「ヒヒイロカネ?」
誰かが殺せんせーの言葉に呟く。
だが、誰一人キンジから、目をそらすことは出来なかった。
死神以上に殺気を放ちそして殺し合いを望む意欲が滲み出る姿に警戒を解くなど愚行でしかない。
「その事については目の前の状況を解決したら必ず説明します」
「ククッ。おいおい、一般人を殺しているお前が言うのか?」
「ッ!?黙りなさいヒヒ。それ以上言うなら……」
「はっなんだ?本当のことを言われて逆ギレか?」
「……リリ生徒に手を出したのです、従いなさい。ルルも貸し1つで私の中のヒヒを抑えてください」
殺せんせーがそう言うと、その体に変化が訪れる。
最初は翠色に発光した。
ついで、ネクタイをしている心臓あたりが緋色に変わると、瞬時に瑠璃色に変わりやがて全てが翠色に染まる。
「ヒヒ。私の計算では依代は彼ではありません。それにまだ早すぎる。なので今一度眠りにつきなさい」
「関係ねぇな。お前こそ姉妹を全部取り込んでウザいんだ、死ね!!」
それは一瞬の交錯だった。
緋と翠の光が交わったあと、赤が飛ぶ。
「ガフッ」
その赤は殺せんせーの中心から出た手だ。
「殺せんせー!!」
何人もの心配する声が響く。
だがそれ以上にキンジの焦る様な声が響いた。
「何故……何故心臓がない」
「
その殺せんせーの手には緋色の触手が握られていた。
その触手も殺せんせーの翠色の触手と共に溶けるように消える。
「貴方の大半は取り除きました。深い部分も抜き取る際に細胞と共にリリを少し入れて相殺してもらっています」
「ちっ……ここまでか我ながら呆気ない。だが勘違いするなよ、俺は如意棒も筋斗雲も使えなかった。これで勝った気なら今度こそ、その心臓を貫いて殺してやる」
そう言って後ろに倒れるキンジを殺せんせーが優しく受け止める。
「……もう大丈夫なの?」
「ええ、速水さん。肉体的にはキンジ君はもう大丈夫です。触手を抜いた時も血の一滴も回収して元に戻してます。心のケアは彼が目覚めないとダメですが、先生に任せてください」
「俺の事は後でいい」
「キンジ!?」
「キンジ君いつから……」
「触手が取られた時の激痛で意識だけはあった。正直今はあんたの事も兄さんの事も何がホントか分からねぇ。だから茅野も目覚めてる今教えてくれ。触手が言ってたホントの真実を。あんたは過去に何があったんだ。触手が存在する意味は何なんだ?」
私達がキンジが目を覚ましたことに驚き近かずこうとすると、キンジはそれを手で制いし殺せんせーをじっと見る。
「…………」
殺せんせーは目を逸らさないが、それでも迷っているのか口を開けたり閉めたりするも声は出てこない。
それをじっと私たちは何も言わず見つめ返す。
「過去を話せば必ず君たちには余計な負担がかかると思い、最後まで話さないでおこうと思っていました。ですが話さなければいけませんね、先生は君達との絆や信頼を裏切たくありません」
それに約束しましたからねと殺せんせーは優しく笑みを浮かべる。
「まず先生の正体からですね。先生は教師をするのはE組が初めてです、ですが先生は皆さんに滞りなく全教科を皆さんに教えることが出来ました。そして殺し屋とは優れている程万に通ずる」
その言葉で私たちは殺せんせーの正体に気づいた。
殺せんせーの正体それは……
「2年前までの先生は、『死神』と呼ばれる殺し屋でした」
本当ならこの言葉に私たちは驚いたのだろう。
「そして先に言っておきます。触手が本来作られた意味を」
だがそれ以上に触手の正体が予想外であり、殺せんせーの結末だった。
「荒唐無稽な話に聞こえるかも知れません。ですが触手の本来の目的、それは神とも呼べる強大な力を老人だろうが、子供だろうが誰であろうが制御し、それを兵器として大量生産する事でした。ああ、そうだ。それからもう1つ、来年の3月には先生は恐らく暗殺されなくても死んでいると思います、暗殺によって変わるのは先の未来だけです」
そう言って殺せんせーは語りはじめる。
殺せんせーがまだ人の形をしていた頃の話を。