とある兄妹の紡ぐ物語 作:リンク切り
外はもう真っ暗な時間。
お風呂にも入った後、俺と文香は俺の部屋へと集合していた。
この時間は、無言で文香が俺の部屋へと来る。
何年も前から続いている習慣だった。
文香はあいも変わらず読書をしていたが、俺はスマホゲームをいじっていた。
シャン、シャンと、部屋にタップ音が響く。
テレレレン、という効果音を残して音楽が止まった。
このゲームにおいて、その効果音はフルコンボの意味を持つ。
「なあ文香。」
「何ですか、兄さん。」
「お前の曲さ、簡単すぎない?」
今俺がやっていたのは、音ゲーと呼ばれる種類のゲームだ。
それも、うちの妹の曲が出ている。
「そうですか?私は、まだ出現していないのでわかりません。」
文香はまだこのゲームをダウンロードして日が浅いからな。
それに、このゲームにはそんなに積極的ではないようだ。
前に1回見せてもらったが、はっきり言って下手だったし。
俺?
それなりにはやってるが、やり込んでるってほどでもない。
まだPのレベルも100を超えてないし。
「他の曲と比べて難易度が軽すぎるんだよ。」
「私に言われてもわかりませんよ。」
「バラード系なのはわかるんだけど、流れてくる量を少なくする意味もないだろ。」
「ですから、私に言われても。」
俺の愚痴を聞き、苦笑いしながら本を読み進める文香。
言っても仕方ないのはわかっている。
うちの妹の曲が簡単なのが純粋に不満なだけだ。
「お前のプロデューサーかなにかに頼んだら難易度上げてくれないのか?」
「無理ですよ。アイドルのプロデューサーとゲーム会社は繋がっていませんから。」
「俺の妹の曲がレベル23ってどういう事なんだ。店長を呼んでこい店長を。」
「ここは飲食店ではありませんよ、兄さん。」
「せめて25だろ。MASTERなのに間違えてPROやってたのかと思ったわ。」
「何を言ってるんですか?」
「だから、お前の曲はやりがいがないって言ってるんだ。」
「では、私の曲はやらなくてもいいです。」
「やるって。やるやる。ついでに文香のダンスも見とくよ。」
「やめてください。」
常日頃からアイドル活動をしている時のように前髪を整えれば余裕で可愛いんだが。
目を合わせるのが苦手だとかなんとか。
俺と目を合わせるのは問題ないなら、家の中ではやめろと言いたい。
本当は整えるのが面倒臭いだけなのでは疑惑が浮上してきている。
「他の曲を練習してみてはどうですか?」
「してるって。最近ヴィーナスシンドロームをフルコンしたのお前も知ってるだろ。」
「では、杏さんの歌を。」
「あれは・・・・・・無理だ。」
やっと目がついていけるようになったが、未だにクリアさえ出来ていない。
あれは難しいってレベルじゃない。
虐めだ。
「諦めたらそこで譜面終了ですよ。」
「別に試合でいいだろ。やめろミスりそうになるから。」
ホーム画面へ戻り、ゲームを終了させる。
このゲームは最近よくあるスタミナシステムでもあるから、そう何度も連続でプレイ出来ない。
「お前も少しは音ゲー練習しろよ。」
「私は、こういうゲームは苦手なので。」
「自分の曲もクリア出来ないのはどうなんだ。」
「良いんですよ、別に。」
「良くないだろ。」