞬聞こえて、そして今度はロンギヌスの微かなうめき声が耳に届いてきた。

見上げるとロンギヌスの顔が苦痛に歪んでいるのが分かった。

 

マスターはかばうように抱き締めてくるロンギヌスを何とか引き離した。

そして周囲に目を走らし状況を瞬時に把握する。

どうやら自分は遠距離から弓の攻撃を受けていたようだ。

マスターは即座にカドケウスにその弓の異族に向かう指示を出してからロンギヌスに注意を戻した。

 

ロンギヌスは一応ほっとした様子でマスターを見つめている。

彼女は血が滴っている腕の傷を手で抑えながら、気丈にも平気な表情を取り繕っていた。だがその血の量からすると案外深い傷かもしれない。

シタが心配そうな様子で彼女に寄り添ってきていた。

 

マスターは口を引き結び、背負っていた荷物袋から白い布を取り出してその傷に巻き付けた。ロンギヌスが顔をしかめたが少しきつめに巻いておいた。

 

マスターはロンギヌスの応急処置をしてから戦況を窺った。

どうやらほとんどけりがついている気配はある。

あと数匹倒せばこの地を完全に制圧出来そうだ。

そうすればこの地に異族が湧きだす事はいっさいなくなり、それで今度こそ皆ゆっくり休めるはずだ。

 

しかし残念ながらその時はまだ訪れなかった。

森の奥からまた新たな異族が現れたのだ。

しかも強敵であるミノタウロスという種族だった。それも斧を装備している斧ミノと呼ばれる攻撃力が高い危険な奴だ。

 

マスターはこれはかなりまずいと思い、背中に何か嫌な汗が滲むのを感じた。

マスターはマスタースキルの目を使って斧ミノの強さを調べてみた。

攻撃力と命中が高くてカドケウスではかなり危うい相手だと瞬時に分かった。あれでは1発でも貰うとやられてしまう。

 

マスターは一瞬だけ考えると矢継ぎ早に指示を出した。

「リーダーをチェンジする!カドケからケーリュに!カドケは今までの敵にあたれ。ケーリュは斧ミノの所に行って奴を足止めしろ。だが絶対にこちらから奴に攻撃を仕掛けるなよ!」

 

二人はマスターの指示を忠実に守りその通りに動き出した。マスターは二人の動きを見ながら思った。

 

これで少しは時間が稼げるはずだ。

それで、うまくいけばそのままケーリュが奴の体力を削りきるかもしれない。

これはケーリュをリーダーにして回避を少しでもあげて、彼女の持つ杖のゼピュロスロッドと彼女自身の反撃強化のスキルに頼った「回避特化」と言われるだいぶ際どい作戦だ。

どうか頼む。このまま無事に終わってくれ……。

 

だが運命はさらに過酷な道を選択してきたようだ。

 

ミノタウロスの亜種である槍ミノタウロスと剣ミノタウロスが、二体同時に斧ミノの後方に湧いたのがマスターの目に入った。

 

ぐっとマスターは息を飲んだ。何か突然呼吸が苦しく感じる。

 

これでもうほぼ絶望的な状況になりつつあった。

これを打開する策は……もうない。

 

拳を震わして苦悩するマスターにシタとロンギヌスがそっと寄り添ってきた。彼女達のマスターを見る目には依然として信頼の光が灯っている。

それを見たマスターは、もう一度心を奮い立たせて猛烈に考え始めた。

 

考えろ……考えるんだ!何かあるはずだ!生き残る道が!!

今のこの状況を変えるには……?

このままでは彼女らは必ず負ける。だが今逃げ出したとしても、今どんなアイテムを使ったとしても、ただじり貧になるだけだ。

 

マスターはかたわらのシタに目をやった。百戦錬磨の彼女はマスターの事を未だに揺らぎのない信頼の瞳で見つめ返してくる。

マスターはそんなシタを見て、もし今彼女がカドケウス達のリーダーになってくれたらと思わずにはいられなかった。

 

そう、彼女がカドケウスとケーリュケイオンを統率出来れば戦況は一気にひっくり返るはずなのだ。

だが今はどうしようもない。武器を持たないキル姫は本領を発揮出来ないものなのだから。

 

マスターは今はとにかく必死に考えを巡らせた。

 

武器……武器か。そう武器さえあれば!

だがシタの武器であるオルフェウスの斧は今ケーリュが戦っている茂みのちょうど向こう側。今はあそこには近づけない。

 

それなら自分が囮になって敵を引き付ければどうだ?

とりあえず自分の武器と言っても調理用のナイフくらいしかないが……。

 

その時、ふとマスターの頭の片隅に何かが一瞬キラリと輝いた気がした。だがそれは形にはならずにまた消え去ろうとしている。マスターは必死にそれを繋ぎ止め何とかそれを頭の中で形作ろうとした。

必死に考え、連想し、記憶の奥底を辿る。

 

そしてそれは見つめてくるロンギヌスの顔を見た瞬間に、1つの輝く答えとして頭の中に浮かび上がってきた。

 

この前受けたロンギヌスからのお仕置き。

今日のお昼ご飯の支度の光景。

そして今持っているこの荷物袋の中身。

 

……!そうだ!

