たとえ全てを忘れても   作:五朗

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第十話 いつかと、望む先へ

「だから私をっ―――守ってくださいっ!!」

 

 華奢な体を、遠目でも一目で分かる程に震わせて。

 大きなその瞳を涙で揺らしながら―――それでも丸まりそうになる背中を伸ばし。

 胸を張り、手にもった自身の唯一の武器を突き出すその姿に―――【ヘルメス・ファミリア】の皆は申し合わせたように顔を合わせ、頷いた。

 

「っ、ははっ! いいよっ! いいぜっ! やったろうじゃないかっ!!」

「わかりました。貴女に、託しますっ!!」

 

 ルルネのやけくそじみた応答に続き、アスフィがレフィーヤに応えた。

 そして、【ヘルメス・ファミリア】を見回すと、最後かもしれない指示を出した。

 

「全員、【千の妖精(サウザンド)】の下へっ! 私たちの全て―――彼女に委ねますっ!!」

「「「おおっ!!」」」 

 

 自分達の命運を、他のファミリアに委ねる。

 その決断に【ヘルメス・ファミリア】からは誰一人として異論は出ず、力強い頷きをもって応えた。

 

「3分間、絶対に【千の妖精(サウザンド)】を守り抜きますっ!!」

 

 アスフィの決意の宣言と共に、【ヘルメス・ファミリア】が動き出す。

 ボロボロの身体に鞭を打ちながらも、動けない者に肩を貸しレフィーヤの下に集った彼らは、直ぐに最後の希望(レフィーヤ)を中心に方円陣形を取る。

 陣が完成するや否や、レフィーヤは直ぐに瞼を閉じ、魔法へ意識を集中させ―――詠唱を紡ぎ出す。

 

「【ウィーシェの名のもとに願う】!」

 

 レフィーヤの足元に、山吹色の魔法円(マジックサークル)が広がり、高まる魔力が光を放つ。

 詠唱と共に練られる魔力の渦に引かれ、周囲の食人花たちが目に見える程の反応を示す。

 その()が向けられる先には―――レフィーヤの姿。

 数えるのも馬鹿らしい食人花達との3分間の―――運命を決する死闘が幕を開けた。

 

【森の先人よ】

 

 詠唱が一つ―――

 

「来るぞぉっ!」

「あああああぁぁぁあ!!」

 

【誇り高き同胞よ】

 

 一つ、くべる度に、高まる魔力。

 それに比例し、襲いかかる食人花の数は増加する。

 しかし、逃げるわけにはいかない。

 

「倒そうと思わないで、近づけさせないだけでいいっ!」

「無茶言うっ!!」

 

 指示の声は、ちゃんと届いているのかわからない。

 回りを見る余裕などない。

 目の前の敵を、ただひたすら受け止める。

 構わず横をすり抜けようとするモンスターの前に、自ら立ちふさがる。

 最後の希望(レフィーヤ)を守るため。

 

【我が声に応じ草原へと来たれ】

 

 ひび割れた剣を、砕けた盾で、持ち上げた岩を武器に、弾き、受け止め、叩きつけ。

 ただひたすら堪え忍ぶ。

 一秒一秒が余りにも遅い。

 まとわりつくような時間の感覚の中、意識だけが先走る。

 

【楽宴の契り】

 

 薄氷を踏むような戦いが続く。

 何時、誰が欠けてもおかしくない。

 だけど、それでも、まだ―――耐えていた。

 

【円環を廻し舞い踊れ】

 

 なら、もしかしたら―――

 

 間に合うかもしれない。

 

 そう、思ってしまった。

 しかし、それは―――その思い(希望)は……

 

【至れ、妖精の輪】

 

 ―――錯覚でしかなかった。

 

「っ!!?」

「ホセっ!?」

 

 アスフィの背後を守っていた獣人の男が、一体の食人花に腕を噛みつかれ引きずり込まれていく。

 

「ホセぇっ!!」 

「誰っ―――っダメですっ!!」

 

 咄嗟に仲間が助けに走り出そうとするのを、アスフィは反射的に口に出そうとした指示を唇ごと噛み締めると、団長としての命令を下した。

 仲間の救出を却下され、思わず足を止めた仲間から向けられるひきつった顔に背を向けながら、食人花の相手を続ける。

 

「団長、命令ですっ!! 陣形を崩すことは許しませんっ! たとえ、何があっても、たとえ―――誰が死んでもっ! 決してっ!!」

 

 文字通り、血を吐くような命令に、仲間の危機に動き出そうとする足を無理矢理押し止め、引きずられるホセを見送るしかない団員たち。

 怒りと、無念と、悔恨と―――形にならないぐちゃぐちゃの感情が込められた目を向けられたホセは、迫り来る避けられない死を前に、何故か自然と口許に小さな笑みが浮かんだ。

