麻帆良に現れた聖杯の少女の物語   作:蒼猫 ささら

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向こうでは余り評判が良くなかった木乃香がメインの話です。


余話その1―――ひなたの地にて

 神奈川県内を通る高速自動車道。

 そこを白亜に塗装された一台の高級車…所謂、リムジンが前後を黒塗りの車に挟まれ、警護を受けて走っていた。

 周囲を走る車両に対して近付け難い雰囲気放つそんな“いかにもな(カタギではなさそうな)”自動車を自家用とし、黒塗りの車を警護に付けている家の令嬢―――近衛 木乃香は、振動を全く感じさせず、余裕を持った広くゆったりとした作りの車内から、流れる外の風景を窓越しに見詰め……今自分が此処にこうしている事の始まりを思い返していた。

 

 

 

 十日前…5月6日に於いて、エヴァから聞かされた己とその血が抱える背景(じじょう)に、大事な幼馴染が秘めていた傷とその在るかも知れない行き先(みらい)

 

 木乃香は始め、教えられた自分が背負うべき事実に対し、困惑と共に怖気づき、否応無く押し寄せるであろう“業”に体を震わせ、拒絶しようとした。

 しかし、大事な……とても大切な幼馴染が胸の内に隠したモノを。そしてそのモノがもたらす理不尽により、その大切な友人が自分から離れ、仲を引き裂かれる現実も知って木乃香は拒絶しようとした自身に課せられた“業”へ立ち向かう意思を固めた。

 

 そう―――大切な者を守り、今在る幸福と未来に続くであろう幸せを失わない為に。西の青山と東の近衛の血を併せ持って生まれた木乃香は決意したのだ。

 

 その夜、木乃香は刹那と話をしてその旨を告げた。

 

 ―――己の進むべき道を。抱いた覚悟と決意を。

 

 それを聞いた刹那は泣いた。自分の為に大事な友達が…己が命よりも大切な人が、万難が立ち阻む険しい道を歩むことに、辛く悲しくも……―――それ以上に嬉しかったから。

 

 翌日。

 意志を固めた木乃香は授業を終えた放課後、刹那を伴って祖父が居る学園長室を訪れた。

 近右衛門に呼び出されていたという事もあったが、そこで彼女は魔法社会へと関わる決意を表明した。

 

「今も正直、青山やとか近衛やとかそーゆーのは判らんし、実感も無い。けどそれがウチに課せられるモノで、せっちゃんとずっと一緒に居られる為にどうしても乗り越えて行かなあかん事やってゆうなら―――ウチはそれに立ち向かう! どれだけ大変な事で、どんなに辛い事があっても絶対に負けんへん! 戦って打ち勝って見せるえ!!」

 

 それが十五にも成ったばかり少女の、身に課せられた重い現実に対して出した精一杯の答えだった。

 祖父は、そんなまだ幼いと言える孫娘の宣言をどう受け止めたのか、表情を変えずに木乃香の姿をジッとただ見据え、静かに頷いてその言葉を受け入れた様だった。

 その祖父の心中は如何なるものだったのか。それを量るのも察するのも今の木乃香には無理だった。

 当然、その場に居た刹那にも判らなかった。尤も幼馴染の彼女は、大切なお嬢様が勿体無くも自分の為に決意された事を改めて聞いて、押し寄せる情動の波に耐えるのに必死で、近右衛門の心中どころかその顔を窺う余裕さえなかったのだが。

 

 木乃香と近右衛門の対面に居合わせたのは刹那だけでは無かった。

 木乃香と刹那と同じく女子中等部の制服を着ながらも、初等部の生徒と変わらない背格好を持つ金髪碧眼の少女―――エヴァンジェリン・A・K・マグダウェルもその場に居た。

 彼女も近右衛門同様、ただ黙ったままで木乃香を見詰めてはいたが、その孫娘とは違い近右衛門の心中をある程度は察していた。

 恐らくは、平穏とは程遠い人生を歩ませることに苦い思いを覚え、それでも孫の決意に水を指さぬ為、表情に出さず耐えているのだろう。

 とはいえ、口にするのも野暮であろうから言う積りは無いし、ジジイに同情する気は毛頭無かった。木乃香そのものに対しては同情の念も在るし、その歩む道程を応援する気持ちや、報われる物であるように祈る思いは少なからずあったが、

 

「フン…昨日はあれだけ、それこそ今にでも泣き出さんばかりの情けないツラを見せていたのだから、てっきり怖気づいてそのまま諦めるだろうと思っていたが―――まあ、良い。お前の意思は判った」

 

 口を開けば内心での思いを欠片ほども見せる事無く、エヴァは鼻で笑いながらそう言った。

 もしここに茶々丸がいればそんな彼女に即座に突っ込みを入れ、色々と…彼女の尊厳が台無しになったであろうが、幸いな事に珍しくもその忠実である筈の従者の姿は今この場には無かった。

 

「……では、すっかりと落ち着いたようだし、早速だが、昨日の続きとするか」

 

 エヴァは先の言葉に続けてそう言い。木乃香は首を微かに傾げるが、あっ…と声を上げる。

 

「もしかしてイリヤちゃんの事…?」

「ああ」

 

 木乃香の問い掛けにエヴァは頷き。近右衛門も僅かに唸るように、うむ…と鷹揚に頷く。

 

「ウチが魔法に関わる事がイリヤちゃんにも何か影響が在る…みたいなことをゆうとったけど」

「…刹那に比べれば些細なものだがな」

「しかし、その事情はかなり複雑だがのう」

「…?」

 

 続けて問う木乃香に、エヴァと近右衛門は互いに矛盾するような事を言い。彼女の首の傾きが大きくなる。

 そんな怪訝そうな木乃香に構わず、エヴァはイリヤのその複雑だという事情の説明を始めた。近右衛門は余り乗り気では無さそうではあったが、やむなしと判断してエヴァの説明に加わった。

 

 並行世界。魔術と“魔法”。魔術師。アインツベルン。聖杯と英霊。聖杯戦争。この世すべて悪(アンリマユ)。そして―――その世界での去る結末と今に至る事情。

 

 エヴァと祖父の話を聞いた木乃香は、その余りに濃厚な内容に緊張からか喉の渇きを覚え、知らず内に喉を鳴らしていた。

 魔法という超常的な…非日常的なものを受け入れたにも拘らず、それでも信じ難い話であったが、話す二人の表情と文字通り鋭さを感じさせる真剣な言葉と語りを聞き。木乃香はそれが本当の事なのだと実感に近い思いを抱いた。

 異世界人で人々の為の在らんとする“魔法使い”とは違う、己が目的をただ求めんと如何な手段も取る冷徹な“魔術師”。

 それも千年もの歴史を誇る由緒ある家系。聖杯戦争と呼ばれる殺し合いの結果、この世界に跳ばされて自分の母親の姿をした呪いと対峙する事に成った少女……いや、年上の女性だろうか?

