『喫茶店を経営する場合、制服はどんなものがいいですか?』
八神はやての答え
『女子:メイド服、男子:執事服』
教師のコメント
Fクラスは確か執事喫茶でしたよね。珍しく真面目に準備をやっていましたよね。
その努力が報われて成功することを祈っています。
土屋康太の答え
『スカートは膝上15cm、胸元はエプロンドレスのような若干の強調をしながらも品を保つ。色は白を基調とした青が良い。トレイは輝く銀で照り返しが得られるくらいのもので、裏にはロゴを入れる。靴は5cm程度のヒールを――』
教師のコメント
裏面にまでびっしり書かなくても。
吉井明久の答え
『執事服…………だけだと嬉しいなぁ』
教師のコメント
あなたは一体なにを着せられようとしているのですか?
須川亮の答え
『女子:メイド服! 、男子:ブレ、ブレ……ブラジャー!』
教師のコメント
お巡りさん、こっちです。
更新遅くなってしまってすみません。
今回からようやく清涼祭が開始します。ではどうぞ。
「こうして見るとこの教室もだいぶ様になったね」
「そうだね」
「はやてたち、頑張っていたもんね」
「まぁ元々が酷すぎやったちゅうのもあるんやけどね」
清涼祭の初日の朝。
学園長の迅速な改修作業と僕たちの働きにより、Fクラスの教室は今までの廃屋のような内装だったのがまるで嘘であったかのように一新され、洋風の落ち着いた雰囲気を醸し出す執事喫茶へと姿を変えていた。
「…………明久、八神」
「きゃあ!」
「つ、土屋? いつの間に後ろにいたの?」
「…………ついさっき」
「ま、全く気付かんかったわ……」
突然後ろに現れた康太に驚きを隠せない3人。まぁ無理もないか、康太は気配を隠すのが、えっ、一般人? 本職じゃないの? って思えるぐらい巧いからね。僕も慣れるまで気配悟れなかったし。
「…………味見用のデザートを持ってきた。ちなみに製作者は明久」
そう言ってトレイを差し出してくる。その上にはシュークリームと紅茶が入れられたカップが載せられていた。
「明久たち、何をしておるんじゃ?」
「土屋くんが持っているのはシュークリーム、ですか? ……わぁ、美味しそうですね」
「試食か何か? だったらウチらも貰ってもいいかしら?」
ちょうどそのとき秀吉や姫路さん、島田さんが僕たちの様子に気づいて近寄ってきた。
「康太、3人もいいかな?」
「…………(コクリ)」
「では了承も貰えたのじゃし、遠慮なく頂くかの」
3人は手を伸ばし、シュークリームを頬張る。
「「「お、美味しい(です)!」」」
そして直ぐ様称賛の声を上げる。どうやら口にあったみたいだね、よかったよかった。
「はむ……うん、久しぶりに明久のデザートを食べるけど、やっぱり美味しいね」
「むむむ……料理の腕前は負けてへんけど、デザート作りに関してはまだアキ君には勝てそうにないわぁ」
「そうだね……明久君のデザートってお母さんが作るのと同じぐらいの出来なんじゃないかな?」
「いやなのは。それは流石に言い過ぎ」
なのはの感想に思わず苦笑いを浮かべる。桃子さんの作るものと比べられても……ねぇ?
「紅茶もシュークリームに合ってて美味しい……幸せです……」
「そうね……」
姫路さんたちがカップに注がれた紅茶を飲んで軽くトリップしている。どうやら紅茶の方も好評みたいだね。
「それじゃ康太、僕も一つ貰うよ?」
「…………(スッ)」
差し出されたシュークリームを受け取り、一口頬張る。
「うん。外はサクサクでありながら中のクリームは甘くなく、何度食べても慣れることのなさそうな、辛いを通り越して痛すぎる味わいがとっても――んゴパっ(ドシャッ)」
「「「明久(アキ)(君)!?」」」
「…………明久!?」
「明久!?」
『(マスター!?)』
突然その場に崩れ落ちた僕に驚く皆。まるで口の中にトリプルブレイカーが着弾したかのように味覚と意識を吹き飛ばそうとするこの辛さ……ま、まさか――
「こ、康太。このシュークリーム……もしかして冷蔵庫の奥に置いてた皿のやつも取り出した?」
「…………? あぁ、試食用が足りなさそうだったから2個ほど取り出したが……それがどうかしたか?」
や、やっぱりか……!
