なんとか理性を抑えて帰宅することに成功した僕は、
なのはたちがどうして文月学園に来たのかを聞いていた。
「――ということはやっぱり、なのはたちは管理局の任務で、
試験召喚システムを調べに来たんだね?」
「うん、そうだよ」
話を聞くと、管理局が試験召喚システムに目をつけ、その技術について調査をし、
もし管理内世界でも運用が可能であれば取り入れようと計画を提案、実行したらしい。
そして、その管理外世界――地球出身であり、年齢もちょうどいいという
ことでなのはとはやて、そして数年をその2人とともにいたフェイトの3人に
白羽の矢が当たったということらしい。
休暇を取らずに幼い時から働き詰めになっている3人の少女に、
任務という名の長期の休暇を取らせるため、という面もあるらしいが。
それを聞かされた僕がジト目で3人を見て、その視線に耐え切れずに
3人とも視線を逸らしたということは言うまでもないだろう。
「で、でも、まさかその調査に入った学園に今までずっと探し続けてきた
人がいた、っていうのは管理局のほうも予想もしてなかっただろうね」
視線に耐えられなかったのか、話を変えようとするなのは。
それにフェイトとはやて、残りの2人も便乗して話を進める。
「た、確かにね。明久が私たちの前から姿を消した後、
私たちの持てる人脈を使って捜索してたのに、それでも見つからなかったもんね」
「せや、いくら昔の私たちの人脈がそこまでなかったって言っても、
リンディさんに忍さん、士郎さんの人脈を使っても見つからへんかったのになぁ」
そう言う3人に、僕は苦笑しながら答える。
「あのときは、色々と頑張ったよ…。何度も転移を繰り返して、この街に戻ってきて、
魔力を抑えるための術式を必死に制作した後、その抑えてる魔力を認識阻害魔法の使用に当てるようにして僕に辿りつけないようにしたり、他にも母さんたちと話しあったりとか…
話すとキリがないぐらいやったかなぁ」
「なるほど…。あれ、でも何年もバレないような認識阻害だったのに、
どうして今頃になって露見したの?」
その僕の問いに納得したように頷いていたが、フェイトが疑問に思ったことを僕に聞いてきた。
「うん、実はその術式はエクスをずっと持っていないと発動できないようになってたんだよ。
それにこれはエクスが手元に戻ってきた時にわかったことなんだけど、この認識阻害魔法は一度発動を停止したらまた発動するのに、数ヶ月期間を置かないといけなかったんだ」
「つまりアキ君のうっかりが原因で、数年の努力がパーになったちゅうことやな!」
どうして情報が漏れたのかを説明し終えた僕に、はやてのストレートな感想が突き刺さり、心が折れそうになる。せ、せめてオブラートに包んで言って欲しかったよ…
「は、はやて! あ、明久? 気にしちゃ駄目だよ? 明久がどこか抜けてるなんてことは皆知ってるんだから、ね?」
「フェイトちゃん! それフォローになってないどころか、さらに追い打ちかけてるよ!」
「ふぇ?」
はやての言葉を聞いたフェイトが、必死に僕をフォローしようとするが、彼女の天然が発動し、
その言葉によってさらに僕の心が折れそうになる。
「あ、明久! ご、ごめん、そ、そんなつもりじゃ…」
「さすがフェイトちゃんやね…天然発言で無意識にアキ君の心を折りかけるやなんて…」
「人事みたいに言ってるけど、もともとははやてちゃんのせいでしょ!」
この後、かなりの時間をかけてどうにか僕の折れそうになった心を持ち直すことに成功した後、
僕たちは夕食に取り掛かった。
夕食だが、はやてが料理が上手なことは知っていたが、なのはとフェイトの料理も
僕と染色がないぐらいの美味しさだった。
特にフェイトは一時期一緒に住んでいたため、冷凍食品ぐらいしか作れなかったのを知っていたので、
フェイトの料理を食べたときはその美味しさにとても驚かされたほどだ。
そんな僕の反応に、フェイトはとても嬉しそうな笑顔を僕にむけてきていて、
思わず見とれてしまったというのは内緒だ。
夕食を食べ終え、皆がお風呂を入り終えた後、居間で談笑をしていると、
寝るのにいい時間がきたため、そろそろ寝ようかとみんなに言う。
「そうだね、それじゃ寝ようか」
「そうだね」
なのはとフェイトが賛成しそれぞれの寝室に行こうとしたが、
「それじゃ、久しぶりに皆一緒のベッドで寝よか」
はやての一言によって、居間の空気が一瞬で止まってしまった。…って!
「いきなり何言い出すの、はやて!」
「ん? なんか問題でもあるんか?」
「大有りでしょ!」
いきなり何を言い出すんだ、この狸は!
「誰が狸やねん!」
「心の声を読まないで!」
どうして狸関連だけ心を読めるんだろう、この子は。
「えぇやん、別に減るもんじゃないし」
「いやいや減るよ!? 僕の理性と睡眠時間がガリガリ削られるよ!?」
「ふむ、それもおもしろ…ゴホン、ええから皆一緒に寝るで!」
「今おもしろいって言いかけなかった!?えぇい、なのはとフェイトも何か言ってくれ!」
あの2人ならきっとはやてをとめてくれるはず!そう思い、彼女たちに視線を向けると
「…どうしようか、フェイトちゃん(ボソボソ)」
「…明久と一緒のベッド、これを逃したら次のチャンスはそうはないよ(ボソボソ)」
「…だよね、だったら(ボソボソ)」
何か2人だけで話をしていた。
小声だからなんて言ってるかまではわからないけど…嫌な予感が…。
「「私達も別に一緒でもいいよ?」」
「なんでさっ!?」
え、この子たちはなんて言ってるの?
