Lがデスノートを拾った世界   作:梅酒24

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53冊:ナオミの策略②

死の時間になっても、彼女は行動を起こさない。

(そういえば、美空ナオミが来た時も、リュークは笑っていた。レイ=ペンバーは顔と名前を知られたために殺された。にもかかわらず、この女性は殺しの方法を知りつつ、ここにのこのこ現れる――名前を変えている。なるほど、アイバーに念のため情報収集を依頼して正解だったようだ。……となれば、彼女が何をするか、この目で確かめる時間を持たねばならぬ)

 

私は椅子に深く腰掛け、静かに思考を巡らせる。月君との知恵比べの予行練習として、あまねみさではなく、美空ナオミと戦うのも一興だ。名前が分かっている以上、キラであることを公言されても、こちらの盤面は揺らがない。

 

「L……今書いた紙を見せていただくわ」

 

黒い瞳が勢いよく私のメモを掴もうと伸びる。私が紙を差し出すと、彼女はそれを掴む。そこには、慎重に記された美空ナオミの名前と、自殺方法が記されていた。

 

視線の隅に、全身真っ黒の大きな羽を持つ死神――リュークが静かに宙に浮かぶ。羽ばたき一つせず、しかし存在感は絶大だ。

 

「はい。おめでとうございます。私がキラです」

チョコケーキを口に丸呑みし、首を傾げるその姿は、常に予測の一歩先を行くような不遜さを感じさせる。

 

「死神が見える……そして今の発言……あなたが……」

 

美空ナオミの声には怒りが混じる。しかしそれ以上に、知りたいという衝動が勝っている。彼女の瞳には、失われた愛と復讐心が渦巻く。婚約者を奪われた怒り、そしてこの男(私)に問うべき疑念。

 

「まさか月君と美空さんが繋がっているとは思いませんでした。ちなみに、第二のキラはあまねみさで確定しており、もうすぐ逮捕されるでしょう。逮捕の際、重要参考人として月君が呼ばれることになるでしょう」

 

彼女の視線は鋭い。少しも揺らがぬ覚悟がそこにある。

 

「キラだとカミングアウトしているのに、随分余裕そうね」

 

「それはお互い様です。……ただ、美空ナオミでもデスノートが効かないということは、何かしらのトリックがあるのでしょうね」

 

彼女は一瞬、俯いた。微細な動きでさえ、私には見逃せない。死の可能性を前にしながらも、冷静に戦況を読み、覚悟を固めるその姿。

 

「残念ながら、美空さんにはこの世から消えていただくしかありません。ただし、死の前に行動は許されます。だから少しの間、お話をしましょうか」

 

「なんでレイを殺したの?」

 

最も知りたかった理由を問いただす。

 

「気まぐれでしょうか。FBIは私にとって脅威ではありません。放置しても構わなかった。しかし、時間が経つと捜査が進み、意味がなくなる。私は平和を作るために悪人を殺しているのではありません」

 

「では、殺す理由は?」

 

「デスノートは人を殺すノート。行えることは限られます。世界中の人間が対象の中で、誰が私を見つけ、私を論破するか。それを観察するのが楽しみでした。そこに現れたのが月君です。彼のおかげで追い詰められ、命がけで戦う経験を重ねました。私にとっての知恵比べは、月君をキラとして逮捕させること。どちらが上かを確かめる戦いです」

 

「その知恵比べ、どちらが勝ったの?」

 

「まだわかりません。ただ、近日決着はつくでしょう。私を逮捕するには、自白させ、デスノートを押さえるしかありません。ここには他の盗聴器や監視カメラはないことを確認済み。つまり、この会話が外に漏れることもない」

 

(勝った……小型の盗聴器はすでに忍ばせてある……これが自白の決定的証拠になる)

 

美空ナオミは微笑む。口元が緩むその瞬間、私は彼女が自分の立ち位置を完全に理解していることを読み取った。

 

「もちろん、小型盗聴器やカメラがあっても、処理された後で自殺してもらいます。死の前の行動範囲は制限内です。どこに隠そうと無駄です。すべての芽は摘んであります」

 

「気付いてないなら安心だわ。L、あなたの負けね……」

 

(おそらくブラフだろう……名前変更済み、そして自分の名前が変わったことに私が気付いたことには気づいていない)

 

私のスマートフォンに新たなメールが届く。美空ナオミの顔写真と名前が記されていた。名前が変わっている――「ナオミ・ペンバー」。なるほど、旧姓で書いても効かないわけだ。優秀な交渉人が入手してくれたから、ここで処理が可能だ。

 

「さよなら、ナオミ・ペンバー」

 

ナオミは喋らない……

 

「何かほかに言いたいことはないんですか?」

 

そしてそのまま部屋から消えた。後日美空家から捜索願いが出されたとのことだった。

 

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