とある兄妹の紡ぐ物語 作:リンク切り
「あー。腹減った。なんか食いてー。」
そうお腹を押さえながらうわ言のように呟くのは、黒髪の少年だ。
髪は男子にしては長めだが、それほど長いわけでもない。
目は爛々と輝く赤色で、鋭い目つきをしている。
「腹減ったー。」
「兄さん。気が散るので、あまり騒がないでください。」
そう少年をたしなめるのは、黒髪の少女。
髪は腰まであり、長い前髪で目を隠している。
前髪の奥から覗く目は、少年とは反対に透き通るような青だった。
彼女は椅子に座り、分厚い本を読んでいた。
「そうは言うが妹よ。お前も腹減ったろ?」
少年が少女へと問いかける。
「お腹は減りましたが、まだ我慢できます。それよりも、読書の邪魔です。」
「お兄ちゃんよりも本の方を取るのか、文香。おい、文香。」
本を読んでいた少女だが、しつこく呼びかけられ本を読むのを諦めたのか読んでいた本を閉じ、少年の方へと顔を向けた。
「なんですか、兄さん。」
やっと反応した少女へと笑いかけ、声をかける。
「文香。2人でちょっと外食しに行かないか?」
「兄さん一人で行ってください。私は読書をしているので。」
すぐさま少年から目を離し、閉じた本を開き直す文香と呼ばれた少女。
しかし、本を開く前に少年に腕を掴まれ中断させられる。
「何でだよ。文香もお腹すいたろ?どこかに食べに行こうぜ。」
「私たちはお留守番と店番を頼まれているじゃないですか。お家を開けるわけにはいきません。」
そう。この兄妹は、現在留守番をしていた。
今日は週末なのだが、叔父の都合が悪く急遽外出することになり兄妹2人でこうして店番をしながら暇を持て余しているわけだ。
ちなみに、今日のお客さんは0人だ。
「そんなの鍵を閉めて出れば大丈夫だって。空き巣なんてこの辺りじゃ聞かないし。」
「そういうことを言ってるんじゃないです。叔父さんが帰ってきたのに、私たちがいなかったら心配されてしまいますよ。」
「そんなの書き置きしていけばいいだろ。」
「ダメです。」
兄はどうしても外へ出たく、妹はどうしても家の中にいたいのだった。
「どうしても行きたいなら、お友達を誘えばいいじゃないですか。私は行きませんよ。」
「文香。お前、俺に友達がいないことを知っていてそんなことを言うのか?」
ギロリ、と妹を睨む兄。
それを、慣れているのかぷいっとそっぽを向いて流す少女。
この少年は、持ち前の目つきの鋭さから周りから避けられる傾向にあった。
当然、そんなことで学校に友達はおらず、所謂ぼっちというやつだった。
顔つきは悪くない、というよりかなりいい方なのだが、そのおかげで密かに女の子に人気があり、そのことからも特に男子からは疎まれていた。
「そういうお前だって、友達なんていないだろ。」
妹も兄譲りでかなりの美形なのだが、前髪が顔を隠していて気味悪がられ、友達はいない。
元々人付き合いが苦手なため、それほど苦ではない、むしろありがたく思っていたのだが。
「いませんよ。」
しれっと言い放つ妹に、呆れながら兄が応えた。
「そんなはっきりと胸を張って言えるようなことじゃないぞ、妹よ。」
「ふん。」
「おい。おい文香。無視を決め込むな。」
これは、こんな兄妹2人のとある日常を綴った物語である。
「文香。本を何でも一冊買ってやるから、兄ちゃんとどこかへ食べに行こう。」
「さあ、仕度をしましょうか兄さん。何のお料理を食べに行きましょうか。」
「うどんとかどうだ?美味しいしリーズナブル。完璧だな。」
「賛成です。それでは兄さんは、お店の前に『臨時休業』の張り紙を貼っておいてください。」
「はいはい。」
兄は思うのであった。
あれ?文香さんの小説少なくね?
って事で初めました。