 それは、強がりなのか。

 それとも、死を前にして何もかも放り投げたのか。

 その心の中は、眼前に突きつけられた死《食人花》ではなく、仲間のこれからへ向けられていた。

 

 

 

 何時か、こんな日が来ることを、予感していた。

 

 自分の分というのは、わかっていた。

 

 大した才能はなく、迷宮都市(オラリオ)を見渡せば、そこらへんにいる冒険者の一人。

 

 そんな自分だが、一つだけ胸を張って誇れるのは、あの【万能者(ペルセウス)】が団長を務める【ヘルメス・ファミリア】にいたってことだ。

 

 自分の娘といってもいいくらいに年が離れているにも関わらず、あのとんでもない(ヘルメス)からの無茶な命令(お願い)をこなして見せて。

 

 誰にも作れない道具を作り上げ。

 

 【万能者(ペルセウス)】なんて大層な二つ名を付けられた。

 

 自分の―――自分達の自慢の団長さまだ。

 

 その潜在能力(ポテンシャル)は、絶対に都市最強の【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】の団長たちにも決して劣らない。

 

 何時かきっと、彼女ならば彼らの頂へと届くだろう。

 

 ―――ああ、ここに至って心残りができるとは……某も未練がましいものだ

 

 口許に浮かんだ笑みが、僅かに深くなる。

 引きずり込まれた先で、食人花たちが涎を垂らしながら自分を囲んでいる姿に。

 救助を却下した命令を下した団長に恨みはない。

 自分も納得している。

 ああ、しかし―――。

 彼女はきっと傷付くだろう。

 これから起きる惨劇で、厳しくも優しい彼女(アスフィ)の心に傷をつけてしまう事に申し訳なく思いながら。

 

「ああ、もう少し、一緒にいたかった」

 

 ホセが、そう、誰に言うでもない未練を口にし―――

 

「―――諦めるには、まだ早いだろ」

「え?」

 

 隣から聞こえた返事に、思わず気の抜けた返事を返してしまった。

 

「っな!!?」

 

 慌てて聞こえた方へ顔を向けると、そこには赤い外套を身に付けた白髪の男の姿が。

 男―――シロは周囲を取り囲んでいた食人花が一斉に飛びかかってくるのを、両手にもった双剣でもって切り払い、僅かに出来た隙間から呆然としたままのホセの襟首を掴むと飛び出した。

 

した。

 

「ぐっ」

「我慢しろ」

 

 急な動きに、首が絞まり、苦しげな呻き声を上げるホセに構わず、シロはそのまま円陣を組む【ヘルメス・ファミリア】の下まで走り続けた。

 

「ホセぇ!!」

「このっ、この、バカやろお!!」

 

 持ち場から離れられずに、しかし耐えられないといった様子で、汗や涙で歓喜で歪ませた顔を濡らしながら、【ヘルメス・ファミリア】の面々がホセに声を掛ける。

 シロの手から離れ、痛む喉を擦りながら、暫くの間地面に座り込んでいたホセは、自分の命が助かったのを知ると、無精髭が伸びたざらざらとした顎を一つ撫でるとゆっくりと立ち上がった。

 

がった。

 

「はは、どうやら某の悪運は尽きていなかったようだな」

「ホセ」

 

 食人花の襲撃を捌きながら、アスフィが自分が見捨てた仲間へ複雑な声を向ける。

 硬い、震えた怯えたような声に、しかしホセはそれに気付いた様子を見せずに応えた。

 

「さて、それじゃ団長さまのご指示通り。某の持ち場へ戻るとしますか」

「っ」

 

 ホセのその声と言葉に含まれたものに、アスフィは気付き、泣きそうになる思いを眼前の食人花を殴り付けることで散らすと、吠えるように声を上げた。

 

「残り2分っ! 全員っ―――生き抜きますよっ!!」

「「「―――おおっ!!」」」

 

 

 

 

 

「彼は―――」

「ははっ―――ほんとすげぇよな」

 

 発破を掛けたアスフィが、ふと、向いてはいけない方向に傾き掛けた天秤を戻した功労者を目線で探そうとすると、隣にいたルルネが、この修羅場の中、場違いに明るい声で笑っていた。

 

た。

 

「ルルネ?」

「なあ、団長。あれが―――あいつが【最強のレベル0】だ」

「っ、そう……ですか。彼が……」

 

 【最強のレベル0】―――迷宮都市(オラリオ)に語られる数多くの噂話の一つにある都市伝説。

 ヒューマンであったり、エルフだったり、獣人だったりと、それだと言われる者は、噂話に良くある通り一貫としていないが、ただ一つだけ共通するのが、レベルに属さない強さ。

