たとえ全てを忘れても   作:五朗

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 第四章始まります。


第四章 エイユウサイリン
プロローグ 問いかけ


 ―――イイノカイ?

 

「何がだ」

 

 ―――ワカッテルダロ

 

「……見捨てる訳にはいかない」

 

 ―――ヘェ……ホントウニ?

 

「…………それ以外に何がある」

 

 ―――ヒヒヒ……タシカニ、ナ。オマエニハソレダケデジュウブンダナ

 

「………………」

 

 ―――タダソレダケノリユウデ、オマエハキリステルコトガデキルンダカラナァ

 

「―――っ」

 

 ―――ン? ドウカシタカ?

 

「否定は、しない…………確かに、俺は―――」

 

 ―――エランダ?

 

「……そうだ」

 

 ―――イイヤ、チガウネ

 

「違う?」

 

 ―――エランデナンカイネェヨ

 

「どういう、ことだ」

 

 ―――エラブッテノハ、ダイナリショウナリクラベルモンサ。ダケドオマエハソンナコトシチャイナイ

 

「そんな事は―――」

 

 ―――ナイッテカ?

 

「―――っ」

 

 ―――エランデネエヨアンタハ。アンタハタダステテルダケダ

 

「………………」

 

 ―――メノマエデガケカラオチカケテイルヤツガイル。ダケドリョウテハフサガッテイル―――ダカラモッテイルモノヲハナシタ

 

「―――」

 

 ―――タダソレダケ

 

「…………」

 

 ―――ヒテイハシナイノカイ?

 

「……ああ」

 

 ―――ヒヒヒッ……アア、コワイコワイ

 

「それが、真実だとしても……それで、誰かが救えるのなら……」

 

 ―――イインジャネェノ? ステルノモエラブノモケッキョクオンナジコトダ。オマエノスキニシタライイ

 

「―――」

 

 

 

 

 

 

 ―――シヨクナク、タダモトメラレルママニスクイツヅケル【エイユウ】ネェ……【セイギノミカタ】トハヨクイッタモンダ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 進む。

 ひび割れ荒れ果てた何もない乾いた世界をただ進み続ける。

 草木の一つすら見えず、黄昏に染まった空の下。

 ただ歩み続ける。

 何もない。

 本当に、ここには何もない。

 だから、歩き続ける。

 ここにある筈のものを見つけるために。

 乾いた風に身を晒し。

 進んでいるのかわからない程に代わり映えのしない荒野を進み続け。

 何時しか、風に砂が混じり始めた。

 瞬く間に風の勢いは強まり、最早まともに目を開けることもできない。

 砂嵐から顔を塞ぐために持ち上げた手すら隠してしまうほどの嵐の中を、しかし止まることなく歩み続ける。

 豪々と鳴る打ち付ける砂粒が乘った風に体を切り裂かれながらも、何時しか歩む足に変化を感じた。

 丘を、登っている?

 望洋とした意識の中、それでも立ち止まることなく進む。

 確信がある。

 この先に―――。

 この丘を越えた先に、求めるものがあることを。

 歩みは遅い。

 それこそ、亀の歩みの方がまだ早いほどに。

 それでも、足は確実に一歩一歩踏みしめていた。

 巌よりもなお堅い、鋼鉄の意思により進む足を止められることなど、何人たりとも叶わないだろう。

 そう、例えどんな凶悪な化物が襲いかかろうとも。

 そう、例えどんなに強い英雄が立ち塞がっても。

 そう、例えどんな万能の神が命じたとしても。

 この歩みを止めることは何者にも出来はしない。

 

 また、微かな変化に気付く。

 

 傾斜が少し緩くなった。

 目指す先はもう間近。

 確信が、男の歩みを更に強く、硬くする。

 もう少し―――そうだ、この足があと一歩進めば―――。

 男の足が、最後の一歩を踏む(最後の想いを踏みにじる)ために、持ち上げられ―――

 

 

 

 

 

「―――本当に、いいの?」

 

 

 

 

 

 小さな、幼さを感じさせる少女の声。

 淡い、白雪を幻視させる美しい声音に、止まる筈のない歩みが―――止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 




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