グリムガルの冒険者   作:龍神王聖人

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 今回一週間で投稿できましたが、短いです。

 今回でヴェルスの過去が少し掠る程度にわかります。

 ではでは、第七話、平穏の日に どうぞ!!


第七話 平穏の日に

 そこに広がるは地獄絵図だった。

 

 あちこちに響き渡る、悲鳴と怒声。

 

 あらゆるを傷負った冒険者達(・・・・)

 

 地面に横たわり、動かなくなった者も少なくなく、

 

 今もなお、目の前の階層主(バケモノ)とその数え切れないモンスター達が冒険者達を蹂躙し、それを見て首謀者(狂信者)が滑稽だと言わんばかりに笑い声を上げていた。

 

 

 そんな中、俺は地面を這いつくばっていた。

 歯軋りしながらも、その光景を眺めるしかなく、俺の中でこの状況に対する無力感が全身を駆け巡っていた。

 

 

 

そんな時、

 

 

 一人の女性が敵の攻撃をかいくぐり、俺の傍らに近づいた。

   

 その女性は細く尖った耳から、エルフだとわかった。

 

 濡れ羽色の長髪、赤緋の瞳、色白の肌を持つ美しい女性だった。

 

 女性は俺の傍らに寄ると小瓶を二本取り出して、一本を俺の全身にもう一本を俺に飲ませ、こう言った。

 

「どうした、ヴェルス。その程度で倒れるのか?貴様の力で、クーーゾのー剣を打ち破る武器を作ると私の前で豪語したのは嘘だったのか?」

 

 どこか無理したような様子でその見ず知らず筈の女性(・・・・・・・・・)の言葉は何故か、俺の心に響き渡る。

ーーー何故?

 そんな驚きを気づく気も無く、女性は言葉を続ける

 

 

 

「ーーーそんな訳は有るまい?私が認めた(・・・)貴様の力はこの辺で這いつくばって良いものである筈はあるまいて。

 ならば、立て。

 今、ここにいる者達は皆、貴様を必要としている。」

 

その女性の言葉と共に、まるで、思い出したように覚醒する意識(・・・・・・)はその光景を光に包んでいき、やがて、俺の意識を覚醒させた。

 そんな意識の中、女性はその赤緋の瞳をこちらに向けて気丈に微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ーーーっ、待ってくれ!!」

 

そんな叫び声を上げながら、俺は目を覚ました。

 息は荒く、体中の寝汗がオルタナから持参した寝巻を濡らしていた。

 

ーーー一体何だったんだろうか(・・・・・・・・・・・)

 

そう、疑問に覚えながらも(・・・・・・・・・)、俺はさっさと室内用の普段着に着替えて、部屋を出た。※疑問を覚えながらもor疑問に思いながらも かと

 その後、顔を洗い、歯を磨き、鍛錬まで、いつものように終えると、メリイと朝食ーーー朝食はサラダとコーンスープと柔らかいパンだったーーーを共に食べた。

 

 その後、部屋に戻り装備もそこそこに今日は実質休日のため、二人で町へ繰り出した。

 因みに、オルタナや同盟国家の町の外は普通に魔物が闊歩しているため、狩りに行くときと同様の装備をして、この町を訪れている。

 そのため、外出用の普段着はこの町で買うか、オルタナからわざわざ持ち込む必要があるのだが、生憎、オルタナからは帰るときに荷物が嵩張るため、現地で買うことにしていたが、昨日はいろいろと忙しく、結局買えずじまいで、めでたく装備着用の休日を過ごす羽目になった。

 

 最も、メリイは神官服を完璧に着こなしているため、普段着だろうと普段着じゃなかろうと関係ないのだが。

 

 

 

 そんな中、俺達は昨日、アキラさんに教えて貰った作法で情報収集をそこそこに、休日を満喫しながら過ごしている。

 

 カフェテラスでメリイや、情報収集の際に知り合ったエルフの女性ーーーフィルヴィスはエルフの象徴である、細く尖った耳、クールな印象で濡れ羽色の長髪に赤緋の瞳が特徴で、メリイに負けず劣らずの美貌を誇っていて、凛々しい女性ーーーと談笑しながら、影森の平穏な日常を過ごしていた。

 

 フィルヴィスとは、雑貨屋でメリイの買い物に付き合いつつ、情報収集をしているときに話し掛けた相手だった。

 そんな時だった。奇妙な現象が起きたのは。

 何故か俺はその時、初対面の筈のフィルヴィスに対して本人の名前を言い当てたのだ。

 そして、驚くことにフィルヴィスもまた、俺の名前を言い当ててきたのだ。

 その後、何故、お互いの名前を言い当てられたのか、疑問に思ったが、お互いに判らなかった。・・・推測はたったが。

 恐らく、俺とフィルヴィスは知り合いだったのだろう。それも、そんじょそこらの付き合いではなく、お互いの名前を言い当てられるレベルくらいの付き合いはあったはずだ。そして、何かしらの経緯でこのグリムガルに来て、今日、再会したと行ったところだろう。