 その代表的なのものとして、【最強のレベル0()】は神と契約するよりも前に、高レベルの冒険者を倒したというものであった。

 それは、この神時代において全く信用のおける話ではなかった。

 レベルと強さは殆ど同一に等しい。

 確かにレベル差を覆して勝利したという話がないわけではないが、それでも、神の契約による力があってこそ。

 神との契約もない状態で、高レベルの冒険者を倒すといった話など、そこらの小さな子供でさえ信じないだろう。

 実際に、アスフィは信じていなかった。

 噂には聞いていた。

 神の無茶振り(お願い)による依頼に対応するため、幸か不幸か情報には強く。知らず様々な話が耳に入ってくる事が多かった。その中でも、【最強のレベル0】の噂は数多く耳にした。

 

た。

 曰く―――単身でモンスターパレードを潜り抜けた。

 曰く―――階層主と単独で渡り合った。

 曰く―――【凶狼】を一発で倒した。

 どれもこれも眉唾にしか思えない。

 レベル5や6の高レベルの冒険者なら兎も角。

 少なくとも今の彼はレベル1でしかない。

 それは確かだ。

 ルルネが巻き込まれた―――いや、首を突っ込んだ事件の際、【最強のレベル0()】の強さは本物だとルルネが騒いだため、こういう話が好きなヘルメスが興味を示すかもと、確認の意味も含め、以前一応念のためと調べて見たが、確かに彼はまだ冒険者になって半年も経っていないレベル1だった。

 

認の意味も含め、以前一応念のためと調べて見たが、確かに彼はまだ冒険者になって半年も経っていないレベル1だった。

 その時は、彼は何か特殊なスキルがあるのか、それとも特別な武器でもあるのだろうと、深くは考えなかったが、彼の戦いを目の当たりにしてわかる。

 彼のそれは、そういった特別なものではない、と。

 ある意味、自分に良く似ている。

 周囲を良く確認し、利用する。

 現実とこれまでの経験を考慮に、瞬時に判断する。

 言ってみればそれだけだ。

 だが、それが実践で出来るように。それも高レベルで行えるようになるには、言葉では良い表せられない程の努力と経験が必要だ。

 彼ほどの段階に至るには、一体どれ程の経験を積めば良いのか検討もつかない。

 ああ、そうだ。

 本当にわからない。

 経験と実際のレベルが余りにも釣り合わない。

 基本、レベルは神との契約後における経験値を元に上がっていく。

 なら、つまり彼は神との契約が行われる前に、そこに至るまでの経験をしたということ。

 そんな男を、私は一度も耳にしたことはない。

 本当に―――

 

「彼は何者なのですか?」

 

 

 

 

 

「――――――ッ!」

 

 もはや壁にしか見えない密集した食人花の群れに一人突っ込んだかと思えば、僅かに出来た隙間とも言えない空間に体をねじ込むように通り抜けながら斬撃を放ち。

 

 自身に注意を向けさせると、そのまま食人花の身体の上を走り出す。大嵐の海原の如く波打つ身体を駆け抜け、迫る口蓋を避け、逸らし、避け続ける。

 一向に捕らえられない獲物に、食人花が諦め魔力が高まり続けるレフィーヤへ意識が向けば、即座に反応、攻撃し、自分へ意識を向けさせる。

 時には同士討ちをさせ、地面に転がる白ローブの死体から爆薬を取り出すと、それを上手く密集している位置に投げつけ爆発させる。

 そんな文字通り息つく暇もないそんな攻防を、一瞬も休むことなく彼は続けていた。

 そこに、何か特殊な能力は感じられない。

 武器も、確かに食人花を切り裂く双剣は業物だが、特殊な魔道具ではない。

 それに、肝心の力や速度は、確かにレベル1とは思えないほどのものではあるが、目を疑うレベルとまでは言えない。

 では、何故彼はここまで戦えるのか。 

 レベル4である自分でも無理だと言えるようなことを、ただのレベル1でしかない彼にできるのか。

 それは―――。

 

「―――ああ、くそ。ほんと嫌になるよな」

「っっ、ポック?」

「わかっちまうから、なおさらっ―――だっ!」

 

 小さな―――小人族(パルゥム)の小さな手で握った壊れかけのハンマーで、(ポック)は苛立ちとは違う胸を騒がす衝動を晴らすように、食人花を殴り付ける。 

 

「なに、そんなに興奮してるの」

「ああ? してねぇよっ!」

 

 あの男が引き付けているからか、明らかに食人花の圧力が減っている。

 勿論まだ間断なくモンスターは襲ってくるが、こうして隣に立つポット()と話ができる程度には余裕が出来た。

 

「そう? なら何で笑ってるのよ。あなた」

「あん? 笑って……」

 

 訝しげに姉の方へ顔を向ければ、見つめてくる自分に似た顔立ちに備わった二つの瞳に見えるのは、まるで―――

 

「何かいいことあった?」

「っ―――は……別に、そんなんじゃねぇよ」

 

 逃げるように顔を逸らし、また一つ襲いかかってくる食人花へ向き直る。

 