 

「それがイリヤさんの…秘密。あの振る舞いや圧倒的な戦力の訳……なるほど、それなら合点が行く」

 

 刹那が零した言葉が木乃香の耳に入った。

 どうも幼馴染の彼女は、ただ圧倒されて驚愕に囚われ、思考が停止していた自分と違い、アレコレと考えていたらしい。

 そこで木乃香の思考も動きだしたのか、頭に疑問が浮かび上がった。

 

「どうして、そんな話をウチに? それにこんな大事なこと…イリヤちゃんは了解しとるん?」

「イリヤの了承は得ている。アイツは気が進まないようで渋ったが―――」

 

 疑問にエヴァが答える。

 

「―――それでも、お前には知って貰っておいた方が良いと考えてな。納得して貰った」

「うむ。先程説明した通りイリヤ君の真実を知る者は、ワシとエヴァを含めてタカミチの他、あとは西に居る婿殿を合わせての四人…いや、茶々丸を含めて5人だけじゃ」

「うん、イリヤちゃんの本当の事が知られたら、大変なことになるかも知れへんから、秘密にしてるんやよね?」

「ああ、特に厄介なのは、聖杯関連に纏わることだが……あのカードの事もな」

「高度な触媒や複雑な儀式と術式を必要とせず、英雄と呼ばれる伝説上の人物の力を何の労も制約も無く得られる魔法具……確かに恐ろしくもありますが、それ以上に魅力的でしょうね」

 

 異なる世界から来訪した事実。その異世界の“魔術”と呼ばれる異端の魔法技術を有する事。聖杯戦争などと呼ばれる万能の釜を作り出す儀式。英霊を己の身に宿して最強クラスの力を得られる破格の魔法具。

 これ等の事柄は興味深く非常に魅力的で、多くの者の注目を集めるに十二分に価する物だ。良い意味以上に悪い意味で。

 だからこそ、木乃香には判らない……いや、世間に疎い自分でも判る。秘密は知る人間が少ない方が、誰かに知られる可能性が低いことぐらいは……。

 木乃香の脳裏に浮かんだその疑問に答える為と言うか、さっきそれを尋ねた事もあってエヴァがその訳を説明する。

 

「これらの事情を話したのは、お前が此方に関わる決断をした事が何よりの理由だ」

「それって…?」

「ウム、単刀直入に言えば、木乃香…お前にはイリヤの本当の意味で味方になって貰いたい」

 

 そうエヴァに告げられたものの木乃香には今一ピンと来ず、頭を悩ませるばかりだったが、直ぐにエヴァは言葉を続けて詳しい説明に入った。

 

「アイツは正確な素性が表に出せない上、外来の人間という事もあってその立場は色々と微妙だ。一応、先日開示したカバーストーリーのお蔭で多少改善に向かってはいるが、それも此処に居るジジイの庇護……つまり後ろ盾が在っての事だ」

 

 エヴァは近右衛門の方へチラリと視線を一瞬向け、

 

「その為、イリヤには、魔法(こちら)に関わりながらも、力に成ってやれるヤツが身近に付いてやる必要があるんだ。色んな意味でな」

「うむ、ワシは立ち場が立場じゃし、身近に付いてやることは出来ん。そう言った意味では木乃香は適任じゃろうからな」

 

 大きく首肯しながら近右衛門がエヴァの言葉に続いた。

 木乃香は、そのエヴァと祖父の意味深な言葉に、「なるほど…」と半ば直感的に理解した。

 未だ自分の立場を正確に把握してはいないが、自分が魔法社会に於いてとても重要な人物である事は判っている。つまり木乃香の行動や発言は協会の人間達には無視出来ないものなのだ。

 そんな自分があやふやな立ち位置にあるイリヤと親交を深め、上手く立ち回れば、周囲が懐く警戒を薄れさせ、不審の眼からも庇い守れる―――という事なのだろう。

 早い話、近右衛門同様にイリヤの後ろ盾に成るという事でもあるのだが、学園長と違うのは理事やら上司などという圧力を麻帆良の魔法関係者に覚えさせずに済む事や、木乃香自身の人徳……というかその愛嬌(そとづら)の良さがそれに代わる武器になる事だ。

 そして何よりも友人、友達という身近な位置でイリヤに直接的なフォローも行なえる事が大きい。

 

「つまりイリヤちゃんの傍でおかしく思う人がおったら嗜めてぇ、変だって思われることが起こっても怪しまれんように助けに成れってことやね」

「まあ……そういう事だな」

 

 エヴァは本当に理解しているのかと、疑わずにいられない感じの木乃香の返事を聞いたが、表情が真剣な事もあり、理解したものと判断して首肯した。

 

「それに加えまだ、理由はあるがな」

「……」

 

 続けて言うエヴァに近右衛門は黙したまま若干表情を渋めた。その老人の顔を見るにこれからエヴァが語る事は本当に気が進まない事のようだった。

 

「このジジイに何かあった時の事だ」

「え、爺ちゃんに…?」

「余り想像は出来んが、見ての通りこのジジイはジジイというだけあって歳だからな、何時どうなるかは全く判らん。ある日、突然ポックリと逝く可能性は否定出来ん」

「……」

 

 一切遠慮の無いエヴァの言葉に近右衛門は益々表情を渋める。エヴァはそんな事なぞお構いなしに話を続ける。

 

「それ以外にも、不測の事態というのはあるだろう」

「…京都の事件で西の長がやられたようにですか?」

 

 東の長である学園長への不測の事態という言葉に、西の長である自分の師が敗北した事実を思い出したのか、刹那がそう尋ねていた。

 

「そうだな。幸いにもあの事件の方は解呪可能な石化程度で済んだが、今後もその程度で済む保証は無い。永久石化……を受けるかも知れんし、動く事すらままならない怪我を負うかも知れん……死ぬこともな」

 

 脅威が明確に成った以上、その可能性は決して低くはない。

 あの“完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)”が関わり、そして黒化英霊も居るのだ。いざ襲撃が在るとすれば、エヴァやタカミチだけでなく。状況次第ではあるが、麻帆良のトップ…云わば司令官である筈の近右衛門も前線に赴き、それらに対処する必要が出て来るだろう。

 

 ―――そう、本当に死を迎える可能性は低くないのだ。

 

 それに近右衛門はある覚悟を抱いている。“完全なる世界”と対峙し、麻帆良が戦場と化し、多大な犠牲者が出る成くらいならば、“己一人”だけで全て済ませる…と。

 その近右衛門の秘めたる覚悟を知るのはエヴァだけだ。

 

 だがその結果、近右衛門が倒れた場合どうなるか?

