Lがデスノートを拾った世界   作:梅酒24

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39話目:終演

僕は静かに指を組み、机の前に座ったままカメラを見据えた。

画面の向こうでは、警察本部の面々が固唾を飲んでこの推理を聞いているはずだ。

 

そしてその中には、必ず――

Lがいる。

 

僕はその存在を強く意識しながら言葉を選んだ。

これは単なる説明ではない。

推理の提示であり、挑戦状でもある。

 

『まず、事実から考えてみましょう』

 

僕は落ち着いた声で言った。

 

『関東にキラが潜伏していると断定されてから、日本――特に関東での心臓麻痺による死亡が急激に増えています』

 

少し間を置く。

 

『しかし、ここに明らかな矛盾があります』

 

僕は指先を軽く机に置いた。

 

『もし本当にキラが関東にいるのなら――

そんな目立つ行動はしないはずです』

 

論理は単純だった。

 

『キラの思想は“関東の人間を殺すこと”ではない。

犯罪者を裁くことです』

 

僕はゆっくりと続けた。

 

『それにも関わらず、関東に集中している』

 

そして静かに結論を置く。

 

『これは自然現象ではなく――作為的な偏りにしか見えません』

 

モニターの向こうで、何人かが息を飲んだだろう。

 

僕はさらに踏み込む。

 

『その後、日本の刑務所で変死事件がいくつか起きています』

 

これは重要な点だった。

 

『つまりこの時点で、キラは何らかの実験をしていた可能性が高い』

 

僕は論理を積み上げる。

 

『そして実験結果を知ることができる立場にいる』

 

ここで僕は視線をわずかに鋭くした。

 

『刑務所の変死の詳細は極秘情報です』

 

つまり。

 

『それを把握できる人間は限られる』

 

僕は冷静に数字を出した。

 

『警察内部の一部の人間、その家族、そしてL』

 

頭の中で計算する。

 

『おそらく――150名程度まで絞られるでしょう』

 

部屋の空気が重くなるのを感じた。

 

『この実験もまた、殺害に何らかの法則があることをL自身が確認するためだったのではないでしょうか』

 

そして僕は次の出来事へ移る。

 

『その後、FBI捜査官が殺されました』

 

僕は静かに言った。

 

『もしキラがLなら、FBIの顔と名前を入手することは難しくありません』

 

むしろ簡単だ。

 

『しかしそれをそのまま行えば、Lが疑われる可能性がある』

 

だから。

 

『事前にさまざまな“実験”を行い、偶然のように見せかけた』

 

僕は言葉を区切った。

 

『つまり――

FBIを殺したことでLがキラではないように見せかけた可能性がある』

 

モニターの向こうで松田が思わず口を挟んだ。

 

「でもLがキラなら、警察本部のメンバーも殺してるはずじゃないかな?」

 

「だからLはキラじゃないんじゃ……」

 

しかしLは黙ったままだった。

 

その沈黙が逆に緊張を生んでいる。

 

僕はすぐに答えた。

 

『いいえ』

 

声は鋭かった。

 

『殺していないのではなく、殺す必要がないのです』

 

僕は冷静に続けた。

 

『むしろキラなら――

警察を泳がせておく方が有利です』

 

その理由は明白だった。

 

『捜査本部が動けば、情報が自然に集まる』

 

僕はカメラをまっすぐ見た。

 

『つまりキラは、警察の近くにいるほど安全になる』

 

一瞬、僕は思考を止めた。

 

――FBI。

 

あの出来事。

 

(僕はFBIに尾行されていたことに途中で気付いた)

 

(バスジャック事件の時、FBI捜査官とも会った)

 

胸の奥にわずかな重みがよぎる。

 

(あの人が亡くなったのは残念だ)

 

だが今は感情を挟む場面ではない。

 

(あのバスジャック事件……)

 

ふと一つの疑念が浮かぶ。

 

(あれもLの仕業だったのではないか?)

