『うおぉぉぉぉぉ(うわぁぁぁぁぁ)!!』
「ん…」
突然歓声と悲鳴の混ざり合った声が上がったことにより、僕の意識は急速に覚醒していく…というか僕はなんで意識を失ってたんだ?
「あ、起きた? 明久君」
身動ぎしたことで僕が目覚めたことに気づいたらしくなのはがそう声をかけてくる…うん、とりあえず言わせてほしい。
「なのは」
「何?」
「なんで後ろから僕を抱きしめているの?」
「床にそのまま寝かせて体を痛めさせたらダメだと思ったからやってたんだけど…嫌だった?」
「いや、嫌じゃないけど…」
そこで一旦話を区切り、さらになのはから視線を外して周囲を見回す。
左を見る。血涙を流し、歯ぎしりを立てながら今にも襲いかかってきそうなFFF団が。
前を見る。苦笑いをする友人たちと羨ましそうになのはを見ているフェイトとはやてが。
右を見る。嫉妬と殺意の視線を向けてくる多数のAクラス男子と好奇の視線を向けるAクラス女子、フェイトたちと同じようになのはを見る幼馴染3人が。
それまで声を張っていた人たちが、僕が起きたことに気づいて叫ぶのをやめて
こちらに視線を向けてきていた。
「ちょっと周りからの視線が…ね?」
僕がそう言うとなのはも周囲を見回し、ゆっくりと苦笑いをして僕から離れてくれた。
ふぅ、これでようやく僕たちへの視線が消え…
「おはようさん、明久。どうだ? 高町の胸を枕にして、少しは疲労は取れたか?」
「うん雄二、ちょっと口を閉じようか」
ガシッ!ギギギギギ!!
ニヤニヤと笑いながら爆弾を落とした雄二にアイアンクローをして口を塞ぐが、時既に遅く。
「「「「(ギリギリギリギリッ…バキッ)」」」」
「これは…良い話のネタができたわね(ボソボソ)」
「えぇ…この試合が終わったらすぐに新聞部にネタを提供しに行かないといけないわね(ボソボソ)」
教室にいる男子生徒ほぼ全員から純粋な殺意が向けられ、女生徒たちからは小声で何かを話していた。はぁ…来週から大変なことになりそうだなぁ。
「まぁいいか…」
僕は雄二にかけているアイアンクローを一旦解く。
「ガハッ! ゴホッゴホッ…あ、明久、今のはちょっと洒落になら…」
強制的に呼吸を止められていた雄二は、咳き込みながらそんなことをのたまうが、僕はそれに応じず、
ガシッ!! ミシミシミシ!!
またアイアンクローを仕掛ける。さっきとは違って今度は口を塞ぐことはせず、そのまま持ち上げる。
「ガアァァァ!!なんで解いたのにまた仕掛け…」
「口を塞いでたら話が聞けないじゃないか。とりあえず、今はどこまで試合が進んだの?」
「アァァァ!! ちょ、ちょっと待て明久! ちゃんと話すから解いて…ギャアァァァ!!」
「いいから早く話しなさい、さもなければ…頭が道に落ちたザクロのようになりますよ?」
メギメギメギ!!