 

「言うまでも無く、麻帆良及び関東魔法協会は混乱に陥るだろう。襲撃してきた敵はこちらとの交戦で損害を受け、引き下がる……或いは、上手く殲滅できるかもしれん…が、その隙を本国の連中は決して逃すまい。色々と口実を作り、こちらへの介入を図る筈だ。その政治的な危機を回避する為にも木乃香…お前には麻帆良のトップに立って貰わなくてはいけなくなる」

「え…?」

「しかし…それは!?」

 

 エヴァの唐突な―――木乃香が協会の代表を務めるなどという言葉に呆然とする本人と、驚き口を挟んでしまう刹那。

 

「安心しろ何の実績も経験も無い小娘だけに任せるという話じゃない。あくまで次期代表候補とした暫定的なものだ。木乃香の立場が確固たるものに成るまでは、実質運営を行うのはタカミチに成る」

「ですが…」

 

 フォローするように言うエヴァにそれでも納得し難いのか、刹那は顔を顰めたままだ。

 

「気持ちは判る。組織のトップが曖昧に成りかねず、指揮系統にも影響が出掛けないからな。それならタカミチ一人に任せた方が……と思うだろうが、それでは立場が弱いんだ。アイツ自身は元々麻帆良……関東魔法協会の人間ではないし、魔法使いとして先天的に致命的な欠陥(デメリット)を持っている。一応“赤き翼(アラルブラ)”の一員であるという大きな肩書きを持つが、それは外では有効だが。東と西…日本全体の内側では些か“弱い”。ならばより適任な他の人間ならば…とも思うだろうが、実力と実績に優れた信用のおける人間はタカミチの他に居ないんだ……いや、居る事には居るのだが―――」

 

 と。そこでエヴァは言葉を切り。ふう、と溜息を零して近右衛門がそれを引き継ぐ。

 

「その者は、何というか自由奔放過ぎてのう。協会のような大きな組織のトップには向いておらんのじゃ。……まったくそれさえなければ、何の問題も無かったのじゃが……信頼も出来るし、政治的な手腕も確かじゃし…」

 

 近右衛門は惜しむかのようにそう言い。エヴァも同意するように軽く溜息と吐き、再度口を開いた。

 

「まあ、それは兎も角、そういう理由もあって木乃香には、タカミチとは別に象徴的な意味で奴の上でトップに立って貰わねばならん。その上でジジイに代わってイリヤの後ろ盾に成って貰う為にも、アイツの抱える正確な事情を知って置く必要があった」

 

 その説明を聞いても刹那の表情は晴れなかった。

 木乃香が経験を浅いまま、(まつりごと)に…それも協会のトップとして関わる事への不安もあったが―――

 

「大丈夫だ、ソレが起こってもお前の立場は当面予定通りと成る筈だ」

 

 それを見透かしたかのようにエヴァが言った。

 それに「あ…」と声を零し、僅かに刹那は恐縮してしまう。言外で指摘された通り、自分が木乃香の護衛から外される事への恐怖が大きかったからだ。

 そんな刹那にエヴァはフッと不敵に笑うが、直ぐに木乃香に視線を戻して不機嫌そうに先程の続きを話す。

 

「お前やタカミチ…そして件のあの婆さん以外でトップに立てそうな奴は今一信用できんからな。一応善人なんだろうが……素性を教えるには不安であるし、教えなかったらなかったで碌に考えもせず、イリヤを本国に売り渡しかねん。あの明石 裕奈の父親か弐集院とかいう太っちょにもう少し経験と実績が在れば、また話は変わって来るんだが」

 

 何処となく憤りさえ感じさせる言いようだった。

 

「……そういうな。あ奴はあ奴なりに協会の事を真剣に思い尽くして―――」

「ハッ、そういう奴こそ一番性質が悪いんだ。自分を正しいと信じ、間違っているとは思わない。あの頭の中には脳ミソの代わりにコチコチに硬い石でも詰まっているんだろうよ」

 

 部下という事もあり、近右衛門は一応庇おうとするが、エヴァ鼻で笑って吐き捨てる。

 

「だからお前も麻帆良から離したんだろ。“彼の御方”の下への栄転という事にして、近衛の本家に面倒を押し付けてまで」

「…………」

 

 図星を指された為か、思わず近右衛門は黙り込んだが、数秒程の間を持って再び口を開いた。

 

「栄転である事は間違ってはおらん。何しろ“彼の御方達”のお傍に仕えるのじゃからな。それにあ奴の実直な性格を思えば、あちらでの任務が向いているのも確かじゃ」

 

 そう淡々と言う近右衛門にエヴァはフン…と鼻を鳴らした。言い訳がましく思ったのだろう。

 木乃香には、そのやり取りの意味は良く判らなかったが、自分と元担任である高畑先生以外に頼りになる人物がいない事だけは理解した。

 その事実に不安も芽生え……20年前の戦争が原因で麻帆良…いや、協会の人員―――人材が不足しているらしいという言葉を思い出し、その影響なのだろうかと漫然に思い。その不安を大きくさせたが、今更泣き言は言えないと胸中に過った不安を、首を振るようにして追い出そうとした。

 その仕草に気付いた近右衛門は、木乃香の心情を察して安心させるように言う。

 

「ま、これは万が一のことじゃ、それに今すぐ如何こうという話でも無いしのう」

「だが、何時どうなるか判らないのも確かだ。備えておく必要はあるだろう」

 

 穏やかに笑みを向けてくる近右衛門の言葉を楽観的だと感じたのか、エヴァが口を挟み。近右衛門は微かに唸りながらも「分かっておる」と言い。木乃香が表舞台に立つ以上、機会が在れば経験を積ませる、とも彼は言った。

 そうして、エヴァと近右衛門に向けられる視線に、木乃香はイリヤの事も含めて了解するように無言で頷いた。

 

「……………」

 

 ただ、そう無言のまま言葉を口に出せなかったのは、やはりこれからの―――見えない未来に対して芽生えた不安を振り払い切れなかった為だった。

 覚悟を決めたとはいえ、そのような精神的な未熟さは一朝一夕でどうにかなる物でないという事だ。

 

 その後、刹那だけが席を外すように言われ、祖父は更にとんでもない事実を告げた。

 

「イリヤ君の事情を話し、ワシの身に何かあった事思えば……この事も話して置くべきじゃろうな―――」

 

 そのように口火を切って自分のみならず、エヴァも驚く事実が開かされた。

 この麻帆良で出来、長い付き合いと成っている親友が持つ大きな…そう、途方も無く大きな秘密が語られたのである。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 木乃香は半ば物思いに耽りながら走行中の車内から外を見詰めていると、深緑の木々で遮られていた風景が唐突に途切れ、代わって空の青さをユラユラと波打つ水面に映す大海が彼女の視界一面に広がった。

 

「もう直に到着します」

 

 そう木乃香に告げたのは同乗した白髪の女性……刹那と同じ麻帆良でも珍しい神鳴流の使い手である葛葉 刀子だ。

 木乃香は、この男子生徒から人気のある美人教師と刹那が親しい事は、その幼馴染と和解する以前から知っていた。

 あの当時…刹那が麻帆良へ来た頃。木乃香は大事な幼馴染である彼女と何とか昔のような関係に戻りたくて、それとなく刹那の行動や麻帆良での交友関係を調べていたのだ。

 剣道部に所属している事は当然として、ルームメイトである真名の他、クラスメイトの中でも長瀬 楓や古 菲と比較的親しいらしい事、そして真名と時折一緒に麻帆良の外へ出掛けている事も知っていた。

 とはいえ結局、それら分かった事をこれといって活かす機会は得られず、京都の一件を経てようやく和解したのだが……まさか学内でも有名な美人教師である葛葉が魔法使いの一員であり、刹那と同じ神鳴流の剣士であり、麻帆良で師の真似事をしている等とは思ってもみなかった。

