一回目 さがしもの、かくしごと。
深夜、ざざ振りの雨の中、レインコートを着込んだ結風は激流となった川を懐中電灯で照らしながら走っていた。汚濁し木片木屑を孕んで流れる川は碌な物は見えない、河原の特性上何度も足を取られ転びそうになる。耳元を穿つ雨音が非常に煩く目障りでフードでは防ぎきれなかった雨水が頬を伝うのを何度も拭った。
視界の端に何かがチラついた。無骨で人の背丈の倍はある岩かげの方向に形容し難い何かを感じたのだ。足を止め、そちらの方向へ懐中電灯を向ける。
それほど光は届かず、あまり良く見えない。一歩、また一歩と踏み出して岩の反対側へ。
足元を照らし、見やれば喉の奥からヒッと情けない声が出た。
白髪の老年男が血塗れの水浸しでうつ伏せに倒れている。
否、これはもう生きてなく、結風達死体回収業者が数時間以上探していた念願の相手でもある。防水加工が施された通信機を取り出すとスイッチを入れ、ノイズの向こうに語りかけた。
「こちら結風、下流にて、京極夏彦の遺体を発見。人員をこちらに回せ」
***
雨が降っているのに気付いたのは風呂上がりだった。間接照明のみのリビングに響く雨音。リモコンを操作しはめ込み式の窓の上にある天窓が閉まり雨音は途絶え、追加操作でウッドブラインドが下がっていく。
私は髪を拭きながらローテーブルの上に放置してある資料を手に取ってソファーに身を沈めた。閲覧者の記名が義務付けられた最重要案件の最新の名簿には「芥川 結風」と書く。そして読み始める。
史上最悪の異能者・京極夏彦の記録を。
政府のデータベースを洗いざらい調べた所、それなりの数の件数がヒットした。スキールニルにも関わっていた様でリーダー以外立ち入り禁止の『空白区』にも記録があった。ここの記録を読むにはとんでも無く長く煩雑な手続きが必要なのだ。
随ってこの記録は過去たった四人にしか読まれていない。一番最初はリーダー、二番目は元チーフであり現・管理班班長のRという謎多き幽霊構成員。三番目は現在のチーフ、四人目は私立探偵の綾辻行人だ。
この記録によれば、京極夏彦に関する情報の殆どは偽物らしい。
確定している事はほぼ無いと同じ。数少ない確定事項は滝の上で綾辻行人の異能に囚われ、死亡した事。今はその残滓が綾辻に取り憑いている。
そこまで読んで気を抜いたら間抜けな欠伸が出た。
「疲れてんのかな……」
組合との一戦の後、どの構成員も燃え尽き症候群状態だが異能特務課、探偵社と連携してあらゆる場所への「火消し」を休まず行っている為、上級地位にある班長などは殆ど睡眠を取っていない。非常に荒んだ職場になっている。腹が減ったらブロックタイプの栄養補給食品で満たす不健康極まりない生活を送ってるし実際に体重が落ちた。なんだここは戦場か。最後に真面な食事をしたのは何時だか曖昧。兄より不健康にはなりたくない。
適度に睡眠でも取るかと重くなった体を引きずって寝室に向かう。
取り敢えず休まねば。明日から世にも忌々しい死体探しが始まるのだ。
スキールニル構成員の大半は副業をしている。特に規定はない為その職種は多岐に渡り、雪島はパチンコ屋の従業員、モンゴメリさんは喫茶「うずまき」のバイト。警備班班長は情報屋。そして私は死体回収業者だ。スキールニルに副業はあまり持ち込みたくないのだが、今回は緊急の案件なのでその伝を利用して探しまくる。
セーラーブレザーのボタンをしっかり止め、背中に拳銃を装着して裾で隠し、蹴り一発で致命傷を負わせられるくらい頑丈なロングブーツを履く。玄関のコルクボードに数日不在と記したメモを貼り付け、施錠してマンションを後にした。
