Lがデスノートを拾った世界   作:梅酒24

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47冊目ということで47に纏わる話……

47と言えば日本人は都道府県を思い浮かべる。

そして都道府県の中に「名古屋」があると勘違いする人も一定数はいる。

実は東京都には「青山」という公称地名は存在しない。

あるときからある一帯を青山と呼ばれるようになったので青山市とか青山区というのはないのである。ちなみに青山は港区に位置する特別区の一つ。


47冊:探偵ごっこ

青山の午後は、どこか物語の舞台みたいだった。

 

ガラス張りの店。

整った街路樹。

おしゃれな人たちが、まるで雑誌の中から歩いて出てきたみたいに行き交っている。

 

ミサはその景色を、スターバックスの窓際の席から眺めていた。

 

手にはストロベリーフラペチーノ。

 

赤くて甘い香りがふわっと鼻に抜ける。

 

だけどミサの胸の中には、それよりもずっと甘くて、ずっと刺激的な感情が渦巻いていた。

 

(なんだか……)

 

(探偵ごっこみたい)

 

胸がどきどきする。

 

自分は今、ただのモデルの女の子じゃない。

 

キラ様を探すために動いている――

 

第二のキラ。

 

それだけで、なんだか世界の裏側に入ってしまったような気がした。

 

今日は変装している。

 

黒いおかっぱのウィッグ。

地味な服。

大きめの眼鏡。

 

モデルの仕事柄、コスプレは慣れているし、むしろ好きだった。

 

(これなら絶対ばれないよね)

 

それに、もしキラ事件のことで警察が動いているなら。

 

きっとこの街にもカメラが増える。

 

だからこそ、今のミサは“普通の女の子”でなければならなかった。

 

ミサは窓の外を眺めながら、人の流れを観察する。

 

ブルーノート。

 

今日のイベント。

 

青。

 

ノート。

 

(きっとここにくるよね)

 

私のメッセージ。

 

それを解読した先のゴール。

 

まるで宝探しみたいだった。

 

その時。

 

大学生のサークルらしい集団が、店の前を通った。

 

その中に。

 

一人。

 

目立つ男の子がいた。

 

背が高い。

 

すらっとした体。

 

整った顔。

 

まるでドラマの主人公みたいな雰囲気。

 

ミサは思わずつぶやいた。

 

「やがみ……つきくんかな?」

 

テレビで見たことがある。

 

確か警察関係者の息子。

 

(すごいかっこいい……)

 

胸が少しだけときめく。

 

でも次の瞬間、ミサはくすっと笑った。

 

死神の目で見える。

 

その男の頭の上に浮かぶ――

 

寿命。

 

(あっ)

 

(寿命あるし、キラじゃないね)

 

少し残念だった。

 

ミサはキラ様に会うためにここに来ている。

 

イケメンを見るためじゃない。

 

(まぁいいや)

 

(とりあえずブルーノート)

 

ある程度お客が入ったころを見計らって、ミサは店に入った。

 

入口を入ると、すぐカウンターがある。

 

お酒や軽食を売っている。

 

奥にはイベントスペース。

 

人が少しずつ増えていく。

 

音楽。

 

笑い声。

 

人の熱気。

 

その中で。

 

ミサはまた彼を見つけた。

 

さっきの男の子。

 

(あれ……)

 

(またいる)

 

(すごい……偶然……)

 

胸が少しわくわくした。

 

まるで物語みたい。

 

人混みの中で、ミサは少し頭を押さえた。

 

ウィッグがずれそうだった。

 

暑い。

 

人も多い。

 

ウィッグは地味に蒸れる。

 

(あーやばい……)

 

その時だった。

 

「大丈夫ですか?」

 

低くて落ち着いた声。

 

ミサが顔を上げると。

 

目の前に。

 

さっきのイケメンが立っていた。

 

夜神月。

 

「もしかして具合悪いんですか?」

 

優しい声だった。

 

「ここ、空気悪いですし。一度外に出た方がいいかもしれません」

 

そう言うと。

 

月は自然にミサの手を引いた。

 

人混みを抜けて。

 

ブルーノートの外へ。

 

外の空気は少しひんやりしていた。

 

月は自動販売機で水を買う。

 

それをミサに差し出した。

 

「ナンパとかじゃないですよ」

 

少し笑う。

 

「具合悪そうだったから気になって」

 

「名前聞くとか、連絡先聞くとか、そういうことはしません」

 

「落ち着くまで、ここにいます」

 

ミサは水を受け取りながら、少し驚いていた。

 

(なんだろうこの人)

 

優しい。

 

だけど。

 

ただ優しいだけじゃない。

 

目が。

 

すごく観察している目。

 

まるで。

 

――探偵。

 

ミサはブルーノートの入口をさりげなく見ていた。

 

もしキラ様が来たら。

 

すぐに分かる。

 

死神の目があるから。

 

月はその視線に気付いた。

 

「あれ?」

 

「誰か探してる?」

 

ミサの心臓が一瞬止まりそうになる。

 

「なんか……」

 

「近づいてくる人を見てる感じだったから」

 

ミサは答えなかった。

 

その沈黙を見て。

 

月は少しだけ考える。

 

(ああ……図星かな)

 

(でも)

 

(この子……)

 

見た目は地味。

 

でも。

 

妙なオーラがある。

 

(男の直感ってやつかな)

 

(気になる)

 

(月は少し考えた)

 

(初対面だ)

 

(警戒させる質問はよくない)

 

(まずは打ち解ける必要がある)

 

(なら……)

 

(自分から話す方が自然だ)

 

「あ、ごめん」

 

月は軽く笑った。

 

「野暮なこと聞いたね」

 

「実は僕も人を探してるんだ」

 

ミサは少し驚いた。

 

二人はしゃがみながら話している。

 

その時。

 

ミサの横を見ると。

 

月が膝を抱えるように丸く座っていた。

 

「えっ」

 

ミサは思わず言った。

 

「つき君も人を探してるの?」

 

月が少しだけ固まる。

 

「えっ……?」

 

 

(ツキクンモ?)

 

 

 

ミサは慌てた。

 

「あっ、ごめんなさい!」

 

「お兄さんも人を探してるの?」

 

(しまった……)

 

(心の中でつき君って呼んでたから口に出ちゃった)

 

月は軽く笑った。

 

「そうなんですよ」

 

「ここで待ち合わせなんですけど」

 

「なかなか来なくて」

 

(不思議だ)

 

月は思う。

 

 

(この子……)

 

(何かを持っている)

 

(大事な何か)

 

(これが嗅覚ってやつなのかな)

 

ミサは言った。

 

「私も……」

 

少しだけ言葉を選ぶ。

 

「一応、ここで待ち合わせなんです」

 

月の目が少し細くなる。

 

(一応……)

 

(ひっかかる言い方だ)

 

(何かを隠している)

 

青山の夜は。

 

まだ始まったばかりだった。

 

そして二人はまだ知らない。

 

この偶然の出会いが。

 

キラ事件の運命を、ほんの少しだけ動かし始めていることを。

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