たとえ全てを忘れても   作:五朗

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第九話 相対

 激震が轟き、粉塵が周囲を渦巻く。

 城壁の一部が悲鳴のような破砕音を立てて崩壊していく中、一迅の風が走った。それは霧のように漂う砂煙を切り裂き吹き飛ばし、崩された城壁の隙間に入り込むと城壁の中へと降り立った。

 そして同時、手に掴んだ剣を一振りすると、その少女―――アイズを中心に生み出された風が煙幕のように視界を遮っていた土煙の全てを吹き飛ばした。

 

「―――っ、あ、アイズ・ヴァレンシュタイン……」

 

 唐突に吹いた強風とそれに混じった砂埃から反射的に手を翳していた者の一人が、露になった視界の先に立つアイズを目にし、震える声でその名を呼んだ。

 都市(オラリオ)に住んでいる者で、ましてや冒険者をしている者でその名を知らぬ者はいない。

 例えその姿を目にしていなくとも、噂で聞くその女神もかくやといった美しさと、肌に感じるレベル6という規格外の強さを思えば、初めて目にしたとしてもその少女が、あの【剣姫】―――アイズ・ヴァレンシュタインであることは理解することが出来た。

 

「なんでっ―――どうして【剣姫】がこんな所に―――『戦争遊戯(ウォー・ゲーム)』に参加してんだよぉおおッ!??」

 

 その【アポロン・ファミリア】に所属している冒険者の男の言葉は、その場に存在する―――否、オラリオで今もリアルタイムで『戦争遊戯(ウォー・ゲーム)』を見ている全ての者が抱くものであった。

 確かに、ルール上は問題はない。

 【アポロン・ファミリア】との様々な差から、助っ人枠として一人だけだが【ファミリア】ではない部外者を参加させる事は、【ヘスティア・ファミリア】には可能であった。そしてそれに対する制限はない。理論上では、【フレイヤ・ファミリア】のオッタルさえ助っ人枠として参加する事は可能である。

 しかし、『可能』と『出来る』とは違う。

 助っ人として参加させるのに、強制力はあるわけはなく。参加させるには交渉するしかない。

 だが、敗色濃厚な【ヘスティア・ファミリア】に協力するような、そんなお人好しが冒険者にそうそういる筈もなく。報酬を出すとしても、弱小ファミリアである【ヘスティア・ファミリア】に大したモノを用意できる筈もない。

 だから、助っ人枠を知る者の多くは、そもそも【ヘスティア・ファミリア】が助っ人を用意出来ないのではないかとすら思っていた。例え用意出来たとしても、精々下位か中級程度の低レベルの冒険者だろうと考えていた。

 しかし―――なのに―――有り得ないことに、蓋を開けてみれば、現れたのはあの()()()()()()()()()()()()()である。

 まるでダンジョンに入った瞬間、階層主が現れたかのような有り得ない光景―――理不尽ささえ見ていた者は感じていた。

 

「ちょ、これ、もう終わりじゃね?」

 

 オラリオの一角。

 先程までの喧騒とは一転して静まり返った酒場の中で、『(映像)』を見ていた酔客の一人がポツリと呟いた。

 その言葉は文字通りそのままの意味である。

 レベル6。

 強者犇めくこの都市(オラリオ)においても、数える程しかいない最高戦力の一角。

 その中でも、最強の名にも上がる程の隔絶した戦闘力の保持者である【剣姫】―――アイズ・ヴァレンシュタインである。

 文字通り一人の強者が軍隊を圧倒できる質が量を上回るこの神時代の英雄にとっては、例え同じ冒険者であろうとも、そのレベルに差があれば、三桁の数を揃えたとしても勝利は覚束ない。

 絶対的強者たるモンスターを、その知恵と技術、そして連携によって上回る冒険者であっても、限度というものがある。

 そしてその限度を、アイズ・ヴァレンシュタインは越えている。

 戦いとは―――戦争とはその準備の段階で既に決着が着いているという言葉があるが、ならば、『アイズ・ヴァレンシュタイン』という大駒を用意出来た時点で、【ヘスティア・ファミリア】の勝利は決まっていたのだろう。

 その事に思い至った者達―――【アポロン・ファミリア】の勝利に賭けていた者達の口から悲鳴のような呻き声が漏れ、逆に【ヘスティア・ファミリア】に賭けていた者達の口許が震えながら笑みの形に変わる中でも、『鏡』の向こう―――戦場では事態が動いていた。

 

 

 

 

「くそっ!? どうなってんだっ!? 何で【ロキ・ファミリア】の【剣姫】が出てきてるんだよッ!!?」

「うるせぇっ!! 出てきたもんは仕方がねぇだろうがッ!!」

「でも、相手はあの【剣姫】よ。数を揃えても私たち程度のレベルじゃ意味がないんじゃ……」

「仕方ねぇだろ、団長の指示じゃな」

「全くっ、ルアンの野郎は余計な指示を持ってきやがってッ!」

 

