「今回の試召戦争は、3勝3敗1分けで引き分けとなりました」
僕たちが視聴覚室に入ると同時に、高橋先生がそう告げてくる。
「……雄二、私の勝ち」
「…………殺せ」
「ふむ、潔いな……よし、その潔さに免じて……考えうる限り一番惨いやり方で殺してやろう」
そう言ってFFF団の会長である須川君は団員に拷問器具を用意させる。団員たちはその指示に従い、どんどん拷問器具を並べられていく。
拷問器具はペンチから始まりスタンガン、刺付の鞭、石抱き枕と徐々にグレードが上がっていく。あれは……三角木馬か、よくこんな短時間で用意できたなぁ。
「いや明久君、感心してないで止めようよ!?」
「あ、ごめん。現実逃避してた」
なのはの声を聞いて正気に戻る。あまりにも現実離れした光景に思わず現実逃避をしていたようだ。
「大体74点ってなんだよ!?せめて0点なら名前を書き忘れたってのも考えられたのに、この微妙に良い点数だと――」
「あぁ、俺の全力だ」
「「「「この阿呆代表がぁーーーー!!」」」」
誰かが雄二の点数について指摘をすると、雄二はそれが自分の実力だと正直に告白し、FFF団全員から罵倒を叩きつけられる。いや気持ちはわかるけど……
「だったらあなたたちはこの試験で満点取れたの?」
「「「「いや無理です。20点超えればいいほうじゃないかな?」」」」
「あんたら、それでよう坂本っちのことを責められたもんやな!!」
「「「すみませんでした!!」」」
「ハァハァ……八神さんからの言葉攻め……イイ……ハァハ(ゴキッ)」
FFF団の答えにはやては大声を上げて怒る。するとFFF団のほぼ全員がさっきまでの強気を消して一糸乱れぬ動きで土下座をした。謝るぐらいなら言わなければいいのに…。ん? 1人変なことを言ってる馬鹿がいた? あぁ、それならもう(強制的に)眠らせてあげたよ、首を捻って。
「……でも危なかった。もしも雄二がちゃんと勉強してきていたら負けてた」
「言い訳はしねぇ……」
霧島さんの指摘に、雄二は何の反論もしなかった……どうやら図星みたいだね。
「それで引き分けになっちゃったけど、この後はどうするの? 雄二?」
僕は掴んでいたゴミ(FFF団員)を投げ捨て、雄二に近寄る。途中で枝が折れるような音が聞こえた気がするけど……気のせいだね。
「明久、お前……」
「? どうかした?」
「……いやなんでもない、気にするな」
雄二が何か言いたそうにしていたが、結局何も言ってこなかった。おそらく言いたかったのはさっきのゴミの扱いについてだろうが。
「それじゃ、戦後対談としゃれ込もうか」
「……わかっ「待ちな、戦後対談をする必要はないさね」……誰?」
戦後対談を始めようとしたとき、視聴覚室の外から声が掛けられる。そして、扉が開かれ雄二たちを止めた人物が教室に入ってくる。あれは…なんであの人がここに?
「どうしたのですか、学園長?」
「FクラスがAクラスと引き分けたって連絡が来たからやってきたんだよ…全員聞きな!! 来週の月曜日から2学期まで、AクラスとFクラスは同じ教室で勉強してもらうよ!!」
「「「「なっ!!」」」」
突然乱入してきた人物、学園長が語った内容にこの場にいる全員が驚愕の声を上げる。
「静かにしな! ……Aクラスの奴らはなんでそんなことをするのかと思っているんだろう? その理由として挙げるなら、Fクラスへの報酬とAクラスへの罰ってところさね。
本来なら最高クラスであるAクラスは圧勝するか、先に3勝はしといて当たり前なんだよ。それが最低クラスと呼んでいたFクラス相手に先に3勝されちまってた上に、代表が勝つことでなんとか引き分けに持ち込んだらしいじゃないかい。
…ここまで言えば、頭のいいあんたたちなら私が言いたいことがわかるだろ?」
学園長はざわつく人たちを一喝して静かにさせた後、Aクラスの人たちの方へ顔を向け、何故そんなことを言ったのかを説明する。Aクラスの人たちはその説明を何も言わずに聞いていたが、学園長の説明が終わると悔し気な表情をしたり、俯いていた。
「ふん、どうやらわかったようだね……それならもうあんたたちに言うことは無いさね。……さて次はFクラスの馬鹿ども、最後までよく聞くんだよ」
そんなAクラスの様子を見て、学園長は鼻を鳴らして話を終わらせた。そして、次に僕らFクラスの方を向き話を始める。
「今回のことであんたたちは1学期が終わるまでAクラスの教室で勉強できるようになった……が、使えるのは教室なだけであって設備は違うさね」
学園長のその言葉に対して、すぐにFクラスからブーイングが上がるが、
「だから最後まで聞けと言っただろうが、この馬鹿共!! 聞かないならさっきの条件を撤回するよ!」
学園長の鶴の一声で一斉に止めた……こういうときだけ素直になるよね、君ら。
「ったく、こいつらは……あんたたちには土曜日に試験をやってもらう。そしてそこで取れた点数を元にあんたたちが使える設備が決まることになってる……ただし、今から挙げるやつらは与える設備が決まってるから来ないでいいよ」
学園長が話の最後に言った言葉に僕らは頭を捻る。来ないでいい生徒?それって誰のことだ?
