グリムガルの冒険者   作:龍神王聖人

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今回は1週間で書けました。
ぶっちゃけ、今回もあまり進みません。
 
 毎度ながら、ドン吉さん、誤字脱字の報告、ありがとうございます。なかなか、気づかないので、大変助かっています。

 

 今回も気軽に見ていってください。ではどうぞ。


第六話 影森の邂逅

 朝日が登り午前八時を知らせる鐘が遠目に見えるオルタナの町から僅かに聞こえてくる。

 そのオルタナは晴天であるにも関わらず塔があると思われる方面だけ相も変わらず、真っ黒な雲が居座るように漂っていた。

 

 一方で今、乗っている馬車の周辺は緑の草原が広がり、向かう方角には森を抱える山々が堂々と鎮座していて、麓にまで森が広がっている様子が窺えた。

 そこに向かう道は砂でそれなりに舗装はされているものの、所々が粗く、凸凹道のような道を乗客を乗せた馬車が通る。

 

 木製で作られた馬車は時折、車輪が道端に落ちてある石にぶつかり、揺れる。

 馬車自体は見た感じそこまでボロくないように見えるが、実際乗ってみると、あっちこっちに穴や樹皮が剥がれていたりと、少々、がたが来始めている様子が見受けられた。

 実際、馬車を運転する御者の人も苦笑いを浮かべながら、客である俺達を案内していた。

 因みに、この御者さんは、元義勇兵らしい。

 

 しかし、実際の所、あまり気にしてはいない。

 道端の石か凸凹で生じる揺れ以外、あまり、気にならない。

 それどころか、乗り心地にしてもそれなりに気配りがされていて、屋根も付いているし、空間的広さがあり、それなりに良い。そして、何より馬車に響く木製特有の木が軋む音が逆に心地よかったりして、何となく落ち着く気がした。

 ただ、その心地良さは先程から馬車が凸凹によって生じる激しい揺れが台無しにしてくれちゃったりするが。

 何はともあれ、馬車自体は中身の見た目からして、悪くはないのだ。少なくとも、動かない分には。

 

 動いたら、大変だ。

 道端に時折ある段差で生じる衝撃に尻を打つわ、衝撃で飲み水が零れるわで、ダブルパンチである。

 

 

 そういったことーーー主に尻の痛みーーーに耐えながら、俺達は馬車の揺れに身を任せて、目的地、エルフの国がある影森へ向かう。

 聞いた話では、エルフが住む国は向かう先にある森の中にあり、森の中に入るとエルフの領域となる。

 まあ、実際の所、森の中でも普通にオークやたまに何故か、単独のホブゴブリンと遭遇するそうだ。

 因みに、このホブゴブリン、単独なのに滅茶苦茶強いらしく、挑んだ義勇兵は遊ばれて帰ってきたらしい。 

 これに関しては確かな情報ではなく、単なる噂という線が濃厚とされていて、遊ばれたという義勇兵が逃げた言い訳と言われているらしい。

 でも、その噂、本当に噂なのだろうか?

 ぶっちゃけ、そのホブゴブリンに凄い心当たりがあるのは俺だけだろうか?多分、噂を一緒に聞いたメリイも、かな?多分。

 

ーーー閑話休題

 

 

 

 ぼーっと、俺は馬車に揺られながら、次訪れる時に迷わないように来た道や目印になるものを探して、草原を眺め、今までの濃い日常を振り返っていた。

 

 ここまで、いろいろあった。

 いきなり、グリムガルという知らない場所に何故か記憶が思い出せない状態で放り出され、案内人が来て助かったと思ったら、ほぼ強制的に義勇兵にさせられて、戦士ギルドに行く前にメリイに襲い掛かろうとした野郎を蹴散らして、戦士ギルドで手習いをして、初めての狩りで一人で無駄に無双して、メリイと再会して、二人だけでパーティーを組んで、ホブゴブのゴブロウタとであって、変態オカマのクソ所長から団章買って、モグゾーと早朝訓練始めて、新市街に進出する際、何故かゴブロウタと共闘して無双して、メリイに呆れられたり、何故かゴブロウタが上位ゴブリンをぶっ殺しているところを再び目撃したり、新市街での稼ぎの結果、転職することにしたりといろいろあって、今に至る。

 こうしてみると、中々にイベントが豊富だったと思えるだろう。

 こうして、休日を兼ねた転職の旅

 

