Lがデスノートを拾った世界   作:梅酒24

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7冊目:影者

■月の家■

 

夜神月は机に向かっていた。

 

部屋は整然としている。

本棚は寸分の狂いもなく並び、教科書や参考書は几帳面に整列していた。

その中央に、まるで儀式の道具のように置かれている一冊の黒いノート。

 

デスノート。

 

月はペンを指の間で静かに回しながら、

ここ一週間の出来事を頭の中で整理していた。

 

世界中の犯罪者が、次々と心臓麻痺で死ぬ。

新聞もテレビも、その話題で持ちきりだった。

 

人々は恐怖し、

同時にどこかで喝采を送っている。

 

犯罪者だけが死ぬ。

 

それはまるで、

神の裁きのようだった。

 

――だが。

 

月は目を細める。

 

神などという曖昧な存在ではない。

そこには必ず法則がある。

 

顔。

名前。

条件。

 

すべては論理で説明できるはずだった。

 

その時だった。

 

ガーッ……

 

突然、テレビの画面が切り替わった。

 

月は顔を上げる。

 

「ん?」

 

画面にはニュースキャスターが映っていた。

 

「番組の途中ですが、ICPOからの全世界同時特別生中継を行います」

 

「日本語同時通訳はヨシオ・アンダーソン」

 

その声には、

普段のニュースにはない緊張が含まれていた。

 

画面が切り替わる。

 

そこには一人の男が座っていた。

 

ミディアムの髪型。

整ったスーツ姿。

 

どこにでもいそうな男。

 

しかしその男は、

とんでもないことを口にした。

 

「私は全世界の警察を動かせる唯一の人間」

 

少し間を置く。

 

「リンド・L・テイラー」

 

「通称――Lです」

 

その瞬間。

 

月の背筋に冷たいものが走った。

 

「な……」

 

月は思わず立ち上がる。

 

「なんだこいつ!?」

 

そしてすぐに理解する。

 

「これはまずいぞ……」

 

この男は。

 

 

 

■凶悪犯連続殺人特別捜査部■

 

日本の警察庁でも、

同じ放送が流れていた。

 

捜査員たちは全員テレビに釘付けになっている。

 

「ついに始まったな」

 

「ほう……これがLか」

 

誰かが言った。

 

「しかし今まで顔出しなんてしなかったんだろ?」

 

「なぜ今になって……」

 

別の男が低く呟いた。

 

「これはLも本気ということか」

 

部屋の奥で。

 

夜神総一郎は腕を組んでいた。

 

部下たちの雑談は耳に入っている。

 

だが総一郎の意識は、

別のところにあった。

 

――さあL。

 

総一郎は心の中で言う。

 

――こちらは言われた通りにした。

 

――ICPO会議で言ったことを証明してもらおう。

 

総一郎の脳裏に、

数日前の光景が蘇る。

 

●総一郎の回想●

 

巨大な会議室。

 

世界各国の警察幹部が集まっている。

 

その壇上に、

黒い服の老人が立っていた。

 

ワタリ。

 

彼は静かに言った。

 

「L……」

 

「ICPOの皆さんが全面協力することを可決しました」

 

スクリーンから機械音が流れる。

 

『わかりました』

 

『特に日本の警察の協力を強く要請します』

 

会議室がざわめいた。

 

「えっ」

 

「なぜ日本だ!?」

 

総一郎も思わず声を上げた。

 

「なぜ日本なんだ!?」

 

スクリーンの向こうの声が答える。

 

『犯人は単独か複数かは分かりません』

 

『しかし』

 

『日本人である可能性が極めて高い』

 

会議室の空気が凍る。

 

『仮に日本人でなくても』

 

『日本に潜伏している』

 

総一郎の額に汗がにじむ。

 

「そ……そんな」

 

「何を根拠に?」

 

スクリーンの声が言う。

 

『なぜ日本なのか……』

 

その瞬間。

 