何を隠そう奴の死体の第一発見者が私だ。「回収と処分」という仕事を果たせてない今回の件は回収業者の信頼を落とした。その落とし前は奴の死体の一部でも見つけて返上してやろう。
先ずは郊外にある口外出来ない様な役職にあった者達の墓場にやって来た。墓場と言っても丘を無理やり切り開いたような場所に管理施設が一つポツンとあるだけだが。毎月決まった日に太宰治が目撃されている。旧友か親友か。知る由も無いし知る気も無い。
「白髪の老人の死体かぁ……来ないね。ああ、そうだ。お嬢ちゃんの他にも若い人が同じこと聞きに来たよ」
管理人の老人は白髪混じりの髪をかきあげながらそう言った。
「若い人?鳥打帽被って遮光眼鏡かけてませんでした?」
「いんや、浅葱色の長い髪をした若い女の人」
浅葱色の髪、と聞いて脳内に閃いたのは異能特務課のエージェント、辻村深月。綾辻行人の代わりに此処に来たのか。
現在、横浜では組合騒動後の裏社会の治安の悪化を受けて危険異能者以上の者達の監視を最上級クラスまで引き上げている。それにスキールニル遊撃班も協力しており、特一級危険異能となると武装した構成員が十人ほど付いているはずだ。
まさかその中に丸腰で飛び込むとは思えない。熱源探知機まで使って監視している為、いくら脱獄王と言えどどうしようも無いのだろう。
白羽の矢が立ったのが辻村さんか。
管理人に礼を言い、その場を後にした。
山道と獣道の中間のようなその道を歩きながら次に行く場所の検討をつけ始める。その時、気配というより視線を感じて来た道を振り返った。木陰により暗く、木立により遠くは見渡せない。
それと同時に視線は途絶えた。
「またかぁ……」
呟きが忌々しげに口から這い出る。慣れたが嫌な物は嫌なのだ。
物心ついた時から「そういうもの」が見える体質だった。聞いたり、見たり。それは兄も同じな様だが恐らく私の方が精度が上な気がする。数少ない兄に勝る点の一つだ。
しかしその癖、そういう事が絡む危険を察知する事は出来ない。
途轍もなく嫌なくじを引いたな、としか思えなく、視線を逸らしてそこから立ち去った。
手がかりが無い為、少し京極夏彦についておさらいでもしようと資料を開いた。
京極夏彦なる人物が初めに確認されたのは北海道の辺鄙な土地。とは言っても容姿が限りなく似ているというだけの判断材料の為、かなり怪しい。その土地に京極夏彦で登録されている戸籍は無いので偽名である可能性もある。
先の戦争終結後、混乱する横浜に出た彼は政府に仕えたり、民間の企業を行き来したり、民俗学の研究をしていたようだ。どの分野でもその驚異的な頭脳を活かし不思議と交友は広がった。まだこの頃は社会に打撃を与えるような事は仕出かしてなかった。
一部では「信者」と言っても過言でない者達も生まれ始めたようだが。
そして何時からか、裏世界でその名が囁かれ始めたとき彼は全く違う異名を背負っていた。
妖術師。
他者を唆し、人命を弄ぶ邪人。
カフェのテラス席の一角。まだ暖かいココアを啜った。苦くもないのに顔を顰めてしまうのは目の前の資料の所為だ。
どういう経緯でそうなってしまったのか。急に視点を変えたような人生だ。否、此方が本性だったのか。
この手の議題は何処まで突き詰めようとも答えが出ないのが特徴。ならば答えは一つ。
何も気にせず現状の更新をする。するべき事は山ほどあるのだ。ココアを飲み干し、席を立った。
モニター室。割り振られた机に伏して手負いの獣のような腹に響く呻き声を上げ寝ている英介。その横に、湯気の立つマグカップがコトリと置かれた。その音に目覚めたのか、首を持ち上げた。
「ホットミルクよ」
モンゴメリはそう素っ気なく言って、しかし相手の反応を見る為にチラ見して認識したのは滂沱して涙を流す成人男性だった。
