「勝ったで、アキ君!」
はやてが笑顔で僕に抱きついてくる。いつもならこんなに人がいる中では抱きついて来ないのだが、どうやら試合に勝ったことでテンションが上り、そこまで気が回っていないみたいだ。
「うん、お疲れ様。はやて」
苦笑しながらも僕ははやての頭を撫でる。はやては気持ちよさそうに目を細め、それを受け入れていた。
「「「「「「「(ジーッ)」」」」」」」
なんだか7人ほど羨ましそうにこっちに視線を向けている人がいる…7人?5人は幼馴染ということはわかるけど、あと2人は誰だろう?そう思って視線を向けている人のほうを見る。
1人は姫路さん。僕と目が合うと顔を赤くして狼狽え始めた。もう1人は…うん、もう1つは僕の気のせいみたいだ。久保君が僕になのはたちのような視線を向けるはずがないよね。うん、そう思お痛たたたたた…って何!?
「吉井、いつまで八神さんに抱きついて頭を撫でてるのか、説明してくれないかしら?」
突然はやてを撫でていない方の腕が痛み出したので、そちらに視線を向けると島田さんが関節技を僕の腕にかけている姿が目に映った。
「なんで島田さんは僕の腕に関節技をかけてるの?」
「吉井が八神さんに抱きついてるから、お仕置きしてるのよ!それよりも早く説明しなさい!」
そう言って関節をさらに極めてくる島田さん……説明させたいなら、関節技を解いてほしいんだけど……まぁいいや。
バッ!(関節技から腕を抜けださせた音)
「てい」
トッ!(関節技を掛けられていた手で島田さんの首元に手刀を軽く叩きこむ音)
「はう」
トサッ!(島田さんが意識を失って倒れる音)
僕はすぐに関節技を解き、ついでに島田さんの意識を奪っておく。さて……静かになったけど起きたら厄介そうだし、ちょっと教室の中から退場してもらっておこう。
「すみません、島田さんが貧血で倒れちゃったみたいなので、誰か保健室に運んでくれませんか?」
「それなら美春が行きましょう」
「あ、お願い…目覚めても保健室から出さないようにしてくれれば何をしててもいいよ(ボソボソ)」
「わかりました…豚共は嫌いですが、あなたとはいい関係が結べそうですね(ボソボソ)」
そんなやり取りの後、僕は清水さんに縄と手錠(どこから出したんだというツッコミはなしで)を渡す。それを受け取った清水さんは島田さんを背負って教室をあとにした。…そういえば、彼女ってDクラスだったはずだけどいつの間にいたんだろ?…まぁそんなそんな細かいことはいいや。
「明久……お前……」
「お主、案外鬼畜じゃのぅ……」
「…………外道」
何事もなかったかのように前を向いたら、何故か雄二たちにそんな言葉を頂いた。まったく……何を言ってるんだろう、この3人は。
「雄二、秀吉、康太。これだけは言っとくよ」
「「「(…………)な、何だ(じゃ)?」」」
「……危害を加えたら、それ相応のことが自分に降りかかるのは…当たり前のことだよ?」
そう言ったら雄二たちだけでなく、他の人にも何故か引かれてしまった。
((((……それでも限度ってものがあるだろう))))
引いていた人たちは全員そう思っていたが、思うだけで誰も口に出して言うことはしなかった。
「5試合目を始めます。試合に出る方は前へ」
途中で島田さんが保健室に運ばれるということがあったのに、何事もなかったかのように試合を進行する高橋先生。もうちょっと心配とかそういった反応をしてあげましょうよ……私はしないけど。
「それじゃAクラスからはアタシが出るわ」
Aクラスからはアリサが出てきた。アリサが相手ならこちらから出るのは決まっている。
「Fクラスからは僕が出ます」
私の予想した通り、こちらから出ると申し出たのは幼馴染であり戦友、そして私の好きな人、明久だった。多分Fクラスの中でもアリサに勝てるのは彼だけだろう。
「頑張ってね、明久君!」
「アリサ相手だと辛いかもしれないけど頑張って、明久」
「やるからには勝つんやで、アキ君!」
「応援ありがと、3人とも。それじゃ行ってくるね」
私たちは明久にそう応援のエールを送る。すると彼は微笑んでそう答え、前に出て行った。明久の微笑みを見た際、私たち3人とも、顔が赤くなったと感じたのは気のせいではないだろう……。
「それぞれの代表者が前に出ましたので、第5試合を始めます。教科は何にしますか?」
「それじゃあ総合科目でお願いします」
「承知しました」
アリサがAクラスに残された最後の選択権を使って科目を決める。
「なぁハラオウン」
「何かな? 坂本」
もうすぐ試合が始まるといったときに、明久の友だちでFクラスの代表も務めている坂本が私に話しかけてきた……一体何だろう?
