Lがデスノートを拾った世界   作:梅酒24

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46冊:日記

第二のキラからのメッセージが届いたのは、――月君が作成したテープが放映されて、まだそれほど時間の経たない頃だった。

 

私はモニターの前に座り、相変わらず椅子の上で膝を抱えながら、その文章を読み返していた。

 

第二のキラは言う。

 

キラに従う。

キラに会いたい。

自分は“目”を持っている。

確認は死神で。

 

――なるほど。

 

私は無意識に砂糖の角を指で転がした。

 

(これは……)

 

第二のキラは、キラに会うつもりらしい。

 

しかし、その行為が何を意味するのか。

 

どうやら理解していない。

 

普通のキラなら。

 

自分の存在を脅かす者など――

 

会った瞬間に殺す。

 

第二のキラは、どうやらその単純な帰結に思い至っていないらしい。

 

あるいは。

 

思い至っていても、信じていない。

 

(危険ですね)

 

私はぼんやりと天井を見上げた。

 

もし私が捕まるとしたら。

 

それは第二のキラ経由以外にあり得ない。

 

しかしその第二のキラは、あまりにも軽率だ。

 

(……駄目だ)

 

心の奥で、妙な言葉が浮かぶ。

 

(こいつ……早くなんとかしないと……)

 

その理由は単純だった。

 

第二のキラを私より先に、月君が見つけてしまったら。

 

 

 

私は少しだけ体を揺らした。

 

そしてわざと椅子から転げ落ちた。

 

「死神の存在を認めろとでも言うのですか」

 

床に転がりながら、そう言ってみる。

 

周囲の刑事たちがざわめく。

 

だが。

 

背後にいる月君の視線が、少しだけ鋭くなったのを感じた。

 

(……やはり)

 

彼は気付いている。

 

この反応が演技だということに。

 

もっとも、それも当然だろう。

 

死神という言葉は、これまでにも何度か耳にしている。

 

今さら驚く理由はない。

 

そして何より。

 

私はこんなことで狼狽する性格ではない。

 

つまりこの芝居は。

 

周囲の刑事たちに向けたものだった。

 

案の定、相沢さんが言った。

 

「キラと第二のキラは同一人物で、死神なんて言葉でかく乱してるんじゃないか?」

 

しかし、それは違う。

 

私は首を横に振る。

 

もし同一人物なら。

 

私をテレビに出して殺す。

 

それが最も合理的だ。

 

あるいは、すでに二人が結びついているなら。

 

私のテレビ出演を止めるはずがない。

 

その程度の矛盾は、すぐに説明がついた。

 

そして数日後。

 

第二のキラから日記が送られてきた。

 

私はそれを机の上に広げた。

 

月君が言う。

 

「僕は分かりますよ。30日、東京ドームに巨人戦に行く――それしか書いてない。そこに第二のキラは来るんですよ」

 

私は静かにページを眺めた。

 

(青山……ノート……)

 

(こちらが本命でしょう)

 

しかし。

 

このノートが。

 

人を殺す道具であるなど。

 

私以外、誰も理解していない。

 

それが私の最大の優位だった。

 

(このアドバンテージは……使わせてもらいましょう)

 

だがその時。

 

月君がこちらを見ていることに気付いた。

 

妙な視線だった。

 

疑問を抱いた人間の目だ。

 

「Lも30日にキラが来ると思っているのか?」

 

私は黙って彼を見返した。

 

月君は続ける。

 

「もしこの日記を放映すれば、東京ドームの巨人戦は中止になります」

 

「報道しなければキラに伝わらない」

 

「第二のキラがそれすら分かっていない可能性もありますけど」

 

しかし彼は納得していない顔だった。

 

「それくらい分かるだろう」

 

月君は言う。

 

「僕にはLが、キラしか知らないワードを見つけて、それを隠すために余計な発言を避けているように見える」

 

私は少しだけ目を細めた。

 

「30日はブラフ。本命は22日、青山、ノート」

 

「あるいは24日、渋谷、洋品店」

 

「ノートか洋品店が、キラ同士にしか分からないワードじゃないか?」

 

(するどい)

 

私は内心でそう思った。

 

だが。

 

そこまで辿り着いたとしても。

 

ノートに名前を書けば殺せる。

 

そんな結論に至るはずがない。

 

そしてデスノートを見分ける能力も、彼にはない。

 

(ならば否定する必要もない)

 

「そうですね」

 

私は淡々と言った。

 

「その二つにも注目していきましょう」

 

しかしその瞬間。

 

私は次の行動をすでに決めていた。

 

(当日……)

 

偽キラが現れる。

 

もし私がその場にいれば。

 

ノートだけは確保できる。

 

最悪。

 

その場にいる人間を殺す必要が出るかもしれない。

 

だがデスノートの識別は。

 

私が最も速い。

 

(22日、青山)

 

捜査という名目で行く。

 

そして偽キラを捕まえる。

 

そう考えた瞬間だった。

 

背後から、月君の声がした。

 

「まさか、その二つの町にLが行くなんてことはないよな?」

 

私は一瞬だけ心臓が跳ねた。

 

まさに今。

 

その計画を立てていたからだ。

 

(……読まれている?)

 

いや。

 

違う。

 

これは偶然だ。

 

冷静に考えれば。

 

ここで否定するのが自然だ。

 

「いいえ、行きます」

 

そう言い、理由を後付けすればいい。

 

これまでもそうやって、この捜査本部を動かしてきた。

 

だが。

 

月君の頭は、その一歩先を行っていた。

 

「僕は……Lが渋谷や青山に似合うとは思えない」

 

捜査本部の空気が少し緩んだ。

 

「入試の時も一人だけ注意を受けていた」

 

「そんな人物が渋谷や青山に行けば目立つ」

 

そして彼は続けた。

 

「それに僕はLをキラと疑っている」

 

「だから行かせるわけにはいかない」

 

(なるほど)

 

私は内心で感心した。

 

これは巧妙だ。

 

客観的理由。

 

そして個人的理由。

 

二つを同時に提示することで。

 

場の空気を自分に引き寄せている。

 

さらに。

 

「松井さんと僕の方が青山と渋谷に似合う」

 

「キラが興味あるのはキラだけなんだし、Lが動く理由がどこにある?」

 

松田さんが即座に反応した。

 

「そうっすね!」

 

「いやー月君と僕の名コンビで第二のキラを捕まえましょう!」

 

総一郎さんは少し複雑な顔をしていた。

 

しかし。

 

他の刑事たちは、どこか納得している様子だった。

 

結局。

 

その案は採用された。

 

私は黙って砂糖を口に放り込んだ。

 

(夜神月君)

 

あなたは。

 

やはり面白い。

 

そして。

 

――危険ですね。

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