 しかし、彼女と同じ教師達の上司である祖父が魔法使いなのだ。そう考えるとそうおかしな事では無く。今では学園が魔法使い達の手によって運営されている事を含めて葛葉の事も納得していた。

 

 そして、木乃香は―――祖父からもだが―――今ここに居る彼女の指導を受けて魔法と呪術を学んでいる。

 事前に行なわれた適性検査によれば、自分は祖父と同様、西洋の魔法と東洋の呪術、その両方に高い資質が在るとの事だった。とはいえ、どちらかと言えば呪術寄りである為、今の所は学習効率も考えて基礎以外はそちらを学ぶことに重点を置いている。

 葛葉は剣士という事もあって、刹那と同じく呪術は補助程度にしか身に付けていないが、その技術は兎も角、知識の方は豊富で高位の呪術師にも引けを取らないものらしい。それに剣士……つまり前衛を担う視点からでの意見や実戦に裏打ちされた指導は中々に為になる物だ……と、これは葛葉の同僚であるタカミチや神多羅木が言った言葉だが、木乃香は素直にそれを受け取って葛葉から意欲的に呪術を学んでいた。

 

 

「お嬢様。今一度確認しますが、此度の交渉は私と弐集院さんが全面的に担当します。木乃香お嬢様は―――」

「うん、わかっとるよ。ウチは座っておるだけでええんやよね。で、もし話しかけられても愛想良く適当に応じればええ…と」

「はい。幸い此度の席で前面に立たれる御方は話の分かる御人ですから、そうおかしなことは無いと思いますが……」

「同席する周りの人間が、どうするか判らんってことやよね」

「…はい」

 

 葛葉は木乃香の言葉にやや厳しい表情で頷く。

 出来れば木乃香こと―――“大事”なお嬢様に不安を与えたくは無いのだが、楽観的に交渉の席に望んで痛い目にあって欲しくも無かった。

 それでも不安だけを与えたくは無く、安心させるために次の言葉を続けた。

 

「勿論、私と弐集院さんもフォローは致します。おそらく向こうの代表もこちらの意図を汲んでくれるでしょう」

 

 そう、今回の交渉は半ば出来レースのようなものなのだ。

 水面下で行われた根回しや非公式で行われた事前協議などで既に話は纏まっており、木乃香が東に属する立場にある複雑な事情も汲んでくれる筈なのだ。

 また交渉の方も既に最終的な詰めにまで進んでいた。あとは最終的な確認と合意ぐらいである。

 しかし合意にまでは至らない、と交渉に参加する葛葉と弐集院はもとより、東西共にその上層部は見ていた。

 せいぜい確認を重ねた確認程度と叛意を持つ者達への牽制という意味合いで終わるだろう。合意は今回の“交渉を行なった”、“友好的に進んだ”という“事実”から周囲が示す反応を見てから成る。

 その為の“木乃香(お姫様)”の同席であり、そうまで慎重に成らなければいけないほど西の情勢は不安定なのだ。

 

(初舞台としては優しい方だとは思うが……それでも厳しく思わざるを得ない。…これが良き経験に成ってくれれば良いが……そうするのも私達の仕事か)

 

 葛葉は、いつもの朗らかな笑顔を顔に浮かべながらも緊張を滲み出している木乃香を見てそう思い。

 

(刹那にもこちらに同乗して貰うべきだったか?)

 

 とも思い、後方の黒塗りの車両に視線を送った。その車内にはお嬢様の大事な親友であり、葛葉にとっても大事に思える剣の後輩が乗っている。

 専属の護衛であり、親友である刹那が別に成ったのは例の厄介な事情の所為だ。

 葛葉はそんな差別意識の持ち主ではないが、向かう先で刹那が木乃香の傍に居る所を余り目に触れさせたくない、と上は判断したのだ。出来れば今回の同行も避けるべきだという意見もあったが、それは木乃香の精神衛生が考慮されて却下された。或いは学園長の意向……孫娘を想っての妥協の結果かも知れない。

 だが、こう離れていては今一つ中途半端な気がしないでもないが…

 

(…いや、それでもマシな方だ。お嬢様は緊張こそされているが、その精神状態は十分安定しているのだから……)

 

 心配し過ぎだな、と僅かに反省し、葛葉は一時間もしない内に始まる交渉へと意識を向け、脳内で手筈の確認をもう一度行ないつつ、自分もまた傍に居られない刹那に代わってお嬢様を安心させる為、木乃香との会話を続けた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 高速を降りた車両の一団はその都市へ入った。

 太平洋側に面したその都市は、日本や国外では名を知られた温泉街や観光地であり、また魔法を知る人間ならば霊地としてもその名を知り、高い価値をその土地に見出していた。

 無論、麻帆良や京都などに及ぶものでは無く。霊的城塞として築かれた江戸…もとい東京にもある側面からでは及ばないのだが。

 

 車両はその霊地の中心である山沿いに在る温泉街の方へ向かい、まるで山の頂上まで伸びるかのように高く長く伸びた石造りの階段の前で止まった。

 護衛についている人間の一人が車のドアを開け、葛葉が先に降りて護衛の警戒に加わる。木乃香も彼女に続いて車内から出る。途端、柔らかい風を感じ、その流れる空気に不思議と郷愁にも似た懐かしい雰囲気を覚えた。

 車に掛けられていた護法に遮られ、今まで感じられなかったソレ―――優しくも清浄な…心が洗われるような不可思議な気配。

 魔法を知り、学んだ為だろうか、木乃香はこの土地が霊地であるという意味を確かな感覚として実感していた。

 麻帆良でも似た感覚を感じるようには成っていた。お蔭で霊地としての格が麻帆良よりも低いのも判る……けれど、此処は麻帆良とはまた違う、心をより温かくさせ、洗う力に満ちているように木乃香は思えた。

 

 ―――ひなた…或いは日向。

 

 それがこの土地の名称だ。

 その名が脳裏に浮かび木乃香は、なるほどと思った。確かにその通り、此処は日向のような暖かさと心を穏やかにさせる柔らかな雰囲気―――霊気もしくは神気と呼ばれるモノがそのような優しいカタチとなって満ちている。

 

「うん、ほんま日向ってゆう感じやわ」

 

 そうであるからその名が付いたのか、それともその名が付いてそのような土地に成ったのかまでは判らないが、この地に相応しい名称だ。

 そんな事を考えながら木乃香は周囲を観察するように見回し、自分を警護する黒服の男性たちに混じって彼等と同じく辺りを警戒している女子中等部の制服を着る少女を確認した。

 

「せ―――っ…!」

 

 一瞬、視線が合って何時ものように声を掛けそうになったが―――寸前で堪えた。

 今の自分の立場は交渉に赴くVIPで、制服の少女こと刹那はその護衛の一人に過ぎない。それは事前に注意されていた事だ……木乃香にとっては不愉快この上ない話だったが、今の自分の“力”ではそれを受け入れるしかない。