「いや……ちょっと聞こうと思ってたんだが、なぜ八神は4試合目の前にバニングスの相手は明久じゃないと言っていたんだ?別に八神でもあの点数なら勝てていたんじゃないのか?」
「それは儂も思ったのじゃ」
「…………俺も」
「差支えがないなら理由を教えてもらえませんか?」
坂本の質問を皮切りに、木下と土屋、そして最近明久のことで仲が良くなった瑞希が私にそう聞いてくる。あ、そういえばアリサと本気の明久の成績をみんなは知らないんだったっけ。
「それはね……」
「準備が整いましたので、召喚を始めてください」
「「試獣召喚!!」」
私が4人に説明しようとしたときにちょうど試合が始まり、前にいる2人が召喚獣を召喚した。そして、直ぐ様お互いの召喚獣の上に点数が表示される。
Aクラス アリサ・バニングス VS Fクラス 吉井明久
総合科目 7728点 VS 7345点
「アリサは私たち7人の中では一番頭が良くて、その次に頭が良いのが明久だからだよ」
「「「「「「…………は?」」」」」」
それは僕らの召喚獣の点数を見たAとFの人たちから漏れた声だった。余程驚いたのだろう、その声には信じられないものを見たという驚愕が含まれていた。
「さすがだね、アリサ。今回は手応えがあったからけっこう自信あったんだけどね」
「どうせそれは得意分野だけでしょ?他の教科はいつも通りだったんじゃないのかしら?」
「あ、やっぱりわかる?」
「当たり前よ…って言いたいところだけど、それがわかったのは私を含めて6人だけだったみたいね」
驚いている皆を尻目に僕たち2人は談笑する。むぅ、アリサだけじゃなくなのはたちにもバレていたのか。
「「「「「「え、えええぇぇぇ!!」」」」」」
「な、なんだよあの点数!?」
「7000点オーバーなんて、教師でもそんな点数取れる人少ないって聞いたぞ!?」
「バニングスさんはAクラスだからまだわかるけど、吉井は本当にFクラスなのか!?」
「あんな点数取れるのに、なんで吉井君はFクラスで観察処分者なの……?」
呆けていた人たちは僕たちのそんな会話を聞いて、ようやく思考が回復したらしく、いたるところから驚愕の声が上がって教室が揺れた。すごい声だな、窓が割れそうだ…あ、窓にヒビが入った。
「マジかよ……てっきり俺は明久の点数はムッツリーニみたいに1つ、それかいくつかの教科だけがずば抜けて高いだけで、あとはFクラス並だと思ってたんだが……」
「2人共凄まじい点数じゃのぅ……」
「…………驚いた」
「ふわぁ~……吉井くんってすごく頭が良かったんですね…」
雄二たちの驚愕を含んだ声が僕の耳に届く。そういえば僕の本気の点数がどのくらいか教えていなかったっけ……まぁいいか。それより今は試合に集中しよう。
直ぐ様そう切り替えて、アリサの召喚獣に視線を向ける。アリサの召喚獣は黒を基調とした服とズボン、その上に黒衣を羽織っている。手には大太刀が握られており、見ただけで業物だということがわかる。
「それじゃあ行くわよ、明久!」
アリサがそう言ったと同時に、召喚獣がこちらに突進してくる。その速度はさっきの試合で見たすずかの召喚獣よりも速く、その勢いのまま大太刀を振り下ろしてくる。
ギンッ!
