炎の憑依者も異世界から来るそうですよ?   作:夜明けの月

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サブタイが思いつかないという非常事態。
……なんとかなります、よね?
一章終わる頃にはタグが一つか二つぐらい増えそうです。

それと、皆さんは見ましたか?ラストエンブリオの3巻の表紙!
まさかのあの耀さんだ!もう何もかもがどストライクで楽しみで楽しみで仕方ないです!

では、本編へどうぞ!


正体不明は天井知らずだそうですよ?

side 十六夜

 

ーーー俺は負けた。

 

今までは考えられなかったことだった。誰だって俺を恐れ、誰だって俺が迫れば逃げ惑う。俺はいつもそう思っていた。今回もそうだった。

だが、現実はそんなものではなかった。

 

"悪ふざけ"の力なんぞで勝てるような世界ではない、そう実感させられた。

だからと言って、その"敗北"によって俺にもたらす被害は極小だった。

この世界にいるやつはどんな奴らなのか、それが気になったのもあるからかもしれない。

 

いつの間にか口角がつり上がり、ニヤケ顔になっていた。

先程の戦闘での感覚が残っているのか。あの短時間の中で味わった快楽という感覚が。

 

さっきの戦闘ではしてやられた。俺にダメージを与えてなお、膝をつかせたまま立たせまいとする眼光。あれほどの殺意は見たことがない。それに怯んだ俺も俺だが。

あれは俺のいい好敵手(ライバル)になる。……そうなってくれる前に折れてもらっては困るのだが、まあ心配はいらないだろ。

 

一人思いに更けていると、黒ウサギに箱庭のことを聞いているあの二人とは別に、俺の隣に立っている奴ーー確か、篠宮英太だったはずーーは俺を一瞥する。

見られて困る目のもないので、無視を決め込む。

 

「なぁ、逆廻」

 

「十六夜でいい」

 

「それじゃあ十六夜、お前さーーー

 

 

何で手加減したんだ?」

 

 

 

「は?」

 

篠宮は突拍子もなくそんなことをほざく。意味が不明にも程がある。というか突然すぎて、脳が追いつかない。てか、どうして俺がそんなことを言われなくてはならない。

 

「訳がわかんねぇな。理由は?」

 

「攻撃に対する反応が遅すぎ。あと、あの蹴り。やろうと思えば雪城の五臓六腑ぐらい潰せたろ?」

 

「んな人外じみたことができるわけ」

 

「出来るだろ。愛里紗の超電磁砲の弾道を目で追えたぐらいなんだからよ」

 

「………………」

 

「あれ、音速超えてるんだぜ?なのにそれを目で追えるっておかしいとは思わないのか?」

 

さっきから何なんだこいつは。

どうしてこいつは俺を以前から知っているような口ぶりで、しかも自信満々な口調で言える?

と疑問に思ったが、言及されたことはすべて真実に限りなく近かった。

あの電磁砲の弾丸も目で追えたし、あの雪城とか言う奴を殺そうと思えば殺せたかもしれない。だとしても、確信がない。

 

「なら、俺ならあいつらを殺せた、とでも言いたいのか?」

 

「お前だけじゃない。下手すりゃ司でも倒せる」

 

「へぇ……」

 

司でも倒せるのか……。なら俺なら楽勝じゃねえか。

件の司は、未だギフトの扱いがぎこちない。俺やお嬢様、春日部には格段に劣る。その司でも倒せるというのだ。ならば、俺が倒せない、というのはおかしいということか。

 

「………ああそうだな、本気なんて口だけで出しちゃいねえかもな。でもな、生憎俺は自分の限界ってのをちゃんと理解してねえんだ。だから、あれが本気とは言わねえが、どれが本気かなんて俺にも分かんねえんだよ」

 

「天井知らず、か。………ハッ、俺と一緒かよ」

 

「なんだ、テメェもか?」

 

「ああ。生まれてこの方、本気なんざ出したこともないし、限界なんて知ったこともない。ていうか知る気もない」

 

「なるほど………」

 

さっき感じたのは()()が理由か。こいつが俺と同じ穴の狢ということだからか。

 

俺の向ける視線が気に食わなかったのか、ムッと顔を顰める篠宮。だが、すぐに表情を戻し、咳払いをする。

 

「ーーーさて、本題はこれからだ」

 

「あ?俺が本気だったかそうじゃないか、が本題じゃねえのか?」

 

「んなわけあるか。それだけだったら自己完結で終わらせるわ。俺が本当に聞きたかったのはそれじゃねえんだよ」

 

「じゃあなんだってんだ?」

 

俺が頭上に疑問符を浮かべると、不敵に笑い、右手に持った辞典のような書物を俺に見せる。

……お前そんなの持ってたか?

 

「ちょっとお前にいい話があるんだ。乗るか乗らないかはお前の自由だ。あと、話聞く聞かないとかお前に選択肢ないから」

 

篠宮は俺の返答を待たずに話を続けていった。男女平等、人類皆兄弟、人には平等に選択の権利があるとは誰が言ったのか。

唯我独尊の方がいいんじゃねえか、何て思ったが口に出さなかったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

話はものの数分で終わった。事務的な詳細説明とそれによる利益を俺に話しただけだった。が、俺にとっては心惹かれるだけに十分な説明だった。

 

「ーーーで、どうだ、面白そうだろ?」

 

「……聞く必要あると思うか?」

 

「いや、念の為だ」

 

篠宮の顔を見ずに俺は答える。

無意識のうちに俺は口を手で覆っていた。俯いているからおそらく他の誰かに気付かれてはいないだろうが、今の顔は他人に見せられるような代物ではない。

何故ならーーー今までにないほどの狂気に満ちたニヤケ顔だろうからだ。 恐らく、子供が見れば泣くんじゃないだろうか。

 