「なあ、メリイ」

 

「何?」

 

「本当に付いてきてよかったのか?」

 

気づけば、そんな問いを投げかけていた。

 メリイの方へ顔を向けると、彼女は外に広がる野原を眺めながら、意味を理解したのか振り返りながら、笑みを僅かに浮かべた。

 

「ええ、大丈夫よ。理由は出発前にも言ったけど、特にやることが無かった・・・と言ったら、嘘になるけどね。」

 

茶目っ気気味にそう言いながらも僅かに笑みを零すメリイはその容姿も相まって、とても絵になっているため、思わず見とれてしまう。

 本当にメリイは最近、出会った当初のような暗い影(面影だともう少し昔のような気がするので)を残さない程に愛想が良くなって、会話が弾むようになった。

 そのお陰で、パーティー内ーーーと言ってもメリイと俺の二人きりだがーーーはそれなりに改善されてきている。

 時折、表情を一瞬曇らせたり、笑顔がぎこちなかったりなど、何かしらの過去を引きずっているような事を感じることはあるが、自然と零れた笑みは一種の魅力を放っていると錯覚してしまう程には取り戻せていると思っている。

 この短期間でここまで距離が近くなったのは、主に団章を買ったあの日以来だ。

 あの日から、徐々にだが、距離が縮んで行き、その結果、メリイはあの棘のある態度が無くなって、最近、たまにだが、デレるようになった。

 いいよな、女のデレる所って。

 しかも、メリイは美人だから、余計に見とれてしまう。

 これが変態所長のデレだったら、魔剣で灰にしたとしても後悔はない。だって、あの変態所長だからな。まあ、当たってくれないかもしれんがな。

 

 

 

 

 

 ん?

 

 

 

 

 

 まあ、俺が調子に乗ってメリイをからかい過ぎると、それなりの意趣返しか、あるいは氷点下の怖ろしい睨みを利かせてくるのはご愛嬌である。

 そんなわけで、俺が思うかぎりではメリイは本来の明るさを取り戻しつつあるように感じられた。

 

ーーー閑話休題(それはともかくとして)

 

 

 

「じゃあ、何で付いてきたんだ?別に悪いわけではないが、普段のメリイならギルドで魔法かスキルを習いに行っていそうなんだが・・・・・・。」

 

「ふーん、まあ、そう思われるのは仕方ないんだろうけど、別にもう、そんなに積極的に行くことはないかな。」

 

「そうなのか?」

 

俺の考えに少し不服そうに答えるメリイに疑問を口にした。

 てっきり、この間進めた光魔法を習いに行ったのかと思っていた。

 メリイは一つ頷くと開きっぱなしの窓枠に肘を立てて手の上に顎を置きながら答えてくれた。

 

「ええ、ヴェルスが勧めてくれた光の守護(プロテクション)と、ヴェルスがあいつ(ゴブロウタ)に依頼されて新市街へ進出することを決めた次の日から光の奇跡(サクラメント)は覚えたし、ヴェルスが教えてくれたメイス術も上達してきたから、大丈夫よ。」

 

そう言いながら、口元に僅かながらの笑みを浮かべる。

 まあ、勧めた光魔法は早めに覚えたらしいし、護身用スキルもすでに殆ど覚えているみたいだし、問題はないだろう。

 

 

 ・・・あれ?っていうか、なんか今、メリイから聞き捨てならない言葉が飛び出たような気がする。確か、光の守護?違うな。それは俺が勧めた魔法だし、じゃあ、光の奇跡?・・・・・・って、

 

「ハ、ハアァァァァァーーー!?」

 

いきなり、俺の叫びが響き渡った。

 

「ちょっと、いきなりどうしたの?」

 

叫びを至近距離で浴びせられたメリイが恨めしげに俺を睨みながら、尋ねる。

 だがしかし、俺はそれどころではない。

 

「お、おま、お前、さ、さ、光の奇跡って、言えばーーー」

 

「そう。神官の最上級光魔法の一つよ。」

 

としれっと答えるメリイ。

 

「いや、知っているけど!お金は大丈夫だったのか?」

 

そう、ギルドからスキルや魔法を教えてもらうには何でかんで、結局、お金が必要になってくる。

 初級クラスのスキルや魔法はあまり対して掛からない代わりに威力や効果は低いものが多いが、最上級クラスあたりになると、威力や効果が高い代わりにそれなりにはするのだ。ゴールドが必要になる程、掛かったりする。