僕はその斬撃を刀で受け止めさせるが、フィードバックにより凄まじい衝撃が僕に襲い掛かってくる。
アリサは1撃を受け止められても動揺せずに、さらに大太刀を振り下ろしてくる。
「ぐ……!」
その大太刀による斬撃を受け止めるごとにフィードバックが襲いかかってきて、僕は思わず声を出してしまう。
「ッハァ!」
このままでは不味いと考えた僕は、仕切り直すために力任せに刀を振り抜く。それによりアリサの召喚獣は後ろに吹き飛んだが、何事もなかったかのように体勢を整える。
Aクラス アリサ・バニングス VS Fクラス 吉井明久
総合科目 7654点 VS 7209点
僕たちが動きを止めたことで点数が更新される。攻撃はしっかり防御していたのに衝撃だけで100点以上も減らされたか……
「さすがね、明久。アンタ以外だったら最初の一太刀で武器ごと切り裂いて勝負は決まってたわよ」
「そういうアリサこそ。攻撃が速い上に重いから反撃する暇が無かったよ」
「ふふ、ありがと…って言いたいとこだけど」
アリサは会話の途中で話を区切り、一泊置いて言った。
「本気を出してないアンタにそう言われても嬉しくないわ。……だから、本気を出しなさい」
「……さっきの攻防を考えると、勝つにはそれしかなさそうだね」
僕たちの会話を聞いていた人たちが、アリサの言葉を聞いてまたざわめき出す。しかし僕はそれに何も反応せず、静かに一言だけ呟く。
「封印解除」
その直後、召喚獣が光り出し、その姿を変えた。着ていた装備は黒いスーツから、白を基調として、要所々々に防具を付けた騎士服に変わっていた。武器も日本刀から黄金色に輝く西洋剣を両手にそれぞれ持っている。
さらに召喚獣の茶色だった髪が金色に変わり、瞳の色も右目が翡翠色になっていた。
「ふぅ……アリサ、これで満足ですか?」
「ええ、これでようやく本当の勝負が始められるわね」
アリサはそう言った後、さらに続けて口に出す。
「にしても……アンタって本気を出すときはいつもその口調になるけど、召喚獣で戦う時でもそうなるのね……」
「どうやらそのようですね。私としても治そうとはしたのですが……如何せん癖になっているようで治すのは無理だと諦めました」
「治そうとはしてたのね……まぁその口調のアンタも私は好きではあるけど(ボソボソ)」
「なにか言いましたか?」
「な、なんでもないわよ! いいから試合を再開するわよ!」
アリサが小声で何かを呟いていたので尋ねてみたが、アリサに怒鳴られた上に話を逸らされてしまった。
「それもそうですね。では始めましょうか…その前に」
「?何よ?」
試合を再開しようと言いながらも話しかけてくる明久にアリサは何事かと身構えるが、
「私も…アリサのそういう素直になり切れないところは好ましいと思っていますよ?」
「なっ///!?」
私がクスリと微笑みながら言った一言で、自分が小声で呟いていたことが実は聞こえていて、それなのに私が気づかないふりをして自分の反応を楽しんでいたということに気づき、怒りと羞恥により顔を真っ赤にする。
「あ、アンタってやつはその口調になっても~~~!!」
アリサは顔を赤くしたまま何かを言おうとするが、私はそれを無視して剣を構える。
「それでは始めましょうか♪」
「ちょっと待ちなさい!その前に言いたいことが…」
「では、行きます!」
そう言って、私は召喚獣をアリサの召喚獣へと突進させた。
ギンッ! ギンッ!! ギギギギンッ!!
姿を変えた明久の召喚獣とバニングスの召喚獣が自分の武器を打ち合わせる音が鳴り響く……明久の召喚獣の装備や髪型、さらには明久自身の雰囲気が変わったことなど驚くことがありすぎて頭のなかがパンクしそうになったが、それは後から聞くことにした……それにしても、
「凄まじい戦いだな……」
「うむ……音で打ち合っているのはわかるのじゃが、剣速が早すぎて剣が全く見えんのじゃ……」
秀吉が言った通り、2人の召喚獣は凄まじい速度で剣を打ち合っていてその剣の動きが全く見えない、それどころか召喚獣が移動するときもその姿がブレて見えるほどだ。
「ムッツリーニ、お前の召喚獣と比べると速さはどんなもんなんだ?」
「……俺の召喚獣が腕輪を使ったときの速度の2、3歩手前、使わなかったらあの2人のほうが速い」
隣にいるムッツリーニにそんな質問をすると、そんな返答が返ってきた。腕輪無しであのムッツリーニに少し劣る程度の速度が出せるのかよ……俺はムッツリーニの返答を聞いて驚くよりも呆れてしまった。
ガギン!! ザザアァァァ!
