二度目の中学校は”暗殺教室”   作:暁英琉

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俺の家がこんなに騒がしいのはおかしい

「え……はっ、ちゃん……」

 

 普段の明るさ満点ゆるふわほんわかさなど微塵も感じさせない、張り詰めたような声を上げた倉橋はその目を見開き、ただ一点を凝視している。唇はかすかに震え、頬をつーっと汗が流れ落ちた。

 

「……どうした?」

 

 努めて冷静に聞き返す。明らかにおかしい彼女の様子に教室中の視線が集まって痛い。というか、矢田も含めた数人も何か言いたげな目を俺に向けてきていた。

 そして、まるでそんな他の意見をも代弁するかのような気迫で倉橋は見つめる一点を指差す。

 

「はっちゃんって……料理できたの!?」

 

 …………。

 ………………。

 一つだけ分かったことがある。

 全然シリアスでもなんでもなかった。

 しかし、当の倉橋本人はいたって大真面目なようだ。しかも、矢田や速水の反応を見る限り、彼女たちも同じ考えを抱いていたらしい。

 

「あー……うん」

 

 時は昼休み。そして俺の手元にあり、視線を集めているのはいつものコンビニ総菜パンではなく、二段重ねの弁当箱だった。

 

「料理はできないことはないが、これは俺が作ったわけじゃないぞ」

 

 ていうか、自分で弁当作るとか意識高い系女子高校生かよ。普通は親が作ってくれたとか考えるもんじゃないのん?

 

「けど、はっちゃんのお母さんって毎日朝早いからお弁当作る余裕なんて皆無ってこの前言ってたじゃん」

 

 ……そういえばそんな事も言ったな。昼食のパンの数を増やした時だったか。さらっと言ったはずなのに、よく覚えてましたね。

 

「別に親が作ったのじゃねえよ。これは妹が作ったやつ」

 

「いもう、と?」

 

 そう、無事に生徒会の仕事が終わったらしい小町が約束通り今週から弁当を作ってくれることになったのだ。やはり中学生にして家事を完璧にこなす実妹は天使であった。コマチエルがいれば世界は平和になるまであるな。

 既に開けていた上の段にはおかずが並べられている。メインディッシュは唐揚げのようで、付け合わせにほうれん草のおひたしなど栄養バランスも考えているみたいだ。お兄ちゃん的には色どりに人参のグラッセを選択している点もポイント高いぞ。トマトを選ばないとは、お兄ちゃんの好き嫌いを良く理解している。

 二段目は普通に考えてご飯だろう。おかずがボリュームのあるものだし、白米か混ぜご飯あたりだろうなと思いながら蓋を開ける。

 …………。

 

「……ねえ比企谷君」

 

「なんだ?」

 

 予想通り二段目は白米だった。妹の思考が読めるあたり、俺の小町検定も既に免許皆伝かもしれない。

 

「これ、本当に妹が作ったの?」

 

「……そうだぞ?」

 

 でんぶででかでかとハートが描かれていたのは完全に予想外だったわけだが。どうやら小町検定免許皆伝の道はまだ遠いらしい。

 

「相変わらずあざといことすんな、あいつ」

 

 ま、そこがめちゃくちゃ可愛いんですけどね!

 

「まるで愛妻弁当ね」

 

「うわぁ、はっちゃんすっごい幸せそう」

 

 妹がお兄ちゃんのために弁当作ってくれて喜ばないお兄ちゃんは少なくとも千葉には存在しないのだよ倉橋。後、この場合は愛妹弁当が適切なわけだが、妻も妹も家族には変わりないから似たようなもんだな。

 

「八幡さんと小町さんは仲がいいですからね!」

 

「へー、小町ちゃんって名前なんだー」

 

 おいこら律、なんでにこやかな顔しながらうちの妹の個人情報晒しちゃってるんですかね?