「も、モンちゃん……!ありがとう!ありがとう!」
「な、何泣いてるの!?」
「やさしーよー俺めちゃくちゃ嬉しいよぉー」
此処数日の荒んだ神経が和らいでいくのを感じながら英介はモンゴメリにこれでもかと感謝した。涙を流しながらホットミルクを啜る英介を半ば無視してモニター室を見回し首を傾げる。
「ねぇ、リーダーと結風さんは?」
「久遠寺は火消しに、結風は死体探しに、その他は……知らね。雪島あたりはサーバー室で寝てると思うが」
「で、チーフは?」
「書類作成中に寝落ちしてたなこりゃ」
枕にされ皺が満遍なく入ったコピー用紙を摘んでシュレッダーに投げ込んだ。不要物を認識したそれは機械音を立てて用紙を細切りにしていった。
「死体探しって、キョウゴクっていう人の?」
キョウゴク、つまりは京極夏彦。来日して間も無いモンゴメリには不釣り合いな単語に聞こえた。
「大正解。誰に聞いた?」
「結風班長からよ。世にも忌々しい仕事だって愚痴を言っていたわ」
「なるほどねぇ……」
書類作成をする気にもなれず、寝直してしまおうかと考え出し実行に移そうとした瞬間。
言いようのない悪感が走った。
血管を蚤が走っていくような寒気。生々しい程の気配、産毛の一本一本が殺気立った猫の毛のように立つのがわかった。同時に言いようの無い不安感が襲う。
昔からだ。この現象は。
最初は小学生の頃、弟の安吾が事故に巻き込まれ怪我をする直前だった気がする。
根拠は無いが確かなる予兆の察知。
人間の原始的な危機察知能力。
異能の副作用かは分かり得ない。しかしこれが外れた事がない。
「モンゴメリ」
「……なんでしょう、チーフ」
スチールラックから拳銃を手繰り寄せ、装備しながら言った。
「ついて来い」
***
太陽が沈み月が制空権を確保し始めた頃、結風は郊外の地下鉄の廃駅を見上げてため息を吐いた。
人工林で隠されたそこは一斉開発の際、ここぞとばかりに廃線され以来放置されていると聞く。
近くに街灯はなく、不気味にそびえる駅舎は屏風絵の白象のようだ。
一時期、京極及びその信者達が根城にしていたと噂される建築物。藁にもすがる思いでここまで辿り着いた。
コードレスイヤホンを取り出しスイッチ入れ装着する。発信器の役目も果たす為、いざという時役に立つはずだ。
___ここで何もなかったら、もうどうしようも無い。
全ての運と願いを賭けて結風は駅舎の闇に消えた。
その背中を人ならざるものが見つめていた。
活気の消えた駅舎。足音のみが木霊し響く。あちこちから跳ね返ってくる音の中を歩く。強力な懐中電灯の前では闇は大した妨げにならなかった。
建物自体はさほど老朽化しておらず、人工林に囲まれているという立地上風雨の被害はあまり無いようだ。改札口は落ち葉の吹き溜まりとなっていたが剥落した壁の塗料が雨により流された形跡は少ない。嬉しいことに浮浪人が住処にしている形跡が無い。安全に行けそうだ。
何の機能も無くなった改札をくぐり抜けホームへの階段を降りる。いよいよ本格的に暗くなり空気は妙な威圧感を持っていた。
ただ単に空気が循環していない為、埃っぽくて黴臭い。暗闇に沈む線路はもう二度と使われなく、このホームにも人は戻らない。ただ暗く、墓所のような雰囲気を発していた。
一応、目指している場所がある。
ボイラー室だ。廃墟化するにあたって危険な物は片端から撤去され、広い空間になっているだろう。それこそ人が活動できるくらいの。軽快に歩みを進め、時折懐中電灯であたりを確認する。
不意に首筋に悪感が走る、
歩みを止め後ろを振り返った。
「……誰か、いる?」
呟きは反響しかなり広範囲に響いたが、誰も返事をしなかった。