 『戦争遊戯(ウォー・ゲーム)』が開始された際、城壁の周囲にいたのは警戒のために配置された20数名。残りの殆どは城内の中で休んでいた。レベルも人数も差がある相手が、まさか開始初日に仕掛けてくる筈がないというその油断。誰もが気が緩んでいた状態の中、そのまさかに乗じた奇襲に、【アポロン・ファミリア】の誰もが動揺した。だが、一番の衝撃は奇襲そのものではなく、その一番槍を果たした【ヘスティア・ファミリア】の助っ人。

 都市最強の一角に称される【ロキ・ファミリア】が誇る冒険者である【剣姫】ことアイズ・ヴァレンシュタインの参加であった。

 【ロキ・ファミリア】の看板とも言っても良いそんな大物の参加に、それを耳にした誰もが聞き間違いだと思ったが、現実は変わらず。彼らの中に欠片もなかった敗北の可能性の現出に、その混乱は更に平常な精神を保つのに難しい程に強まった。

 そんな中、伝令役であるルアンによる『団長であるヒュアキントス』の迎撃命令を受けたことにより、城内の冒険者の半数以上である約50人ほどを引き連れて迎撃に向かったが、その口から漏れるように、中級程度の冒険者が50程いたとしても、レベル6―――それもあの【剣姫(アイズ・ヴァレンシュタイン)】を相手にまともに相手となるかどうか。

 冒険者を知る―――レベルという絶対の力を知るからこそ、隔絶したその頂きに立つ存在の強さを知る彼らは、絶望的な戦力差に対峙する間でもなく敗北を感じていた。

 

「流石にそれは理不尽じゃ?」

「うっせぇ! わかってるよそんなことは。ただ、俺たちが行ったって意味ねぇだろ。というかこういう時こそあの人の出番じゃねぇのか?」

 

 しかし、それでも戦いに向け―――確実な敗北へと向かう筈の彼らの顔に、絶望の色はなかった。

 何故ならば、彼らは知っている。

 例え【ヘスティア・ファミリア】が【剣姫(アイズ・ヴァレンシュタイン)】というレベル6(化物)を繰り出してきたとしても、それを打倒しうる事が出来る英雄(規格外)が自分達にはいることを。

 だが、その肝心要のその人が―――

 

「―――問題は、その肝心な人が何処にいるか誰もわかんないんだよ」

「つまり、それまでの時間稼ぎって訳か?」

「稼げるか? 時間?」

 

 ―――何処にいるのか全くわからないということだけ。

 『戦争遊戯(ウォー・ゲーム)』が開始される前は、食堂で何かを食べていたそうであるが、今は何処にいるのかはわからない。流石に砦の中にいるとは思うのだが……絶対にいるとは言えないのが、その人物の厄介な所であった。

 【剣姫(アイズ・ヴァレンシュタイン)】を倒せる可能性があるのは、彼だけだが、問題はその彼が、自分達が無事でいる間に来てくれるかという点であった。

 

「っ―――待てッ!?」

 

 城から出撃した50人の冒険者の先頭を走っていた男の一人が、今も微かに砂煙が立つ崩れた城壁に向かう途中、自分達の方向へ―――否、城の方向へ向けて駆けていくフードで姿を隠した一人の人物を見つけ警告の声を上げた。

 一瞬アイズかと疑った彼であるが、フードから僅かに見えた黒い髪を見て直ぐ様それを否定する。

 と、同時に敵であると直感した。

 どうやら混乱に乗じ、崩れた城壁から侵入してきたのだと判断する。

 その姿は直ぐに他の【アポロン・ファミリア】の団員達の目にも留まり。各々がそれぞれ武器を構え始めた。

 

「新手?!」

 

 50を数える冒険者達が一斉に武器を構える姿を見ても、そのフードを被った人物は一向に速度を落とすことなく真っ直ぐに向かってきていた。

 その姿に、武器を構え迎撃の姿勢を見せていた一人が苛立ちの声を上げるが、

 

「ちっ―――舐めてんじゃねぇぞッ!! たった一人で―――って、おい待て何であんな距離から剣を振り上げてって……ッあの剣!? まさかッ!!?」

 

 フードの下から取り出したその人物が持つ紅と紫の二振りの剣の内、その一つである紅い剣を明らかに間合いの遠い外から振り上げるを見た瞬間、それが一体何なのかに気付き一気にその顔色を青ざめさせると、足を一歩後ずさりさせた。

 

「魔剣っ??!!」

「全員散れぇええッ!!?」

 

 剣の正体を誰かが口にした瞬間、先頭に立っていた者が真横に飛び込むようにして飛び出すと同時に悲鳴のような警告の声を上げた。

 男が声を上げた時には、既にほぼ全員が何らかの回避手段を取っていた。

 一斉に縦に切り裂かれるように左右に飛び離れて逃げた一団へ向け振り下ろされた『魔剣』から炎の一線が放たれた。

 