 

「大丈夫よ。貯蓄に余裕があったから。でも、どっかの誰かさんが無茶しなければ、まだ、覚える必要はなかったかもしれないでしょうけどね。」

 

「あ、はい。申し訳ありませんでした。」

 

と、メリイにそこまで言われて(心配されて)しまうと、流石の俺でも打つ手は殆ど無くなってしまう。

 そのため、俺は誠心誠意を込めて、メリイに謝罪をするしか無くなってしまう。

 

「ええ、分かれば良いのよ、分かればね。今後は無茶をし過ぎないで。」

 

メリイはそう言って、微笑むと再び外の景色を眺め始めた。

 俺も、それに習うように馬車の外に広がる景色を眺めるのだった。

 

 

 

 

 しばらくして、森へ突入を果たした馬車はオルタナから数時間、ようやくエルフの部族が住む森、『影森』についたのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 影森についた時の最初に抱いた印象は『エルフらしい神秘的な森』だった。

 

 天竜山脈にほど近いその周囲の山々に囲まれた平地に深い森がある。その中に影森と呼ばれるエルフの国の町が存在する。

 

 木壁の外壁にある門を義勇兵の団章を見張りのエルフに見せてから潜る。

 すると、そこには自然に溶け込んだような町の光景が広がっていた。

 町は木と一体になったようなーーー或いは木に取り付いたようなーーー家々が大半で一から作られた建物は数軒程しか存在しておらず、その中の一つは辺境軍が駐在し住む建物で辺境軍所属は数人しかいないらしい。

 

 住人は当然、エルフだらけで、尖った耳と整った顔立ちが特徴だ。

 しかし、コレに関しては不思議な印象を受ける。

 種族の特徴や名前を言われなくても、一目見ただけで彼ら彼女らをエルフだと認識できる自身が何故かあった。

 わからないのに、わかる。そんな感じだ。海や、山といった見ただけでわかる固定概念、或いは自身の中に存在する常識がそう告げている。

  

 この町には俺達のような義勇兵もいるにはいるが、それらしき人は何グループか見掛けるだけで、辺境軍人同様、少ない。

 理由としては、エルフは恐ろしく整っていて、誇り高くやや排他的ーーー同盟を組んでいるため、同盟を組む前に比べればマシになっているらしい。ーーーなのと、エルフとのトラブルを避けるために影森の周辺の狩り場を避ける義勇兵が多い為だ。

 エルフが排他的なのは同じ部族同士の絆が強く、余所者ーーー主に同胞と違う種族のことを指すーーーに対して厳しいらしい。

 まあ、実際の所、普通に余所者(俺とメリイ)に対しての鋭い視線が町のエルフたちから突き刺さっている。

 いや~、メリイで慣れたと思っていたんだけど、これはこれでキツいな~。

 メリイの場合、突き放したいと態度や視線では語っているけど、根が良い子だから、そのオーラが何となくわかって、突き放せていないような感じだけど、ここのエルフたちは絶望的って程じゃないにしても、あくまで同盟相手としての最低限の態度と行ったところで、疎外感がヤバイ。

 

 さっきから、道行くエルフに話し掛けては無視されたり、理由を付けて断られたりしている。

 このまま行けば野宿も視野に入れなければならなくなる。

 時間的にも、昼を少し過ぎたあたりなので、ただでさえ数少ない義勇兵や辺境軍の人たちも町中では見かけなくなってしまった。

 項垂れそうになる俺と困った表情で考え込むメリイ。

 しかし、そこに救いの手が差し伸べられた。

 偶然、何らかの用事で通りかかった義勇兵が俺達を見かねて話しかけてきたのだ。

 その義勇兵は見るからに只者では無さそうなオーラを纏ったオッサンで、親切に町の宿屋に案内してくれた。

 さらに、そのオッサンは俺達にこの町の身の振り方やら、この町の情報などを教えてくれた。

 

 そして、夕方、お礼として、俺から夕食の誘いを掛けて、オッサンとそのパーティーと合流し互い自己紹介をしてにエルフの町の酒場とも言える場所に来ていた。

 酒場に入った時、何故か響めきが走ったり、互いに自己紹介した時、何故か、メリイが驚いた様子を見せていたが、一体どうしたのだろうか? 