「それじゃあ寝よか?」
そう言って、僕の右腕に抱きついてくるはやて。
「そうだね、早く寝よう♪」
フェイトはすかさず左腕に抱きついてくる。
「しまった…出遅れちゃった」
出遅れたなのはが若干悔しそうにして、僕の背中を押してくる。
くぅ…、誰も僕のいうことを聞いてない…。
だ、だけどここで負けるわけには…負けるわけにはいかないんだー…!
――――――――寝室――――――――
「僕は…無力だ」
あの後、どうにかして説得しようと試みた僕だが、幼馴染3人による上目遣い+涙目のコンボにより、あえなく撃沈。今、ベッドには僕の他に、なのは、フェイト、はやてが寝ている。
眠れずにずっと起きている僕とは対照的に
「「「Zzz…」」」
眠れない原因である3人はスヤスヤと安らかに眠っている。
ちなみに、ベッドは4人で寝るには少々手狭なため真ん中による必要があり、
僕はそのベッドの中央にいる。
…簡単に言うと、3人から思いっきり抱きつかれてる、という訳です、はい。
ちなみに配置を上げると、右にはやて、左にフェイト。なのは?僕の上に寝てるよ?
女の子、それも美少女に分類される娘に抱きつかれて寝られるだろうか?
答えはNo.だ。
ベッドに横になったのがだいたい11時だったのに、今はもう3時を回っている。
そのことに気づき、どうやって寝ようかと考えていたそのとき、
「…こ……の、…ん」
「うん?」
なのはが寝言で何かを言っているのが聞こえて、彼女の顔に視線を向けた。
「どこに…いるの、明久…君…どう…して…どうし…て…何も…言わないで…行っちゃったの…ぉ」
なのはは――涙を流し、悲しそうな声で僕を呼んでいるようだった。
「せっかく…怪我…が…治った…のに、ありが…とう…って…言ってないのに…明久…君に…
伝えたい…ことが…あるのに…どうし…て…私の…私たち…の前…から…いなく…なっちゃったの…」
それは、彼女の心からの本音だったのだろう。その途切れ途切れに発せられる声を
しっかりと聞きながら、僕はそう、思った。
そして、次にフェイトとはやての顔をそれぞれ見ると彼女たちも、
その目から涙を流していたのが見て取れた。
そうか…今日、3人が一緒に寝ようと言ってきたのには、
僕に対する
「…ごめんね」
僕はそう言って、3人の頭をそれぞれ撫でた。撫でられた3人はそれで安心したのか、それ以降、涙を流すことはなかった。
「…」
そして、僕はそんな3人をギュッと抱きしめて目を瞑り、意識を闇に沈めた…。
「……君」
「う…ぅん」
僕が誰かに呼ばれているようだ。一体誰だろう…。
「…久君、明久君!」
「うぅん…」
誰かが僕を起こそうとして揺すっているが、僕は眠気に勝てず、
布団の中で寝返りをうった。
「明久君、朝だよ! 早く起きないと!」
誰かはいつまでも起きない僕に焦れて、布団を取って起こそうとしているようだ。
僕は、心地良い眠りを邪魔されないように布団を掴む力を強める。
「く、うぅ…全然取れないの…」
「―――、明久は起きた?」
「あ、――――ちゃん、それがまだ起きないの…」
誰かは僕の布団を取れないことに悔しがっているようだった。さらに
他の誰かが僕が起きたかどうかを聞きに来たようだ。
「それが、揺すっても起きないから布団を取って起こそうとしてるんだけど、
その布団が取れないんだよ…」
「あー…なるほどね。昔も夜更かしした後は、そんな風になってたからね」
「そのときはどうしてたの?」
そんな会話が僕の耳に入ってくるが、半分以上眠っている僕は、その会話の内容を理解できていなかった。
「こうなったときは、アルフと2人がかりで布団を取ってたよ」
「そうなんだ…それならフェイトちゃん、一緒にやろう!」
「うん、いいけど…あれ?何か大切なことを忘れてる気が…」
「フェイトちゃん、そっちを持ってくれない?」
「あ、わかったよ、なのは」
まだ何かを話してあっているが、僕は気にしていなかった。
「いっせーの、で行くよ?」
「うん、それでいいよ」
「それじゃぁ…」
「「いっせーの!」」
ガバッ!
突然さっきよりも強い力で引っ張られた布団は、僕の抵抗虚しく僕の手から離れていく。
「やった、取れた!」
「あれ? そういえば昔はこのあと…」
そう言って喜ぶなのはと何かを思い出したフェイトだが、僕はそれには反応せず、
「え?キャッ!」
「あ、なのは! って、キャア!」
近くにある何かを抱きしめた。
「フェ、フェイトちゃん、これって…」
「ご、ごめんなのは…明久には布団を無理に取ると何かに抱きつく癖があるのを忘れてたよ…」
「え、えぇ!」
2人がそんな会話をしているが、それに構わず僕は二度寝(三度寝?)を始めるのであった…。
この15分後、誰も来ないことを不思議に思ったはやての協力を得たなのはとフェイトにより、
ようやく起きる僕であった。
ちなみに起きた直後に見たなのはとフェイトは顔を赤く染めながらもどこか嬉しそうにしており、
はやてはそんな二人の様子をとても不機嫌そうに見ていた。
誤字・脱字などありましたら気軽に感想で書いてくださるとありがたいです。