Aクラス アリサ・バニングス VS Fクラス 吉井明久
総合科目 4026点 VS 3987点
俺が考え事をして2体の召喚獣から目を逸らしていたときに一際大きい音が鳴り響いた後、地面と何かが擦れるような音がした。慌てて前を見ると、最初よりも大幅に点数を減らした召喚獣がそこにいた。どちらも大きな傷は負ってはいないようだが、傷を負っていないわけでは無いようで、数えきれないほどのかすり傷がついていた。
「やっぱり強いわね、明久。あれだけあった点数差がもうほとんどないなんてね」
「アリサも十分強いですよ。観察処分者の私相手にここまでやり合えるなんて、点数差があったとしても普通じゃありえませんよ」
再び召喚獣の操作をやめて話し始める2人…やっぱ明久のあの喋り方は慣れそうにねぇな。
「あぁそのこと? こっちに転校することが決まったときに、この学園の学園長にお願いして休日の間だけ数時間召喚獣の操作練習をさせてもらってたのよ」
大分苦労させられたけどね、と苦笑しながら言うバニングス。なんでもないかのように言っているが、俺はバニングスの言う内容に慄いた。いくらバニングスが練習したからと言っても明久が召喚獣を動かしてきた時間と比べたら短いはずだ。それなのに明久とあれだけやり合えるなんて、一体どれ程の密度の操作訓練をしていたんだ……?
「なるほど…それを聞いて納得しました」
それを理解しているのかいないのか、明久はバニングスが語った内容を聞いて仕切りに頷いた後、
「あなたは昔から負けず嫌いなところがありましたから、召喚獣の扱いでも負けたくなかったんですね」
呆れと少量の懐かしさを含ませた表情でバニングスを見ていた。
「もちろんよ、何事もやるからには1番を目指すのは普通でしょ?」
誇らしげに胸を張ってそう言うバニングス…その心構えは立派だが、胸は張らないほうがいいと思うぞ?ただでさえスタイルがいいのに、そんなことをしたらさらに胸が強ちょ……
ゾクッ!!
そんなことを考えていたら何故か2度ほど悪寒が走ったので、俺は急いでその考えを振り払った。というか悪寒の理由の1つはおそらくあいつだとわかるが、もう1つは一体誰が――
「雄二、2度目はありませんよ?」
原因判明。恐る恐る声のほうに視線を向けると、そこには満面の笑みを浮かべる明久がいた。一見ただ笑っているだけのように思えるが、俺には、声を掛けられた俺だけにはわかった。もしもう一度さっきのことを考えたりしたら、あいつは情け容赦なく俺を殺りに来る…そこまで思い至った俺はすぐに何度も首を振った。
「どうやらわかってもらえたようですね……よかったです、大切な友人が消えることが無くて(ボソリ)」
俺の様子を見た後、ようやく明久は笑みをやめて視線をバニングスに戻した。……後半の言葉がとてつもなく冷たいと感じたのは気のせいではないだろう、その証拠にその言葉を聞いた瞬間から体が震えてるのだから。
「どうしたのじゃ、雄二よ? 体が震えておるぞ?」
「……秀吉、お前にはさっきの声が聞こえなかったのか?」
「? 声とは何のことじゃ?」
「……いや、なんでもない」
どうやらさっきの声は俺だけにしか聞こえていなかったようだ……
「? どうしたのよ、明久? いきなり振り向くなんて」
「気にしないでも大丈夫ですよ、アリサ。私の気のせいだったようですし」
「? それならいいけど…」
「そんなことよりもアリサ、1つ提案があるんだけど」
突然話を変えて、提案を持ち出す明久…提案って何だ?
「何、提案って?」
「いや今のまま戦い続けるのもいいですが、それだと勝敗が決まるのに時間が掛かりそうなので次の一撃で勝敗を決しませんか?」
明久は次の一撃で勝負を決めようと言った……確かにあいつらが戦い始めて既に10分以上経過している。今のままだと余程のことがない限り勝負が決まるのにもっと時間が掛かるだろう。
「そういうことね…この試召戦争の後も予定があるから、確かに時間を掛けるのもまずいわね。わかったわ、その提案受けるわ」
そう言ってバニングスは召喚獣の持つ大太刀を両手で握らせ、上に構えさせる。一体何をするんだ?
「腕輪発動!!」
バサァ!!ゴオォォォ!!
