二度目の中学校は”暗殺教室”   作:暁英琉

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ガキ大将だって暗殺教室の一員であることに間違いはない

「比企谷、この問題ってさ……」

 

「ん? あぁそこは……」

 

 千葉が寄越してきたテキストに目を通して、説明する。中高一貫の関係で一部教科は高校の範囲までやる椚ヶ丘中学校だが、国語はうちの中学と同じものを使っていた。つまり去年勉強した範囲なので、教えるのもそこまで苦ではない。

 期末テストが近いということで、最近は暗殺よりも勉強にウェイトの比重を置いている。というよりも、烏間さんから放課後特訓の休止を言い渡されたのだ。放課後の訓練は部活だったのか。ある意味放課後課外ではあるが。

 

「あー、そう解くのか」

 

「比企谷さんって、何気に教えるのうまいっすよね。なんかわかりやすい」

 

 俺の説明で納得した千葉の横で、菅谷が顎に手を当てながらほう、と呟いた。

 放課後に誰かと勉強をするとなると、この二人と組むことが多い。菅谷とは前後ろで隣の席だし、千葉は射撃訓練で色々教えてもらうことがあるからな。

 それに、よく言えば明るい、悪く言えば騒がしいE組の中でも大人しいタイプの二人とはなんだかんだ居心地がいいのだ。慣れてきてはいるが、やっぱり終始倉橋や矢田のキャピキャピオーラに当てられていると疲れるのん……。

 

「まあ国語は得意な方だけど、別に殺せんせーみたく天才ってわけじゃないからな。教えるのがうまいのは、去年の経験のせいだろ。俺も同じ道通ったからな」

 

 勉強ができると教えるのがうまいはイコールではない。逆に一度“わからない”ということを理解した方がどこがわからないのか、それをわかるためにはどうすればいいか、という筋道も立てやすいのだ。

 殺せんせーみたいなタイプの方が特殊なんだよなぁ。なんでなんでもできるんだよ。触手の影響なのか、元になった人間がチート性能だったのか。

 

「数学はむしろお前らに教えてもらう方だからなぁ」

 

 いやもうほんと数学は苦手苦手。中学生に勉強を教えてもらう高校生とか格好悪いなんてもんじゃない。……こいつらには既に散々格好悪いところを見せてしまっているから、今更という感じもするが。

 

「けど、なんだかんだ比企谷さんの理解力高いと思うっすけどね」

 

「ないない。この調子だと期末の数学やばそうまである」

 

 別に数学が赤点になること自体は問題ないが、そうなると追試のためにもう一度総武高に行くことになるわけで、暗殺訓練の時間が減るのはあまりよろしくない。

 ため息をつく俺に千葉と菅谷はなぜか困ったような顔をしながら首をすくめていた。

 

 

     ***

 

 

 エンドのE組なんて呼ばれているが、殺せんせーによって手入れされてきた今年のE組には力がある。中間テストでは急な範囲変更があったにも関わらず、多数の生徒が成績を大きく上げたと聞くし、球技大会では専門分野の相手に男子は勝ち、女子もおおいに健闘した。

 しかし、全員がそういうわけではない。

 

「なんだよ渚、まさか俺らがこんなことをしたとか思ってんじゃねえだろうな?」

 

 例えば寺坂竜馬なんてその筆頭だ。壊され、ゴミを放り込まれた殺せんせー作成のプール。態度からしてこいつのグループの仕業なのは明らかだった。

 寺坂は典型的なガキ大将気質の人間だ。気に入らないことは相手を威圧して押し通そうとする。体格は大きいし、声もでかいからそうやって生きていく方が楽だったのだろう。

 だからE組に落とされた。学力至上主義の椚ヶ丘ではその生き方は通用しないのだ。

 そしてここでも――

 

「犯人探しなど無意味です。先生にかかればすぐに元通りですからねぇ」

 

 超生物は意にも返していないようにマッハでゴミを排除し、壊されたプールを元通りに直してしまった。

 チート生物がいるこの教室で、そんなことをしてもただ虚しいだけなのだ。

 呆然とする寺坂たちを横目に、 俺はプールを後にした。

 

 

 