「ッッ!!? 無茶苦茶だッ!? 何だあの魔剣!?」

 

 『魔剣』から放たれた魔法は、左右に分かたれた通り道を駆け抜け城の一角へ衝突した。

 放たれた魔法の余波だけで巨人に殴られたようにばらばらに吹き飛ばされた【アポロン・ファミリア】の団員達は、慌てて起き上がりながら魔法が衝突した城へと目を向けた。

 そこには頑丈な筈の城の一部が崩れた姿を見せていた。

 最高級の『魔剣』であっても、通常の魔法に比べればどうしても威力と言う点では劣ってしまうのであるが、今放たれたそれは通常の詠唱を伴った『魔法』と同等―――否、それすら越える力を見せつけていた。

 そして、そんな力を持つ『魔剣』など、世界広しとはいえたった一種しかない。 

 

「まさかっ!? 『クロッゾの魔剣』!? いかんっ、城ごと破壊されかねんぞッ!!?」

 

 吹き飛ばされた『アポロン・ファミリア』の団員達を無視して駆けるフードの人物。いや、既にそのフードは振り払われ、その下から黒髪の少女が姿を現していた。その両の手には朱と紫の色に染まった二振りの剣があり、その威力は先程身を持って知ったばかり。

 あと何発撃てるかはわからないが、それでも間近で城へ放たれれば無事ではすまない。

 もし、運悪くその場所にあの人がいれば―――。

 

「くそっ!? 50でも足りんかもしれんぞッ! もっと呼んでこいッ! 城へ向けて撃たせるなッ! 囲んで叩けぇえ!!」

 

 そんな考えが頭に過り、【アポロン・ファミリア】の団員から必死な声が上がる中、その中心にいる少女―――新たに【ヘスティア・ファミリア】に加わった元【タケミカヅチ・ファミリア】の団員である命の意識は、周囲に迫る【アポロン・ファミリア】の団員達ではなく己の中へと向けられていた。

 

「【いかなるものも打ち破る我が武神よ、尊き天よりの導きよ。卑小のこの身に―――】」

 

 その口から紡がれるのは呪文。

 今にも乱れ、内から爆発しかねない不安定さに額にねばついた汗を感じながらも、その焦燥と恐怖を振り払うかのように周囲へ向けて両手に握る魔剣を振るう。

 

「「「ッあああああああああ!??!」」」

「くそっ!? 無茶苦茶だあの『魔剣』ッ?! あれが『クロッゾの魔剣』かよっ!?」

 

 振るう度に周囲から衝撃と共に悲鳴が上がるが、その意識は変わらず内に向けられたまま。

 騒ぎを聞き付けたのか、城内から更に応援の冒険者が出て来はじめていた。魔剣を警戒し、ばらばらになりながらも周囲と連携し囲んでくるその姿を目にするも、命は変わらず呪文を紡ぎながら剣を振るう。 

 

「【払え平定の太刀、征伐の霊剣】」

 

 立ち上る土煙に紛れ、【アポロン・ファミリア】の団員達を引き連れながら走り続ける。走る足に迷いはない。

 視界の端に魔法を放とうとする一団を確認すれば、ただ何も考える間もなく魔剣を振るう。魔剣の回数制限なんて事など考えもしない。意識はただ己の内へ。真っ直ぐに城へと向けていた足を、城から迎撃に出てきた団員達を避けるようにしてその進行方向を大きく変更させる。

 時折飛んでくる矢や魔法でその身を削られるように傷つきながらも、口にする呪文を止めることなく、暴発しかける己の魔力を必死に制御しながらも、ただひたすらに駆け続け。

 

「中庭の方へ行ったぞッ!?」

「馬鹿が、開けたあそこへ行くとは」

 

 馬鹿にするかのような声は耳に届いている。

 しかし、それに意識が向くことはない。

 己の全てはただ、自身に課せられた役割を果たす事だけに向けられていた。

 故に、全ての集中は、己の中へと。

 今だ届かぬ頂き。

 かつて見た平行詠唱という目指すべき先を、身に余るその偉業を、平時であってもまず間違いなく失敗するだろうその業を、この修羅場において成し遂げる。

 無謀―――自爆とも言っても間違いではない愚かな行い。

 だが、それでもやらなければならない。

 やって見せなければならない。

 そうしなければ、己がここにいる意味などない。

 

「全員に伝えろッ! このまま中庭へ誘導ッ! 着いたと同時に全方位から一斉に襲いかかれッ!!」

「【今ここに、我が命において招来する】」

 