 しかし、それでも…そう、そこに居て、ほんの少し眼が合っただけで木乃香は身を包む緊張が和らいだ気がした。刹那が目で「お嬢様。頑張ってください」と応援してくれているのが判ったからだ。

 

「それじゃあ、行こうか」

 

 気が付くと前を走っていた車に乗っていた弐集院が傍に来ており、にこやかに皆にそう言うと長く伸びた階段の先へ視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 警護の凡そ半分を車両の方へ残して、もう半分ほど…刹那を含めた四人を率いて木乃香、葛葉、弐集院の三名は階段を上り、目的の建物の前へ赴いた。

 そこで目にしたのは、3階建ての古めかしい木造の建築物だった。

 その建物はこの土地と同様、不可思議な暖かさを感じさせる…何処となく懐古的な郷愁を誘う外観を持っていた。ただ―――

 

「……旅館やよね」

 

 と。交渉の場と聞いていたその建物の意外な外見に木乃香はそう呟いていた。小さな声であったが辺りが梢のさえずり以外に音が無かった事もあり、聞こえたらしく葛葉がそれに答える。

 

「はい。この建物は確かに旅館でしたが―――…!? お下がりをッ!!」

 

 言葉の途中―――突然、眼が鋭くなり、木乃香を庇うように葛葉は前へ出て、何時でも太刀を抜き打てるように構えを取り。弐集院もその体格から似合わぬ素早さで葛葉同様に木乃香の前に立ち、杖を抜いた。その直後―――

 

「―――ええ、今は旅館では無く女子寮と成っています」

「え…?」

「「「―――!?」」」

 

 声に気付くと、自分達の前方…葛葉の直ぐ眼の前に女性の姿が在り、木乃香は唖然とした声を漏らし、その他の護衛達は驚きで一瞬固まる。刹那もだ。どうやら彼女を含めた警護の者は、女性の接近に気付かなかったらしい。

 本当に何時から木乃香達の前に居たのか、その女性―――エヴァの私服と似たようなゴスロリ風の衣服に身を包んだ二十歳前後と思われる彼女は、長い黒髪を揺らしながら丁寧なお辞儀をして、

 

「私は浦島家次期当主の浦島 加奈子と申します―――ようこそ、ひなた壮へ。歓迎致します麻帆良の御一行様」

 

 そう名乗り一同に向けて挨拶した。

 葛葉の鋭い剣気と弐集院の視線を受けながらも一切動じることなく平然とし。無表情でなまじ整っている為か、人形めいた印象を与える美貌を向け、赤い色の眼で皆を見詰めて。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「先方は既に到着し、大広間の方で皆様をお待ちしております」

 

 気配を一切感じさせず現われた浦島家次期当主なる可奈子という女性は挨拶の後にそう言い。木乃香達を旅館…ではなく、女子寮だという古めかしい建物の中へ誘って西の人間達が待つ大広間へと案内した。

 その途中、こちらの護衛にも似た雰囲気を持つグレーのスーツに身を包んだ男性たちの姿を見掛け、それが西の護衛だと理解した木乃香達は一礼すると、そこで自分達も護衛である刹那と黒服たちと別れた。

 

 大広間には四人の人間の姿が在った。

 近右衛門と同年代と思しき老人一人に、中年の男性が二人に20代半ば程の若者が一人。

 先程見掛けた護衛と違い皆和風の出で立ちで、修学旅行で帰省した時に見たお父様と似た姿やなぁ…と木乃香は思い。あんな時代劇に出て来る貴族みたいな恰好で街ん中におったらスゴク浮くんやろうなぁ、とも考えた。

 かくいう此方も、普段通りの恰好である葛葉と弐集院はともかく。木乃香は以前起きたお見合い騒動での豪奢な着物と同じ物を着込んでおり、顔も薄く化粧が施され、髪も合わせて飾っていたりする。

 その持前の容姿も相俟ってまさにお姫様と言っても過言でない姿だが、彼ら同様、街中に居たら浮く事は勿論、色々な意味で注目の視線を集めるだろう。

 ……蛇足であるが、その着飾った姿の彼女を見た時、たっぷり一分ほど放心状態に陥った護衛が一名居たり、居なかったりする。

 

 広間の中心を挟んで木乃香と西の者達は向かい合い。上座と下座が出来ないように広間の奥側の席―――上座に位置する畳の上に敷かれた座布団に可奈子が座る。

 そうして皆が席に着く間、何とも言えない静けさが漂い。

 可奈子が先ず頭を下げると、続いて西と東の面々が互いに挨拶するかのように頭を下げて一礼した。

 

「この度は、この重要な会談に当家のこの……寮を御利用して頂け、まことに感謝致します。また多忙な現当主に代わって、不肖たるわたくしの見届け役を心深く御了承して下さったことも同様に感謝致します」

 

 そう誠実に聞こえ、そうでないような…無表情且つ感情の籠っていない言葉を可奈子は告げて―――交渉が始まった。

 

 

 ―――とは言うものの、既に内実は決まっている為、本当に確認だけの作業に近く。意見を交換し協議や討論するにしても事前の既定(シナリオ)に沿ったものであり、関係者に公開する議事録(アリバイ)を作成する為でしかなかった。

 彼等の話す言葉は、見届け役と成った可奈子の左右に広げられた巻物(スクロール)が自動に―――誰も手を触れていないにも関わらず、筆も無いのに墨で書かれたかのような達筆な黒い文字が浮かび記録して行く。コレを元に議事録が作成されるのだ。勿論、この巻物自体も後の資料として保管される。

 今回の交渉内容は、改善の一歩として情報の共有化と公式の伝達網の確立と整備に加え、特使の常駐案及びそれらに関する条件・条項の締結である。

 尤も先述のように合意は、この交渉の後の更なる交渉を経て成される予定なのだが……。

 

「ま、こんなところじゃろう」

 

 と。今回西を代表している老人が唐突にそう言った。

 それはこの出来レース的な交渉が終了したことを意味しており、それに葛葉と弐集院は同意の頷きを示し、西の他の面々も首を静かに首肯する。記録用の巻物もその機能を停止させた。

 木乃香はそれら終わりを告げる言葉と皆の様子を見て、身体を弛緩させるようにホッと溜息を吐いた。時折話を振られ、意見などを求められたもののコレと言った物は無く。危惧していたような事も無かった。

 どうやら西はこちらに……というよりも自分に相当配慮したらしい、と気遣わしげな視線が時折向けられたのを感じた事もあり、木乃香は漫然とそう思った。

 

「しかし、上手く行くとは限らんじゃろうな」

 

 老人は呟くように続けて言い。他の三人も溜息を吐くようにして「はい」「ですね」「まったくだ」と応じた。

 それに木乃香は首を傾げ、葛葉と弐集院も訝しげな…されど、やはりといった表情を見せる。

 

「やはり、そちらは反対する意見が多いですか」

 

 余り疑問を含んでいない葛葉の確信の籠った言葉。

 

「うむ、葛葉君は此方の出だったから実感的だろうが……今、君が思っているのとは別の事情が絡んでおる」

「?…それは一体」

 

 老人の言葉に今度は弐集院が尋ねた。

 