バニングスの意図が読めなかった俺だが、バニングスが腕輪を発動させたことによりその疑問は氷解した。バニングスの召喚獣の背中からは炎で出来た翼が生え、大太刀からはその刀身の数倍に至るだろう炎が吹き上がるが、徐々にそれは刀の形に凝縮されていく……いくら明久の召喚獣でも、あんなもん食らったら一溜まりもないぞ!
キイィィン……!!
しばしバニングスの召喚獣に圧倒されていると、明久の召喚獣がいる方から澄んだ音が鳴り響いてきた。そちらに視線を向けるといつの間に持っていたのか、両手で1振りの――先ほど持っていた剣と同じ黄金色でありながらもさらに眩く光る――剣を構えている明久の召喚獣の姿が目に映った。音はその剣から発せられ、音が強くなると共に剣もさらに輝いていく。
ゴオォォォ……!
キイィィン……!
その2つの武器から発せられる音により場は緊迫し、聞こえる音はそれぞれの武器から発せられる音だけになる。そして、準備が終わったのだろう、お互いの得物から発せられた音が消える。バニングスの大太刀からは巨大な火柱を思わせるほどの炎が、明久の剣からは太陽の光を凝縮させたのかと言わんばかりの眩い光が溢れ出る。
2人は準備が終わってもすぐには動き出さず、ジッと相手を見ている……その光景を見ている生徒の誰かが思わず唾を飲む、と同時に2人の召喚獣はそれを合図にしたかのように前に走り出し、
「断罪!!」
「エクス……カリバァーー!!」
ガギィィン!!
お互いの武器をぶつけ合い、今まで溜め込んでいた力を開放した!
カッ!!ドオォォォン!!!!
「「「「「うおぉぉぉぉ!!?」」」」」
2体の召喚獣の力と力のぶつけ合いにより何の誇張も無しに教室が揺れ、俺たちは大声を上げながら慌てた。なんつー威力だよ!? 旧校舎ならともかく新校舎、それもAクラスの教室が揺れるなんて!
ようやく揺れが収まったとき、俺は落ち着いて2体がぶつかり合った場所に視線を向ける。そこは未だに煙が舞っていて、2体の様子を見ることはできなかった……一体、どっちが勝ったんだ?
そしてようやく煙が晴れて、2体の姿が顕になる。2体はお互いにボロボロでどちらも戦闘を続けるのは無理のように見えた……これはハラオウン姉妹の試合と同じで引き分けか?
俺はそう思ったが、確証は無かったために戦っていた2人に視線を向ける。
「どうやら今ので決着がついたようね」
「そうだね」
バニングスとが一言ずつ言葉を発した直後、バニングスの召喚獣が膝をつき、
「「この勝負…
私(アリサ)の勝ち(だ)ね」」
Aクラス アリサ・バニングス VS Fクラス 吉井明久
総合科目 12点 VS 0点
明久の召喚獣が前のめりに倒れた。
「こ、この勝負、Aクラスの勝利です」
さすがの高橋先生もこの試合には驚いたらしく、判定を言うときの声が上擦っていた。
「すごいね、アリサ。まさか負けるとは思わなかったよ」
明久はそう言って勝ったバニングスを称賛するが、
「そんなこと言われても…
腕輪を使わずにここまでアタシの点数を減らしたアンタに言われても嬉しいとは思えないわね」
バニングスはそう答え、渋面を作った……ってちょっと待て!あの威力で腕輪を使っていないだと!?
「そう言われても…僕の腕輪は発動させるのには4000点以上無いと使えないから仕方ないよ」
「確かにそうだけど……」
明久から腕輪を使わなかった、いや使えなかった理由を聞いてもバニングスは不満そうだった。
「はぁ……納得いかないけど、言っても無駄だし今回はもういいわ」
「それはよかっ……」
「た・だ・し!次また戦うことがあったら、そのときは絶対に腕輪を使うのよ!わかった!?」
「わ、わかったよ……」
バニングスの勢いに押されて、タジタジになりながらそう言葉を返す明久…なんだかここだけを見るとあいつ将来誰かの尻に敷かれてそうだよなぁ……
近い将来、自分がそうなるとは知らずに、明久とアリサのやり取りを見てそんなことを考える雄二だった……
どうも、ソルレインです。
更新遅れてしまって申し訳ありませんでした…さっきようやく訂正まで終わりました。
今回は5試合目、アリサ対明久でした。
この話でようやく明久の本当の装備を出すことができました。ここまでくるのに大分かかったなぁ…