 そんなこんなで、今、カフェテラスで昼食をしながら、雑談をしている。

 このカフェテラスは五つの大木の上に立つ複数の木造建築のツリーハウスの一つで、他の四つもこの店に属しているらしく、それぞれのカフェテラスを木製の吊り橋で繋がっていた。店長である女性のエルフ曰く、五つで一つの店と、ドヤ顔で語っていた。端整な顔立ちが台無しである。

 そんな残念エルフはおいといて、俺達の話題はフィルヴィスの職業に移っていた。

 

 彼女の服装は噂に聞く剣舞師の服装らしい。

 しかも、魔法が使えるようになって(・・・・・・・・・・・・)からは、魔法剣士とも呼ばれていて、影森にいるエルフの中では最高峰の実力者の一人として名を馳せているそうだ。

 

 そんな彼女は現在、冒険者をやっているらしい。

 彼女に義勇兵は入らなかったのかと、聞いたが、一応入ってはいるが、一度しか影森支部の事務所には寄ってないため、見習いのままだそうで、依頼等は受け付けておらず、ソロでオークが特に出没するジェットリバーの近くにあるカルハドの森や遠いところではワンダーホールや旧ナナンカ王国にまで足を運んだそうだ。 

 

 ヤバイ、ここにチーターがいる。

 

と俺が思ったと同時に、

 

「貴方も人のこと言えないでしょ。」

 

とメリイが心を読んだような事を言う。

 

「何故、わかった?」

 

動揺を仮面(表情)の中に隠しつつ、平静を装いながらメリイに尋ねる。

 

「貴方の考えてることなら、大抵分かるわ。」

 

と言いながらクールに右の前髪を耳に掛けた。

 

「なにそれ、怖い。」

 

割と本気で戦慄をメリイに対して走らせていると、それを見たメリイがため息をついた。

 

「はあ、・・・冗談よ。まともに受けないで。」

 

「冗談だったのかよ!?てか、メリイ、お前いつから冗談言うようになったんだよ!?」

 

「・・・」

 

あれ?俺を見るメリイの眼が段々と残念な者を見るような眼になってきている!?。ちょ、フィルヴィス、苦笑いしてないで、なんとかしてくれ!!

 

「ははは、まあ、ヴェルスは顔に出やすいからじゃないか?」

 

とフィルヴィスはフォローするが、その表情から苦笑いは全く取れていない。

 

 そんなこんなで二人に時折弄られながらーーー誠に遺憾ながらーーー平穏な時は過ぎていった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 太陽が昇りきり、森の真上に来たころ、義勇兵達ーーーエルフも含むーーーーは朝のうちに狩りに出かけた者が大半を占め、戦える兵が少なくなくなり、町はどうしても手薄になる。

 

 そんな昼時の中、俺達は休日だというフィルヴィスの案内のもと、影森のグルメである、山菜料理や果物や木の実の料理を食したあと、午後ものんびりと過ごた。

 その後、黒金連山に案内を引き受けてくれたアキラ達と出発に向けた打ち合わせをするため、昨日と同じ酒場に向かおうとしたとき、フィルヴィスが意を決した様子で「少し良いだろうか?」と、俺達を引き止めた。

 

「どうしたんだ?」

 

突然のこととはいえ、別に先を急いでいるわけでもなければ、無下にする理由もないので俺はフィルヴィスに問い返す。

 メリイも、知り合ったばかりで一日の交流だけとはいえ、一定の信頼は置ける人物と判断したようだ。

 

「・・・実はだな、私をお前達のーーー」

 

と、フィルヴィスが俺の問いに一瞬の間を置いて答えようとした、その時だった。 

 

ーーー

 

俺達が歩いていた飲食街一帯をけたたましい鐘の音が鳴り響いた。 

 

「なんだ!?」

 

思わず俺は声をあげた。それより早く、辺りの人々に焦り、不安、絶望といった負の感情をそれぞれ浮かべていた。

 

 しかし、そのどれにも当てはまらない例外も存在した。

 メリイとフィルヴィスだ。

 メリイは、この鐘の音がなんなのか記憶を探している様子だ。

 一方のフィルヴィスは、臨戦態勢を取っていて、腰に差した細剣に手をかけていた。

 

「二人とも、何か心当たりでもあるのか?」

 

この時、初めて、今日会ったばかりのフィルヴィスに対して最初からタメ口で話していることに気づいたがそんな今はどうでも良いことは置いといて、二人の返答を聞く。

 

「まさか・・・敵襲?」

 

「恐らく間違いない。敵襲だ。」    

 

その後だった。

 遠くの外壁付近から、慌てた様子のエルフ達が流れ込んできた。

 

 俺はメリイを抱き寄せて壁に寄り、フィルヴィスもそれに続いていく形で壁に寄りながら、その激しい人々の流れをやり過ごした時、そいつらは現れた。

 

 緑色の肌、人より一回りほど大きい身体、鼻は潰れていて、耳はエルフよりさらに小さく尖っている。

 口は大きく、猪型のモンスターのような牙がある。 

 真っ赤な髪の毛にでかい身体に鎧を着ていた。さらに、手には片刃の剣を持っていた。

 

 

 この時、初めて、俺はオークと遭遇した。

 

 そして、そこから影森戦役の幕が上がった。




 次回は、戦闘の回です。
 
 前後編でお送りする予定ですので気長にお待ちください。
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