 おそらく、現状に一番不満を持っているのは寺坂だ。吉田や村松、狭間も訓練には積極的に参加していないが、狭間は元々真面目なようだし、村松もこの間殺せんせーが開催した“放課後ヌルヌルなんとか”とかいう模試対策の特別授業に来ていた。吉田に関しても、おかん気質の原に引っ張られてクラスに参加することも増えてきている。

 寺坂グループとは言いつつ、寺坂以外は殺せんせーのやり方を少しずつ受け入れつつある。このままでは、あいつはクラスから孤立しかねない。

 

「……なんとかした方がいいんだが」

 

「寺坂さんたちとも仲良くしたいですからね」

 

 律の意見はおそらくクラスの大半が持っているものだろう。なんだかんだお人好しの多いクラスだからな。

 それに、特に寺坂のガタイは中学生としてはトップクラスだ。真面目に訓練を受ければ相当な戦力になると思う。

 逆に今のままだとあるいは……。

 

「……なにやってんだ?」

 

 教室に入ったら、バイクにまたがっているタコがいた。

 

「ああ比企谷君、この前吉田君と話していたバイクをプールで出た廃材で作ってみたんですよ」

 

 よくよく見るとサドルもタイヤも全部木製だ。っていうか、さっきの今でそんなもの作っちゃったのん? そんなあっさり作られたら、世界中の造形師が職を失いかねないから自重してあげてください。

 

「うおおお!! まじすげえじゃん!!」

 

「ヌルフフフ、バイクは男のロマンですからねぇ。漢と書いて“おとこ”と読む先生にとっては当然の嗜みです」

 

 吉田はバイクが好きなのか。本当にこの先生は生徒の心を掴むのが上手い。いや、生徒のことを貪欲に知ろうとする故の上手さなのだろう。

 

「このバイク、本物は時速三百キロ出るらしいですね。先生も一度これで風を切ってみたいです」

 

「あんたの場合、抱えて飛んだ方が早えだろ」

 

 未だにクラスに馴染みきれていなかった吉田を一気に溶け込ませてしまった。それはクラスの大半にとって良い変化で――

 

「チッ」

 

 寺坂にとっては良くない変化だ。

 ドカッと苛立たしげに寺坂が蹴飛ばしたバイクの模型は、廃材を使用した故にあっさりと壊れてしまった。所有者である漢と書いて“おとこ”と読む教師は大号泣で、教室中から、同じグループであるはずの吉田からも非難の声が上がる。てか、それでいいのか殺せんせー。少なくとも漢には見えんぞ。

 

「お前らみんな気持ち悪いんだよ。ブンブン虫みてえにうるせえしよ」

 

 

 ――駆除してやるよ。

 

 

 そう言って寺坂は自分の引き出しから何かを取り出し、床に叩きつけた。

鈍い金属音と共に勢いよく煙のようなものが吹き出す。あれは……殺虫剤か?

 

「てめえも、モンスターに操られて仲良しこよしのE組も全部気持ちわりーんだよ」

 

 その目を見て理解した。寺坂にとって、今のE組の上昇思考や地球滅亡なんてどうでもいいのだ。

 だってその目は空っぽだから。何も目指していないから。

 そんな生き方は、さぞ楽だろう。しかし、それでは取り残される、そこがどこであろうと必ず。体格では明らかに勝っている寺坂が、今まさに赤羽に圧倒されているように、目標のある人間とない人間では明確な差がついてしまうのだ。

 他の奴らが前を目指しているのを見るのは、どれほどの苦痛だろうか。元々つるんだり従えたりが基本のガキ大将タイプは、孤独に慣れていないのだから、その苦痛は、苛立ちは、俺には想像もできない。

 

「なんとか平和にできないものかな……」

 

 磯貝の言葉を実現するには、寺坂自身が変わる必要があるが……人間そうそう変われるものではない。その願いを叶えるのは難しいだろう。

 それにしても、なぜ寺坂は殺虫剤なんて持っていたんだ? 追加攻撃のための目くらましでも、俺の煙幕のように対先生物質の粉末を入れているわけでもない。

 生徒との喧嘩のために使うにしても、やけにみみっちいやり方では……。

 