「それじゃ言うよ……高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやて、そして……吉井明久。今言った4人は来週からAクラスの設備で1学期の終わりまで勉強してもらうよ」
学園長が僕らの名前を呼び、さらにAクラス待遇だと告げる。Fクラスのみんなはそれを聞いて――驚くことに何も文句を言うことは無かった。
Fクラスの奴らが文句の1つもあげないなんて…これは明日誰かに不幸が、例えるなら縄のようなもので拘束された上、数人がかりでズタボロにされるようなことでも起こるんじゃないかな?
「ふむ……意外さね。てっきり何かケチの1つでも言ってくるかと思っていたんだが……」
学園長もこれには驚いたようで、目を丸くする。
「だってなぁ……Aクラスに引き分けられたのも彼女たちのおかげみたいなもんだし…」
「だよなぁ……それにあんな点数見せられて文句も糞もないだろ」
「吉井は負けたけど、あの試合はどっちが勝ってもおかしくなかったしな」
驚く学園長を尻目に、Fクラスのみんなは口々にそう言い合う。
「ふむ……どうしようもない馬鹿ばかりだと思っていたが、それぐらいの分別は付けられるようだね。だったらこれで話は終わりさね」
学園長はFクラスの態度を褒めた(貶した?)後、一言だけ僕らに向けて言い放ち、視聴覚室から出て行こうとし、
「あぁ、そうだ。あと1つ言うのを忘れてたよ……」
扉を開けたところで伝え忘れていたことを思い出したのか、その場で立ち止まる。そして顔だけを振り向かせてニヤリと笑い、
「A・F合同クラスの担任は西村先生、副担任に高橋先生に任命したから、しっかり勉強するんだよ」
「「「「はぁ!?」」」」
「それじゃ後は頼んだよ、西村先生」
学園長は新しいクラスの担任と副担任が誰になったのかを告げると、驚きの声を上げて固まるみんなを無視してさっさと戻って行ってしまった。
「では自己紹介をさせてもらおう。A・F合同クラスの担任を務めることになった西村だ。1学期の終わりまでだが、厳しく教育していくつもりだから覚悟しておけよ!」
その西村先生の自己紹介は、両クラスの生徒には死刑宣告のように聞こえた。
「……雄二」
あの後西村先生から合同クラスの詳細を説明され、それが先程終わって皆が帰ろうとしようとしたとき、霧島さんが雄二を呼ぶ声が教室に響いた。
「……なんだ? 翔子」
「……試召戦争前に決めた約束」
「…………!(カチャカチャカチャ!)」
霧島さんの言葉に反応してカメラを弄りだす康太。まったく…ブレないよなぁ…
「ムッツリーニ! 何か手伝うことはないか!?」
「…………照明とレフ板を準備しろ!」
「よし、わかった! おい、誰か! 大至急照明とレフ板をすぐに準備しろ!」
「よし、照明OKだ!」
「レフ板のセッティングも終わったぜ!」
うちのクラスのやつら。そんなことばかりするからモテないんだろうに…まぁ同じクラスだし、言うつもりは……
「あんなことばかりやっとるから、気持ち悪がられて女子にモテんっちゅうのに……」
僕がせっかく言わないようにしていたことを、何の躊躇いもなくはやてが口にする。あ、Fクラスの行動に引いていたAクラスの女子も同意するように何度も頷いてる。
「はやて! そういうのは思ってても言っちゃダメだよ!」
「フェイトちゃん。注意してるところに悪いけど、その言い方だと止め刺してるだけだよ……って前もこんなやり取りあったよね……」
「……あ」
天然で毒を吐くフェイトになのはがツッコミを入れる。そんな漫才ようなやり取りを、しかし撮影をしようとしていたFクラスははやてからの精神口撃+フェイトの悪意のない追撃により致命的なダメージを受け、心ここにあらずといった様子で全く聞いていないようだった。
「分かってる……早く言え」
雄二はそんなFクラスの様子を気にも止めず、霧島さんに要求を促す。
「……だったら」
そこで霧島さんは一旦話を止めた後、
「雄二……私と、付き合って」
「「「「……は?」」」」
静かにそう言い、それを聞いたAクラスの人たちは頭の中が真っ白になったかのように立ち尽くしていたが、
「(やっぱりエイプリルフールに言ってたことは本当だったのか……)」
僕だけは首を何度も縦に振っていた。
「はぁ…やっぱり、まだ諦めていなかったのかよ。何度も断ったはずだろ?」
「……私は雄二が好き、だから諦めない」
「ちなみに俺以外の奴と付き合う気は?」
霧島さんの返答を聞いて、雄二がそう尋ねるが、
「……そんなのない、私には雄二しかいない」
と即答される。これは本気で雄二に惚れ込んでるね……
「……拒否権は?」