「知っておるじゃろう。先の事件の際、我らが長殿が敗れたのを…」

「ッ…なるほど、責任を追及する声が在るという事ですか」

「そうだ。主戦力の大部分を京都から動かした事も含めてな」

 

 弐集院が納得したかのように言うと、中年男性の片方がそれに答えた。

 

「奴らの主張よると、自分達や主力の者達が居れば本山が危機に陥る事も、長が敗れようとも大事は無かった。東の助けなど必要なかった、との事だ」

「呆れたものだよ。彼等は自分達が騒動の種に成りかねないという自覚が全くないようだ。事件の後もそうだが、取り逃がす事になったのは先走ったアイツらが無様にも、敵の囮に引っ掛かった為だというのに」

「ええ、彼等の混乱した情報のお蔭でまんまと攪乱された挙句、救援に人を割く必要に成りましたからね。アレが無ければ包囲に穴が開く事も無かった。…まあ、開かなかったら開かなかったで、その時は敵も別の手を打ったでしょうが」

 

 続けてもう一人の中年男性と若者が口を開いた。その声には現状を理解し、乗り越えようとしない輩に対する明らかな怒りと苛立ちがあった。

 本来ならば言う必要の無い、西の事情をこのように愚痴めいた形で零しているのだ。その憤りは相当なものなのだろう。

 現在の長である詠春が敗れた情報を意図的に流し、その権威を貶めようとしている事もある。今、西が揺らぐ事がこの日本の魔法社会にとってどれほど危険な事なのか、まるで分かっていない。表に出る影響もだ。

 勿論、反対派の全員がそうである訳では無いが、そう言った愚かしい者達の声の方が大きいのは事実であり、流される人間も多いのもどうしようもない現実だった。

 

 

 

「憎しみは未だ晴れず…か」

 

 思わず葛葉はそう言葉を零していた。

 かつて西に居り、幼い時分に大戦に参加していた事が在った為だろう。その厄介である筈の反対派の思いが理解できるのだ。

 あの大戦で多くの仲間が死んでいった。見知らぬ異郷の地で故郷と残した家族を思いながらも無念に果てて逝った。自分達にとって何の益も無く大義も無い、そのような戦場で…。

 そんな多くの命が失われた戦火の中で自分は―――葛葉 刀子は生き残った。

 それ故に…生き残ったが故に、彼女はそれを覚えている。無念と絶望を抱えて散って行った者達の声を……あんな場所へ送り込んだ者達―――“本国”と東に加え、西の上層部さえも恨み憎む声を……。

 また生き残った者達も同様だった。多くの者が憎悪を抱いた。葛葉も嘗てはその一人であった。

 だから東と和解し、差し迫った有事に備えること以上に、西に居る者達が怒りと憎しみを優先する気持ちが判ってしまう。しかし―――

 

「ふう…」

 

 憂鬱な感情が湧き上がり、思わず溜息が零れた。

 

 ―――しかし、そんな自分が今こうして東に居る。その事実を逝ってしまった彼等…かつての仲間が知ったらどう思うのか?

 

 葛葉は大戦の事を思い返す時、たまにそんな事を思う。

 死んだ者達はもう何も言えない、だから分かる筈も無いが…少なくとも喜びはしないだろう、とは思う。なら自分と同じくあの大戦に参加し生き残った者達はどうだったか。

 言うまでもない、自分の事を裏切り者だと罵り、怒りを向けて来た。東へ渡る際、引き留める声以上にそういった罵る声の方が多かったのだ。

 しかしだからといって後悔はしていない。顔向け出来ないとも思っていない。

 

 東に行くことに成った時の……あの想いは、確かなもので間違っていたとは思わないからだ。あの時の自分はそれ以外の選択肢を持っておらず、それに……そう、今でこそ苦い思いもあるが確かに幸せだったのだ。一人の女性(おんな)として。

 

 それに“噂”が真実であったと確信した事もある。“本国”の一部の人間が懐いた欲望によって齎された現在の状況を。修復されつつあったこの日本の裏を二つに引き裂いた謀略を。

 だからこそ葛葉は東に属する元西の人間として、また大戦に身を投じた一人として東西関係の改善に尽くそうと思った。

 それこそが陰謀を仕組んだ連中への意趣返しと成り、異郷で散った者達への供養と仇討ちになると固く信じているからだ。

 だが、葛葉のそんな決意に水を指すように、西の者は先程彼女が零した言葉に答えるように口を開いた。

 

「憎しみ…か。確かにその通りじゃ、しかしそれだけならば…のう」

「?」

 

 西の老人の言葉に葛葉は疑問の視線を投げかける。

 

「一番の問題はそれを利用せんとする者達がおる事じゃ。知っての通り、ワシを始めとした…云わば西の重鎮たちは、“本国”の仕組んだ謀略と真実を知っておる。だがその皆が皆、長を支えようと、東との関係改善に尽力しようとしている訳では無い」

「!?……それはつまり」

「うむ、現在の対立状態やこれら東や“本国”の連中へ抱く隔意的な感情を利用し、権勢を高めようとする輩も居るという事じゃ……真実を理解した上でな」

 

 葛葉の疑問に答えて漏らしたその言葉は苦み切っていた。それら不届き者に対して如何なる感情を抱いているのか葛葉には良く理解できた。

 恐らくは―――侮蔑だろう。

 西には“偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)”為る言葉や称号こそないが、根本的に志しているものは同じだ。

 そう、人の世を魑魅魍魎と悪鬼などの魔の手と凶事や災厄から守るという思いを胸にし、ヒトならざる力を振るうのが呪術師の役割であり、神鳴流の役目なのだ。

 だが、その本分を二の次にし、襲い来る災いを前に権力闘争に没頭するなどあっては成らない。言語道断だ。とてもではないが捨てて置けない輩だ。

 葛葉は思考が白熱するほどの怒りを覚え、歯が砕けかねない程の強い力を顎に込めた。

 大戦を生き抜き、多くの同胞の死を看取って来た彼女にして見れば、そのような輩は万死に値する存在でしかなかった。

 無念に異郷で果てた彼等を利用する行為―――まさに冒涜であり、本当の意味での裏切りだ。陰謀を巡らせた“本国”の連中と何ら変わらない……いや、同じ西の者で在る事を思えば尚更性質が悪い。

 芽生え、体の内で荒れ狂う怒り…憤怒という大きな激情(エネルギー)を抑制する為か、葛葉は無意識に首が下がって俯き加減と成り、その視線は畳の上に固定されたが、彼女の瞳には見知らぬ顔を持つ“敵”の姿が映っていた。

 

 

 そんな葛葉の姿はやや心配であったが、西の老人の話を聞いていた木乃香はやや不可思議に感じ、ついそれを口に出して尋ねていた。

 

「その“本国”…メガロメセンブリアやったけ? そこが西や東に仕掛けた陰謀って皆知らへ……知らないのですか?」

 

 それが木乃香の感じた疑問だった。

 明治から大正に掛けた諍いならいざ知らず、今現在こうして東西が決裂している原因は本国の仕掛けた陰謀が発端なのだ。ならそれを皆が知り、理解すれば互い争う事も無くなり、和解も難しくなくなるのでは? と木乃香は思うのだ。