「康太……それ、試食用じゃなくて罰ゲーム用にと作った極辛麻婆味のやつだよ」
「…………ッ!?」
「なん……じゃと……!?」
僕の言葉に体を強張らせる康太と秀吉。厨房班の大半とたまたまそのとき来ていた秀吉は試食したことがあるからあの料理の凶悪さを知ってるもんね……
『(あのときは大変でしたよね……異常なタフさを持つはずのこのクラスの方たちが全員保健室送りにされたのですから)』
僕もまさかみんなが倒れるとは予想だにしなかったからね。なのはたちがいない時だったのが不幸中の幸いだったよ。
「…………すまん、明久」
「いや知らなかったんだったら仕方ないよ。それよりも早くこれを元の場所に――」
「うーっす。戻ってきたぞー。ん? なんだ、美味そうじゃないか。最後の一つ貰うぞ」
「「「「「「あ」」」」」」
戻してきて、と言い切る前に学園長室に大会の打ち合わせをしに行っていた雄二が帰還。そのまま流れるような動作でシュークリーム(極辛)を手に取り、止める間もなくパクリと一口で食べてしまった。
「ふむ、外はサクサクでありながら中は甘いどころか今まで味わってきた辛さが可愛く思えるほどの激辛クリーム。辛いを通り越して痛すぎる味わいがとっても――んゴパっ(ドシャッ)」
あ、
「雄二、大丈夫!?」
床に倒れ伏した雄二に慌てて駆け寄る。一口頬張っただけでも作った僕が倒れるほどの代物だ。一個丸々食べた雄二は果たして……
「ふっ、俺を誰だと思ってる? 安心しろ」
床に突っ伏したまま雄二が返事をしてくる。よかった、どうやら無事――
「ところで明久、一つ確認するが……別にあの川を渡ってしまっても構わんのだろう?」
「――じゃない!? 駄目だ、雄二! 今君が見ている川は、三途の川だから渡ったら戻れなくなるよ!」
「え、衛生兵! 衛生兵はおらぬかーー!?」
「…………雄二、しっかりしろ! 傷は……致命傷だが諦めるな!」
たった1個食べただけで致命傷になるとは。これは罰ゲーム用の食べ物は別のものにしたほうがいいかな……?
そんな少しズレたことを考えながらも必死に手を動かして心臓マッサージをする。
「なに……? もう乗れる船がない? 嘘を言うんじゃねぇ。そっちの金ピカのやつが乗ってる船は大分スペースがあるだろ。……あ゛? 『王たる我の船に乗れるのは我と我が友と認めた者だけだ。貴様はそこにいる青犬と同じく泳いで渡れ、赤猿』だと? 巫山戯たことを言ってないでいいから乗せやが――はっ!?」
心臓マッサージをすること十数秒。なんとか雄二を蘇生することが出来た。よかった、譫言の内容からして相当危ないとこまで行ってたみたいだから戻ってきてくれて本当によかった……
「大丈夫か? 雄二よ」
「な、なんとかな……さっきのは一体なんだったんだ? 味を認識したと思ったらいきなり意識が飛んだんだが」
「…………すまない。2個ほど罰ゲーム用のものを試食用のと混ぜて持ってきてしまった」
雄二の問いに口直しのヨーグルトを渡しながら康太が答える。
「さらに康太のを補足して言うと、そのことがわかって元の場所に戻そうとしたときに雄二が帰ってきて止める間もなく――」
「今に至るってことか……とりあえず罰ゲーム用のものは別のにしておけ。さっきのは下手すりゃ死人が出る」
「そうだね……」
雄二も僕と同意見のようだし、他のに変えるか。
「そういえば雄二。お主は何処に行っておったのじゃ?」
「あぁ、ちょっと俺と明久が出る試合の確認をな」
実際は学園長室に行って試験科目の指定を行っていたのだろうが、正直に話せることではないのでもっともらしい返事を返す雄二。
「え? 吉井くんたちも召喚大会に出るんですか?」
雄二の言葉に反応しトリップ状態から復帰した姫路さんが確認するように僕を見てくる。
「うん。色々あってね」