「……雄二は、約束も守れないの?」
霧島さんの問いかけに、
「あぁ、守れないな」
雄二は堂々と言い切った。いや、それは人としてどうかと思うけど……
「……今からデートに行く、絶対に逃さない」
「な、ちょっと待て翔子!」
「……待たない」
そう言って、霧島さんは雄二の襟首を掴んで引き摺って行く……あ、いいこと思いついた。
「霧島さん、ちょっと待って」
「……何?」
「あ、明久! お前……!」
僕が霧島さんを引き止めたことで、霧島さんは表情は変えないが声を少し不機嫌に、雄二は顔を輝かせる……が、
「はい、映画のペアチケット。これがあれば2人だけでゆっくり映画が見れるよ。ちなみにオススメなのは最近流行ってるラブロマンスだよ」
「なっ!!」
僕が映画のチケットを霧島さんに渡すと顔色を青くさせた。
「……いいの?」
「うん、いいよ……一応誘える人はいるんだけど多すぎてね(ボソボソ)」
僕はなのはたちに視線を巡らせた後、後半部分を霧島さんにだけ聞こえるように囁く。
「……ありがとう、吉井は良い人」
「どう致しまして……あ、雄二」
霧島さんが微笑みながら礼を述べてきたので、気にしないでいいと言った後、僕に凄まじい怨嗟の視線を向けてくる雄二に声を掛ける。
「あ゛あ゛!?」
「……これで今朝のことはチャラにしておいてあげるよ、それと……もうちょっと自分の心に素直になったら? (ボソ)」
「っ! 明久、テメェ!!」
「あ、霧島さん。映画だけど早く行ったほうがいいよ、遅くに行ったら補導されるからね、それと恋人同士なら腕を組んだほうがいいんじゃない?」
僕が雄二だけに聞こえる程度の小声で呟いた内容に、雄二は過剰に反応するが、それを無視して霧島さんに早く映画に行くように言う。そのとき助言をするのも忘れない。
「……わかった。雄二、早く行く」
「待て翔子! 俺はその馬鹿に言いたいことが……ガアァァァ!! しょ、翔子、なんで俺の腕に関節技を……」
雄二が僕に何かを言おうとしたが、それは霧島さんに関節技を掛けられたことによって雄二の口から出ることはなかった。おぉ……完全に決まってる。
「……? 腕を組んでるだけ」
「いや、明らかにその組み方は違……」
「……いいから、行く」
「ま、待て! 関節技を掛けながら歩き出すんじゃ……」
霧島さんはそのまま雄二に関節技を極めながら視聴覚室から出て行ってしまった。痛そうだなぁ……と僕が思っていると、
ブブブブブッ!
誰かからかメールが届いたようでなので中身を見る。
『おぼえてろ』
発信元は雄二からだったようで、内容は一言だけだったが、これだけで雄二の怒ってることが手に取るようにわかった……君が忘れるまでは僕も忘れないであげるよ。
「さてそれじゃ帰ろ「ちょっと待ちなさい、明久」……う? どうしたの? アリサ」
僕が帰ろうと皆に言おうとするが、途中でアリサに遮られる。
「あんたに伝えとかないといけないことがあるのよ……明日の10時、迎えを送るから出かける準備をしときなさい」
「?? どこか行くの?」
「それは内緒、だよ♪」
「そうそう。お楽しみは最後まで待っておかないと♪」
アリサに詳細を聞こうとしたのだが、すずかとアリシアにはぐらかされてしまう……これは聞いても教えてくれなさそうだね……
「……わかったよ。それじゃ明日の10時だね、待ってるからちゃんと迎えに来てね?」
「ええ、楽しみに待っていなさい……今までに経験したこともないほどの歓迎を用意してるから(ボソ)」
「ん? 何か言った?」
「い、いや何も言ってないわよ?」
アリサが何か小声で呟いた気がしたんだけど……どうやら気のせいだったようだ。
「そ、それじゃ伝えたから私たちは帰るわね……また明日ね、4人とも」
「じゃあね、みんな」
「またね~」
「うん、また明日」
そう言ってアリサたちは荷物をまとめていそいそと帰って行った。なんだか様子がおかしかったけど…まぁいいか、早く帰るとしよう。
その次の日の土曜日、僕はこのときアリサが小声で何を言っていたこのかを追求しなかったことを後悔するのであった……まぁ追求してても結末は同じだっただろうけど。
どうも、ソルレインです。
今回はAクラスとの戦後対談…と思わせて妖怪ことババァ長…学園長の登場でした。
オリジナル展開は、頭では浮かんでいるのに言葉にして書くのが難しかった…
さて次からようやくリリなの勢の方々が登場する予定です…が、
そろそろ学校が始まってしまうので、遅かった投稿がさらに遅くなって、
更新速度が早くて3日、遅くて1週間に1回ぐらいになると思われます。
楽しみにまっていて下さる方々には申し訳なく思うのですが、どうかご了承ください。