(ああ―――そうとも。あいつはあの人とは違う。確かに、あの人も努力をしたのだろうさ。あの顔から想像もつかない年月(数十年)も。だから、オレも何時かはって―――そう思いながらも、進む先が見えなかった。あの人(勇者フィン)と同じになる自分が想像できなかった。だけど―――)

 

ながらも、進む先が見えなかった。あの人(勇者フィン)と同じになる自分が想像できなかった。だけど―――)

 

「はは―――ほんとすげぇよあんたは…………あんた、一体何者なんだよ」

 

 才能、ではない。

 異能、でもない。

 ましてや何か道具を使っているわけでもない。

 彼のそれは―――経験(・・)だ。

 これまで積み重ねたものによる力。

 それが―――わかる。

 自分も何時かは、と言える。

 その力がそこにはあった。

 歩み続けている自分だからこそわかる。

 

 ―――『小人族(パルゥム)は他と比べるな。だってパルゥムだから』

 

 何時からか、そう思っていたオレの持論。

 ああ、そうだ。

 パルゥムだから、同じだけの努力をしても、結果得る力は他の種族が手に入れるそれと比べ小さくなってしまう。

 何度も何度も味わった、苦い思い。

 変わらない【ステイタス】。

 先へいく同じ筈のパルゥム(メリル)

 積み重なるのは、ただ経験(・・)だけ。

 何の役にもたたない―――そう思っていた。

 だけど―――

 

(っ、そこへ突っ込む? ああっ、確かにそうすれば―――あれなら、オレも―――)

 

 今のオレじゃ比べ物にならない。

 比較にもならない。

 それでも、オレにはわかる。

 あいつは、オレと同じだ。

 才能ではない。

 凡人が、一つ一つ積み重ねた動き。

 無駄を省き、経験から得た勘で反応し、常に頭と身体を動かし続ける。

 自分が今まで、そしてこれからもやっていくこと。 

 あれは、自分が、自分達が目指す先にある一つだ。

 いつかオレもと言える。

 ただ一つ。

 他と比べなくてもいい経験(・・)を重ね続けた結果至れる場所(強さ)で―――

 そんな場所で、あいつは戦っている。

 

「ああ、くそ―――あんな奴も、いるんだな」

   

 知らず零れた声には、羨望とも憧憬とも違う。

 胸に燃える炎の勢いを強くする熱が込められていた。

 

   

 

 

 

「―――すごい」

 

 そのヒューマンの少女は、負傷して動けない者たちの傍で、彼らの護衛としてそこにいた。

 護衛―――といっても形だけだ。

 何故なら彼女は荷物持ち(サポーター)でしかなく。

 何の力もないのだから。

 指示にしたがって、荷物から必要なものを取り出すだけ。

 戦うことも殆どなく、時おり魔剣を使って補助するぐらい。

 ただの荷物持ち。

 別に、それを否定するわけではない。

 サポーターとしては、それなりに―――いや、他のサポーターと比べられないぐらい良い待遇だということはわかっている。

 だけど、それでも思ってしまう。

 私にも、何かできるんじゃないか、と。

 どんなしたっぱでも、私はあの【万能者(ペルセウス)】率いる【ヘルメス・ファミリア】の一員だ。

 何時か自分も力を付けて、荷物持ち(サポーター)ではなく、戦力として、皆の力になることができるって。

 そう思ってた。

 だけど―――

 

「油断するなぁっ!! 右から3体一気に来るぞぉ!!」

「武器がっ?! 予備はっ」

「もうねぇよっ!!」

 

 悲鳴と怒号が響き渡る。

 危機はまだ続いている。

 少しでも何か舵取りを誤れば、一気に天秤が傾いてしまう。

 そんな状態が続いている。

 皆の体も心も限界で。

 それでも何とか耐えていられるのは―――

 

「―――オオオオオオォっ!!」

 