「くくく、ヤハハハハハハッ!」

 

俺は堪えきれず、天を見上げ狂ったように笑う。

どうしてだろうか、これほど次の闘いが楽しみだと思ったことはない。まさかここまで心踊ることがあるとは思わなかった。それでこそ、元の世界を捨ててここまで来た甲斐があったというものだ。

 

さぁ、誰でもいいからかかってきやがれ。俺はお前らを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ向から捻り潰してやる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狂気に満ちた笑みとともに、己の内でまだ見ぬ敵に告げた。

そこにーーー、未だ感じたことのない快楽が待つことを信じて。

 

 

 

side 十六夜 out

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「(………ジリ貧だな、おい)」

 

司は滴る鮮血を拭いながら、荒い息を吐く。

 

司が鋭い眼光で見据える先には、幾度となく殴り、火で炙った()()の白い虎、ガルド=ガスパーだった。

だが、"契約書類"のギアスによって指定武具だけでしか傷をつけられず、ガルドには一切の傷が付いてない始末。その代わり、数十分に至る攻防を繰り返した司の体には幾つもの傷が刻まれており、最初に食らった腹部の三本の傷からはおびただしい量の血液が未だ出続けている。

 

脳内で、これ以上戦ってはまずいと警鐘が鳴っているのだが、司にはどうしても退けない理由があった。というより、退くことが()()()()()()

 

「GAAAAAaaaaaaa!!」

 

「くそったーーーーーーーっ!?」

 

迫るガルドを避けようとした途端、司の動きが止まり、壁へと弾き飛ばされる。

 

肺の空気が空気中へと吐き出され、激しく咳き込む。

司はすぐさま立ち上がろうとするが、足を踏ん張った瞬間に顔を顰め、片膝をつく。

 

ついた右足ではなく、左足を押さえながら苦悶の表情を浮かべる。押さえた先には、大きな切り傷があり、未だに流血が止まっていない。

 

「(ミスった……。まさか、足に食らうとは……)」

 

自嘲気味に笑みを浮かべる司。誰が見ても、最悪と言っていいほど状況は最悪だった。

 

だが、司の不幸はこれだけでは終わらなかった。

 

司の視界が突如、グニャリと歪め始める。

度重なる攻防と、それに伴って増え続けた傷、そしてそれから流れ出す鮮血が司からあらゆる感覚を奪っていく。

 

体温、感覚、思考、視覚あまつさえ意識も奪っていく。

その現状に、司は内心で舌打ちしながら祈る。

 

「(万事、休すか…………)」

 

なすすべもなく、その場に倒れこむ。そのまま、司の意識は深い暗闇へと落ちていった。

 

一言の言葉とともに。

 

 

『司君は、私が守ります』

 

 

 

 

******

 

 

 

 

飛鳥、耀の二人は、ジンを森へと残して屋敷まで戻り、ガルドがいる屋敷の前まで戻ってきていた。

ちなみにジンは飛鳥のギフトで眠らせている。

 

「さてと、本当にどうしたものかしら?」

 

「………私のせい、だよね」

 

「春日部さんのせいじゃないわ。司君も、そう言ってたんでしょう?」

 

「……………言ってない、一言も」

 

「あ、あら?そうだったの?………ま、まあいいわ。それよりも、あの外道をさっさと倒し」

 

突如、飛鳥の言葉を遮り、何かが破壊された音が辺りに響く。

その直後、何かが地面に激突する。

 

「な、何が起きたの!?」

 

「飛鳥、あれ!」

 

耀が驚愕の表情を浮かべながらも、ある場所を指差す。そこには、地面に倒れ伏し、流血しているガルドの姿だった。

 

耀は、その姿に目を見開いて固まっている。

これは司がやったのか、と思考を巡らせる。だが、"契約書類"によってガルドは指定武具でしか傷をつけられないため、司ではないと即座に判断する。

では誰が?と疑問が浮かんでくるが、その疑問は次の瞬間にはかき消される。

 

「Gu、GAAAAAaaaaaaa!!」

 

ガルドが耳をつんざくような咆哮を上げ、飛鳥たちへと突進してくる。

 

「春日部さん、手筈通りに行くわよ!機会は一度だと思ってやってちょうだい!」

 

「りょ、了解!」

 

飛鳥は後退し、耀は真っ向からガルドへと走る。

好機と見たガルドは、鋭利な爪を耀へと振るう。が、耀がグリフォンのギフトを使い、上空へ飛び上がることで爪は空を切る。

ガルドはその光景に目を白黒させて驚くが、すぐに態勢を立て直し、耀への攻撃の手を強める。

耀は、それを身を翻してかわし、誘導するように動き回る。

 

飛鳥と耀は、事前に打ち合わせをしており、耀が囮役としてガルドを引きつけ、飛鳥はトドメを刺すことになっていた。

 

「春日部さん、そこから退いて!」

 

「うん!」

 

「『木々たちよ、その虎を拘束しなさい』」

 

飛鳥のギフトに従って木々が、枝を伸ばしてガルドの体に絡めていく。ガルドは逃れようともがくが、もがけばもがくほど木々が複雑に絡まり、強く締め上げていく。

 

「ーーーさようなら、紳士さん。狂う前の姿を一度ぐらい見たかったわ」

 

もがくガルドの額に飛鳥は白銀の剣を突き刺す。

ガルドはもがく力を強くしたが、剣が脳を貫いた途端、ビクッと震えて風化したものが崩れゆくようにサラサラと砂のように消え去っていく。

ガルド=ガスパーは、勇敢な若者たちの手によってこの世から消え去った。

 

 

 




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