「グウァァァ!! い、今さっき6試合目が終わったところで、次が最終戦だ!!」
私の口調が変わり、さらに頭を掴む力が強まったことにより、雄二は私が言っていることが脅しなどではなく事実だということがわかったらしく、激痛を堪えながら必死に説明をし始める。
「ふむ、ちなみに戦績はどうなっているのですか?」
「さ、3勝2敗1分けで次の最終戦に勝てば、俺たちFクラスの勝ちです!」
「するとさっきの試合は姫路さんが勝利したのですね?」
「そ、その通りです!」
「そうですか…わかりました。聞きたいことはこれで終わりました」
私がそう言うと、雄二はあからさまにホッとした顔をしていた…が、
「それでは…雄二にはゆっくり眠ってもらいましょうか」
次の私の言葉を聞いてその顔を絶望に染める。
「ヒートエン…」
「ま、待つのじゃ明久! 次の最終戦は代表同士の試合じゃぞ!? 雄二が出ないとFクラスの不戦勝になって、折角のチャンスを棒に振ることになってしまう! お主はそれでもいいのか!?」
私は雄二を眠らせよう(止めを刺そう)とするが、それを秀吉が慌てて止めに入る。む…確かに私一人のせいで絶好のチャンスを逃すのは頂けませんね。
「ふぅ…仕方ない、眠らせるのは止めにするよ」
僕はため息を付いた後、口調を戻して雄二の頭から手を離す。手を離したことにより雄二は重力に引かれて受け身を取ることもできずに崩れ落ちた。
「ガッ!? …あ、明久。いきなり離すな…落ちたときの衝撃が頭に響く…」
「自業自得だよ」
余りの扱いに雄二が文句を言ってくるが、僕は一言で切り捨てる。
「ったく…ちょっと悪乗りしただけじゃねぇかよ…」
「雄二、君もあの男子と女子から向けられる視線を体験してみる? …霧島さんと幼馴染ってことを暴露したら僕と同じような目に会えると思うけど(ボソボソ)」
「すまん、俺が悪かった。だからそれだけはやめてくれ」
雄二が愚痴を言っていたので提案を持ちかけてみると、雄二は直ぐ様土下座までして謝ってきた。分かればいいんだよ、分かれば。
余談だが、その光景を見ていた人たちは知らず知らずのうちに体を震えさせていたらしい…
そんなに怖がらせるようなことはした覚えはないはずなんだけど。
「それでは最終試合を開始します、代表者は前に出てきてください」
高橋先生の声に応えるように両クラスの代表が前へと出てくる。
「それでは科目は何にしますか?」
「科目は日本史、内容は小学生レベルで方式は100点満点の上限ありだ!」
最後の選択権を使って雄二は科目をAクラス戦前に言っていた条件で日本史を選択する。
「上限有り、しかも小学生レベルだと…?」
「代表だったら満点確実だけど…それは向こうも同じよね」
「ということは…注意力と集中力の勝負になるな」
自分たちの代表が負ける訳がないと考えていたのだろうが、雄二が提示した条件によって負ける可能性が僅かながら出てきたことに気づいたAクラスにざわめきが生じる。
「わかりました。それでは問題を用意しますので少々お待ちください」
高橋先生は立ち上がって、問題を用意するために教室を出て行く。僕らはその背中を見送り、雄二に近づいていく。
「雄二よ、頑張るのじゃぞ」
「…期待している」
「頑張ってくださいね、坂本くん」
「おう、期待して待っていろ」
みんなは激励の言葉を送り、それに対して雄二は不敵な笑みを浮かべて声を返す。みんなはその雄二の態度に安心したように顔を綻ばせるが、僕だけは違った。
「雄二」
「なんだ? 明久」
「小学生レベルって言ってたけど、ちゃんと勉強はしたよね?」
雄二の笑みに、嫌な予感を感じた僕は雄二に質問を投げかける。もしも僕の思っているとおりなら…
「大丈夫だ、明久。問題ねぇ」
一抹の不安を抱いて聞いた僕の質問に対し、即答で問題ないと言う雄二。その態度を見て疑念は、確信に変わった。こいつ…
「雄二、君は勉きょ…」
「それでは試験の準備が終わりましたので、最後の勝負を始めます。代表者2名は視聴覚室まで向かってください」