 しかし、

 

「端的に言えば、陰謀論という形でその話自体は広まっており、殆どの者が知っておりますな。東もまた本国に嵌められた、と」

「そうですか…でしたら―――」

 

 それなら、と木乃香は一瞬楽観的な思考を巡らせたが、

 

「無理でしょう。それら広まった話は皆、噂程度という認識しかなく、信頼性も皆無に近く、東の言い逃れと捉える人間の方が多いのが実際の所なのですじゃ」

 

 そう思わぬ事を言われ、続ける言葉を失った。

 

「言い逃れ…」

「そうです木乃香様。戦後…いや、戦中から“本国”の陰謀という噂は広まっていました。しかし確証は示されず、噂のみが先行し、東……近右衛門殿も当時は公式的な見解を出せず。それが結局、陰謀論という悪質なものに落ち着かせる事と成り、気付けば言い逃れという風聞が立っていたのです」

「陰謀を裏付ける物的な証拠が無いですからね。当時は東も本国派と協会派に別れ、色々とゴタゴタしていましたから、その間隙を突かれてしまったという面もあるのでしょう」

 

 木乃香の漏らした声に中年の一人と青年が答えた。

 

 

 あの当時、“本国”は使者を西に送り出し、書簡に口頭を添えて要求を伝えた。例の「味方に加わらなければ、東及び各国に在る魔法協会と共に西を攻める」という恥知らずと言って良いほどのものを。

 当時の西の長は結果的にそれを信じたものの、仮にも組織のトップに立てた人間である。当然、無能な訳は無く、関東魔法協会を通じて厳重な抗議と交渉を呼びかける為に行動を取った。

 しかし、その東を通じて得た情報が却って西の長を懊悩とさせる事と成り、大戦の参加を決断させてしまった。

 つまり東と各国の魔法協会は本気だと、要求の拒絶を口実に関西呪術協会に戦争を吹っかけて制する気だと、そのような確証を得てしまったのである。

 

 何故そうなったのか? 東も各国の協会もそんな積もりは一切無く。また西へそうした要求がなされた事自体知らなかったにも拘らず。

 

 その原因は、当時の東の情勢…関東魔法協会が二派に別れていた事に在る。

 その頃、東は大戦への関わりを最低限の支援に留めるべきか、それとも積極的に参戦するかの、どちらを選択すべきか決断を迫られていた。

 ただ意外であると思うが、当時も長という立場に在った近右衛門は積極的な参戦を支持していた。しかしだからといって彼は本国派という訳でもなかった。古くから日本の裏を守り手として尽力してきた“近衛”の人間であり、その為に協会の自治を保ってきた家系なのだ。当然、“本国”の影響下に置かれる事を是とする訳がなく。

 あからさまに利で釣ろうとする“本国”の態度にその真意が透けて見え。近右衛門は正直呆れと共に素直に頷けないものは在ったのだが、それでも泥沼と化して一向に終結の兆しが見えない状況を打破し、戦争の早期終結を計るという観点では間違っていないと彼は考えたのだ。

 加えて言えば、敢えて積極的に協力して発言力を確保した方が―――勿論、その機を見計ってだが―――講和なり、和平なりを提言できるのでは? という狙いもあった。

 そう、あくまでも近右衛門は私情や己が利益の為では無く。世のため人のためと成る“偉大な魔法使い”の信義や理想、そして現実的な観点に基づいて戦争の早期終結を図る為に参戦を支持し、決意したのだ。

 無論、協会の利益も多少なりとも考慮してはいただろうが、それは二の次であった。

 そして協会派の消極的な面々も近右衛門の説得とその言い分に納得し、最後は頷く事に成った。

 

 だが、大戦に積極的に関わるというその決定を本国派に利用されてしまう。

 

 本国に積極的に協力するという東の姿勢を、例の脅しの確認する為に連絡を取って来た西に対して本国派は歪曲した返答を伝えたのだ。そして西の長はそれを鵜呑みにした。

 無論、西は何度も確認を行った…が、しかし“本国”及び本国派の工作によってその歪曲した情報は是正されず、また近右衛門も見事に騙され、西も自分たち同様、早期終結の為に“本国”の派兵要請に応じたものだと思い込んだ―――いや、そう吹き込まれた。

 そうして事実を知ったのは、条約の締結した後、西と東の双方が戦力を魔法界へ送り出して、暫くした時だ。

 

 その時にはもう遅かった。

 “本国”が西へ使者と共に送ったあの恥知らずな文面が書かれた書簡は“何時の間にか”紛失しており。工作に関わった東の本国派の人間も魔法界へ渡った後、消息が不明となるか、所属を協会から“本国”に“正式”に異動ないし移籍しており、法的に召還不可能と成っていたのだ。

 本国の陰謀を示す証拠と証人を西と東は失ったのである。

 その為、直後に広がり始めた噂を公式に東は認める事が出来なくなった。何を言っても“本国”に対しては言い掛かりにしかならず、悪くすれば、派兵した者達が悲惨な目に遭いかねなかったからだ。そう、戦力としてのみならず人質としても利用されたのだ。

 そして西に対しても既に“本国”の恫喝が蔓延していた上、東が積極的に協力した事実もあり、広がった陰謀論―――噂は言い逃れにしか聞こえず、しかも公的に「関東魔法協会はMM元老院の意を受け、関西呪術協会に派兵を要請し、呪術協会は善意でそれに応じた」と記された事もあって。“本国”と共に本当に西を脅したと認識され、今更嵌められた等という言い訳は通じなくなっていた。

 

 その後、東は大戦終結後に本国派を完全に排する事になんとか成功し、西の上層部の誤解も解く事は出来た。

 それは近右衛門を始めとした東の上層部が件の陰謀劇の末に一本化され。またそんな東を西の上層部が信用できると判断し、“本国”への疑惑と不審を一致させたからである。

 しかし20年経過した現在でも、互いの上層部が連携した甲斐も空しく改善は遅々として進んでいなかった。

 私欲から改善を望まぬ一派と、憎しみを拭えない者達によって。

 

 ―――しかし、近衛と青山の血を併せ持った木乃香が台頭の動きを見せた事と、壊滅したと思われた“完全なる世界”という恐るべき敵がこの国に現れた事で、停滞気味であった流れが急激に進み始めた。

 

 そう、二つの血を受けた木乃香の秘める求心力(カリスマ)と露わに成った明確な脅威(てき)の存在は、恨みと憎しみに囚われていた者達に少なくない影響を及ぼし始めたのだ。

 ただ、それを苦々しく思う勢力が在ることも事実なのだが……急激に進む流れによって、堰き止められていた状況に変化が生じつつあるのも確かな事であった。

 

 

 木乃香は、それらのより深い事情を聞いて自分の存在が如何に大きく重要か改めて認識…いや、思い知らされた。

 押し寄せて来る言い知れぬ重圧に身体があの時…エヴァから話を聞いた時のように震えそうになるのを自覚し、必死に堪えた。

 

(駄目や…そんな無様な姿は見せられへん、見せたらダメ…)

