Lがデスノートを拾った世界   作:梅酒24

54 / 59
55冊:牢獄

縛られた弥 海砂の姿を前に、私は問いを繰り返していた。なぜそこにいるのか、なぜ抵抗しないのか、悪あがきか――問いを発するたびに、彼女の返答は微かに歪んだ子供の戯言のようでありながら、生々しい現実の温度を帯びていた。

(……デスノートに関する記憶だけが消えている……いや、完全ではない。だが月君に移った可能性も……このまま放置するのは危険だ……)

 

親指を口元に無意識に触れながら、思考は迷路の奥へ沈む。弥 海砂の拘束と監視、そして月君の存在。すべてが逃れられぬ時間の中で絡み合い、微かな振動を伴いながら緊張を増幅させていた。

 

やがて、静かに、しかし確実に月君が本部に現れる。足取りは緩やかで、だがその存在感は周囲の空気を押し広げるようであった。

「L……電話で言ったが……僕がキラかもしれない……」

その声は穏やかで、しかし底知れぬ決意を帯びていた。地面を見つめ、視線を合わせないその態度が、逆に彼の意思の揺るぎなさを告げている。

 

(……弥 海砂は無言。だが月君は……一体何を企てている……?)

 

「父さん、Lは世界一の探偵だ。そのLが僕をキラと疑い、ミサを口説いた男も僕だ……」

月君の言葉は自覚のない真実を告げるかのようで、冷静さと自己犠牲の論理が奇妙に交錯していた。自らを拘束し、自由を封じ、本物のキラを炙り出す。計算された自己制約――その構図は、薄氷の上に張られた罠のようだった。

 

私は息を詰める。追跡者であるはずの自分が、月君の掌中で翻弄される可能性が、胸の奥で確かに芽生えていた。手錠をはめられるその冷ややかで静かな決意の重みに、私自身も牢獄に入る感覚を覚えた。

 

相沢に連れられる月君の背中を見つめながら、私は弥 海砂の瞳に視線を戻す。そこには焦燥、恐怖、そして微かな信頼が漂っていた。記憶の消失は完全ではなく、しかし彼女の魂は少しずつ己を託しているように見える。

 

(……私は追い詰められている……いや、追い詰められているのは私自身かもしれない……)

 

不思議な胸騒ぎが、静かに、しかし確実に心の奥で育っていた。追い詰める側であるはずの私が、気づけば、追い詰められるのではないかという感覚。月君の手のひらの上で、理性の隙間が淡く侵食されていくのを、私は無力にも感じていた。

 

 

 

 

 

 

文字数調整

 

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。