 

マスターは荷物袋の中身を全部水面にぶちまけた。

着替えや色々な調理道具が散乱して湯に浮かぶ。

 

マスターはその中の1つの道具を掴んでシタに差し出した。

「シタ!これだっ!」

 

シタは目を輝かして大きく頷いた。そしてそれを受けとると両手で持ち体の中心に構えた。

するとシタの気配が大きく変化してきた。シタのキル姫としての本来の力が発揮されたのだった。

マスターは小さなガッツポーズで喜びを表現した。

 

そしてついでに自分の割烹着を渡して着てもらい、一応戦闘の体裁を整える事にした。

シタの裸の割烹着姿もなかなか良いものだ。

裸エプロンよりもグッとくるのではないか。

 

マスターは見事にこの窮地を脱する打開策を思い付く事が出来たのだった。

今シタが手にしているのはもちろんただのトンカチである。それもマスター愛用の調理道具の1つの。

だがトンカチは普通の者にとってはただの道具だが、斧のキル姫にとってはちゃんとした武器として認識される不思議なものなのだった。

これを斧のキル姫が持つと、どんなに力強く叩いても1ダメージになる不思議な武器の1つになり、この前のロンギヌスがマスターに対して使った竹槍と同じ種類の武器になるのだ。

 

ただシタがキル姫の本質を取り戻したとしても、装備がトンカチでは戦闘自体には全く加われない。

しかしもう「シタが戦列に入ってくれている」ただそれだけで充分なのだった。

 

すぐさまマスターは指示を出した。

「リーダーチェンジ!シタっ、カドケウス達をお前の指揮下におけ!」

「はい、マスター」

シタの纏う金色のオーラがカドケウス達にも、うっすらと表れてきた。

 

するとカドケウスとケーリュケイオンの動きが急に素早くなってきた。

カドケウスの打ち出す光球が異族の急所に当たりだし、異族の攻撃をギリギリで何とか避けるようだったケーリュケイオンの危なかった動きが、滑らかに流れるような余裕のある避けかたになっている。

 

マスタースキルの目で彼女らを見てみるとカドケウスの命中は85%まで上昇していて、ケーリュケイオンの被弾率は20%まで低下していた。

これならばもうとりあえずは安全圏と言えるだろう。

 

マスターは気を緩めないようにしながら彼女らの戦いぶりをほれぼれと眺めていた。

シタの配下になった彼女らの動きはとても素晴らしく、星4のレアリティの姫とはまるで思えなかった。

 

ケーリュケイオンとカドケウスが最後に残った剣のミノタウロスを打ち倒すと、辺りにやっと静寂が戻ってきた。

これで異族との戦闘が完全に終わったのだ。

マスターは緊張の糸が解けたようにその場に座りこんだ。

その時初めて今浸かっている温泉がとても心地よいものだと感じる事が出来た。

 

カドケウスとケーリュケイオンが服を着たまま湯の中をマスター達のもとに駆け寄ってきた。

二人ともさすがに疲れた様子を見せていたが、ロンギヌスの怪我を知ると即座に二人で彼女に治癒をかけ始めた。

 

 

ロンギヌスの傷を癒すとカドケウスとケーリュケイオンは、ぱぱっと服を脱いで何の躊躇もなく裸になり、服と杖をぽいっと近くの地面に放り投げて、気持ち良さげに湯に浸かってくつろぎ始めた。カドケウスは楽しげに湯のなかを泳いだりしている。

 

マスターは四人のキル姫の裸に囲まれて、さすがに目のやり場に困ったが、とりあえず彼女らの肌をまじまじと見ないようにした。

自分も服のままでは気持ち悪いので脱ぎたい気持ちがあったが、それはさすがに出来ないのでもう我慢することにした。

 

皆で輪になって湯に浸かり、マスターは皆にねぎらいの言葉をかけた。

「みんなお疲れ様。今回はだいぶ危なかったが、とりあえず何とかなって良かった。みんなのお陰だ、ホントに助かったよ。これは何かお礼をしないといけないな」

 

カドケウスが笑顔で一番に言い出した。

「別に何ともなかったよ。でも今度、手を繋いでお買い物に行って色々お菓子を買ってね♪」

マスターは笑って請け負った。

 

ケーリュケイオンも涼しい顔で言ってきた。

「この対価は何かな~?楽しみにしてるから」

マスターは苦笑いをしながらだが、きちんと頷いた。

 

シタは落ち着いた感じで言った。

「それでは、今度ミトゥムちゃんも連れてどこかに連れてって下さいね」

マスターは快諾した。

 

そして最後にロンギヌスの番になったが彼女はもじもじしていてなかなか言い出さない。

マスターは遠慮しがちなロンギヌスに何か良いものはないかなと考えていると、さっき彼女が湯に浸かっている時の光景を思い出した。

そう、それはロンギヌスが一生懸命胸を大きくしようと頑張っていた光景だ。

 

マスターは気をきかせて言った。……つもりだった。

「そうだ!ロンギヌスには奮発してあれを買ってやるよ。寄せて上げる胸を大きく見せる不思議なブラを」

 

キル姫達の回りに不気味な沈黙が訪れていた。

 

ロンギヌスはというと初めはマスターに何を言われたのか分からなかったが、やっと腑に落ちてきたようだ。

ロンギヌスは何だか混乱する頭で思った。

 

胸を大きく見せるブラかー。

わー嬉しいなー。マスターは何でも私の事を分かってくれてるんだー……

……え?