 

「そんなに仲良いの?」

 

「はい! よく一緒にテレビゲームに興じていますし、八幡さんの話す量も家だと学校のおよそ1.8倍に増加します。さらに声のトーンも……」

 

「ストップ! ストップ律!」

 

 いや確かに律にいろいろ経験をさせるために、あまりモバイル律の出入りをうるさく言っていなかったが、お前うちの私生活見すぎじゃね? 俺の家と学校との比較とかしなくていいから。

 

「そんなに……」

 

「私たちの知らなかった比企谷君の一面が……」

 

 倉橋と矢田がぼそぼそと何か呟いているが、よく聞き取れないし、下手に突っ込んだら面倒くさそうなので小町の話題は早く切り上げ――

 

「仲良すぎなくらい仲がいいんですね」

 

「愚問だな、千葉の兄妹の仲がいいのは真理だし、これが普通まである。そもそも妹が可愛いなんて火を見るより明らかで……ハッ!?」

 

 しまった! 完全に脊髄反射で反応してしまったじゃないか! ぐぬぬ、まさか普段あまりしゃべらない奥田が伏兵になろうとは……。

 

「シスコンだ」

 

「これは間違いなくシスコンね」

 

「妹好きすぎるだろ」

 

「最近の王道であるシスコンブラコンの兄妹。さすが比企谷君はいいところを突いてくるわね」

 

 なんか不名誉な属性をつけられている気がする。俺は決してシスコンではない。さっきも言ったが千葉の兄妹の仲がいいのは真理なのだ、普通の事なのだ。あと不破は現実と漫画の区別付けて。俺を漫画的に解釈しないで。

 

「その小町ちゃんに私も会ってみたい! 律ばっかりずるいよ!」

 

「何がずるいんだよ……」

 

 当然のことながら、実際には律は小町に会っていない。俺のスマホから一方的に見るだけだし、小町がいるときはこいつも声を出すことはない。ぶっちゃけどう説明しろって話なわけだから、律の常識的対応には感謝している。常識があるなら勝手に人の電子端末に潜り込むのをやめろというツッコミは結局聞き入れてもらえないわけだが。

 

「僕も行ってみたいな、比企谷君の家」

 

「私も私も!」

 

「は? いや、え……?」

 

 倉橋一人程度だったらいなすことも容易いが、渚と茅野とかいう予想外の援軍が来てしまった。

 特に渚はまずい。プールでの一件以来、渚には少々負い目が……あれ? 茅野はなんで矢田達に視点を送っているんですかね?

 

「私も比企谷君の妹さんに会ってみたいなー」

 

「私は……別にあんたの家とか興味はないけど、皆が行くなら行こうかな」

 

「俺も行こうかなー」

 

 いかん、茅野の視線で察したらしい奴らがどんどん倉橋達の側についていく。こんなところでそんな一致団結具合見せなくていいから!

 これは放っておくとマジでクラス全体を相手にすることになりかねない。手を打つなら早い段階でやらねば……!

 

「はあ、分かった。別に面白いもんねえけど、放課後に来たいやつは来い」

 

「やったー!」

 

 折れた俺に倉橋が飛び跳ねて喜びを表現する。そんなに喜ぶほどのことかね。矢田とか速水も嬉しそうだし、やっぱり他人の考えてることは分からん。つうか、倉橋そんなに飛び跳ねるとスカートめくれちゃうぞ? 岡島がカメラ取り出すから自重しようぜ?

 しかし、俺の言葉はここで終わらず、「ただし」と続ける。矢田達がピタリと動きを止めたが、お前らは関係ないからそんなに不安そうな顔するだけ無駄なんだけどね。

 

「前原、岡島、赤羽……お前らはNGだ」

 

「「なんで!?」」

 

「ちぇー、シスコン谷君は過保護だなぁ」

 

 赤羽よ、何度も言うが俺はシスコンではないからな? まあ、こいつらがお断りな理由は確かに小町の情操教育上よろしくないからなのだが。前原は既にクラスの女子の大半を口説いているチャラ男だし、岡島はなんかもう、いつ法規制されるかわからん存在だし、赤羽は悪魔の角と尻尾生やして悪戯やらかしそうで怖い。

 実際にはそこまで気にする必要はないのは、分かりきっていることだけどな。

 

「ヌルフフフ。いいですねぇ、比企谷君の妹さんに先生も会ってみたいです」

 

「うるせぇ! お前が一番情操教育に悪いわ!」

 

 突然超生物が後ろに現れて、驚きのあまり引き出しに隠していた煙玉を投げつけてしまった。煙玉と言っても、前回同様おもちゃの手榴弾から煙幕が出るようにしただけの代物だが。

 

「フフフ、先生に一度使った絡め手は通用しませニュヤアアアアア!?」

 

 前に俺が使った物を想定していたらしい殺せんせーは、いきなり身体が爛れ出してのたうちまわった。なにせ前回の純粋な煙幕と違い、今回は対先生BB弾の粉を混ぜたのだから。衣替えの頃にメヘンディアート? の塗料に菅谷が混ぜていたのをヒントに用意してみたものだった。

 

「ヌ、ヌルフフ……前回と同じ武器と見せかけて、中身を変えてくる。なかなか見事ですが、この程度では先生の動きを制限することは……ああああああ!! 本場から買ってきたトルコアイスがあああああああ!!」

 

 あ、なんかのたうちまわったせいでトルコアイスを床にぶちまけたらしい。ていうか、それ買うためだけにトルコ行ってきたの? もっと観光とかしないと逆にもったいないのではないか?