 あの人のおかげ。

 赤い外套を身に付けた応援に来たヒューマンだと思う男の人。

 双剣を振るってただ一人食人花の中を飛び回っている。

 あの人が囮となっているおかげで、最後の希望(レフィーヤ)へ向かう食人花の圧力が減っていた。

 もし、あの人がいなかったと思うと、寒気がする。

 実際、彼が来る前にホセさんが食人花に殺されかけてしまった。

 あの時、私は結局何も出来なかった。

 団長は、持ち場を離れるなと言ったけど―――私の持ち場はあってないようなもの。

 一体のモンスターを足止めするどころか足手まといにしかならないから……ただ後方で負傷者の護衛という名目で立っているだけ。

 ホセさんの危機にも、唯一の有効な武器である魔剣を握りしめ、ただ声を上げるしかなかった。

 何も―――そう、何もできない私。

 ただ、見ているだけ。

 すがるように握りしめた魔剣が震えている。

 不安か、恐怖か、それとも自分に対する情けなさ故か、震えは一向に止まらず大きくなるだけ。

 魔剣―――私の魔剣。

 皆の力になれればと、少ない貯金を崩して買った私の魔剣。

 この魔剣と出会ったのは、何時、だったか……。

 そう、確かたまたま一人で武器屋に行ったときに、たまたま見つけたんだ。

 魔剣を買う予定なんかなかったのに、つい、手に取ってしまった。

 これがあれば、皆の力になれるのでは、と思って。

 魔剣を手に、皆の危機を救う自分を夢想した。

 でも、私が何とか買える魔剣なんてたかが知れて……精々団長の爆炸薬(バースト・オイル)を点火させるぐらい。

 それでも、皆の役には立てた。

 それで、良かった―――良かったのに―――今は力の無さが本当に悔しい。

 何時か、あの人(赤い男)の姿が滲んで見える。

 悔しさか、嫉妬か、それとも別の何かか。

 胸を騒がす思いで涙が滲む瞳で、睨み付けるように彼の姿を追う。

 魔剣を握りしめる手が熱い。

 その熱が、胸の奥でたぎる熱が、ふと、魔剣の名を思い起こさせた。

 自分がこの魔剣を手に取った切っ掛け。

 明らかに名前負けした仰々しい名。

 この魔剣を売っていた店主でさえ、笑っていた(馬鹿にしていた)立派すぎるそれを―――打った鍛冶師はどういった思いで名付けたのだろう。

 何故か、そんな事をこんな時に考えてしまっていた。

 全体が見渡せる位置(後方)、ふと緩んだ緊張、僅かに広がった視界―――偶然と必然が合わさり、だからそれに彼女が最初に気付けたのは運命だったのかもしれない。

 

「―――なっ?! おお、すぎっ!??!」

 

 高まり続ける魔力に惹かれ、この瞬間にたまたまなのか、一度に大量の食人花がレフィーヤへ向かって群れなして迫ってきていた。

 遠目で見ても、数十はきかない数百にも迫ろうかという、最早移動する壁にしか見えない食人花の群れ。

 あれをどうにかするには、戦士では絶対に不可能―――それこそ強力な魔導師による魔法でしか。

 でも、その魔法を使うための時間稼ぎをしており。

 このままでは―――

 

(間に合わないっ!!?)

 

 どうすれば、と少女の頭に答えのでない疑問が高速で渦を巻く。

 無理。

 不可能。

 何もできない。

 否定ばかりが出てくる。

 否定しか、出ない。

 それが、答え?

 絶望に暗くなる視界の中―――一人の男の背中が見えた。

 少女が気付いた絶望を前に、その男は残った双剣の片割れを握りしめ向かい合っている。

 双剣の一つは、彼女の見る中で既に砕けていた。

 しかし、彼は全く怯むことなく残った剣を使い奮闘していた。

 彼は一つになってしまった際に、残った剣に何かしたのか、綺麗な曲刀が一瞬で長刀並みに大きくなり、強力さを見せつけるかのようにその峰には歪な羽じみたものが浮かび上がって

 

いた。

 その姿は伊達ではなく。

 一太刀で食人花を切り飛ばす程の力を見せていた。

 でも、それでももうこれは無理だ。

 津波に対し、どんな優秀な剣でもただの剣では飲み込まれて終わってしまう。

 

(ここまで来てっ!?)

 

 悔しさのあまり、噛み締めた唇が切れて口の中に血の味が滲む。

 赤い男の背中が僅かに沈む。

 ああ、向かうのだろう。

 絶望に向かって、それでも彼は立ち向かうのだ。

 私は、ただそれを見ているだけ。

 見ているしかない。

 くやしい。

 くやしい。

 くやしい。

 くやしい―――!!!

 燃え盛る炎。

 いつかと、願った力が、今はない。

 手を伸ばす先に、届く未来が―――あまりにも遠い。

 だけど―――。

 伸ばしたっ。

 大きく。

 大きく。

 無駄かもしれない。

 でも、何もしないでもいられなかった。

 だから、それはただの偶然。

 何か考えがあったわけではない。

 衝動のままに、ただ、心が願うままに動いただけ。

 手に握った。

 私の力。

 これまでの使用で、残りは一回しか使えない。

 威力も使用回数も話にならない。

 この状況ではただのごみにも等しいかもしれない。

 それでも、それは今の私が扱える最大の力だったから。

 届けと。

 私は、魔剣(私の願い)を彼に投げていた。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――静かだ。

 

 ただ、剣を振るう。

 

 身体に―――いや、魂に刻まれたそれにただ従う。

 

 風が揺らぐ動きを肌で感知。

 

 幾重にも重なる無数の音から、必要なものだけ聞き分け。

 

 瞬く間に変化する状況を、敵の動きだけではなく舞い上がる砂粒の一つすら把握。

 

 血や臓物、鉄や薬品、獣臭や食人花の独特な臭いを、呼吸する度に嗅ぎとり。

 