 最近は大分角が取れてはきたけど、鉄仮面のような表情に近かったメリイがあんな顔を晒すなんて、凄く新鮮な気分だった。

 

「はははっ、そうか、この町には観光できたのか。」

 

紳士のような笑い声を上げながら、俺達がこの町に来た経緯を確認する。

 

「はい、結構お金も貯まりましたし、転職する前に息抜きを兼ねての観光です。」

 

俺は、すっかり慣れてしまった敬語を使ってそう答えた。

 

「ふむ、そうだね。息抜きは大事だと思うよ。」

 

飲食店ーーー酒場とはどうしても思えないためーーーで、酒を飲みながら、右目の部分に二つの切り傷が印象的なオッサンーーーアキラというらしいーーーは軽く笑った後、笑みを浮かべた。

 見た目、四十代のそれなりに皺を従え、凄みのある聖騎士の鎧を着込んだダンディなオッサン、もとい、アキラがこの町を訪れたのは連れーーーつまり、パーティーメンバー、ーーーの諸用らしい。

 その連れはというと、アキラ同様、只者ではない。

 小柄というより華奢という表現が正しい四十代年配の芸術家的な事をしてそうで、神官服を纏ったオッサンはゴッホと名乗り、三十代程の女性で背丈がモグゾーに匹敵するのではないかと思える。背中には業物の大剣を背負っているのはカヨと名乗り、その二人の息子と自syーーーじゃなかった、誇る、弓と矢筒を携えた色白で白皙の美少年といった感じの少年はタロウと名乗りった。

 他にも二人いて、一人は、三十代くらいの魔法使いの女性ではあるのだが、おばさんという言葉とは無縁に感じられる美人な女性はミホと名乗り、何故かアキラの隣を陣取り、食事をしている。

 もう一人は短軀で樽のような体型だが、だからといって、太っているわけではない。筋肉質で筋肉を覆うように体毛がこれでもかというほどにあり、体も当然大きく、その背中には業物の斧を背負ったドワーフ(・・・・)はブランケンと名乗った。

 中々に個性的なメンバーである。それが最初に俺が抱いた感想だった。

 

「ふむ、しかし、転職か・・・君の今の職業から考えると、剣舞師かな?此処へは観光に来たのではなかったのか?」

 

顎に手を当てながら訪ねてくるアキラさん。

どうやら、さっきの発言で誤解を与えてしまったらしい。

 何となく、申し訳なく思いながらも誤解を解く為に答える。

 

「はい、此処への目的はあくまで観光です。ていうか、剣舞師というのがここで習えるなんて初めて聞きました。」

 

肯定の頷きをしつつも、誤解を解いておく。

 案外、上手く誤解が解けてくれたようで、納得した様子を見せるアキラさん。

 

「ふむ、そうか。まあ、剣舞師を習えるのは此処だけではないのだが、それはそれとして、君は何に転職する気なのかな?もし良ければ聞かせてくれないか?」

 

納得したアキラさんは次の質問とばかりに問いを投げかけてくる。   

 なんで、そこまで突っ込んだ質問を?とは思ったものの、そんなことを表情には一切出さずに答える。

 ていうか、此処以外でも習えるのか。

 

「俺は、戦闘鍛冶師(バトルスミス)に転職しようと思ってます。というより、戦闘鍛冶師こそが、天職だと確信しています。」

 

「なんだと!?」

 

迷いない答えをする俺を、アキラさんは感嘆の声をもらした。

 アキラさんだけではない。ブランケンと名乗ったドワーフは驚き、というより、驚愕し、席を立って俺を見ていた。

 

「えっと・・・、なんか、変なこと言いました?」

 

突然立ち上がった、ドワーフに身構えつつ、アキラさんに問いを投げる。

 しかし、問いを投げられたアキラさんは何故か愉快そうに笑いながら、ブランケンさんの背中を叩いていた。

 

「はははっ、よかったじゃないか、ブランケン。黒金連山の親友に良い手土産ができたな。」

 

「・・・止めろ。まだ、そうとは限らん。こいつにその才能が無ければ話にならない。」

 

自身の背中を叩かれるブランケンさんはアキラさんの言葉を受け止めつつも、否定的な意見を述べ、こちらを探るような目で見ていた。

 