 自らを取り囲むように大勢の気配が動くのを思考の端で理解しながらも、それを無視する。どんどんと追い詰められている事がわかっていても、少しずつ飛んでくる矢や魔法が増えてくるのをその身が削られることで理解しながらも、それでもその足は止まることはない。

 少しでも、一歩でも近く、指先程でも前へと、あの黒い絶望を前に見た【疾風】の背中を追わんと駆け抜ける。

 

「【天より降り、地を統べよ―――】」

 

 既に目的はほぼ達成していると言える。

 【アポロン・ファミリア】の数は100に届く程度であり、城壁の警戒に当たっているのは20として、今自身を追うのは6、70人。つまり、今城内には僅か10名程度しか敵はいないということ。

 眼前で詠唱し待ち構えていた一団から魔法が放たれるのを、罅が入った魔剣を最後とばかりに振り抜き相殺する。響き渡る轟音と衝撃に内蔵が震え足が止まってしまう。

 それを見咎め、追い詰められた獲物に止めを刺さんとばかりに一気に【アポロン・ファミリア】の団員達が襲いかかってくる。『魔剣』のない(レベル2)では、録な抵抗も出来る筈もなく打ち倒されるしかない光景。  

 

「【―――神武闘征】!!」

 

 しかし、この状態こそを、命は望んでいた。

 目隠ししたまま細い蔦の上を渡るかのような博打めいた所業に、命は見事打ち勝ち、その最後の言葉(詠唱)を口にした。

 

「【フツノミタマ】!!」

 

 散々暴れたお返しとばかりに四方から飛びかかってくる敵の冒険者達。その中心にぼろぼろになりながらも立つ命の直上に一振りの光剣が召喚される。

 『魔剣』によるものではない莫大な『魔力』の放出に飛びかかる冒険者達が気付いた時には既に遅く。

 大地に発生した複数の同心円とその中心に立つ命の足元に、深紫の光剣が突き立ち。

 

「「「―――ッがああああああああアアアアッっ!!???!」」」

 

 半径50M(メドル)に渡る特大の重力魔法が命もろとも【アポロン・ファミリア】の冒険者達を地面へと無理矢理押さえつけた。

 ドーム状に発生した深紫の重力結界に囚われた者達は迎撃に出た者の7割を越えていた。残りの3割もその殆どは命が放った『魔剣』により既に倒れており、無事なのは10名にも満たないでいた。

 

「くそっ、どうすんだよこれ!?」

 

 その中の一人である短髪の少女―――ダフネがやけくそ気味に投げた短剣が、深紫の結界に触れた瞬間地面に叩きつけられる様を見て吐き捨てるように文句を口にした。

 視界の先では、数十人の仲間達が何とか重力の結界から逃れようとするが、その動きは遅々として進んでいない。その中心に立つ術者である少女は、己もその重力の下で囚われながらも、脂汗にその端正な顔を汚しながらも、不敵な笑みを浮かべている。

 囚われた者達は、押さえつけられる重力に悲鳴を上げてはいるが、戦闘不能になるようなダメージは受けているようには見えない。しかし、たった一人を相手に、60人近い冒険者が足止めを食らっている。

 その苛立ちをぶつけるように、ダフネは勢いよく地面を蹴りつけた。

 

「ここにいてもしょうがないよっ! カサンドラっ、一旦城へ戻って―――」

 

 ここにいても何も出来ない事を理解したダフネが、肩を怒らせながら城へと戻ろうと足を動かしながら、自分の傍に立っている筈のカサンドラへと視線を向けるが、そこには誰の姿はなかった。

 

「ちょっ、もしかして?!」

 

 カサンドラの姿がそこにないことに気付き、もしやあの結界に囚われているのではと慌てて深紫の結界へと視線を向けるが、そこには探し人たる者の姿はやはりなかった。城から出る際は自分の後ろにいたのをダフネは確認していた。

 では、今は何処に?

 そう思い周囲を見渡すダフネの視界の端に、揺れる長い髪を見つけた。

 直ぐ様それがカサンドラと気付いたダフネだったが、追いかけようとした足は、その向ける先が何処であるかを気付き咄嗟にその動きを止めてしまう。

 

「ちょっと、そっちは―――……ぇ?」

 

 カサンドラが向かう先、そこはこの戦いの始まりを告げた場所で、何より自分達が向かったとしてもどうしようもない存在がいる所であるため行っても意味のない所だ。だが、ダフネの足を止めたのはそんな考えではなく、突然目の前に現れた()()によるものであった。

 それは―――。

 

「―――……竜、巻?」

 

 

 

 

 

 

 

「―――来ないの?」

「っ!!?」

 

 アイズのその呟きにも似た小さな言葉に。挑発的とも言えるその言葉に対して、立ち塞がっていた冒険者達は動けずにいた。代わりに何人かの視線が、アイズから逸れ、死んだようにピクリとも動かず倒れ伏している数人の仲間達へと向けられる。

