Lがデスノートを拾った世界   作:梅酒24

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37話目:反撃

ワタリの焦燥は、尋常ではなかった。

しかし、その理由を測りかねているにもかかわらず、Lの胸中には不吉さよりも、むしろ奇妙な期待が膨らんでいた。

 

(……このまま進めば、夜神月君がキラとして逮捕されるのは時間の問題だったはず。だが、この段階で何かが起きた……。

いや、仮に私がキラでなく、ただキラと疑われている立場――つまり月君の立場であれば、数日のうちに監視カメラや盗聴器の存在に気づくはずだ。そしてそこから、キラが自分をキラに仕立て上げようとしている、という推論に至る可能性もある。

もし月君がここで何の行動も起こさないのなら、彼はそこまでの男だったということになりますが……さて、扉の向こうには何が待っているのでしょう)

 

やがて一同は、モニターの前に集められた。

 

画面には、僕――夜神月の姿が映っている。

僕はベッドに腰掛け、足を組み、腕を組んでいた。

 

机の上には、一枚の大きな紙が置かれている。

 

「……月君の机の上に、大きな紙がありますね。何か書いてある。拡大してください」

 

モニターがズームされる。

 

そこには、はっきりとした文字でこう書かれていた。

 

『16時に僕の推理を話します。キラが誰であるかを伝えたいと考えています』

 

夜神総一郎は腕時計を見た。

 

――15時56分。

 

「えっ……これ、僕たちへのメッセージじゃないですか?」

 

「あと4分か……」

 

誰かが冗談めかして言う。

 

『もしかしてLがキラとか言ったりしてな。まずいんじゃないの?』

 

Lは無表情のまま、モニターを見つめていた。

 

(ここで夜神月君を殺せば、それこそ“私たちの中にキラがいる”という証明になる。

……面白い。聞いてみましょう)

 

やがて、時計の針が動く。

 

「……16時だ」

 

その瞬間、モニターの向こうで僕が口を開いた。

 

『父さん、ごめん。監視カメラと盗聴器には気付いていた。でも、気付いていないふりをしていたんだ。

おそらく今この画面を見ているのは父さん、捜査本部の皆さん、そして――Lだ』

 

「えっ……なんで分かるの?」

 

当然の疑問だった。

 

僕は淡々と説明した。

 

ドアノブのわずかな痕跡。

シャーシンのずれ。

部屋に誰かが侵入した形跡。

 

注意深く観察すれば、発見は難しくない。

 

(……ウエディは侵入の腕はいいですが、他は平均レベルですね)

 

Lは心の中でそう評価した。

 

僕は続ける。

 

『監視カメラと盗聴器を仕掛けるなら、日曜から土曜まで一週間は続けるだろう。

とはいえ、永遠につけるわけにもいかない。だから最低でも今日までは監視されていると考えていた』

 

『もちろん、もっと早く推理を話すこともできた。だが、僕からは捜査本部の全員が見ている保証がない。

だから昼休みが終わる頃――15時に紙を置いた。そうすれば1時間以内に気づき、16時にはここに集まると考えた』

 

『時間をかけすぎれば、もしこの中にキラがいる場合、対策される。だから1時間前の告知にした』

 

僕は一度、静かに息をついた。

 

『もちろん、このことで僕が殺されるリスクはあった。

だがもし僕が死ねば、それはキラ対策本部の中にキラがいる証拠になる。

……だが見ての通り、僕は生きている』

 

僕はベッドから立ち上がり、椅子へ移動した。

 

そして、静かに言った。

 

『結論から言う』

 

部屋の空気が凍りつく。

 

誰もが、僕を凝視していた。

 

『僕はキラを――』

 

一瞬の沈黙。

 

『Lだと断定している。』

 

その瞬間。

 

Lの瞳が、わずかに見開かれた。

 

体が、微かに震える。

 

しかしそれは恐怖ではない。

 

むしろ――歓喜だった。

 

(……そうこなくては)

 

他の捜査員たちは、ただ呆然とLを見つめている。

 

「おい……特定されてるぞ……」

 

僕は構わず続けた。

 

『僕がここで話している理由は単純だ。

僕は、数日続いた1時間ごとの23人の殺害から、キラは警察内部、あるいはその身内にいると推測した』

 

そして僕は説明した。

 

匿名の連絡。

そして仕掛けた罠。

 

『犯罪者データベースの通信プロトコルを少し改変した。

簡単に言えば、一つのデータにつき一人だけ削除された状態で送られるようにした』

 

『つまり、捜査本部のメンバーには同じデータが届いているように見えて、実は一人だけ存在しない犯罪者がいる』

 

キラは――

 

名前と顔が必要だ。

 

『例えばABCDEの5人がいたとする。世界中の犯罪者300人を送ったとする。

AだけにXという犯罪者を送らない。

BCDEにはXという犯罪者を送る』

 

『もしXが死亡したら、Aは犯人ではないと分かる』

 

そうして少しずつ、候補を削っていく。

 

そして。

 

『その結果、“watari”という人物に送られていなかった犯罪者だけが――裁かれていなかった』

 

部屋がざわつく。

 

『もちろん、watariがキラだとは思っていない。

彼は中継役だろう。

つまりwatariからデータを受け取る人物こそがキラである可能性が高い』

 

僕は一度、視線をカメラに向けた。

 

『もし名前や写真を変えていたらバレたか?

いいや。

複数の中の一つが欠けているだけなら、自分のデータだけ欠けているとは思わない』

 

そして、静かに続けた。

 

『Lは僕をキラに仕立て上げるため、監視カメラと盗聴器を仕掛け、警察を誘導してきた』

 

『だが逆に言えば、皆が見ている今だからこそ、僕は自分の考えを伝えられる』

 

『なぜなら――』

 

僕は断言した。

 

『Lは、そろそろ僕をキラに仕立て上げるはずだからだ』

 

沈黙。

 

『世界一の探偵がキラを見つけられないなら、それは――』

 

『Lがキラだからだ』

 

捜査員たちは互いに顔を見合わせた。

 

「……おい、これ……」

 

松田が呟く。

 

「Lが言ってた内容と、ほぼ同じなんだけど……」

 

「本当にLがキラなのか?」

 

Lは、ただ僕を見つめていた。

 

微動だにせず。

 

そして。

 

その口元が――

 

わずかに、緩んだ。

 

(……実に面白い)

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