「明久、お前にDクラスの宣戦布告の使者になってもらいたいんだが、いいか?」
俺はそう明久に聞いた。俺と同等かそれ以上の強さを持つこいつなら、
使者として送って襲われたとしても、大丈夫だろうと判断したからだ。
「…うん。いい『『『ちょっと(ちょい)待って(や)』』』…よ?」
だが明久の返事を途中で遮る声が複数あった。
「出来れば、明久君と OHANASHI したいから、今すぐ借りて行きたいんだけどいいかな?」
「うん、ちょっと明久と OHANASHI したいことがあるんだよ」
「そや。ちょーっとばかしアキ君に OHANASHI しないといけんのや」
声の主は、高町・ハラオウン・八神だった…3人の表情は笑っているが、瞳からは光が消えており、気のせいか、後ろから物凄く黒いオーラを出しているように見える…
そして、これだけは確実に言えることがあった。
お話が OHANASHI に聞こえるのは、俺の気のせいではないだろう、と。
「あ、あぁ…わかった。それじゃあ…須川。
すまないが、お前がFクラスの死者として、Dクラスに宣戦布告に逝ってきてくれ」
俺は3人の雰囲気に押され、近くにいた須川に死者を頼んだ。
ちなみになぜ使者ではなく、死者と言ったのかというと…
下位クラスが上位クラスに宣戦布告すると使者は高確率で襲われると言われており、
特に運動神経が良いとは思えない須川では無事に戻ってこれそうにないと判断したからだ。
「あ、あぁ了解した」
須川も雰囲気に押されたのか、すぐに教室を出て、Dクラスへと向かって行った。
…この空気から逃げたかったのだろうが、あの様子じゃ逃げた先が死地だと気づくのは、
宣戦布告してからだろうな、と俺は思った。
「さて、それじゃ明久君」
「ここだと、OHANASHIできそうにないから」
「どこか迷惑かからんとこにでも移動しよか?」
どんなお話をする気だよ!?そう頭の中で叫んだのは俺だけじゃないだろう。
「…わかりました(そうか、エクスが言ってたのはこのことだったんだね…)」
3人に言われたあいつは、それだけしか言えそうにないようだった。
そして、4人が教室を出て行って、ようやくFクラスのバカ共は動き出すことができた。
「凄まじい迫力じゃったな…」
「…動けなかった」
そう言いながら近づいてきたのは、秀吉とムッツリーニだった。
「あぁ…俺もアレほどの迫力は今まで見たこともねぇ」
「雄二にそうまで言わせるほどか…にしても、明久はあの3人とは
結局どんな関係なんじゃろうのぅ?」
「…気になる」
確かに、それは俺も気になっていた。なんせこの中でも一番付き合いの長い俺でさえ、
あいつにあんな知り合いがいたなんてこと、知らなかったからな。
「まぁ、それはあいつが帰ってきてから聞けばいいだろ『『ギャアァァァ!』』…う?」
俺がそう言った瞬間、2つの男のものと思われる悲鳴が聞こえてきた。
「この声は…まさか」
「…おそらく須川と明久」
その悲鳴は片方は直ぐ止んだ。そして、少したった頃に教室のドアが乱暴に開けられた。
「さ、坂本!て、テメェ、よくもやってくれ『グウァァァァァ!!』た…な」
そこにはおそらくDクラスにやられたのだろう、ボロボロになった須川がおり、俺に掴みかかってこようとしたが、明久のものと思われる悲鳴を聞いてその動きを止めた。
「す、須川か。どうやら宣戦布告はすませてきてくれたようだな」
「あ、あぁ。行ってきて、Dクラスの奴らに襲われたよ!」
「そうか、ご苦労だった。本当なら喧嘩が強い明久に行かせようと思っていたんだが『アァァァァ!!!』、…この声を聞けば予想がつくだろうが頼めなくてな、お前にはすまんことをした…。」
「い、いや、それを言ったら何も聞かずにDクラスに行った俺も悪いんだ。
だから謝らなくてもいい。怒鳴って悪かったな」
俺は須川を労った後、謝罪をした。謝罪の途中に、また明久の悲鳴が聞こえたが、
それを聞いた須川は冷静になったようで、自分にもちゃんと聞かなかったから非があると言って、
その場は何事も無くおさまった。それにしても…
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーッ!!!!』
「…明久のやつ、無事に帰ってこれるのか?」
「無事に帰ってくる、と言いたいところじゃがどうじゃろうかのぅ…」
「…アーメン」
明久の悲鳴を聞いていると、俺はそう思わずにはいられなかった。
秀吉、そこは断言してやろうぜ? そして、ムッツリーニ、明久は死んだ訳じゃ…
きっと、ない、はずだぞ?
そしてその明久のものと思われる悲鳴はその後も断続的に旧校舎内に響き渡り、
昼休みが終わるまで続くのあった…。
「うふふフフ…明久君モウギブアップシチャウノ?」
「あはハハハ…マダマダ大丈夫ダヨネ、明久?」
「ふっふッフッフッフ、時間ハマダタップリアルカラソレマデOHANASHIシヨウネ?アキ君?」
『やはり、こうなりましたか…』
『●●●●●●ーーーッ!!!!』
そんなデバイスの声は、主の悲鳴によってかき消され、誰の耳にも届くことはないのであった。