 それはつい先程、アイズが開けた(破壊した)城壁の一部から侵入してきた3人(・・)の【ヘスティア・ファミリア】の冒険者を反射的に迎撃しようとした者の末路であった。

 新たに侵入してきた3人の内、先頭を走っていたフードで姿を隠した者の前に立ち塞がろうとしたその者達は、アイズが足元に落ちていた瓦礫の欠片を足先で蹴り上げ、それを掴むと同時に投げつけられた投石によって、まるでバリスタの直撃を受けたかのように吹き飛ばされてしまったのだった。

 瞬き程度のその早業に、同じように迎撃のため動こうとした冒険者達は、思わず足を止めてしまい。結果としてその3人の侵入者を見過ごすこととなってしまった。

 そうして残された冒険者達は、城へ向かって走る侵入者を追うことも、ましてやアイズに挑むことも出来ず身動きが取れないでいた。

 

「……投降するなら武器を捨てて」

「「「―――ッッ!!?」」」

 

 アイズの何処と無く困ったような言葉に、心理的に棒立ちとされていた冒険者達は、互いに視線だけを交わしあい、無言のまま意見を交わし合う。

 

『どうする?』

『いや、どうするってどうしようもねぇだろ』

『っていうか、何で【剣姫】は動かないんだ?』

 

 時間としては10秒にも届かない無言の激論はしかし、

 

「―――いやはや、まさかとは思ったが」

「―――ッ!!?」

「「「あっ!!?」」」

 

 張り詰め緊迫した空気が満ちる中に響いた、場違いな程に楽しげな声によって引き裂かれた。

 その声に対する反応は二つ。

 【アポロン・ファミリア】の冒険者達は、ほっとした安堵の表情と声を上げ。

 アイズは完全に把握していた筈の自分の間合いの内から、何の前兆もなく唐突に現れたその男に対し、息を飲み、声なき驚愕の声を上げた。

 驚き混乱しながらも、しかしそこは流石【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインと言うべきか。

 混乱のままに身体を硬直させることもなく、無意識のまま、反射的でありながらも自然な動きで、その手に持つ剣の先を声の主へと向けていた。

 

「あなた、は?」

「なに、ただの……そうだな、用心棒のような者だ」

「用心棒?」

 

 剣先を男に向けながら、戸惑うようにアイズが微かに眉根を寄せる。

 特徴的な男である。

 背は180Cぐらいだろうか。東方にある国から来ている者に似た服装に、長い髪を後ろに縛って流している。切れ長な目は涼やかに、緊張感もなく。まるで街中で声を掛けてきたかのように、その姿は戦場に身を置いているとは思えないほどに自然体であった。

 だが、何よりも目を引くのは、その背中に背負った長大な剣であろう。

 肩越しに覗くのは剣の柄だろうが、腰下から見える鞘の先端から見るに、その刀身は通常の剣とは比べ物にならないほどに長い。

 彼我の距離は約20M程度。

 アイズならば一足で飛び込める間合いの内側である。

 なのに、ここまで近付かれるのを、声を掛けられるまで全く気付かなかった。

 『魔法』か、何らかの『スキル』なのか。

 それとも単純な体術なのか。

 ただ一つだけわかるのは、この男が只者ではないと言うことだけ。

 それを示すかのように、あれほど緊張と恐怖に動けずにいた【アポロン・ファミリア】の冒険者達が、安心したかのようにその身体から力を抜いている。

 中にはその場に、へたり込みながらも笑みを浮かべている者すらいる。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だ。

 アイズの纏う雰囲気が更に鋭く、硬くなる。

 しかし、それを前にしても、その男は背にある刀の柄に手を伸ばすどころか、まるで花や空など景色を鑑賞するかのように腕を組んだ姿で、アイズを見つめていた。

 

「その通り。此度の(いくさ)では、『助っ人枠』とやらで参加している者だ、と言えば通じるか?」

「……そう、あなたが」

 

 小次郎の言葉に、アイズの体に緊張による力みが入る。

 その額には、知らず一筋の冷たい汗が流れていた。

 有り得ない光景であった。

 世界最強戦力が集う都市(オラリオ)にあって、その中でも最高の位置に立つ筈のあの()()()()()()()()()()()()()が、その正体は分からないが、一見してただの優男に見える男一人に対し、まるで気圧されているかのような姿を見せているのだ。

 『鏡』を通じ、その光景を見ていたオラリオの冒険者や神達の口から、困惑の声が上がっていたが、一定の実力を持つ者達は、また別の様相を見せていた。

 

「へぇ―――あれが、そうなのね」

「……はい、あの男が―――」

 

 その中の一柱である女神が、『鏡』が映す小次郎の姿を見つめるその目を細めながら、顔を向けることなく隣に控える男へと声を掛けた。

 声を掛けられた男―――都市最強と謳われる【猛者】オッタルは、傷跡一つ、痛みすら感じない筈の腕に走った鋭く冷たい痛みと共に、己の主へと頷いてみせた。

 