「だが、試してみる価値はあるとおもうぞ?少なくとも、知名度が低すぎる戦闘鍛冶師を希望する義勇兵なんざ中々いないからね。大抵の場合、鍛冶師か、戦士に流れてしまうからな。

 ブランケン、どうだろう?」

 

そう、アキラさんに説得させられて、やがてため息を吐き渋々ながらも、「わかった」とブランケンさんは応えた。

 

「ところで、小僧、何処でその情報を手に入れた?」

 

ブランケンさんはさっきとは打って変わって、顎のもじゃもじゃ髭を弄り、真面目な雰囲気を出しながら聞いてきた。

 その雰囲気は大抵の者を委縮してしまいそうな程なのだろう。直感的にだが、そう感じられた。

 

 相手の言動から、情報源を言え、と言っているのはわかる。

 しかし、『はい、そうですか』と素直に言っていいのだろうか?

 まあ、あの鍛冶屋のオッサン、何でもないような感じで話していたから大丈夫だろう。

 

「初めてオルタナに来た時に、情報収集の際に鍛冶師が仕事をしている所に興味が湧いて、その鍛冶師に話を聞いた際、戦闘鍛冶師の情報を鍛冶師のオッサンが教えてくれました。」

 

「・・・名前は?」

 

何かに心当たりがあるのか、眉を顰めて静に再び問いを投げかける。

 ただ、何かを確かめるように、ブランケンさんはこちらを見据えながら、答えを待っている様子だ。

 

「えっと、確か・・・、クニ、クニトモさんだったはずです。」

 

それとなく、掛けられたブランケンさんの圧力を難なく耐えてみせて、その問いに答える。

 どうしたのだろうか?ブランケンさんはその人とは何らかの知り合いか?

 ブランケンさんはもじゃもじゃ髭がある顎に手で髭を弄りながら目を閉じて「そうか」と呟いた。

 

 一体何だったんだろうか。それだけが疑問に残る。

 

 そんな俺の疑問を察してくれたのか、アキラさんが口を開いた。

 

「その鍛冶師はブランケンの親友が弟子に取っていた鍛冶師でな、ブランケンともそれなりに知っている中なんだが、彼は途中で戦闘鍛冶師から鍛冶師に変更したらしい。」

 

「へぇ、そうなんですか。彼には何か事情でもあったのでしょうか?」

 

「さあな、こればっかりは当人たちの問題だから、当時はブランケンとはパーティーを組んで無くてなほぼ部外者だったからわからん。ブランケンは何か知っているようだが、解決したらしいから、私は口を挟めないよ。

 ところで、そちらのメリイくんは先程から何も喋らないが、無口なのかな?」

 

「え?」

 

アキラさんの話に相槌を打ちつつ納得していると、話題は全く会話に参加して来ないメリイへと移った。

 話題が自分に移ったことにすぐ気づいたメリイは素っ頓狂な声を出しながら固まった。

 アキラさんの言うように、先程から本当に一言も喋らないが、本当にどうしたのだろうか?精々、今の素っ頓狂な声を聞いたくらいだ。

 メリイは唖然としたまま、食事をそこそこにこちらを眺めながら再び固まっていた。

 何となく、察しがついた俺が答えようとすると、アキラさんの傍を陣取っていたミホさんがメリイを見つめながら応えた。

 

「ふふふ、きっとそれは私達の事を知っている(・・・・・・・・・・)からだと思うわよ。アキラ?」

 

そう言って、アキラさんに対して、口元に手を当てて妖艶に微笑んで見せるミホさん

 

「・・・ああ、そういう事か。

 あまりにも、ヴェルス君が自然と話すものだから、つい、見落としていたよ。はっはっはっ。」

 

「ふふふ、貴方にもそういう事がたまにあるから、気をつけないとね。」

 

何となく、甘いような空気を醸し出している二人だ。まあ、ミホさんが一方的に出しているんだけどな。 

 たとえそうであっても、何か似合っている?ような雰囲気だ。

 

「あの、知っている(・・・・・)って、どういう事ですか?」

 

別の意味で全く理解できていない俺の当然な問いに、酒場が何故か凍りつく。そして、メリイが呆れたような表情を見せ、溜息をついた。

 解せぬ。

 

「はあ、貴方、彼らを知らないなんて、もぐり、と言われても仕方ないわよ?」

 