「! ……律!」

 

「はい! すでに採取済みです!」

 

 こいつ、どんどん俺の思考をトレースするの上手くなってないか? このままでは最終的に律の目が腐ってしまうのでは……腐った目であざといとかなにそれドン引き。

 まあ、律のことは置いておいて、採集したとしても、律自身にはそれを調べる機能がない。確証のないことに烏間さんたちを巻き込むわけにも……。

 

「奥田さーん、出番みたいだよー」

 

「はい? なんでしょうか?」

 

 どうしたものかと考えていると、赤羽が奥田を連れてやってきた。そういえば、奥田は理科の成績もいいし、研究大好き少女だったな。

 

「っていうか、お前の察しの良さが怖いわ」

 

「えー、なんのことー?」

 

 ケタケタ笑う赤羽を放っておいて、律が取り出したプラスチックの容器を奥田に渡した。

 

「奥田、ちょっとこれの中身を調べてくれないか?」

 

 さあて、 鬼が出るか蛇が出るか。はたまた出てくるのは触手だろうか。

 

 

     ***

 

 

 次の日、殺せんせーは延々涙……ではなく鼻水を流していた。先生の場合目の少し上に鼻があるようだが、それって鼻水目に入らない? 入ったら沁みそう。

 

「どうも昨日から調子がおかしいです。夏風邪ですかねぇ?」

 

 おそらく、原因は昨日寺坂がぶちまけた殺虫剤もどきだ。一般的に殺虫剤は有機リン剤や合成ピレスロイド剤などを使っているらしいが、奥田に調べてもらったところ振りまかれたそれには全く異なる、奥田もわからない成分が含まれていたらしい。それが触手生物に作用しているのだろう。

 しかし、これは何を狙ったものなのか。このタコは異常に鼻が効くし、 気づかれずに接近するため?

 

「おいタコ。そろそろてめえを本気でぶっ殺してやるよ」

 

 昼休みにようやく登校してきた寺坂が鼻水というかもはや粘液にまみれながら放った言葉は、とても今まで暗殺に取り組んできた人間とは思えないもので。しかしその声はやけに自信ありげだった。

 久しぶりに警戒レベルを跳ね上げながら、ステルス八幡を発動させて教室を抜ける。

 

「八幡さんは参加しないんですか?」

 

 スマホに現れたモバイル律の頭を指で撫でながら、校舎裏の木陰に腰を下ろす。注意深く周りに意識を向けてみるが、そもそも気配探知の訓練なんてしていないから何も引っかからなかった。

 

「やらねえよ。何が起こるかわかったもんじゃねえ」

 

 しかし、中止させるわけにもいかない。あいつらを引っ張り出さないと気が済まないからな。

 

 

 

「赤羽もやっぱサボるわな」

 

 放課後、隠れながら様子を伺っていると、寺坂を中心にどうやらプールに向かうらしい。

 

「よーしお前ら、プールに入って全体に散らばっとけ」

 

 寺坂の指示に渋々従って、皆プールに入っていく。ほんと、お前らお人好しが過ぎる。E組の奴らの将来が割と心配。寺坂は逆に調子に乗ってどんどん暴君になってきている。劇場版じゃない剛田家長男みたい。

 パッと見た感じ、 プールに突き落として殺す、と言ったところだろうか。

 以前律と調べた殺せんせーと水の関係。予想通り水を吸うと動きが劇的に遅くなるとターゲットの自身が白状したと渚が言っていたから、その作戦自体は理解できる。

 確かに全員でかかれば、水中の殺せんせーを仕留めることも可能かもしれない。しかし――

 

「それで、君はどうやって私を水に落とすんですか?」

 

 こうも露骨だと、相手が超生物じゃなくても落とすのはそう簡単なことではない。

 対して寺坂が持っているのはエアガン一丁のみ。とても本気で落とすようには見えない。あいつが絡んでいるならなおのこと。

 となると、寺坂の行動はあくまでポーズということだろうか。ここから何が起こるんだ?

 

「ずっとてめえのことが嫌いだったよ。消えて欲しくてしょうがなかった」

 

「ええ知ってますよ。暗殺の後でゆっくり二人で話しましょう」

 

 緑と黄色のボーダーで笑うタコに、青筋を立てながら寺坂が引き金を引いて――

 ――――ドグァッ!!