「―――佐々木、小次郎」

 

 

 

 

 

「風を操る美しき凄腕の剣士がいると、噂で聞いた」

「……」

 

 口の端を僅かに持ち上げただけの小さな笑みを向けながら、小次郎が一歩足をアイズに向け動かす。

 

「先日の夜会で見掛けた時は、なるほどこの者かと思ってはいたが、手合わせの機会はないだろうと臍を噛む思いでいたが……」

 

 一歩、小次郎が足を進めたと同時に、反射的に後ずさってしまったアイズは、一歩下がった後にその事に気付くと、唇を噛み締め剣を握る手に更に力を込めると同時に前へと足を踏み出した。

 

「よもやここにおいて対峙出来るとは、まさに望外の喜びだ」

「っ、あなた、は」

 

 一歩、前へと足を踏み出しながらも、それ以上動かない―――動けずにいたアイズは、同じく一歩前に出ながらも未だ柄へと手を伸ばさない小次郎に向け、震える声で問いを投げた。

 

「何者、なの?」

「何者、とは?」

 

 腕を組んだまま、首を傾げるようにしてそう問い返す小次郎に、アイズはふぅ、と小さく息を吐き出し、気を入れ替えるように深呼吸をする。

 

「この感覚―――感じは……あの男の人に似てる」

「あの男?」

 

 すっと小次郎の目が訝しげに細まる。

 アイズは知らず震えそうになる声を押さえ込むように低い声でその『名』を口にした。

 

「……『ランサー』」

「―――ほう」

 

 小次郎の頬に浮かぶ笑みが―――変わった。

 一見すればピクリとも変化しているようには見えない。

 しかし、見る者が見れば分かる。

 それ(・・)に含まれる―――形造られる意味が違う、と。

 その事にアイズは気付きながら、全身を苛む悪寒が更に深く鋭くなるのを感じながらも問いを投げ掛ける。

 

「あなたは、あの男の人に、似ている? ううん、違う。()()()()()()()()

「その様子―――奴と対峙したか。それでいながら、五体に欠ける所なく、戦意も失ってはいない。成る程、【剣姫】の名は伊達ではないか」

「っ―――本気じゃ、なかった。ただ、遊ばれただけ」

 

 感心したかのような小次郎の言葉に、ギリッ、と歯を噛み締めたアイズは、脳裏に蘇る、フィンやガレス、ベート達がいたにも関わらず、良いようにあしらわれたあの夜の戦いを言葉と共に吐き捨てた。

 

「それでも大したものだ」

「……知っているのなら教えて、あの人は―――あなた達は誰? 何者なの?」

 

 慰めるかのような小次郎の言葉に、アイズは応えることなく返されなかった問いを再度投げ掛ける。

 それに対し、小次郎は過去を思い返すかのように、空を見上げると一つ目を閉じた。

 

「奴とはかつては敵同士、一度手合わせしただけの関係だ。今はそう―――仲間、とは違うか。同類……それも何か違うな」

「……? つまり、何なの?」

「それは―――いや、互いに剣士であれば、聞きたければその剣をもって話させてみせよ」

「っ」

 

 要領の得ない小次郎の言葉に、アイズが苛立つように手に握る(デスペレード)の柄を握りしめる。

 しかし、それに対し小次郎は何を思ったのか、背中に背負った刀の柄に手を伸ばすと、スラリとその長大過ぎる刀身を持つ刀を抜き放った。

 妖しくも美しい刀身が太陽の光を切り裂き―――アイズの総身を苛む悪寒が更にその深度を深くした。 

 

「……しかし奴は『ランサー』と名乗ったのか」

 

 最早問いを投げ掛ける空気ではないことをアイズは本能的に理解し、剣を構え直す。

 それを横目にしながら、小次郎は抜いた刀を構えるような事はせずに、そのまま刀を握った右手をだらりと垂らしながら笑う。

 

「それではこちらもそれに倣うか」

 

 そうして、改めて小次郎はアイズに相対し、名乗りを上げた。

 

「サーヴァント『アサシン』―――一手御相手願おうか、剣の姫よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ベル様! こちらですっ!」

「リリっ!」

「リリスケ、もう変装はいいのか?」 

 

 堅く閉ざされていた城の門が開かれた先には、【アポロン・ファミリア】の団員の服に身を包んだリリの姿があった。門の前に立つベル達を確認するやいなや、直ぐに背中を向け誘導の為走り出したリリの背中を追いながら、その背に向かってヴェルフが声をかける。その声に対し、リリはちょっとした町程はあるかもしれない巨大な城の中に集う者達の現状を伝える。

 

「ええ、もうこの城の中には10人もいませんし。ただ、レベル2が数人いるようですから注意して下さい」

「レベル2が複数か、ちとキツいか」

「ヴェルフ……」

 

