たとえ全てを忘れても   作:五朗

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 さて、これから二部二章が始まるのですが、以前、「これはダンまちではなくソードオラトリアとのクロスでは?」みたいな感想があったのですが、改めて言います。
 これはFateとダンまちとのクロスです。
 何故ならば、これまではある意味プロローグのようなもの、起承転結でいえば起のようなもので、これからが物語の本番です。
 二部は全五章の予定ですが、5章で原作15巻ぐらいまで追いつく予定となっています。
 それでは、今後ともよろしくお願いします。 


第二章 ■■が見た夢
プロローグ 泡沫に響く鐘の音


――――――――――――――――――――――――――――――

 

――――――――――――――――――――――――

 

――――――――――――――――――

 

――――――――――――

 

――――――

 

―――

 

 闇が―――広がっていた

 

 何処までも深く黒く――――――果てなく底知れない闇が……

 

 薄闇を幾重にも折り重ね

 

 遥かなる先へまで広げた末に、重さまで感じられるほどに煮詰められた闇が、ここには広がっていた

 

 ――――――そこに、()はいた

 

 沈んでいくように

 

 浮かぶように

 

 流れるように

 

 たゆたうように

 

 私は、ここにいた

 

 意識はなく

 

 意思もなく

 

 されど意識はあり

 

 意思もあった

 

 矛盾を孕みながらも破綻しない

 

 有り得べからず闇の中

 

 ただ、私はここにいた

 

 時間といった概念事態が存在しないここに、一体何時からいたのか等わからない

 

 そんな何も生まず動かず発生しない闇の中で

 

 ――――――……

 

 ナニかが、響いた

 

 それは凪ぎの水面に落ちた小さな欠片が、ゆっくりと、しかし、大きく広がっていく波紋のように、闇の中へと伝わっていく

 

 ――――――……

 

 微睡む意思に、波紋が触れ

 

 私はソレへと意識を向けた

 

 ――――――……

 

 そこに、光があった。

 

 闇一色の中に現れた光は、あまりにもか細く

 

 吹けば吹き飛んでしまう程に儚く

 

 しかし、眩いまでに、闇の中に浮かんでいた

 

 私の意思は、自然とそれを見つめていた

 

 分厚い雲に覆われた夜の空に、僅かに生まれた亀裂に覗く一つの名もない星のようなそれは、今にも消えそうに揺らめいている

 

 思わず、手を伸ばす

 

 だが、届きはしない

 

 そんな事はわかりきっていた筈なのに、何故……

 

 伸ばした手の先

 

 闇に隠され伸ばした手など見えはしない

 

 唯一の明かりさえ、そのか細い光ではこの闇の中では、指先すら浮かばせることなどできはしなかった

 

 あの、光は一体何なのか

 

 何故、こうまで私を引き付けるのか

 

 ――――――……

 

 わからない

 

 ただ、仰ぎ見るように光を見つめる中、ふと、気付いた

 

 光の中に、人影が浮かんでいることに

 

 ――――――……

 

 ……ナニかが、聞こえる

 

 その()が何なのかわからない

 

 それよりも、気になることがある

 

 光―――その中にある影―――人影だ

 

 ふた、つ?

 

 大きなものと、小さなものが、寄り添って

 

 あれは……手を繋いでいる?

 

 よく、わからない……

 

 大きな方は、あれは男―――いや、女だ

 

 何故かはわからない

 

 だが、断言できた

 

 女が手を繋ぐ小さなそれは、なら、子供なのだろう

 

 母親―――なのだろう

 

 子供と手を繋いでいる

 

 ―――ああ、何とも幸せそうな……

 

 ――――――……

 

 音が、聞こえる

 

 ああ、これは、そうだ

 

 この音色は―――鐘の音だ

 

 幾度も耳にした音色

 

 しかし、これは――――――

 

 ――――――……

 

 ああ、何と安らぐのか

 

 もう、はっきりと聞こえるようになった

 

 闇に沈んだ身体を震わせる音色と共に、果てに浮かぶか細かった光も力を得たかのようにその輝きを強めているようだ 

 

 ああ、なんだ、これは……暖かい

 

 ――――――……

 

 日が沈む

 

 終わりを告げる晩鐘ではない

 

 ――――――……

 

 ああ、そうだ

 

 これはその真逆

 

 日が昇り

 

 始まりを告げる、これは

 

 ――――――……

 

 ―――暁鐘の音色

 

 そうして、ゆらりと大きく闇が揺れ

 

 意識が浮上する

 

 光は更に遠く

 

 もう、輝きの中に見えた影も見えない

 

 最後に見下ろした(見上げた)光の中で、女の影が―――こちらを向いた

 

 そんな、気がして

 

 私は――――――――――――――――――

 

 ――――――――――――――――――

 

 ――――――――――――

 

 ――――――

 

 ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶望が、そこにあった。

 

