バカと魔導師たちと召喚獣   作:ソルレイン

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試召戦争編
プロローグ


とある病院の病室の中、そこには少女と少年がいた。

 

少女はベッドで安らかに眠っているように見えるが、その体には

傍から見ても重症だということがわかるほどの傷を負っており、

その傷を隠すための包帯の多さがその傷の酷さを物語っていた。

そして、少年はそんな状態の少女を見守っていた。

その少年の顔には、様々な感情が含まれており、特に悲しみが色濃く映っていた。

 

幾ばくかの時間が過ぎ、少年はあることを決意する。

 

それは――彼の力を使って、彼女を治療するということだった。

彼の力をもってすれば、少女の怪我を完全に治すことができる。

そうすれば、また彼女の元気な姿を見ることができる。

 

――だが代償として、少年はこの少女だけではなく、数多くの親しい人とも、

最低でも、5年間は離れなければいけなくなってしまう……。

 

しかし、目の前の少女の姿を見て、この少女を救うためならば、

その程度のことなど代償と考えるほどのことではないと考え、

少年は少女を救うために自分が持つ力、()()()()()を発動させるために、

意識を自分の中にあるレアスキルの大元でもある()()に集中しようとするが、

 

『マスター、本当によろしいのですか?』

 

どこからか声がかけられ、その行動を中断する。

 

「うん……彼女の傷を完全に治すには、これしかないからね」

 

少年は、首元の、相棒である剣をあしらったネックレスに返事をした。

 

『ですが……彼女の傷はマスターの力を使わなくても……』

 

そのネックレスはさらに言葉を繋げようとするが、

 

「いいんだよ、エクス」

 

自分の主である少年によって遮られる。

 

「確かに彼女たちと別れるのは辛いよ。……でも、確実に治す方法があるのにそれをしないなんてこと、僕には我慢することができないんだよ……」

 

彼は首に掛けているネックレス――相棒であるエクスにそう言った。

 

『…わかりました、マスターがそうおっしゃるのであれば私はマスターに従います』

その少年の言葉に含まれた感情を読み取り、エクスは不承不承と言った感じで引き下がる。

 

「さてと……それじゃあ始めようか、エクス」

 

『……はい、マスター』

 

 そう言って、少年は再度、自分の中にある力を発動させるため、()()に集中し始めた。

本来であれば()()を発動させるためには、いくら集中したとしても最低数十秒をかけなければいけないのだが、

少女を救うために、その少年は生涯でも最も集中したと言わんばかりの凄まじい集中力を発揮し、

たった数秒で()()を発動させる。

 

()()は発動した直後、病室の中をまるで太陽を凝縮したといわんばかりに照らした。

それは凄まじい光を発しながらも、しだいにある物の形を象っていく。

そして、光が収まった時、そこには――神々しい、としか言いようのない1つの()があった。

 

少年はその鞘を――鞘を発現させたことによる疲労を無視して――その少女に押し当てた。

すると、その鞘はスゥ、っと少女の体の中に入っていき、――内に内包された力を遺憾なく発揮した。

 

それにより、少女の体にあった傷が瞬く間に治り始め、数瞬のうちに傷がついていたということが嘘であったかのように、傷が消えた。

 

「ふぅ…、これでよし、だね」

 

少年は、そんな少女の姿を見て安堵した。

 

「…それじゃあ、目覚める前に僕は姿を消すとしよう、かな……ぁ」

 

そう言った少年の声には――哀しみが含まれていた。

 

「……あれ、なんで涙が?あれ、あれ、どうしよう、涙が…涙が止まらないよ……

うれしいはずなのに、彼女の怪我が治って……うれし、い、はずなのに……」

 

『マスター……』

 

少年の目からは本人さえも知らぬうちに涙が流れ出しており、少年はそれを必死に止めようとするが、

それでも涙は止まることはなかった。

涙を流し、別れを惜しむ主人に、エクスは何も言うことができなかった。

 

「やっぱり……僕は彼女たちと……まだ一緒にいたい……

一緒にいろんなことを話して、経験して、彼女たちの隣にいたい……ッ!」

 

少年は涙を止めようとするのを止め、自分の本音を吐き出した。

 

しかし、それでも離れないと、いけない……

今は問題なく少女の中にある鞘だが、もともとアレは少年の中にあったものである。

この先も彼が彼女の近くにいれば、鞘はすぐさま彼の中に戻ってしまうだろう。

そうなれば、彼女の傷が開いてしまう……

 

そのことを誰よりもわかっている彼は、涙を流し、別れを悲しみながら、

彼女やその友人たち、それぞれに当てた手紙と贈り物を病室にある机の上に置いて、病室を去ろうとした。

 

そして、病室を出る直前に、

 

「また、会おうね……()()()

 

と未だベッドの上で眠る彼女――()()()()()の名前を呼び、彼は病室を去り――少女たちの前からも姿を消した。

 

 

 

そして、その翌日、病室には、複数の少女たちの泣く声が響きわたるのであった…。

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