 それら全てを、同時に、意識せぬまま、意識して(・・・・・・・・・・・)把握する。

 

 あらゆる情報を取得し、即座に判断―――行動に移す。

 

 得た情報を処理し―――肉体()が命じるままに従う。

 

 一つの目的のために動く機械のように。

 

 剣を振る。

 

 目まぐるしく変わる状況、燃え上がりかねない熱を放つ脳髄。

 

 なのに、ただ意識だけが静かだ。

 

 自分の身体を、まるで他人(第三者)のように見ている。

 

 ―――いつから、だろうか………………。

 

 ―――こんな風に、自分を見るようになったのは。

 

 まるで大嵐の海の中にいるかのように、前後左右、上下から迫る食人花を相手にしながら。薄皮一枚先に死がある事に欠片も心を動かさず、ただ命令のままに動き続ける。

 

 ―――いや……最初から、だった。

 

 ―――ここ(オラリオ)で目覚め。

 

 ―――初めて戦った時から、その兆候はあった。

 

 ―――ただ、ここまで酷くはなかった。

 

 ―――躊躇いがあった。

 

 ―――混乱があった。

 

 ―――緊張があった。

 

 ―――怒りがあった。

 

 ―――ナニかがあった。

 

 ただ、決定的に変わったのは…………あの時(怪物祭)

 

 あれから、明らかにオレは変わってしまった。

 

 其れを良しとした。

 

 変わると、変わってしまうと納得し、確かに選んだ。

 

 その結果が―――これだ。

 

 僅かに残った記憶が記録に。

 

 知らない知識と、こことは違う常識が刻まれ。

 

 まるで一度身体を崩して、もう一度組み替えたかのように―――オレは変わってしまった。

 

 いや、文字通り変わったのだろう。

 

 実際に身長が伸び、肌は更に浅黒く。

 

 そして、僅かに長さが違った両腕は同じに変わった。

 

 ああ、そうだ。

 

 変わった。

 

 変わってしまった。

 

 彼女(ヘスティア)との繋がりも、また………………。

 

 ―――【無窮之鍛鉄】

 

 あの時、新たに得た【スキル】。

 

 ・ 自己より強大な敵と対する際に発現。

 

 ・ 【ステイタス】の随時更新。

 

 ・ 敵の強大さに比例し効果増大。

 

 ・ 成長に比例し、肉体・精神への負担増。

 

 しかし、同時に得た《思い出した》魔法《魔術》である解析を自分自身に使用し、わかったのは。

 

 ―――これは、【スキル】であって【スキル】ではない、ということ。

 

 これの本質はそれとは全く別のもので。

 

 使うほどにオレは―――変わって(戻って)しまう。

 

 そうなれば、彼女(ヘスティア)とますます離れていってしまうことになる。

 

 ああ、怖い。

 

 恐ろしい。

 

 嫌だ。

 

 それを(彼女を切り捨てることを)拒まない自分が―――怖い。

 

 家族になってくれと。

 

 短いながら、確かに笑いあった。

 

 共にいた。

 

 生きていた。

 

 なのに、オレは―――俺は―――私は―――それを斬り捨てる。

 

 それに、何の感情も起こらない。

 

 怒りも。

 

 恐怖も。

 

 悲しみも。

 

 何もかも。

 

 必要があれば、ただそうするだろう。

 

 必要だから(・・・・・)、という理由だけで。

 

 友人でも、恋人でも、家族でも何でもない。

 

 ただの通りすがりの他人であっても、必要であればそれ(・・)を捨て、助けてしまう。

 

 俺は―――ナンだ…………

 

 オレは―――ナンだ…………

 

 私は―――ナンだ…………

 

 ワタシは―――ナンだ………… 

 

 あの時、得た(思い出した)知識。

 

 私は―――英霊?

 

 俺は―――人間?

 

 万華鏡のように―――同時に、並列して存在する記録。

 

 とある英雄の物語。

 

 無数の()―――オレ(ワタシ)の物語。

 

 その中の一つが()のモノなのか?

 

 それとも違うのか…………。 

 

 何もかもがわからない。

 

 無数の記録に埋め尽くされ、そこから自分という存在が定義できない。

 

 ただ、己の魂に刻まれたモノに従い続ける。

 

 

 

 ――――――救え――――――

 

 

 

 その―――死してなお消えない。

 

 呪いのような声に、従う。

 

 見知らぬ誰かのために身を削る。

 

 そこに否が応はない。

 

 天に唾を吐きかければ、自身に落ちてくるように。

 

 当然とばかりに、何の疑いもなく自分を放り捨てる。

 

 そこに、疑問の一切はない。

 

 ワタシは誰だ―――

 

 オレはナンだ―――

 

 わからぬまま―――ただ救い続ける。

 

 戦えば戦うほどに強く《戻っていく》自分。

 

 (ヘスティア)の契約更新もなく強くなる(変わっていく)己。

 