 耳が潰れそうなほどの轟音と共に、プールが爆発した。

 

「…………は?」

 

 あまりのことに反応できないでいる間にも、破壊された堰から大量の水が流れ出し、急流に逆らう暇もなくプールにいた奴らが流されていってしまう。

 

「いけない! 皆さん!」

 

 殺せんせーが飛び出していく声にようやく脳が再起動した俺は、思わず口の中で舌打ちを転がした。

 

「くそっ……」

 

 完全に油断していた。まさか生徒を危険に晒すなんて考えもしなかった。寺坂がそんな作戦に加担している可能性を排除していた。こんなことなら中止させるべきだった。

 

「なにこれ……プールなくなってるじゃん……」

 

 音を聞きつけたらしい赤羽が息を切らして飛び込んできたので、俺も隠れるのをやめて寺坂に近づく。

 なぜこんな計画に、シロの計画に乗ったのかと問いただそうとして……。

 

「話がちげえよ……。イトナがプールに突き落とすって作戦だったじゃねえか……」

 

「「……そういうことか」」

 

 弱々しく漏らした声に、二人して納得した。つまりこいつはシロにとって協力者ではなく、ただの駒にすぎなかったのだ。騙されて踊らされて、まんまと思い通りに動かされた。

 

「なあ、俺は悪くねえよ。こんな作戦、やらせる方が悪いんだ」

 

 震える声ですがるように赤羽に詰め寄る寺坂は、高校生並みの体格にも関わらず、とても小さく見えた。

 そんな弱々しい寺坂にも容赦なく赤羽は拳を振るった。こいつも過激な発言はあれど仲間思いなやつだ。目にはありありと怒りが滲み出ている。

 

「相手がマッハ二十の怪物で助かったね。そうじゃなきゃ今頃、大量殺人の実行犯に仕立てられてたよ」

 

 ――流されたのは、皆じゃなくてお前じゃん。

 それだけ残して赤羽は流された皆の元へ駆けて行った。

 さて、俺はどうするかな、と少し考え……ゆっくりと口を開く。「あのな」と口にしただけで寺坂の方がビクリと震える。こいつ自身相当ショックを受けているようだ。

 

「お前は今回失敗した」

 

「…………」

 

「下手したら取り返しのつかないことになっていたかもしれない失敗だ」

 

「…………」

 

 寺坂は口を挟まずに静かに聞いている。いや、ひょっとしたら呆然として何も聞こえていないかもしれない。それだと俺が寂しい独り言を喋ってるみたいで悲しくなるのだが、この際気にしてはいられない。

 

「けど、幸運なことに取り返しがつかないことにはならなさそうだ」

 

「え……?」

 

 どうやらちゃんと聞こえていたらしい寺坂が顔を上げる。もちろん、今回の寺坂の所業がなくなるわけじゃない。しかし、幸いまだ挽回できるのだ。

 寺坂の頭に手を乗せて、喝を入れるように少し強めに撫でてやる。

 

「今からでも遅くねえよ、あいつらお人好しだし。別に無理して全部自分で考えろなんて言わないが、大事なところでくらい、自分で考えて自分で動いてみろよ」

 

 誰だって失敗する。大人だって失敗をするんだから、まだ子供のこいつが失敗するのだって仕方のないことだ。

 殺せんせーがついているのだから、たぶんあいつらは全員大丈夫だろう。問題はその後に待っているはずの堀部戦か。

 こんな犯罪行為までしでかしたクソ野郎をどうしてくれようかと考えながら、俺も赤羽の後を追おうとして――よろっと立ち上がった寺坂に足を止めた。

 

「……怒らねえのかよ」

 

 なに? 怒られたいの?