 

しかしすぐに思考を切った。

 

(死神の話は出さない方がいい)

 

(言っても何の利益もない)

 

僕は再び推理に戻る。

 

『キラがLでないなら――

優秀なLがいずれキラを見つけるでしょう』

 

しかし。

 

僕は声を少し低くした。

 

『では、もしキラがLだった場合――』

 

静寂が流れる。

 

『誰がキラを捕まえるのですか?』

 

僕はゆっくり言った。

 

『僕が最も恐れていたのは、その可能性です』

 

そして視線を鋭くする。

 

『確かに僕の推理は完璧ではないかもしれません』

 

『ですが、もし警察本部の中に

「Lは警察を殺していないからキラではない」

そう考えている人がいるなら――』

 

僕ははっきり言った。

 

『それは誤りです』

 

僕は続ける。

 

『そもそもLが日本を選んだ理由』

 

これは重要だった。

 

『日本の警察なら誘導できると考えたからでしょう』

 

僕は言い切った。

 

『つまり――

舐められているのです』

 

モニターの向こうで空気が凍っただろう。

 

『日本の警察程度なら放置しても危険ではない』

 

『むしろ近くにいることで情報を得られる』

 

僕は静かに締めた。

 

『そう考えているのではないでしょうか』

 

その瞬間。

 

モニターの向こうでLはわずかに目を細めた。

 

(やはり……)

 

(夜神月君は見透かしていますね)

 

彼の胸にわずかな興奮が走る。

 

(こんなことは初めてだ)

 

(私と同程度の思考をする人間がいるとは)

 

僕は最後に言った。

 

『僕が言いたいのは一つです』

 

『Lを信用しすぎないこと』

 

僕は落ち着いた声で続けた。

 

『ここで僕がこれだけ話した以上、もしLがキラでも警察本部や僕を殺すことはできません』

 

『もし殺したら、Lを逮捕すればいいだけです』

 

そして最後の保険を提示した。

 

『もし僕が死んだ場合――』

 

『僕の集めた情報と推理は、インターネットを通じて公開されるようにしてあります』

 

一瞬の沈黙。

 

『Lがキラなら、僕をキラに仕立て上げるのが一番早い』

 

『Lがキラでないなら、早くキラを捕まえればいい』

 

そして僕は時計を見た。

 

『明日はセンター試験なので』

 

静かに言う。

 

『今日はこれで失礼します』

 

僕が話し終えると。

 

モニターの向こうで、ついにLが口を開いた。

 

「確かに月君の言うことには一理あります」

 

穏やかな声だった。

 

「私はキラではないので、“私=キラ”という視点で考えていませんでした」

 

そして続ける。

 

「つまり、私の意見を盲信しすぎないことです」

 

彼は軽く肩をすくめた。

 

「ただし同時に、月君の意見を盲信するのも良くありません」

 

松田をちらりと見た。

 

「あっ、月君の意見に流されていたのがばれていましたね」

 

場の緊張がわずかに緩む。

 

だが次の言葉で空気は再び張り詰めた。

 

「ちなみに別の見方もできます」

 

Lは淡々と言った。

 

「夜神月君がキラであり、疑いをそらすために私に罪をなすりつけた可能性です」

 

その一言で。

 

場の矛先が再び僕に向く。

 

「そういう意味では――」

 

Lは静かに言った。

 

「月君へのキラ疑惑は、むしろ高まりました」

 

そして。

 

まるで何でもないことのように言う。

 

「明日、私も入試を受けます」

 

一瞬、誰も理解できなかった。

 

「同じ大学に入りましょう」

 

Lの目が静かに光る。

 

「直接会って、話したい」

 

それは。

 

挑戦だった。

 

僕はモニター越しにその気配を感じ取った。

 

(面白い)

 

心の奥で静かに思う。

 

(望むところだ)

 

世界一の探偵L。

 

そして僕。

 

二人の戦いは――

 

まだ始まったばかりだった。

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