 その度に―――削れていく契約()

 

 それを知りながら―――変わらない(変えられない)自分が―――…………。

 

 食人花の圧力は増す一方。

 

 レフィーヤの詠唱が終わりに近付くにつれ、それに比例し食料庫(パントリー)内外から食人花が無尽蔵に押し寄せてくる。

 

 今のぎりぎりの均衡は、もう間もなく崩れるだろう。

 

 そしてそれを越えることは―――自分にはできない。

 

 双剣の一つは既に砕け。

 

 残りは一つ。

 

 これを失えば、後は精々囮となって逃げるしかない。

 

 それも、まともにできるかどうか。

 

 そんな状況なのに、心には些かも乱れはない。

 

 恐怖も、怒りも、悲しみも、喜びも…………何もかも浮かばない。

 

 ただ―――ほんの少し、だけ……安堵(ヘスティアとの絆が削られない)申し訳なさ(約束を破ってしまう)が浮かぶだけ。 

 

 ―――ああ…………津波のように食人花がやって来る。

 

 あれを止めるのは無理だろう。

 

 食人花はこちらを見ていない。

 

 もう、彼女(レフィーヤ)しか見ていない。

 

 ……変わったな。

 

 強くなった。

 

 心も、身体も、何もかもまだまだだが……それでも、彼女は強くなっている。

 

 俺とは違い―――本当(・・)に強くなっている。

 

 あの時(怪物祭)から彼女は強く(前へ進み)、私は……どうなのだろう?

 

 いつか、彼女は自分が望む先へと辿り着くのか…………。

 

 それはわからないが……その手伝いができる事を、少しばかり嬉しく思う。

 

 ―――もう、津波(食人花)は目の前だ。

 

 間に合うだろうか?

 

 間に合わないだろうか?

 

 それすら考えない。

 

 ただ、魂が命ずるままに、敵を攻略する。

 

 生き残ることは不可能だと、全てが結論を下すが、引くことはない。

 

 引けば、誰かが死ぬ。

 

 なら、引けない。

 

 ただ、それだけでいい。

 

 それだけしか―――ない。

 

 (後ろ)へと進む。

 

 そう決め走り出す―――直前。

 

 背後から飛んできたモノを反射的に受け取った。

 

 正確に、後ろを向いたままでも受け取れる位置に投げつけられたソレを受け取り。

 

 瞬時に【解析】。

 

 魔剣。

 

 しかし、それは酷いものだった。

 

 質的には下の下か下の中。

 

 使用回数は後一回。

 

 使用すれば砕けてしまうが、使用せずとも砕けそうなほどにボロボロ。

 

 そんな魔剣を投げ渡したのは、荷物持ち(ポーター)の少女だろう。

 

 【ヘルメス・ファミリア】の少女が、何のつもりで投げたのかはわからない。

 

 いや、状況からして応援のためのモノだろうとはわかるが、こんなモノを渡されても焼け石に水より意味がない。

 

 例え最大に【強化】したとしても、1、2体焼ければ御の字だ。

 

 意味のない。

 

 無駄な行動。

 

 なのに―――何故だ。

 

 受け取った時、微かに見えた少女の顔が。

 

 瞳が―――。

 

 ()を見るそれが―――魔剣を握る手を更に強めた。

 

 知らぬ間に―――【解析】が続く。

 

 深く―――潜るように―――沈むように―――辿るように―――【解析】が行われる。

 

 

 

 

 

 ―――その鍛冶師は、特に才能がある方ではなかった。

 

 鍛冶師となった理由も、ただ、冒険者のよりも死ぬ危険性は低く、ある程度の生活ができるほど稼げるからといった理由で……特に希望も理想もなかった。

 

 ただ漫然と、剣を打つ日々が続く。

 

 それを神に非難される事もあったが、それでも鍛冶師の心が変わることはなかった。

 

 ある日、一人の男が【ファミリア】に入ってきた。

 

 才能ある男だ。

 

 自分とは何もかも違う。

 

 希望と理想を持った男だ。

 

 有り余る才能を持ちながら、努力も続ける男だった。

 

 ただ、不思議なことに、その男は魔剣を嫌っていた。

 

 別にいないわけではない。

 

 魔剣は特別だ。

 

 一人前の証でもあるため、打てないものはある意味でその象徴である魔剣を嫌うものもいる。

 

 しかし、その男は、打てずに嫌うのではなく、打てるのに嫌っていた。

 

 その男が打った魔剣を見た。

 

 ―――自分には一生打てないだろう魔剣を、その男は打っていた。

 

 なのに、使い手を残し壊れるといった理由だけで、その男は魔剣を否定した。

 

 胸が騒いだ。

 

 それが怒りなのか嫉妬なのかはわからない。

 

 ただ、それ以降男は狂ったように剣を打った。

 

 打って、打って、打って、打って、打って、打ち続けた。

 