「―――っ、ハッ――――――ハッ」

 

 呼吸が、上手く出来ない。

 

「っ、あ―――っ」

 

 身体があまりにも重い。

 まるで、全身の血管に血ではなく、鉛が流れているかのように、苦しく重い倦怠感と疲労感が指先の一本にも渡り広がっている。

 目を閉じれば、直ぐにでも意識は失ってしまうだろう。

 それが、あまりにも魅惑的で、その誘惑を振りきるのにも多大な意思の力が必要で。

 だけど、そんな力ももう欠片もなくて。

 それでも、僕が意識を失わないでいられるのは。

 

 ―――リリ

 

 小さな―――僕よりも頭一つ以上小さな小柄なその体が、力なく横たわっている。

 

 ―――ヴェルフ

 

 力強く、逞しく、頼りになる彼が、今は弱々しく倒れ付している。

 僕の、後ろにいる。

 

 だから―――っ!!

 

「ッッ――――――ッ!!」

 

 鐘の音が響く。

 鈴のような微かな音色が、今はこの広大な嘆きの壁のある領域に響き渡る。

 充填(チャージ)―――ここに来るまでにも使用した最後の切り札。

 限界は既にとっくに越えている。

 出来る筈もない。

 だけど、やらなければ死ぬだけ。

 それは、ハッキリとわかる。

 だから、やる。

 残り滓のような力を全てかき集め。

 高める。

 何処までも。

 一撃。

 一度しか機会はない。

 この一撃で倒さなければ、終わり。

 避けられない死が、僕だけじゃない皆へと降りかかる。

 それだけは、許容なんて出来ない。

 だから――――――ッ!!

 

「ファイア―――」

 

 最大に充填した魔法。

 ミノタウロスの群れさえも一撃で吹き飛ばしたそれを、たった一体のモンスターへと向ける。

 

「―――ボルトッ!!!」

 

 大型のモンスターですら、最大に充填したものでなくとも倒したそれだが――――――

 

「っ――――――ぁ」

 

 直撃した。

 まともに顔面へと叩き込んだ。

 大きな爆炎がその巨大な頭部を包み込んだのを見た。

 しかし――――――

 

『ッオオオオオオオオ!!!?』

 

 咆哮と共に発生した衝撃が、漂っていた煙を吹き飛ばす。

 露になったそこには、多少の傷は見られるが、支障がないのは明らかだ。ただやはり大分不愉快だったのだろう。

 怒りに染まった咆哮を上げながら、階層主である『ゴライアス』が、その巨体を揺らし、地響きをたてながら近づいてくる。

 

「っ―――ま―――だ」

 

 霞がかる視界。

 薄れ行く意識。

 全身に穴が開き、そこから活力という活力が消えていく覚えのあるそれが、マインドダウンの前兆であることを知っていた。

 抗いがたい―――否、抗うことの出来ない衝動を前に、それでも未だに意識を保つことが出来たのは、その背にある仲間の姿故に。

 消えいこうとする意識の中、それでもともがく。

 もう、どんな打つ手もないというのは分かりきっている。

 だけど―――

 それでも、と。

 

『オオオオオオオオ――――――』

 

 しかし、現実は非情。

 願いは届かず。

 祈りは叶わず。

 ただ事実として現実を殺す。

 間近に迫ったその巨体。

 いつの間にか崩れ落ちたのだろうか。

 膝は地面に着いており、仰ぎ見るように迫る巨人を見上げていた。

 ゆっくりと時間が引き伸ばされていく感覚の中。

 巨人が伸ばした手がゆっくりと近づいてくる。

 

 ここで、終わり?

 

 いや、駄目だ。

 

 嫌だ。

 

 まだ、僕は――――――

 

 泡沫のように浮かんでは消えていく意思。

 最早自分が何を思っているのかさえわかっていないのだろう。

 沈んでいくように、意識が闇の中へと消えていく。

 落ちてしまえば、もう二度と浮かんではこれないだろう闇の中へ。

 それがわかっていながらも、もう抗うことはできない。

 だけど、それでもと―――抗うように目を開いていた中に――――――

 

 ――――――ぇ?

 

 迫る巨大な掌の前に、立ち塞がる()()()

 

 ――――――だ、れ?

 

 黒い、ローブ? のようなもので全身を隠したその姿。

 性別も、男女も老いも若いも何もわからないその背中。

 消えいく意識の中――――――

 

 ―――死、神?

 

 最後に映ったのは、ローブから覗いた白い―――骸骨の面だった。

 

 

  

 

 




 感想ご指摘お待ちしています。


 二部全五章(予定~変更するかも?)
 
 一章 現れたる■■
 
 ニ章 ■■が見た夢

 三章 瞬撃の■■■

 四章 果されし古の■■

 五章 振るわれし■■の聖剣

 六章(終章) ■の試練


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