「はははっ、大袈裟だな、メリイ君。最近の若い子が別にこんなおじさんを知らなくても、可笑しくはないさ。」

 

「いや、だから、アキラさんは何者なんだよ。なんか、有名人なのか?」

 

最早、二人にここまで言われては聞かずして引き下がれないため、俺は再びメリイに問いかける。

 メリイは再び溜息をつくと、一つ一つ話し始めた。

 

「まず、シェリーの酒場でソウマさんのパーティーの話が出たでしょう?」

 

「ああ、確か、義勇兵の中の義勇兵って呼ばれているんだっけ?それがどうしたんだ?」

 

その確認を込めた質問に頷き、続きを促す。

 

「彼らは、生ける伝説、歩くレジェンドと呼ばれているけれど、それは、歩くということは当然、そこらを歩いている。伝説でありながら、ちゃんと実在していて、運が良ければその辺ですれ違う可能性もあるというニュアンスが、この表現にこめられているのだけど、アキラさんは全く違うの。」

 

「違うって、どう違うんだ?」

 

「はっきり言って、アキラさんの名を知らない人はもぐりだと言われてもしょうが無いと言われるほどで、ソウマさんたちよりも、遥に遠い存在って言われているわ。」

 

「へぇ~、そいつは知らなかったな~。

 生憎、鍛冶か武術ばっかり目が行っていたから、そこら辺は全く、興味が無かったな。

 いやー、勉強になった。ありがとうな、メリイ。」

 

丁寧に説明をしてくれたメリイは俺の礼に肩を少し竦めて、「どういたしまして」と応えた。 

 しっかし、アキラさんってそんなに凄いのな。

 あのあまり、物怖じしないメリイが、普通に緊張したりするのも、アキラさんがそこまで凄ければ頷ける。

 あまり、そう言ったことに疎い、というか、興味ない俺でも、その凄さが伝わる程、メリイの説明が丁寧で理解し易かった。

 

 しかし、だからなんだ。というのもある。

 ぶっちゃけた話、伝説であろうと、レジェンドであろうと、鍛冶師と戦闘の両立を目指している俺からしたら、あまり関係無い話であるし、そもそも、俺は、気分的には敵勢力の殲滅、或いは減少を目指す義勇兵、では無く、未知なる領域への探求心、それに対する冒険を目的としている、冒険者なのだ。

 義勇兵の中の義勇兵だろうが、伝説の義勇兵であろうが関係無い。

 

 そう言った意味をアキラさん達やメリイに説明すると、メリイは呆れた様子で「貴方らしいわね」と溜息混じりに応え、アキラさん達は、「こいつはある意味大物だな」と笑っていた。

 

 

 

 そんなこんなで、気づけば夜の帳が降りて大分経っている様子で、道行く人も疎らになり、夜の闇が濃くなる時間帯を迎えていた。

 

 俺達とアキラさん達はその場で解散となり、明後日あたりに、黒金連山の例の戦闘鍛冶師の元へ案内してくれることになった。

 伝説級と呼ばれている義勇兵達と数日程の短期間とはいえ、旅をする事になるわけで、ぶっちゃけ、凄い展開である。

 何でも、アキラさん達も黒金連山の戦闘鍛冶師に装備についての用があるらしく、ついでに案内役を買って出てくれたのだ。

 

 メリイ曰く、普通の義勇兵からしたら、これは事件らしい。

 その位、奇跡的らしい。

 

 どうやら、ここに来て漸く『幸運』アビリティが本領を発揮しだしたようで、最近、つきがまわっている気がする。

 

ーーー閑話休題(何か多いな)

 

 さて、そんなこんなでアキラさんに教えて貰い昼の内にチェックインしておいた、宿屋に入ると美人でツンとしたエルフの女性が出迎え、部屋の鍵を二つ貰うと、片方をメリイに渡して、それぞれ別々の部屋に宿泊した。

 部屋の中に備え付けられたベッドの上で明日の予定について、考えを巡らせながら、

 

「明日は平穏な休日を満喫したいなー」

 

と何故かフラグを立てていた気がした。毎度、大変なのである。

 




はい、最後の最後にフラグを強引に立てたヴェルス君でした。
 次回、遂にヴェルスのーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 さて、それは置いといて、

 矛盾や誤字脱字がありましたら、どうか、どうか、指摘してください。
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