 本当なら煙幕を使った後に追撃しようと思っていたが、無残な姿になってしまったトルコアイスを見つめてガチ泣きしている情けない姿を見たらやる気をなくした。それより今は昼食の方が大事である。

 相変わらず小町の作った飯はおいしかった。昼休み中タコ担任が泣いててうっとうしかったけど。

 

 

     ***

 

 

「わー! ここがはっちゃんの家かー!」

 

「うちとそんなに変わらないかな?」

 

「普通ね」

 

「普通だな」

 

 お前ら人の事貶しに来たの? 普通の中流家庭に対して一体どんな想像してたんだよ。

 烏間さんの放課後訓練も受けずに放課後直帰をかまして、現在比企谷邸の前である。ちなみにメンバーは倉橋、矢田、速水、千葉、渚に茅野、後は神崎。ちょっと大所帯すぎませんかね? 実質ここに律も入るし。神崎さんは茅野達に半ば無理やり引っ張られてきたから仕方ないが、お前ら少しは「大勢で押し掛けても迷惑だろうから」って参加を辞退した磯貝・片岡のイケメンコンビを見習ってはくれないだろうか。イケメンは死すべしと思っていたが、磯貝は許してもいい。何あのイケメン、嫌味一つ言えない。

 

「一応念を押すが、面白いものなんてなんもないぞ?」

 

「分かってるよ。変なものが置いてあるのなんてカルマ君のとこくらいだろうしね」

 

 この大所帯の元凶である渚は途中で買ってきた飲み物やお菓子の入った袋を持ち直しながら苦笑する。そうか、赤羽の家には変なものが置いてあるのか。両親がインドかぶれだとか言っていたっけ。民芸品とか飾られてんのかな。

 

「比企谷君、早くはいろー? 早くクーラーのある部屋に行きたーい」

 

「お前全く遠慮ってもんがねえな?」

 

 いやしかし、実際この時間帯はまだ日差しが強いし、アスファルトからの照り返しも強いので、俺自身一刻も早くおうちにインしたいところだ。そして速攻でエアコンという文明の利器の力を使う。結果的に茅野と利害が一致するからWinWinってやつだな。

 

「じゃあ入るか。この人数だし、リビングでいいか?」

 

 普段あまり来客のない比企谷家には備蓄の少ない飲み物やお菓子も買ってきたし、リビングもこの間小町が掃除をしていたから問題ないだろう。問題があるとすれば――

 

「ただいまー」

 

「お兄ちゃんおかえりー。今日は早かったんだ……ね……ぇ?」

 

 この状況に対する実妹のこの反応である。なんでちょっと顔青ざめてんの? ホラーなの?

 

「お兄ちゃん……小町ちょっと疲れてるみたい。お兄ちゃんの後ろに人が見えるんだけど」

 

「落ちつけ小町。割とアクティブなお前が幻覚を見るほど疲れることはこの時期ないから。今見えているのはすべからく現実だから」

 

「現実……? はは、冗談は目だけにしてよお兄ちゃん」

 

 酷い言われようだが、今まで一度も家に同年代の人間を連れてきたことのない俺の実績を考えると、小町がこうなってしまうのも無理はないのかもしれない。いやそれにしても酷くない? 俺の目は冗談なのん?

 

「だってお兄ちゃんだよ? 場合によってはクラスメイトに『一年の比企谷さんのお兄さん』なんて呼ばれてたお兄ちゃんが家に友達を連れてくるなんて、宝くじの一等が当たるよりもありえないよ!」

 

「さすがにそれは言いすぎだろ!?」

 

 いくらプロぼっちの俺とは言っても、人を連れてくることはそこまで現実性のないものではないはずだ……はずだよね? やばい、ちょっと自分でも自信なくなってきた。

 

「あのぉ……」

 

「あ、すみません! 玄関に立ちっぱなしでしたね! どうぞどうぞ、中に入ってください!」

 