Lの部屋で、

リュークが呟いた。

 

「あ、分かった」

 

「最初の実験、日本人だったな」

 

Lは黙って親指を立てた。

 

グッド、という意味らしい。

 

スクリーンの声は続く。

 

『近いうちに犯人との直接対決で証明します』

 

『とにかく捜査本部は日本に置いてください』

 

回想は終わる。

 

総一郎が現実に戻ると、

捜査室ではざわめきが広がっていた。

 

「つまり……」

 

「今言ってた直接対決ってやつか」

 

捜査員たちはテレビを凝視している。

 

だが。

 

テレビを凝視しているのは、

Lも同じだった。

 

スクリーンの男が言う。

 

『私はこの犯罪の首謀者』

 

『俗に言うキラを必ず捕まえます』

 

リュークが笑う。

 

「おい」

 

「こいつもLなのか?」

 

「お前を捕まえるってよ」

 

Lは平然としていた。

 

「まあ」

 

「見ていてください」

 

テレビの男が言う。

 

『キラ』

 

『お前の考えはだいたい想像がつく』

 

そして。

 

声を強めた。

 

『だがお前のしていることは――』

 

一拍。

 

『悪だ!!』

 

■その頃 夜神家では■

 

月は歯を食いしばっていた。

 

「まずい……」

 

彼の頭は猛烈な速さで回転している。

 

「こんな挑発をしたら」

 

「キラに殺される……」

 

 

 

月はテレビを見つめた。

 

そして思う。

 

――もしキラがこの番組を見ていたら。

 

――この男は死ぬ。

 

その瞬間だった。

 

リンドLテイラーが突然胸を押さえた。

 

「ぐっ……」

 

男の顔が歪む。

 

手が震える。

 

そして――

 

ドサッ。

 

机に倒れた。

 

動かない。

 

月は息を呑んだ。

 

――やはり。

 

二人のSPが男を運び出す。

 

黒いスーツ。

サングラス。

 

顔を隠している。

 

月の頭がさらに回転する。

 

――顔を隠している……

 

――向こうも条件に気づいていた?

 

だが。

 

すぐに別の疑問が浮かぶ。

 

――いや……

 

――ならなぜ、あの男は顔を出した?

 

その時だった。

 

ガガガ……

 

テレビからノイズが流れる。

 

そして。

 

別の声が響いた。

 

機械音。

 

「もしやと思って試してみたが……」

 

「まさか本当に……」

 

月の瞳が見開かれる。

 

「キラ……」

 

「お前は直接手を下さず人を殺せるのか」

 

「何っ」

 

月は立ち上がった。

 

声が続く。

 

「よく聞け」

 

「キラ」

 

「もし今お前がテレビに映っていた男を殺したのなら」

 

「それは今日処刑予定だった死刑囚だ」

 

「私ではない」

 

月の脳が一瞬止まる。

 

声が続く。

 

「テレビにもネットにも出ていない」

 

「極秘の犯罪者だ」

 

「さすがのお前でも知らなかっただろう」

 

そして。

 

「だが」

 

「Lという私は実在する」

 

「さあ」

 

「私を殺してみろ」

 

■警察庁■

 

捜査員たちが騒然となる。

 

「なんだ……」

 

「すごいことになってるぞ」

 

「死ぬ気か……L」

 

■新宿アルタ前■

 

巨大スクリーンの前に

人々が集まっていた。

 

若者。

 

サラリーマン。

 

観光客。

 

皆、上を見ている。

 

「なにこれ?」

 

「キラ対Lだよ」

 

「キラって本当にいたの?」

 

「えっ、Lって誰?」

 

「こわ〜い」

 

人々は、

まだ気づいていなかった。

 

これは単なるテレビ番組ではない。

 

世界のどこかで。

 

史上最大の頭脳戦が、今始まったばかりだということに。




えっと、この後の展開を考えると

私も「こわ~い」
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