Lがデスノートを拾った世界   作:梅酒24

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祝30話目!!


30話目:誘導

「捜査している人間が、一般人でも分かるようなずぼらな体制では――」

 

僕はゆっくり言葉を選びながら続けた。

 

「あなたの婚約者を襲った悲劇を、また繰り返すこともある」

 

雪は相変わらず静かに降っている。

 

その白い静寂の中で、僕の声だけが妙にはっきり響いた。

 

「だから警察庁で“本部に誰もいない”と言われたんです。警察庁の受付の人間ですら、本部の人間がどこにいるか知らない。つまり……」

 

僕は頭の中で、物語を組み立てていた。

 

筋が通る物語。

 

人は論理よりも、

納得できる物語に動かされる。

 

そして。

 

僕はあえて――

 

婚約者の話を出した。

 

悲劇。

 

その言葉は、彼女の心の奥に触れる。

 

悲劇を繰り返してはいけない。

 

それはきっと、

彼女が一番強く思っていることだからだ。

 

「永遠に」

 

彼女が言った。

 

「直接話をすることはできないということですね」

 

彼女は僕の目を見つめていた。

 

じっと。

 

逃げ場のない視線。

 

その瞳には、

ただの悲しみではない。

 

強い意志が宿っている。

 

――流れが変わった。

 

僕は確信した。

 

彼女は。

 

どうしてもキラを捕まえたい。

 

そして。

 

今、僕の話に食いついた。

 

ならば。

 

ここでやるべきことは一つ。

 

沈黙。

 

僕は何も言わなかった。

 

沈黙は、相手に質問を生ませる。

 

人は空白を埋めたくなる。

 

そして案の定。

 

彼女は口を開いた。

 

「なぜ、そんなに詳しく知っているんですか?」

 

来た。

 

僕の目がわずかに見開かれる。

 

「それは……」

 

僕は大きく息を吸った。

 

胸の奥が少しだけ熱くなる。

 

ここが正念場だ。

 

「僕も」

 

「捜査本部の一員だからです」

 

言葉は静かに出た。

 

しかし。

 

その一言は大きい。

 

僕は続けて説明した。

 

父が捜査本部の長であること。

 

そして。

 

高校生のときに二つの事件解決に関わったこと。

 

その結果。

 

特別に出入りを許されていること。

 

普通なら。

 

信じない。

 

高校生が捜査本部に出入りするなど、

荒唐無稽だ。

 

だが。

 

今回は違う。

 

彼女はすでに。

 

警察庁の受付で聞いている。

 

事件解決の話。

 

そして。

 

僕が夜神局長の息子であること。

 

つまり。

 

警察側の人間が、

僕の存在を認めている。

 

コネ。

 

そして実力。

 

その両方があるなら。

 

捜査本部にいてもおかしくない。

 

彼女なら、そう考える。

 

僕は心の中で安堵した。

 

これで。

 

うまく誘導すれば。

 

彼女がLに近づくことを防げる。

 

そう思った。

 

その瞬間だった。

 

「私も」

 

彼女が言った。

 

「二年前、アメリカのある事件でLの下で働いたことがあります」

 

僕の思考が止まった。

 

「この人は信頼できる」

 

彼女は言った。

 

「どんな事件でも、必ず解決してくれると確信しました」

 

「!!!!」

 

僕の中で何かが弾けた。

 

「Lの下で働いた!?」

 

「つい三か月前まで」

 

彼女は淡々と言う。

 

「私もFBIの捜査官でしたから」

 

――これだ。

 

僕の思考が一瞬で回転し始めた。

 

利用できる。

 

「なるほど……」

 

僕は感心したように言った。

 

「どうりで」

 

「キラを追う姿勢や行動が、素人とは違うと思っていました」

 

彼女を見つめる。

 

「核心に迫りながらも、常に慎重で賢明だ」

 

僕は微笑んだ。

 

「僕も見習いたいところです」

 

――相手を褒める。

 

持ち上げる。

 

これは。

 

父さんの部屋にあったゲームで学んだことだ。

 

女の子を攻略するゲーム。

 

あれは案外。

 

現実にも応用できる。

 

「あなたには」

 

彼女が言った。

 

「Lに似たもの……近いものを感じました」

 

その言葉は。

 

不思議な重みを持っていた。

 

二人は。

 

容姿も。

 

性格も。

 

まるで違う。

 

だが。

 

辿り着く思考の先は、同じ。

 

「!」

 

僕の胸の奥が一瞬ざわめいた。

 

――Lと同じ。

 

もし。

 

Lがキラなら。

 

僕も。

 

きっかけさえあれば。

 

キラになっていたかもしれない。

 

確かに僕は思ったことがある。

 

犯罪者がいなくなればいい。

 

だが。

 

だからといって。

 

犯罪者だとしても。

 

命を軽々しく奪っていいわけではない。

 

しかし。

 

彼女の言葉には。

 

妙な重みがあった。

 

僕は考えるのをやめた。

 

今は。

 

余計な思考は邪魔だ。

 

僕は彼女を見つめた。

 

そして。

 

自然に。

 

言葉が出た。

 

「一緒に捜査しませんか?」

 

自分でも驚くほど。

 

言葉は滑らかだった。

 

喉の奥から。

 

すっと出てきた。

 

僕は続けた。

 

運命。

 

偶然。

 

出会い。

 

そういう言葉を巧みに織り交ぜながら。

 

彼女の心を押していく。

 

そして。

 

彼女は。

 

少しずつ。

 

その気になっていった。

 

念のため。

 

僕は言った。

 

「身分証を見せてもらえますか」

 

彼女は迷わず差し出した。

 

それを見た瞬間。

 

僕は確信した。

 

この女は。

 

できる。

 

カードに書かれていた名前。

 

それは。

 

美空ナオミ。

 

偽名を使った理由など。

 

聞くまでもない。

 

その程度の慎重さを持つ女だということは――

 

もう。

 

十分に分かっていた。

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