 あ、小町の余りに失礼な言動に後ろの連中のことすっかり忘れてた。俺としてはもうちょっと反論をしておきたかったところだが、空調のきいた部屋が目前にあるという誘惑を前にして、そんなことは些末な問題だと脳内で分類されてしまった。ちょっと八幡君の頭、欲望に忠実すぎんよ……。

 

 

 

「あぁ、なんで椚ヶ丘中の制服かと思ったけど、お兄ちゃんって今あっちに通ってるんだったね」

 

「まあ、そういうことだ。こいつらはそこのクラスメイト」

 

 理事長の一件で俺の立場をより明確にしておく方がいいと判断した烏間さんは親父とお袋に担任として、俺が総武高校と椚ヶ丘学園の交換学生になっていると話を通してくれた。中学校のクラスに入っている理由は中高一貫の私立学校と公立高校の高校一年生では授業内容の進みに差があり、中学三年の授業内容が近いからということにした。だいぶ無理があるが、実際E組でも高校の範囲に足をひっかけているから嘘ではない。

 うちの親も俺に関しては放任主義なところがあるし、半月近く不登校決め込んでいた時期があった俺が学校にまた通っているだけで十分なのだろう。特に問題もなく交換学生の件は受け入れられた。

 まあ、書類上は相変わらず椚ヶ丘と全く関係ないんだけどね。小町も最初こそ驚いていたが、「お兄ちゃんが楽しそうだし大丈夫だね。あ、今の小町的にポイント高い!」と相変わらずの余計な一言をつけて受け入れていた。

 

「あ、紹介が遅れてしまってすみません。妹の比企谷小町です! いつもうちの兄がご迷惑をおかけしています」

 

 ……おっかしいなぁ。小町の中で俺が迷惑をかけている前提になっている気がするのだが。

 

「迷惑だなんて、そんなことないよ。比企谷君が来てから助けられっぱなしだもん」

 

「そうですよ、私はこの間も助けられましたし」

 

 鷹岡の事を思い出したのか、渚と神崎が身を縮こまらせた。俺が止めなくてもたぶん烏間さんや殺せんせーが割って入ったと思うから、そんな気にしなくても大丈夫なのだが。

 

「ま、助けられてばっかりじゃないけどね」

 

「逆に教えたりすることもあるからな」

 

「当たり前だろ。俺はあの担任と違って万能超人じゃないんだから」

 

 上には上がいるもんだ。コンビネーション攻撃では磯貝や前原に遠く及ばないし、ようやくマシになってきた射撃もこの二人の前だと月とスッポンだからな。

 

「ほほーう」

 

「……なんだよ」

 

 何やら小町がにやにやしていたのだが、問いかけても「別にー」としか答えてくれなかった。それでも顔はにやにやしたままで、我が妹ながらうぜえ。

 

「あ、テレビゲームある! はっちゃん、やろーよー! 小町ちゃんも一緒にさ!」

 

「いいですね、やりましょう!」

 

 テレビの近くに置いてあるゲーム機を見つけた倉橋の提案に小町が乗る。しかし、俺はそれ以上に「ゲーム」という言葉に反応した奴を見逃すことができなかった。

 

「ふふっ、比企谷君も一緒にやりますよね?」

 

「あー……」

 

 これ逃げられない奴だ。

 

 

 

「全然勝てないよぉ……」

 

「こんな強いヨッシー、初めて見ました……」

 

 結果――神崎選手完勝。四人で対戦して残機どころか吹っ飛び率すら一パーセントもないとかちょっとこれよく分からない。ていうか、俺開幕三人からぼこられて一機削られたんだけど、何これいじめ?

 

「ゲーム上手いとは聞いてたけど、神崎さん本当に強いんだね」

 

「コントローラーでやるゲームもなかなか面白いですね。基本的にアケコンかパソコンで操作するものばかりやっていたので、新鮮でした」

 

 え、新鮮って言いながらパーフェクトゲームですか神崎さん。天性の才能すぎませんかね?

 

「さすが有鬼子って呼ばれるだけの事はあるな」

 

「え、ちょっと、比企谷君!?」

 

 ぼそっと呟いたつもりの声はきっちり聞こえたようで、神崎の顔が瞬間給湯器もびっくりの速度で真っ赤になってしまった。ちなみに「有鬼子」というのはとあるオンラインFPSゲームに最近現れた超大型ニュービーのあだ名である。登録からものの二週間弱で鬼のようにキル数を積み重ね、IDとチャットの言動から女性プレイヤーと推測されてその名前がついたらしい。

 まあ、神崎のことなんだけどな。ゲームの知識をなにか暗殺に役立てられないかと相談されて、軽く触っていたゲームを勧めてみたら有名人になってしまったのである。ちなみにそのゲーム、クランと呼ばれるグループに所属できるのだが、俺は当然のように野良だ。神崎も野良だが、しょっちゅう大手クランに誘われているらしい。べ、別に羨ましくなんてないんだからな!

