荒廃した世界を旅するエリスノミアの物語。その一片。
※この物語にはMUGENに存在する、東方projectのレミリア・スカーレットの改変キャラクター・エリスノミア(プレート氏製作)が登場します。もし受け入れられない要素があればプラウザバックを推奨します。

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真理の親子・ある宿にて

 紫色の迫り来る鋼線を、生み出した漆黒の泥の壁で遮る。もう一回でも当たればわたしの弱い体では耐えられないだろう。なので次の攻撃が飛んで来ようとする間、その一瞬を突き身体の周囲に球形の泥を纏う。

 そして突撃。相手は慌てて迎え撃とうとするが、残念ながらこの泥はただの泥ではない。《わたしたち》の泥だ。相手の武器たる鋼線はわたしの纏うものに傷をつけることが出来なかった。妨害をものともせずわたしは猛烈な速度で転がりゆき、そしてその勢いのまま相手を弾き飛ばす。瞬間、試合終了の鐘の音が鳴った。

「勝者、エリスノミアッ!」

 高らかに響いた審判の声は会場を多いに沸かした。

 

「ふう、頑張ったねわたしたち。今日の大会で結構稼げた。いよいよこの街ともお別れね」

 世界各地で行われ、ありとあらゆる者達が集う混沌とした格闘大会、その名も夢現闘武大会。今いる小都市で開催されたその大会の一つで《わたしたち》は見事優勝を果たし、良い額の賞金を手に入れることが出来た。

 帰り道に露店で購入したものを宿の部屋の適当な所に置き、どさりという音がたつ。鍵を外し、開いた窓から顔を覗かせると冷たい風がわたしを包んだ。街のどこからか風に乗って来たのだろうか弦楽器の音色が聞こえる。その音は粗く、力強く、しかし儚さもこめて。わたしはその音に世界の現状を感じとり少しだけ憂鬱になったが、それは仕方ない事だろう。 

 時は正に世紀末とは誰が言い始めたのかは知らないけど、この台詞は今の時代を表すのにぴったりだった。最近は平穏を取り戻しつつある今でも、不幸は当たり前のようにある。飢餓、貧困、そして戦争。もちろん、それらは世界が荒廃する以前からあったが。

『……おかあさま』

「あら、ごめんなさい。ちょっと昔の事を思い出していたの」

 わたしの中から響く声。微かにしか聞こえはしないが心配が滲み出ている。その不安は消し去るためにわたしは努めて穏やかに話しかけた。しかしそれでも我が子は不安そうな気持ちを拭い切れないらしい。ひとしきり思案した挙げ句、わたしは打開策を思い付いた。窓を離れ、宿への帰りに買ったものを入れた袋を漁る。目的のものは間もなく見つかった。その赤い果実を手に取るその時、わたしの背後に気配が突如現れる。

 それは黒よりも真っ黒で、何よりも理解しがたいもの。所々紫の燐光を放つその化物は大きな口を開く。

「……もう少し我慢してね?」

 化物【蛇】は口をゆっくりと閉じ、そして頷いた。どこか残念そうな雰囲気を醸し出しながら。

 

 ポケットから取り出したナイフで綺麗に八分割する。《わたしたち》の泥でも出来なくは無いが、泥の性質を考えると乗り気にはなれない。そんな事を脳に浮かべながらも手は動く。固い芯は切り取り、当然皮は飾りへと早変わり。そうして皿には八匹の兎が整列した。出来に満足するわたしの傍らには真っ黒な【蛇】が可愛らしく待っている。

 まだ? という声が聞こえた、気がした。すぐにでも「食べてもいいよ」と答えてあげたいけれどもこれだけは譲れないのだ。待たせてしまうのを悪いとは思いつつも、わたしの考えていることはちゃんと我が子も理解しているのだ。【蛇】は行儀よく静かに佇んでいる。さあ、準備が終わった。わたしの黒い手袋に包まれた両手には林檎が一つずつ。風に乗っていた音楽は止み室内は静寂に包まれている。わたしは口を開いた。

「さあ、いただきます」

 わたしはその声とともに右手に摘まんだ林檎をかじる。

 薄暗い空間に、しゃり、と小気味良い音が二つ聞こえた。

 

 夜の帳を落とすまいと太陽が赤に空を焼く。それでもじわじわと夜闇が空を浸食してゆく。後ろを振り返ると【蛇】がゆっくりと林檎を食んでいた。世間一般の人々は見れば恐怖の念を起こすだろうその姿形からは想像出来ないだろう光景だが、わたしにはもう慣れたものだ。もはや愛情の思いさえ抱く。

 もちろん、この【蛇】はこの子そのものではないにしても。視線に気がついた【蛇】がこちらを向く。皿にあった林檎は全て消えていた。

『……』

「これでおしまい。まだ旅は続くのだから」

『……そうだね』

 惜しむような気配が我が子から伝わる。しかし、先程言った通り、旅はまだ続くのだ。今日の大会で資金も手に入れたので、明日には出発する予定である。

 明日の予定を考え始めるといつの間に【蛇】は姿を消していた。窓からの冷たい空気がわたしを撫でる。真冬ではないけれどもこのままでは風邪をひいてしまいそうだ。

 それでもわたしは窓を閉めなかった。わたしの胎内にある温もりがあるから寒さなどは効かない。この温もりがあれば例え極地の氷風でさえも耐えることが出来るだろう。

 昔無くした温もり。その後奇妙な巡り合わせがあってまた新たな温もりが今ここにある。神様とやらは嫌いだけれども、もしこれが神様のいたずらであるならばこの出会いだけは感謝しよう。

「……おやすみ」

『……おやすみ』

 まだまだ《わたしたち》の旅は続くのだ。窓の外には未だ見知らぬ空が広がっていた。

 

 

 おしまい




 エリスノミア(プレート氏製作)について
 東方projectのキャラクター、レミリア・スカーレットの改変キャラクター。元は何の力も持たない少女であったが、とある研究機関により真理と呼ばれる超常能力を持たされた胎児を植え付けられるも脱走。現在は世界中を胎児とともに旅をしている。因みに種族は人間。吸血鬼ではない。

 MUGEN的な性能で言えば「攻めている間は強い」と言ったところでしょうか。攻撃面では相手の体力を数割吹き飛ばせる高火力の必殺技や十割コンボを搭載しています。しかし防御面は紙なので攻撃特化のキャラクターが相手だと苦戦し、場合によっては手も足も出ないことが。ちなみにコンボやカットインはとても可愛いので一見の価値がありますよ。

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