 不敵な笑みを浮かべるヴェルフとは対象的に、ベルが不安気な顔を向ける。それは、強敵がまだいることに対してではなく。そのもの達と戦う事となる仲間達のことを思ってのことだと知るヴェルフは、ぐっと親指を立てて見せる。

 

「そんな顔すんじゃねぇよベル。雑魚どもはこっちに任せておけ」

「そうですよベル様っ! それにこっちには()()がありますし」

 

 リリは【アポロン・ファミリア】の団員の服の内側に隠したモノを服越しに叩く。

 

「はっ! 考えなしにバカスカ撃つんじゃねぇぞリリスケ」

「分かってますよっ!」

 

 今にも懐からそれを取り出し、振り回しかねない姿を見せるリリに、ヴェルフが警告ともからかいとも言える言葉を投げる。背中に受けた言葉に、リリは、叩きつけるように声を張り上げた。

 そして、続いて何かを言おうとしたが、それが形となる前に差し込まれる驚愕の声が向かう先から響いた。

 

「何で【ヘスティア・ファミリア】が入り込んでやがんだっ!?」

「ルアンの野郎は一体何をしてやがったッ!!?」

 

 驚きの声を上げたのは、城の中に残っていた冒険者であった。

 魔剣を持つ敵が城へと接近してきたことから、迎撃のため残り少ない城にいた人員を出した後は、伝令のために城に残っていたルアンが門を見張っていた筈であった。

 人数が明らかに少なくなったとはいえ、門を閉じ、中に引きこもっていれば早々落とされるような事はない。城の中にも外にも様々な罠が事前に仕掛けられていたのだ。直ぐに突破されることは無いはずであったのだ。

 だからこそ、少なくともまだ安全地帯と思っていた城の中を歩いていたその二人の冒険者の驚きは大きなものであった。それでも、最後の砦として城に残っていた冒険者であるその二人は、ベル達と鉢合わせとなった驚愕に戸惑いながらも、無意識のまま武器を構え戦闘体勢に入る。

 

「ちっ! 見つかっちまった!?」

「ベル様行ってくださいッ! このまま真っ直ぐ進めば階段がありますっ! ヒュアキントスはその上ですっ!」

「リリッ! ヴェルフッ!」

 

 立ち塞がるかのようにベルたちの前に陣取った冒険者達に対し、それに向かってヴェルフとリリは走り寄りながらそれぞれの武器を構えた。

 

「行けッベル! 行ってブチのめしてこいッ!」

 

 逡巡の姿を一瞬見せたベルだったが、直ぐに一つ深呼吸するかの様にして息を整えると一気に走り出した。 

 咄嗟にそれをさまとげようとした冒険者達に向かって、リリは懐から出した短剣を振り抜いた。

 

「くそっ! 行かせるか―――がああっぁああ??!」

「―――流石は【ヘファイストス・ファミリア】の団長が打った『魔剣』ですねっ! 短剣型でこの威力とはっ!?」

「『魔剣』だとぉ!??!」

 

 リリが放った魔剣の爆炎に紛れ、立ち塞がっていた冒険者達の間をすり抜けたベルの姿は、慌てて振り返った二人の目にはもう見つけることは出来ないでいた。咄嗟に追いかけようとする二人だったが、聞こえた不吉な言葉に再度振り向いた先では、【アポロン・ファミリア】の団員服の前止めのボタンを全て外し、マントのように広げたそれの内側に、『魔剣』と思われる短剣を何本も吊るし、不敵な笑みを浮かべるリリの姿があった。

 

「『魔剣』はまだまだありますよっ! 大盤振る舞いですッ!? さあっ、最後まで付き合ってもらいますからねっ!!」

「「―――マジかよ……」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故ベル・クラネルが城の中に侵入しているのだッ!? 城で待機させていた連中は何をしていたんだッ!!?」

 

 城にある玉座の間がある塔の最上階では、ヒュアキントスの苛立ちが混じった怒声が響いていた。

 

「そ、それは、その、団長の指示で迎撃に出たので、城に残っていたのは十人ぐらいしかいなかったため、手が回らなかったのかと……」

「何を言っている!? 俺は城で待機していろとルアンに言った筈だ! くそっ、どういうことだこれは!?」

 

 城に侵入してきたベル達との戦闘が始まり、侵入者に気付いた者の一人がヒュアキントスに報告に向かった所、返ってきたのは何処か互いに認識がずれている答えであった。

 報告に来た団員の困惑の顔から無理矢理意識を剥がし、つい先程指示を出したルアンの事を思い出す。

 アイズ・ヴァレンシュタインの出現を声高に叫びながら入ってきたルアンに対し、自分は確かに城への待機を指示した筈であった。レベル6に対し、下位の冒険者がいくら集まろうと意味などない。それならば城に籠って迎撃した方がいくらかは持つだろうと言う判断だった。