 

「比企谷君! 私もやりたい!」

 

「私もやろうかな?」

 

「おう、じゃあ交代にな」

 

 下位二人の入れ替わり制でゲームを続けることになった。三位だった俺はコントローラーを茅野に渡して、マッカンを取りに行こうと腰を上げ――

 

「…………ちょっとトイレ行ってくる」

 

 早足でリビングから出てトイレに向かい、便器のふたを開かずに小窓を開いた。

 

「おいこら何やってんだ国家機密」

 

「いやぁ、生徒の事はなんでも気になってしまうものですからねぇ。先生も一緒にスマブラやりたいです」

 

 リビングの窓からのぞきをしていた殺せんせーがその黄色い顔を小窓から見せてきた。つうか、こいつゲームとかすんのか。どうやってコントローラー操作するんだ?

 

「また俺の時みたいに誰かに見つかったらどうすんだよ」

 

 カモフラージュのつもりなのか頭に葉っぱを括りつけているが、そんなことしても真っ黄色の顔と黒い服が警戒色になって台無しだし、そもそもあんた自分で身体透明にできるじゃん。なんでこんな間抜け未だに殺せないんだろうか。

 

「それにしても、性格は比企谷君とは違ってフレンドリーな妹さんですねぇ」

 

「悪かったな似てなくて。ま、弟や妹は上の子を反面教師にするもんだからな」

 

 小町のためになっているのなら、お兄ちゃん的にポイント高い。将来的に小町に養ってもらうのもありかもしれない。そんなこと言ったらゴミを見るような目で見られそうだが。

 

「ということは、比企谷君は小町さんの先生と言うことですねぇ」

 

「それ、褒めてないだろ……」

 

 反面“教師”と呼ぶことを考えると、確かに間違っちゃいないけどさ。

 

「まあ、あいつの役に立ってるんなら、別にそれでいいけどさ」

 

「本当に小町さんの事が大切なんですねぇ」

 

 殺せんせーの言葉に思わず喉から笑い声が漏れた。大切、大切か。家族だから大切なのは当然のことだろう。それに――

 

「あいつは、俺にとって救いだったんですよ」

 

 変なあだ名で呼ばれても、誰からも期待されなくても、告白した次の日にクラスの笑いものにされても、それでも俺がぼっちながら普通の生活を送れていたのは、変わらずに接してくれた小町がいたからだろう。

 プロぼっちって言いながら、本当は全然一人じゃなかったんだなと、今なら思う。

 

「ヌルフフフ、いい妹さんに恵まれましたね」

 

「……うっせ。あんたが見つかるといろいろ厄介だから、さっさと帰れ」

 

「ひどい!?」

 

 忍ばなくてはいけないはずなのに今にも騒ぎ出しそうな国家機密を追い返し、小窓を閉めてトイレを後にする。

 

「あ、お兄ちゃん! 手伝って!」

 

「神崎さんが全然倒せないんだよ……」

 

 ああ、神崎さんまた無双してるんですね。あいつゲームになると手加減とか全然しないもんな。

 結局そのまま夕暮れまでゲームをして過ごした。ちなみに神崎の一位を奪取することは一度もできなかった。というか、お前ら暗殺のスタイルがゲームの動きに滲み出てるぞ。特に千葉と速水、スーパースコープやレイガン取った時だけやたら強いのはどういうことだよ。




小町とE組(一部)邂逅回でした。

たぶん、八幡がひとりっ子だったら俺の青春ラブコメは間違うどころか始まりもしなかったんだろうなと思う私は単なる八小好きなのだろうか。あんなかわいい妹がいたら、そりゃあぼっちでも人生送れますわ。妹が欲しい。

感想で意図的に18巻を読んでいない件を明記しておいた方がいいのではという意見を頂きました。確かに週刊誌の方では暗殺教室も終わったようなので、シリーズトップに明記しておきます。
殺せんせーやE組の皆がどうなったのか早く知りたい衝動を執筆力に変えて今後も書いていこうと思います! ……読みたい。

それでは今日はこの辺で。
ではでは。

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