気にせずホームの端までたどり着くと「staff only」と書かれた鉄の扉を押し開ける。埃っぽさは強いが危険そうな匂いはしない。気化した燃料が溜まっているという事は無さそうだ。
惜しげもなく進む。結風とて早くここから出たいのだ。そして通路の突き当たり、ボイラー室の観音開きのドアに手をかけ、思いっきり押した。
ふわっと、その場に不似合いな甘い匂いが漂った。
「あ、が、ぁ……!」
神経を直に触れられた様なおぞましい感覚。指に力が入らず懐中電灯を落とした。衝撃でスイッチが切れたのか暗闇に包まれる。見えない手で神経を指でなぞられている様な不快感。意識が歪んで立っていることもままならず、床に倒れた。しかし冷たい床の感触も遠くに感じて。
意識が暗転する直前、敵の異能に囚われているのに気づいた。
発信器の電波を追って郊外へ。横滑りして止まった黄色のフォルクスワーゲンから飛び降りた二人。モンゴメリが懐中電灯であたりをさっと照らすと木の陰に何かを見つけ走り寄って掲げた。
「チーフ!これ!」
結風が愛用する肩掛けカバン。それが此処に放置されているという事は答えはただ一つ。英介は頷き端末の懐中電灯アプリを起動して駅舎に先陣を切って走り出す。モンゴメリも負けじとついていく。
足跡を辿ってホームを走り抜け、「staff only」の扉を押しのけ、片側だけ開かれた観音開きの扉を押し開け、目に飛び込んで来たのは
主人を無くした懐中電灯とワイヤレスイヤホンだった。
***
一夜明け、スキールニル本部モニター室。
「申し訳ねぇ……もっと早く行ってれば!」
「頭上げな、英介。今回ばカりは相手が悪かッた」
悲痛な面持ちで土下座を決めた英介を宥める久遠寺。目を逸らして虚な表情を浮かべていた。 今回ばかりは誰も責められない。
夜通し捜したのだが姿どころか影さえ見つけられなかった。発信器の着脱履歴は最後に外されてから英介達が見つけた時点で数十分を超えていた。ここから郊外までどんなに急いでも一時間はかかる。どちらにせよ、間に合わなかった。
自ら消えるとは考えにくい。それ以外でこの町でスキールニルの情報網に引っかからずにいられるのは異能特務課かスキールニルの協力者達。しかしメリットなど無い。
前日までの結風の行動を考えるなら、京極の信者か式か。
「だけドな、可笑しいンだよ。京極の信奉者が攫ったとしテも何の為?」
「さぁ……?」
土下座から正座になり、そして胡座をかいて首を捻る英介。久遠寺は天井を仰いだ。二人とも、今回の事件の意図を掴みあぐねていた。何せ京極と結風の接点は無い。そして結風とあろう者が逃げられない訳がない。 丸十二時間経っている今、特に向こうからのコンタクトは無い。言うなれば、静かすぎる。
その時、モニター室に飛び込む青年。
「リーダー!」
「何だイ、モブ君」
青年はがっくりと項垂れ、ずれた遮光眼鏡を直した。
「雪島ッス」
「ゆきじー君、どうシた?」
「お客さんッス。特務課の若い女の人で、辻村っていう」
英介に目配せをし雪島を連れて応接室に向かった。階段を登り地上階に出て廊下を歩き突き当たりの扉を開く。
「久しぶリ、辻村ちゃん」
「お久しぶりです、前回の件ではお世話になりました」
微笑みかけられた彼女、辻村深月はソファーから立ち上がりお手本の様な一礼をした。
「まァ座って、今日はどうしたの?綾辻のパシリ?」
「その話なのですが……」
「ああ……成る程、ゆきじー」
その一言で全てを察した雪島は頷き二人に紅茶を出し終えると応接室を出た。足音が遠ざかるのを聞き届けてから、辻村に向き直った。
「で?話ッて?」
「御内密に頼みます。先日から綾辻先生の行方がわかりません」
お前もか、と口から出てきそうなのを光の速さで飲み込む。