 

 そう、内心で繰り返して耐え、身体の震えは何とか抑えることは出来たが、血の気が下がり、顔が蒼白に成り、嘔吐感が込み上げて来るのを感じ、悔しさと情けなさを覚えて涙が出そうになった。

 これでは気付かれてしまう、失望されると思ったからだ―――しかし、

 

「すまんのう」

 

 肩に優しく手を置かれたのを感じると同時に、そんな優しい声が直ぐ傍から聞こえた。

 木乃香は、ハッとして下がっていた視線を上げると目の前には、すまなそうにしながらも安堵を覚えさせる笑みを浮かべる老人の顔があった。

 席を立って傍に来た彼は、労るかのような視線を木乃香に向ける。

 

「儂らが不甲斐無いばかり、このような重荷を背負わせて本当にすまん…木乃香」

 

 そう、謝意と共に優しくも親しみが籠った声が老人の口から発せられた。

 途端、疑問が木乃香の脳裏に過ぎる。先程もそうだが、交渉の時も敬語を自分に向けていたのに…どうして―――?

 

「あ―――」

 

 ふと、思い出した。自分はこの人を知っていると。

 昔…小さい頃、まだせっちゃんと会う前。寂しく一人で遊んでいた自分に良く話しかけ、綾取りや毬つきなど遊びに付き合い、コツを教えてくれ、時には羊羹やお煎餅などの菓子を持って来てくれたお爺さん……その顔を思い出した。

 木乃香の眼が驚きに見開かれる。

 

「……ゲン爺ちゃん…」

 

 そう気付かぬ内に呟くと、老人はフフォフォと自分の祖父の物とよく似た笑い声を静かに上げた。

 

「うむ、懐かしい呼び名よのう」

 

 笑い声と共に嬉しそうに老人は言い。木乃香の頭に手を置いた。

 

「大きくなったの、木乃香」

 

 短くも感慨深げに言いながら頭を撫でる。優しくも何処となく不器用様な若干乱暴にも思える手付きだった。だが木乃香はされるがままにした。自分もまた懐かしさを覚えたからだ。

 そのお蔭で木乃香は身を包んでいた重圧が消え、身が軽くなったように感じた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 老人が気遣ってくれた事もあり、木乃香は完全に落ち着きを取り戻し、他の面々も安堵すると共に重苦しい気配は無くなり、大広間は情報交換を交えた談笑の場と化した。

 食事も運ばれ、会食に移ると皆は更に饒舌に成った様で軽口や冗談も出てきて木乃香は思いのほか、大人に囲まれたその時間を楽しく過ごせた。

 特にゲン爺と呼ぶ老人との会話は木乃香にとって懐かしい思い出も手伝ってとても弾んだ。

 無論、彼らなりに木乃香を気遣った事もあるのだろう。木乃香も流石にそれは察したが口には出さず、情けない姿を晒した事を反省するのは後にしようと思った。

 

 こうして木乃香の初めての公務は大した難事も無く、無事終わりに向かった。

 

 

 ―――のだが、

 

 

 それは、その帰り際の事だ。

 西と東の双方が大広間を後にし、先に外で待機していた護衛と合流した時、

 

「あの者は…」

 

 制服姿の小柄な少女を目にした西の老人…ゲン爺が呟くと、他の西の面々も何かに気付いた様子で制服の少女こと刹那に視線を向け、数秒ほど彼女を凝視し、

 

「―――の小娘か…」

「―――…!」

 

 その中の誰かが小さくも吐き捨てるかのように言い。その声を聞いた…聞いてしまった木乃香は身体をピクリと震わせ、思わず視線を彼等の方へ向け―――見てしまう。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「では、またいずれお会い出来るのを楽しみにしております。木乃香様」

 

 そう、恭しく頭を下げて別れの言葉を告げる西の者達に木乃香も「こちらこそ」と、丁寧に返事をして白亜のリムジンに乗り込んだ。

 そうして、来た道を辿って東の一団は帰路へと付いた。

 

 木乃香は来た時と同様、ボンヤリと窓の外を見つめ、先程から脳裏から離れない出来事を反芻した。

 

『烏族の小娘か…』

 

 そう言ったのは中年の男性であったが、その他の西の面々もその男性と同じ目をしていた。汚らわしく卑しいモノを見る目だった。

 

(ゲン爺も…同じやった……)

 

 ショックだった。

 刹那がハーフで差別を受ける存在である事は理解していた積もりだ。

 けれど、それでも……あの優しいゲン爺まで、ああもハッキリとした嫌悪の表情を刹那に向けるとは思わなかった。

 他の西の人間にしても未熟な自分に敬意を示し、また木乃香個人に対しての気遣いも見せていた……そう、大きい器量のある人間だと思ったのに、

 

(せっちゃん……)

 

 後方を走る車に視線を向けて内心で大事な幼馴染の名前を呟いた。

 その時、当人である刹那は気にした様子を見せなかった。向けられる好意的とは言い難い真逆な視線を受けながらも平然とし、そんな目を向けて来る彼等に敬意を払うかのように頭を下げてお辞儀すらして見せた。

 しかし刹那の態度を彼等は見えなかったかのように無視し、彼女から視線を外した西の者達は木乃香と葛葉、弐集院たちと先程まで続いていた歓談へと戻った。

 

(あれが……現実…なんやろうか?)

 

 西が向ける刹那への態度。それを当然とする刹那の姿勢。

 未だ多くの事を知らず、学んでいる最中である木乃香にとって、これが初めて明確に眼にした“敵”の姿だった。

 そう、押し寄せるであろう多くの困難の中でも恐らくは最大級のモノで、必ず打ち勝たなくてはならない大敵(ラスボス)

 

 刹那と同様、独り広い屋敷に居た自分の孤独を癒してくれていたあの優しい老人すらも囚われているモノ。

 

 けど―――

 

(確かにショックやった。あんなのを見せられてを辛くて悲しかった。けど…いや、だからこそ負けへん。負けられへん)

 

 これからもきっと何度もそう言った思いをするだろう。けどそれは、せっちゃんがずっと…それも何倍もの大きさで経験してきたことなのだ。

 だから、自分も挫けてはいけない。それ程度でへこたれて居ては刹那に顔向けなんて出来ない。

 戦って、乗り越えて、打ち勝ってもうそんな思いをしなくても良い“何時か”を手にする為に―――

 

 ―――絶対に負けない!!

 

 そう、木乃香は改めて誓った。

 大切な幼馴染を守る為。ずっと傍に居られる幸福に満ちた未来の為に……或いは、木乃香も知らない刹那の幸せを願い、彼女を生かした優しい“誰か”の祈りに応える為。

 

 

 




 以前、エヴァに語らせた設定を煮詰めた感じのものです。
 外伝的な話ですが一応、本作の本編にも大小様々な形で関わって来ます。

 そしてまさかの可奈子登場。
 向こうでの連載時ではぼかしていたのですが、此方では明確にしてます。今回は余り出番はありませんでしたが。
 でも、もう15年も前の作品の登場人物ですし、知らない人も多いでしょうね。特に若い方達は。

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