「おっと呼ばれたか。それじゃ行ってくる」
僕が何かを言う前に雄二はいつの間にか戻ってきていた高橋先生に呼ばれて、すぐに教室から出て行った。…まぁ今更言っても無駄だからいいか。
「それでは皆さんはモニターを御覧ください」
高橋先生が機械を操作すると、ディスプレイに視聴覚室の様子が映し出される。そこには席に着いた霧島さんと雄二がいた。
『では、問題を配ります。制限時間は50分、満点は100点となっております。そして、不正行為等は即失格になります。ここまでで質問はありますか?』
『……ありません』
『俺もねぇな』
『質問がないようなので、続けます。採点の結果、もしも両者の点数が同点になりましたら再試験となります。以上で説明はすべてです。いいですね?』
『……はい』
『わかった』
『では…始めてください』
高橋先生の合図を聞いて、2人は問題用紙を表にして解き始めた。
( )年 平城京に遷都
( )年 平安京に遷都
ディスプレイに次々と問題が映しだされていくのを、Fクラスのみんなが固唾を飲んで見守っている。しかし僕だけは問題のほうを見ずに、冷めた目で雄二を見ていた。
「? どうしたの明久君?」
そんな僕の様子に気づいたのか、なのはが聞いてくる。
「どうかしたの? なんだかもうこの先の展開がわかったような顔をしているけど…」
「よくわかったね…フェイト」
さらにフェイトも聞いてきたので、僕が説明しようとしたとき、
『『『『よっしゃぁぁぁ!!』』』』
突然Fクラスの方から大声が上がった。おそらく雄二が言っていた問題が出たのだろう、そう予想してディスプレイに視線を向ける。
( )年 大化の改新
そこには予想通り、例の問題が出題されていた。
『出た!』
『これで俺たちのちゃぶ台が…!』
『『『『システムデスクになる!!』』』』
『最低クラスなんて言われてた俺らの、歴史的な勝利だー!!』
『『『『うおぉぉぉぉ!!』』』』
Fクラスのみんなが歓喜の声を上げる中、僕は溜息をつく。
「ホントにどうしたんや、アキ君? 例の問題が出たのに」
「…ちょっと昔話をするよ」
はやてが訝しんでそう聞いてくるが、僕はそれに答えず別の話をし始める。
「雄二はね…中学の頃、悪鬼羅刹と呼ばれるぐらいの不良だったんだよ」
「へぇー…そうだったんだ」
「意外…でもないかな?」
「せやねー。あの見た目と雰囲気で普通の人や言われてもピンとこんしなぁ」
雄二が昔は不良だったと聞いた3人は意外とは思わずにむしろ納得したかのように何度も頷いていた。ちょうどそのとき、ディスプレイでは解答が終わったらしく採点が始まっていた。
「でも、なんでその話を今するの? 何も関係は無さ…!」
なのはが何故その話を今話すのかと聞こうとしたようだが、何かに気づき途中で止める…どうやら僕が言いたいことを理解したらしい。その隣を見るとフェイトとはやても気づいたようだ。
「気づいたみたいだね…そんな中学時代を過ごしていた雄二が、いくら小学生の問題とは言っても試験で満点を取るのは無理だろうね」
「でも、さっき坂本は大丈夫って言ってなかった?」
フェイトがそう言うと同時に、採点が終わったらしく、2人の点数が表示される。
日本史 限定テスト 100点満点
Aクラス代表 霧島翔子 97点
「いや、あのとき雄二が言った言葉は多分…『勉強しなくても小学生のテストなんて余裕だ』って意味だと思うよ?」
Fクラス代表 坂本雄二 74点
僕がそう言い切ると同時に、雄二の点数が表示される。その結果、Aクラスとの試召戦争は引き分けという形で終結を迎えた。
どうも、ソルレインです。
バイトが早く終わったので、更新が早く出来ました。
今回はAクラス戦最終試合、雄二と翔子の試合です…まぁ雄二が負けるのは決定事項でしたが。
原作とは違い、引き分けで終わってしまった試召戦争、どうなるかは作者もわかりません(ぇ
それでは次話をお楽しみに。
あ、ちなみに次話は今日投稿する予定です。