とある兄妹の紡ぐ物語   作:リンク切り

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0話目から矛盾に気付きました。
文香ちゃんってどんなにうるさく騒いでも読書を続けられるお方でしたね。

.....主人公くんだけには読書の集中を乱されるという設定です。
初めからそういう設定です。
文香ちゃんは、お兄ちゃんの声が気になって仕方が無いんです。
よしこれで行こう!


1ページ目 マンボウの話

 

 

 

「マンボウってさ。」

 

「何ですか?急に。」

 

文香は読んでいた本から顔を上げ、俺を見る。

日もすっかり落ち、外は真っ暗になっている時間。

文香は俺の部屋に来て読書をしている。

この時間は、大抵文香が俺の部屋に来る。

 

「だから、マンボウの話だよ。」

 

「全く話が見えませんが。」

 

文香は俺から興味を失ったのか、また本へと視線を戻す。

待て待て。

そんなんだからお前は人付き合いが苦手なままなんだよ。

 

「マンボウって、すぐに死ぬみたいだな。」

 

「・・・・・そうみたいですね。」

 

「ちっとは興味持てや文香。」

 

本を読みながら聞き流す文香。

俺は文香の読んでいた本を取り上げ、ページに栞をはせて机の上に置いた。

昔問答無用で本を取り上げて閉じたら本気で怒られたので、その時からは必ず栞を挟んで閉じるようにしている。

文香は怒っても別に怖くはなかったが、何日も口を聞いてくれなくなった。

それは本当に滅入る。

 

「何ですか、兄さん。」

 

「本を読むな。そして聞け。兄ちゃんのマンボウの話を。」

 

「またくだらないお話を聞かせてくれるんですか?」

 

「聞く前から決めつけるなよ。」

 

「いつも兄さんはどうでもいい話を持ってきますよね。」

 

「それ以上言うと泣くからな。俺が泣いたら暫くは泣き止まないからな。」

 

文香はため息をつき、仕方ないといった感じでこっちへ向き直った。

態度はともあれ、話を聞いてくれるようだ。

 

「それで、何の話でしたっけ。」

 

「マンボウがすぐに死んじゃう、って話だ。」

 

「そうみたいですね。有名な話です。」

 

「某水族館には、『水槽を叩かないでください』なんていう注意書きがあるくらいに繊細なんだと。」

 

「へえ、そうなんですね。」

 

「そうそう。少しでも驚かせると体調が悪くなるみたいだ。

こんなに繊細なマンボウなんだが、水族館だから水槽に入ってるだろ?

その水槽の壁にぶつかったら死ぬらしいぜ。」

 

「知ってますよ。ぶつかった衝撃で死んじゃうんですよね。」

 

「もっと凄いのが、水の深い所に行くと、その水の冷たさで死んじゃうみたいだ。」

 

「びっくりしちゃうんですよね、可哀想に。」

 

「まだまだあって、水中の塩分がちょっと濃いかったり、水中の泡が目に入ったりするとショックで死ぬからね。」

 

「メンタルの方のレベルが1以下なんでしょうね。

もう少し生きやすい環境で産まれたら良かったのに・・・・・」

 

「そう。もうメンタル弱いどころの話じゃないんだよな。

ウミガメが前から来たら、ぶつかっちゃうかもっていう予感で死ぬから。」

 

「ふふっ。そうなんですね。」

 

これまでは可哀想な目で話を聞いていた文香が初めて笑った。

それ程にマンボウはすぐに死ぬ。

もう生きながら生死を彷徨ってる状態だ。

言ってしまえば、人間でいう意識不明の重体で生活してるようなものだ。

 

「本当に。

ぶつかっちゃうかもしれないって思いながらショック死。

あれ?なんかこんな話、最近のアニメか何かで聞いたな。」

 

「想像力豊かというかなんというか。

ここまで来たら同情のしがいがないですよ。」

 

「想像力で言うなら、マンボウ、仲間が死んだショックで死ぬみたいだ。」

 

「ふふふっ、もう群れで行動できませんね。

連鎖反応でバタバタ屍の山が出来上がりますよ。」

 

「もう海に向いてないし。

泡が目に入ったストレスで死ぬ動物がだよ?

何で海に入ったか不思議なんだよな。」

 

「そんなにストレスの許容量が小さいなら、どこにいても長寿は無理そうですけどね。」

 

「いやでも、マンボウの骨格ってほぼ鳥のものみたいだぞ。」

 

「えっ?

ちょっと待ってください待ってください。

今混乱してるので整理させてください。

骨格が、えっ?」

 

「マンボウの骨格は、鳥のものと同じなんだとさ。」

 

「鳥?鳥ってどういうことですか。

じゃあ、マンボウは本当に間違えて海に入ってきちゃったんですかね?」

 

「それは本人に聞いてみないとわからないけどな。

水の中じゃ、マンボウは構造的に真っ直ぐしか進めないみたいだからその線は濃いかもしれないけど。」

 

「そうなんですか・・・・・

それは初めて知りました。」

 

「まあでも、鳥になってった所で太陽の光が眩しくて死ぬような奴だからな。

どっちにしろ生存率は変わらない気がするけど。」

 

「寧ろ、鳥だったらそこら中にマンボウの死体が降ってきて大変ですよ。」

 

「そうだな。

マンボウは三億個卵を産むみたいだから、本当に大変だったろうな。」

 

「カエルでも大体千個程って言われてるんですよ。

三億なんて破格ですね。」

 

「三億産んでも、最後まで生きれるのは数匹みたいだぞ。」

 

「それだけメンタルが弱ければそうもなりますよ。」

 

「三億って日本の人口よりも多いからな。

マンボウ1人で一国家レベルの人口を生み出せるんだぞ。」

 

「マンボウは人ではないですけどね。」

 

「まあそうだけど。」

 

 

「それで、何で急にマンボウの話を始めたんですか?」

 

「ああ、それな。実はさ、マンボウのいる・・・・・・」

 

「水族館なら行きませんよ。」

 

「な、なんでわかったし・・・・・・」

 

ポケットから出した2枚の水族館のチケットを落としながら悲痛に叫ぶ。

勝ち誇ったようにふんすと胸を張る文香。

本当になんでわかったんだお前。

 

「兄さんのことはお見通しです。

まず下手すぎるんですよ、会話の流れが。」

 

「煩いな。」

 

 

 

 

まあいい。

このチケットはあと半年有効だからな。

そのうちまた誘えばいいか。

 

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