 癪ではあるが、あの男(小次郎)が出てくるまでの時間稼ぎさえ出来れば良いのだから。

 佐々木小次郎の強さをヒュアキントスは良く知っている。

 それこそ、レベル6を相手にしたとしても、その勝利を疑わない程には。

 信じられないが……アポロン様の言葉を疑いたくはないが、あの【猛者(オッタル)】さえ退けたと言うのだから。

 だからこそ、あの決定に不満を抱きながらも納得をしたのだ。

 アポロン様に気に入られ、明らかに他の者に対する執着とは、今回の戦争の切っ掛けとなったベル・クラネルとも違う執着を見せる姿に、嫉妬を覚え、叶わぬと理解しながらも何度も稽古の名を変えては挑んだが、結局これまでまともに相手にさえされなかった。

 ただ一方的に、何をされたかも分からずに打ちのめされるだけ。

 思い出すだけでも腸が煮えくり返りそうになる。

 だが、何よりも嫌なのは―――

 

「っ、では、どうしますか団長っ!?」

 

 思考の渦に巻き込まれかけていたヒュアキントスの意思を引き上げたのは、動揺に震える団員の言葉であった。

 勝利が間違いない戦いの筈が、特大のイレギュラー(アイズ・ヴァレンシュタイン)の参加に加え、まともに対応できない内に、気付けば敵が本丸である筈のここへと侵入してきている。

 その動揺は理解できるが、腹に納める事が出来るほどに、今のヒュアキントスの機嫌は良くなく、また余裕もなかった。それでも、無駄な時間を掛けかねない八つ当たりのような言葉を吐き出しそうになる口を噛み付くように一度閉じると、怒りと苛立ちで熱を孕んだ息を一度深く吐き出した。

 

「―――ふぅ……こうなれば仕方がない、ベル・クラネルはここで迎え撃つ、侵入者は3人だけなのだな。なら一旦全員をここに集め―――っ!!!?」

 

 そう、改めて指示を出そうとした瞬間、足元が微かに揺れたと感じた直後、落雷のような轟音と共に床が膨れ上がり―――吹き飛ぶ。下から現れた炎を纏った雷が、空へと駆け昇る龍ようにそのまま天井を破壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ―――な、何が!?」

 

 一瞬意識を失っていたヒュアキントスが、まだふらつく意識を戻すように自分の上に乗っていた瓦礫を振り払いながら立ち上がると、そこは先程までの光景から一変していた。頑丈な壁で覆われていた筈の玉座の間は、そこになく。周囲には元は玉座の間を形作っていたと思われる瓦礫が散乱していた。

 周囲を見渡せばそこには遮るものは何もない。遠くまで見渡せるその光景に、ヒュアキントスは若干の違和感を抱く。少しではあるが、先程まで見えていた光景が狭くなっているような。

 それを意味するところを―――先程までいた位置から低い場所にいることに気付いたヒュアキントスは、自分が塔を破壊された際に外へと、下へと放り出された事を理解した。

 幸いな事に地面まで落ちることは回避することは出来たようではあるが、爆発に巻き込まれ宙へと放り出された上に、どれだけ落ちたかわからない下にある石畳へと叩きつけられたダメージは決して無視は出来ない。

 全身を苛む痛みと、そして何よりも何が起きたのか理解しながらも、未だ心がそれに追い付かず呆然と立ち尽くすヒュアキントスの後ろに、唐突に漂う土煙を振り払いながら姿を現した者がいた。

 

「見つけたッ!?」

「―――?!」

 

 紅い瞳を光らせながら、右手と左手それぞれに構えた短剣を握りしめ襲いかかるその姿に、ヒュアキントスは振り向きながら爆発に巻き込まれながらも手放さなかった波状剣(フランベルジュ)を腰から引き抜き。そのまま横薙ぎに振るわれた刀身の真ん中に、矢のように突き進んできたベルの短刀が突き刺さる。

 衝突した刃と刃を中心に、荒れ狂う衝撃が周囲で渦を巻いていた砂煙を吹き飛ばす。

 

「ッ、ぐぅう、貴様かぁあ―――ベル・クラネルッ!!」

「ヒュアキントス・クリオッッ!!!」

 

 ギリギリと短剣を押し込むようにして力を込めながらにじり寄るベルに向かって、ヒュアキントスが怒りと憎しみ、苛立ちが募った言葉を叩きつける。

 互いに額をぶつけ合い、殴り付けるような勢いで名前を呼び合った二人は、示し会わせたかのように跳び分かれるとそれぞれの獲物を構え合い。

 そして、咆哮を上げ飛び掛かった。

 

「ッ―――あなたを倒すッ!!」

「舐めるなぁッッ!! この兎があああああアアアッッッ!!!」

 

 

 

 




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