 逃げてきたダンジョンへ向かい、レベルを上げ、技術を学び、寝食を忘れただ剣を打った。

 

 気付けば、一振りの魔剣を打ち出せていた。

 

 初めての魔剣。

 

 形も、中身も酷い―――だけど、確かに魔剣だった。

 

 理想に欠片も届かない酷い出来だったが、確かに魔剣が打ち上がった。

 

 短い―――短剣の、下級の魔法程度の炎がでるだけの魔剣だったが……思わず、男は大層な名前をつけてしまった。

 

 それは、何時しか生まれていた男の理想(望む先)

 

 忘れてしまうほどの(子供の頃)に読んだお伽噺。

 

 その中で、一人の剣士が振るった魔剣の物語。

 

 一振りで海を焼き払ったと唄われたお話を聞いた、小さな自分は、それを振るってみたい―――ではなく。

 

 創ってみたいと思った。

 

 それを思いだし。

 

 だから、男はその魔剣に―――

 

 

 

 

 

 ―――ああ……

 

 そうか…………

 

 一瞬の間もない時間に追体験のように得た知識に、知らず残った双剣の片割れから手を離していた。

 

 両の手にはあまりにも小さすぎる短剣の柄を握りしめ。

 

 巨大な大剣を振りかぶるように天へと掲げ。

 

 その行動に―――自分で自分を嘲笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ナニヲスルツモリダイ?

 

 決まっている。

 

 ―――ヘェ、キマッテイル?

 

 僅かな可能性があるのなら、使うまで。

 

 ―――ソノケッカガドウナルカハ?

 

 わかっている。

 

 ―――イイノカイ?

 

 良いも悪いもない。

 

 ―――ソレヲシリナガラヨシトスル、ネェ……

 

 足りないのならば、補えば良い―――ないのならば、足せば良い……

 

 ―――ツクヅククルッテ……イヤ、コワレテイルノカネ

 

 今の【強化】で無理ならば、更なる高みへと手を伸ばせばいいだけ。

 

 ―――ソウナレバ、アノオンナトノツナガリガドウナルモノカワカッテテモ、カイ?

 

 それでも、だ。

 

 ―――ヒヒッ……バカダネェ。

 

 ……ああ、そうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶望(食人花)を前に、目を閉じる。

 

 闇が広がる中、ただ、己の中に埋没し―――告げる。

 

 自己を変える。

 

 己を昇華させる―――言葉(呪文)を。 

 

 

   

「身体は―――剣で出来ている」

 

 

 

 ―――音が、聞こえる。

 

 身体の内から響くそれは、鍛鉄の音。

 

 鋼を叩き。

 

 不純物を弾き出し。

 

 純粋なナニカへと変化させる産声。

 

 一つ、一つ響く度に、彼女との契約()が削れていく。

 

 それは、必要ないと。

 

 意味のないものだと、告げるように。

 

 冷たい、鍛鉄の音が響く。 

 

 溢れ落ちていく不純物()と共に、身体に満ちる知識と力。

 

 

 

 

 

「―――同調、開始(トレース・オン)

 

 今までのそれ(解析)とは、まるで別物。

 

「―――憑依経験、共感開始」

 

 とある鍛冶師のこれまでの全てを追体験し、その先へと進む。

 

「―――基本骨子、解明」

 

 ―――創造の理念を把握

 

 魔剣を打った鍛冶師が理想とした―――鍛冶師本人さえ理解していなかった剣の理を把握。

 

「―――構成材質、解明」

 

 ―――基本となる骨子を想定

 

 その理想に至るために必要な材料を想定。

 

「―――基本骨子、変更」

 

 ―――制作に及ぶ技術を創造

 

 必要な技術、知識を創造し型を創りあげ、理想に至る経験さえ創造する。

 

「―――構成材質、補強」

 

 蓄積された年月を仮定し―――あらゆる行程を強化し―――

 

 

 

 

 ―――ここに、理想を結び―――

 

 

「―――ッッ!!!」

 

 

 

 ―――剣と成す

 

 

    

 その剣は、一人の(鍛冶師)が夢見た理想。

 

 母から寝物語に語られた、海を焼き尽くしたと唄われる魔剣の御話。

 

 流れる年月に薄れ埋没し、消え失せながら―――確かに男の胸にあった理想の剣。

 

 いつか、と―――その思いから。

 

 名付けたのは―――

 

 海焼く炎。

 

 故に―――その銘を―――

 

 

 

 

 

「―――ッ【海暁(あかつき)】ッ!!!」  

 

 

 

 

 

 そして、振るわれた太陽を思わせる紅光を放つ長剣(・・・・・・・)から生み出された炎は迫る津波(食人花)を飲み込み―――――――――…………

 

 

 

 

 

   




 感想ご指摘お願いします。

 ちなみに、海暁(あかつき)は造語です。

 他に何かいいのがあったら変えるかもしれません。

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