でも待って。

ホントに何で私が胸の大きさを気にしてるって、マスターは分かったのだろう?

マスターには何も言ってないのに……。

 

ロンギヌスは色々と考えて、温泉に入る前のマスター達とのやりとりと、異族が襲って来た時のマスターの意外な場所からの颯爽とした登場場面を思い出した。

 

まさか……ずっと覗かれていた?マスターに?

覗き自体は、自分のマスターにならそんなに抵抗はないけれど、今日はシタさんに自分の胸の大きさの事で相談してしまっている。

と言うことは……。

 

私が自分の胸を揉んでいたあの姿をずっと見られていたと言うことなの!?

 

その事に思い至ったロンギヌスは、顔を真っ赤にして恥ずかしさでもう完全に我を見失ってしまっていた。

「忘れて……。」

ロンギヌスはぼそりと呟く。その声は微かに震えていた。

「え?」マスターは聞き返した。

 

ロンギヌスはざばっと湯から立ち上がるとマスターの目の前に仁王立ちで立った。全裸なのに身体を隠すことを完全に忘れてしまっている。

マスターは慌てて目の前のその隠さねばならない所から目をそらした。

ロンギヌスは涙声で訴えた。

「もう!忘れて!忘れて下さい!!馬鹿馬鹿、マスターのバカ~!」

そしてポカポカとマスターの頭を手で叩きだした。

 

「なん……何だって?おいおい勘弁してくれよ」

マスターは頭をかばいながら言った。

他のキル姫達は呆れた様子でその二人を見守っている。

 

ロンギヌスは一刻も早くそのマスターの記憶を消さなければと、焦り出してとりあえず自分の武器を探した。だけどどこにも見当たらない。(当たり前だ)

ロンギヌスは、うーと小さく唸り、助けを求めてみんなのほうを見た。

すると、シタとそのかたわらにプカプカと湯に浮かぶトンカチが目に入った。

ロンギヌスは即座に思い付いた。

 

そうだ!あれを使えばシタさんの必殺技が使えるはず。

そうすれば殺傷力はない物凄い衝撃を生み出す事が出来て、うまくいけばマスターの記憶の一部を消せるかもしれない。

 

ロンギヌスはマスターの頭を両手と下腹部で押さえ付けて逃がさないようにしながらシタに向かって言った。

「シタさん!そのトンカチでこのマスターに1発かましてあげて下さい!」

シタは困ったように見返しただけだったが、すぐにロンギヌスは説得力のある一言を放った。

 

「シタさんも自分の胸を揉むところをじっくり見られてるんですよっ!」

 

シタはそれを思いだして、見られた事を思い浮かべると頬をほんのり赤く染めた。

そしてトンカチを握りしめて立ち上がった。

彼女も裸なのにかなり堂々とした姿勢だ。割烹着は湯に浸かるのに邪魔で改めて脱いでいたのだ。

「しょうがないですね。行きますよマスター」

 

シタはじゃぶじゃぶと少し歩いて距離をとり、武器(トンカチ)を構えた。

 

「ちょ、まてよ。おい……」

マスターが逃げようとすると、ロンギヌスが後ろから腰に抱きついてきた。さらに笑いながらカドケウスが右腕を抑え、諦め顔のケーリュケイオンが左腕を抱えてきた。

マスターはシタの正面に据えられて全く動けない。

妖しく笑うシタがすごく怖い。

 

シタがマスターに向かって走り出した。シタの必殺技「ワンプレイスキル」だ。

目にも止まらない一瞬の一撃でマスターの身体は宙におもいっきり吹き飛ばされた。

痛みはそれほどではないが衝撃は半端ない。

マスターの身体は宙をくるくると舞った後に、湯の上に落ちて水飛沫を豪快に撒き散らした。

 

マスターは湯の上で仰向けに意識もうろうとして浮かんでいた。すると誰かが上から顔を覗きこんできた。

 

ロンギヌスだった。彼女は両手を腰にやり可愛い仏頂面を作って言ってきた。

「乙女の秘密を勝手に覗いちゃ、いけないんですよっ!」

 

マスターは見上げると勝手に目に入ってくるロンギヌスの裸を見ながら考えていた。

 

女の子ならもっと慎みをもって身体を隠すもんだぞと忠告をしたかったが、それをするとまた一悶着あるだろう。

 

マスターは静かに目を閉じると、ぶくぶくとゆっくり湯の中に沈んでいくのであった。

 

 

{終わり}

 





安定のオチでしたね。
ロンギヌスはやっばり書きやすいです。
可愛いし。

次は誰を登場させようかな。
って物凄い数いるんですけど(笑)。

では次回書いたらまたよろしくお願いします。


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