 

「まあ、怒ってないと言えば嘘になるが、俺だってお前の後ろにシロがいることに気付いていたのに止めなかったんだ。俺が怒るのは筋違いだし、人間それぞれ違うんだから、お前みたいに殺せんせーのやり方になかなかなじめない奴が出るのだって仕方ないだろ」

 

 今回の戦犯を上げるなら、むしろ最悪の可能性を考えなかった俺だろう。ああ、マジで悔やみきれねえ。

 

「それに、今は次に何をやるか、だろ?」

 

「っ……わかってるよ!」

 

 幾分いつものように眉を吊りあがらせて駆け出す寺坂を目で追い、見えなくなると――ゆっくり足を動かしながら大きくため息をついた。

 今回の失敗はない。今考えればシロのことなんて放っておいて、安全策を取るべきだった。泳がせるとか刑事ドラマみたいなことして……マジで馬鹿じゃねえの。

 

「はあ……」

 

「あまり気になさらない方が……」

 

 律の言葉はありがたいが、気にしないとか無理だろ……。

 もう一度ため息をついて、事の元凶へと向かった。

 

 

 

「……してやられたな。丁寧に積み上げた戦略が、たかが生徒の作戦と実行でメチャメチャにされてしまった」

 

 赤羽が立案し、寺坂を始めとした生徒達が実行した作戦で、堀部は殺せんせー同様触手に大量の水を吸わされてしまった。昨日のスプレーは嗅覚をマヒさせるだけじゃなく、触手を保護する粘液を枯渇させる役割もあったのか。それにしても、シャツくらいはちゃんと毎日洗濯しようぜ寺坂。中学生は新陳代謝高いんだからさ。

 

「ここは引こう……帰るよ、イトナ」

 

 もう二度とくんなと言いたいところだが、どうせ来るんだろうなぁ。シロは明らかに賞金とは別の目的で動いているし、堀部も前回といい今回といい、やけに勝利だとか強さだとかに固執している節がある。この先何度だって攻めてくるだろう。

 それにしても……出ていきづれえなぁ。

 赤羽とじゃれている寺坂を見ると、なんだかんだあいつも順応性高いよなと思う。あいつにはあんな事を言ったが、あそこまで遺恨を残さないなんて俺には無理だ。

 

「プハッ! ……あれえ、比企谷君そんなところで何やってんの?」

 

 あ、赤羽に見つかった。ステルス八幡が完全ではなかったかと思ったが、どうやら律が知らせたらしい。クッ、赤羽のスマホが防水仕様だったばっかりに……!

 

「はっちゃんも早く下りてきてずぶ濡れになりなよ!」

 

「カルマも濡れたし、あんただけ濡れてないとか不公平じゃない?」

 

「そうだそうだ!」

 

 いや、逆になんで俺は濡れなきゃいかんのですか。俺水着じゃないんですが……。

 

「ったく、さっきこの俺を諭した奴がなに尻込みしてんだよ。……囮のために泳がせてたのなんて、誰も気にしてねえに決まってんだろ?」

 

「そもそもそれって比企谷君のせいじゃないでしょ。あいつらが関わっていることに気付いたら、私達もそうしてただろうし」

 

「それに、これがなかったら寺坂はどの道浮き続けてただろうからね。この動物にはいい薬でしょ」

 

「なっ、狭間てめえ……!」

 

 クククと黒い笑みを浮かべる狭間に寺坂が怒鳴りつけるが、手を出すことはない。案外紳士だなお前。というか、なんだかんだこいつが襟首を掴む以上の暴力を振るっているところって見たことがないわ。

 まったく、こいつらを相手にしてるとウジウジ考えている自分が馬鹿馬鹿しくなる。こっちは真剣に反省しているのに、当の本人たちは気にも留めていないんだから。

 

「比企谷君早く!」

 

「……ったく。ちょっと待ってろ!」

 

 せめてシャツとスマホだけは置かせてくれ。全身濡らして帰ったら小町に怒られかねない。




vsイトナ回というか、寺坂回でした。

回想でちゃんと制服を着こんでいる寺坂を見て違和感しか感じなかったのは私だけではないはず。寺坂の適応能力すごいですよね。一度内側って認識するとなんだかんだ語調洗いながらも近づこうとする姿勢、いいと思います。竹林とメイド喫茶に行くところとかね。
そういえば、あれから寺坂はメイド喫茶に通い詰めているのかしら? 私、気になります!

というわけで、今日はこの辺で。
ではでは。

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