照明が最低限まで落とされた応接間。
しかしそこはスチールラックが乱立し、其処彼処にある機器が冷却ファンの音を立てている空間だった。
年季の入ったソファーに座るのはセンスの良い如何にも高価そうなスーツを着た金髪の男、フランシス・フィッツジェラルド。腹に一物ある野心的な表情を対面する人物に向けていた。後ろには牧師服の男性と恰幅の良い壮年の男を携えていた。
「却説、答えを聞こうか」
フィッツジェラルドがそう言えば、対面するまるで病院から抜け出したような服装の短髪の女性は咥えた煙草を歯で弄りながら言った。ソファーに全体重を預け、足を組んでいた。
「用件はよォくわかッた」
煙を吐き出しながら彼女は言い聞かすように言うとフィッツジェラルドを射抜くような目線に晒し、言った。
「断る」
煙草を掌で握りつぶし火を消しながら睨みつけて続けた。
「横浜でドンパチするかラ情報寄越せ?どうシた性根だけじャなく脳まで腐ったかァ?なァお前死ぬ予定ない?無かったら作る?作ったろカ?本音は制裁と称しテ明日の生ゴミに混ぜて捨てたイんだけどお前如きに制裁執行すンのもダルいから勝手に青酸カリ飲んで頭潰してゴミ収集車に巻き込まれてシネよフィッツ野郎。なんでパパの最速の精子からお前みてーな人類の大愚が生まれんダよ生命って不思議に満ち溢れてンなァ?」
息継ぎ無しで言い切った罵倒。フィッツジェラルドは困ったような笑みを浮かべながら肩を竦めた。
「ロレックスの新作は?」
「いらねェ」
「レクサスは?」
「愛車だ」
「ロマネの六十年ものなんてどうだ?」
「ワインは好きじゃねェ」
「組合の今後の情報を渡したとしても?」
「お前らの行動なンざ興味ねぇよ」
彼女は吸い殻を後ろに投げ捨てながら不敵に笑う。目は好物の獲物を見つけた肉食獣の様に爛々と輝く。彼女の脳内では下らぬ話題で時間を潰されたお返しに何をしてやろうか数十通りの案が出されているのさ、口元は少し歪んでいた。
「欲しいなら奪い取ってみな、そういうモンだろ?」
衝動を堪えられないのか舌舐めずりを二回程繰り返す。フィッツジェラルドは顎に手を当て、考える仕草をした。
「ふむ、なら……こうかな?」
彼の瞳が怪しく輝いたかと思えば目にも留まらぬ速さで繰り出される拳。もはや人では出せぬその破壊力。しかし、彼女の目の前に現れた水壁で難なく塞がれた。水と人体がぶつかり合う破裂したような音が響き渡り、そして消えた。
「緩イぞフィッツ野郎。私を倒したかッたらイージス艦か核兵器持っテきな」
この場で行われた取引の結果に名をつけるなら、交渉決裂。この場で一番損するであろう彼女は、しかし笑みを湛えたまま三日月のように口を歪めた
開始早々罵詈雑言。もっとセンスのある罵倒が書きたいです。