「えっと、もしかして……商品狙いですか?」
「いや? 雄二に今まで召喚獣での闘いをやったことがないから一緒に出てくれ、って頼まれてね。腕試しとしてもちょうどいいから参加することにしたんだよ」
「へぇ~…そうなんですか~」
僕の話を真に受ける姫路さん。一番の理由は学園長の頼みで『商品の回収』をするためではあるけど……ってあれ? 『商品の回収』? なんで学園長はそんな言い方したんだ? チケットを回収したいならそんな言い方は――
「…………吉井、嘘を言わないで誰と行くつもりか教えてくれないかしら?」
僕の頭の中で何かが繋がりそうになったとき、そんな声が僕の耳に届いた。思考を中断し、その声が聞こえた方を見るとそこには――
「正直に言いなさい。今言えば右腕1本で許してあげるから」
と危険なことを手をポキポキと鳴らしながら口走る島田さんがいた。
「いや嘘じゃないんだけど……」
参加する一番な理由ではないだけで嘘は言っていない、のだが。
「嘘よ! 早く言いなさい!」
僕の言い分に聞く耳を持たないとばかりに攻撃態勢に入る島田さん。なんでこの人はいつもなにかあったら僕に攻撃を仕掛けようとするんだろう……というか、
「「「はいはい、島田(さん)おとなしくしようかー」」」
「ちょ、放しなさい! 高町にハラオウン! 今ウチは吉井に聞かないといけないことが――ムガッ!?」
僕に手を出そうとしたらなのはたちにやられるっていい加減学習すればいいのに……なのはとフェイトの二人がかりで抑えられ、先程の激辛シュークリームの残りをはやてに口に突っ込まれて動かなくなった島田さんを見て僕はそう思わずにいられなかった。
「明久、そろそろ試合だ。行くぞ」
「あ、うん、わかったよ。それじゃみんな、少しの間喫茶店をよろしくね」
雄二の言葉を聞いた僕はそれまでの思考を全て放棄し、喫茶店のことをみんなに頼んで試合会場へと足を向けた。
~~おまけ~~
「そういえば明久」
「ん? なに、雄二?」
「いやちょっと聞きたいことがあるんだが……さっき俺が食ったあの極辛クリーム、何を参考にして作ったんだ? 正直、正気の沙汰じゃないほどのレベルだったぞ、アレは」
「1年ぐらい前にネットで何かピンと来る料理のレシピがないかなー、って探してたらとある中華料理店の紹介を見つけてね」
「中華料理店?」
「そう、中華料理店。なんでもそこで出される麻婆豆腐がこの世のものとは思えないほど辛い、って騒がれててね。どんなものなのかを食べに行ったんだよ。まぁ今となってはどうしてそんなことをしたんだろう、って後悔しかないんだけどね……」
「あー……つまりあの極辛クリ―ムはそこの店の麻婆の辛さを再現した、っていうことなんだな?」
「……うん、大体6割ぐらい。もっと本物に近づけさせれるけどやったら食べた人全員が入院しかねないからね」
「…………あれで6割? どんだけ辛いんだよ、その麻婆……」
「隣のテーブルで食べてた男性3人組の内の2人、金髪で我が強そうな長身の人が一口食べて悶絶、青髪で飄々とした雰囲気を持っていながらもどこか不幸そうな人が10皿を1分ぐらいで完食したと同時にピクリとも動かなくなったぐらい?」
「…………まずアレ以上の辛さのものを食ったことに尊敬を覚えるな……というかその2人、最近見た気がするんだが……気のせいか。そういえばその店の名前はなんなんだ?」
「確か『紅洲宴歳館・泰山』だったよ」
「……よし、一字一句間違えることなく覚えた。その店には絶対に近づかないように心に刻んでおこう」
まさかの登場、泰山麻婆(味のみ)。Fate要素も入れるんだったら欠かせませんよね! ……武器かどうかと言われたら怪しいけど。
ちなみに明久と雄二が倒れたのは不意打ち気味だったためで、覚悟して食べれば倒れはしません……再現度100%だったら倒れますが。