「……で?」
「その事を、隠蔽してほしいんです」
意外な依頼に純粋に驚いた。
「隠蔽?捜索じャなくて?其処の所詳しく言わナきゃ承諾出来ないなァ~?」
意地悪い笑みを浮かべる。辻村は一瞬だけ迷ったような表情をしたが、すぐに切り替えた。
「……内密に、頼みます」
「わかッてル」
「現在、異能特務課がある人物を追っています。特務課の情報網を潜り抜けながら十数年、一向に捕まっていない異能者です」
異能者という単語に久遠寺は反応した。しかも全国ありとあらゆる警察機関、情報機関を動かせる異能特務課の網を十数年掻い潜って来た?スキールニルでもそんな奴は観測出来てない。
___面白いじゃないか
「此処最近になって横浜での目撃情報が相次ぎ、スキールニルと合同の監視体制に乗じて追っていた矢先、何処で情報を掴んだか解らない好奇心を掻き立てられたであろう綾辻先生が消えました。……異能特務課としては見逃せない自体ですが、もう一つの案として綾辻先生の失踪を黙認して事件を解決してもらおうという物が可決されました」
「へェ……その掴めない異能者は殺人犯?」
「はい」
「なんていう名前?」
「それは……言えません」
久遠寺は非難もせず何度も頷いた。無理に聞き出さずとも言い、調べれば良いのだから。
「君らノ要件を飲むよ、支払いは要ラない。組合の件で無理さセたからね」
「本当にありがとうございます……!」
辻村の心の底からの礼に笑みを浮かべた。直ぐにでも仕事に取り掛かると約束し、彼女を見送った。表通りの雑踏に消えるその背中を見届けた後、モニター室に戻ろうと一歩踏み出す。
端末に着信が来た。
結風からだった。
廊下を駆け抜けてもまだ足りない気がして階段の途中から身を乗り出し二階下へ落ちるというショートカットを行った。
モニター室に飛び込み叫ぶ。
「結風ちゃんからのメール!逆探知!」
「了解!」
投げられた端末を受け取った雪島は素早く繋いでモニターを操作。しかし。
「ダメッス……発信源がバグってて追えないッス。しかも、スキールニル特製コードでバグらせてるっぽくて」
「じャア、結風ちゃん自身がどうにカしてるのか……?」
端末を取ってメールフォームを開く。
『全てを了承した上で京極に利用されます。恐らく死ぬ事は無いので安心してください。
かまくら ろくにん ろくがつにじゅうご』
当てもなく歩くのが趣味な英介は今日も今日とて必要書類を黙殺して街を歩いていた。ラムネ瓶のように青い空の下、梅雨時の気怠い晴れの陽気の中人々はハキハキと歩いていく。
澄ました顔のあの女性にも、草臥れたあの男性にも大切な人がいる。
一体、この中で何人が自分が如何に恵まれた人生を歩んでいる事に気づけるのだろうか? 大切な人と共に居れる喜びに気づけるのは一体どれほどの確率なのだろうか。
それよりも結風から送られてきた怪文書とも呼べるメールのことだ。
かまくら ろくにん ろくがつにじゅうご。つまり鎌倉、六人、六月二十五? 何かの暗号か、事件の日付か?
足を止める。ここから先は対して面白くない店が並ぶ寂れた通りだ。らしくも無く長考しているうちに辿り着いてしまったらしい。
己の注意力の無さにため息を吐きながら踵を返して歩き出そうとした時、後ろに気配が。
「おい」
振り向いたそこに居たのはレトロな色合いの服に身を包んだ鳥打帽の青年。寂れた色の暗い通りにポツンとやけに馴染んで見えた。
「スキールニルは時として用心棒をしていると聞いたが、依頼は可能か」
特一級危険異能者。
綾辻行人。
オリジナル中編開幕です。現在別ジャンルに浮気しているので更新頻度が大変な事になりそうです。ゴールは決めてますが、目指せ完結。
しばしお付き合いください。